サムサッカー

監督:マイク・ミルズ
マイク・ミルズの長編初監督作品。自分は主に音楽周辺で目にしてきた、彼のデザインワークなどから想像してたものとはちょっと違って、静かな佳作という印象だった。
親指をしゃぶる癖をやめられない主人公が、いろいろ悩みつつ、いろんなものに依存してしまって、で、というのがおおまかなあらすじなのですが、最初は主人公ジャスティンのお話に見えていたものが、だんだんと「家族」の話であることに気付かされる。
大人/親になりきれない両親にジャスティンは不満を感じているのだけど、その両親もまた、ジャスティンと同じように、迷っていることがわかる。そして彼等は足りないまま、自分と世界を受け入れる。
ジャスティンの悩み自体は、実際の彼が結構恵まれているように見えることで、それほど深刻なものに感じられなかったのだけど、それは私がすでにそこを通り抜けてしまったからなのか、やめたい、という悩みに自分を重ねられないからなのか、わからない。
でも、人を悩ませる「誰かに認められたい」という願望をかなえることよりも、実は自分で自分を認めるということが、一番難しいのかもしれませんね、と思った。自分を認めることはあきらめではなく、希望なんだっていうラストが気に入った。

と、いちおう感想を書いてはみたものの、「S-killz to pay the \.」さんの感想がすばらしく、これ以上付け加えられません。
S-killz to pay the ¥. - Deep Thraot/Thought 〜サムサッカー〜
観た後に読むと、ぐっとくる。

 世界をよくする現代思想/高田明典

つまり「現代思想」も「(現代思想以前の)哲学」も、「ものの考え方の筋道」を考えるという点では同じですが、「その目的によって、何が正しい筋道であるかは異なる」と考えるのが「現代思想」の特徴です。p30

として、現代思想がどのようなもので、どのような道をたどってきたのかを、分かりやすい文章で紹介した本。知らないことばかりだったけど、とても面白かった。
巻末にブックガイドがあって、そこにこんな言葉がある。

ある分野に関して「ある程度十分な用語知識や概念理解が得られた」後に、「この人と同じ頭になりたい」と感じる思想家を選びましょう。
(略)
この読み方で重要なのは「わからないところをそのままでは次に進まない」という「決意」です。p219-220

「ある程度十分な用語知識や概念理解」ができてる人の文章を読むと、すごいなぁと思うけど、それをどうやって身に付ければいいのかがわかんないし、自信ないので、そこはとりあえず(とりあえず)おいておいて、一人の人の著作を読み込む、ということはしたいなと思う。
例えばこの本を読んでいても、自分が気になる「概念」というのは結構限られているので、たぶん、そのあたりについて考えてた人を選べばいいのだろう。最初に興味を持ったのが永井均さんの本だったので、頭がなかなかそこから離れないのだけど、もう少し「言語」寄りのものを読んでみたいなと思っていたので、ブックガイドもとても参考になった。
そんなふうに、自分の傾向を見るのにも、適した本なんじゃないかと思う。楽しい。

世界をよくする現代思想入門 (ちくま新書)

世界をよくする現代思想入門 (ちくま新書)

 金曜日

金曜日のうれしさを、ありがたみを、すばらしさを、久々に思い出した。
終業30分前くらいから、にやにやしてしまう。明日は早起きしなくていいんだって。

仕事の後は、朝から決めてたとおり、映画を見に渋谷へ。
いわゆるギャルな子がDSやっててのぞいたらポケモンで、最初のポケモンはこの子の小学生時代だったりするのかなーとか思ったり、「えっ10時まで同伴いいの?」といってるカップル(というか同伴中)とすれ違って、そのあからさまな喜び方を微笑ましく思ったり、飲み会の集まりがそこここで輪を作っているのも、金曜日だと再確認できるようで、うれしい。でも、同時に来週歓迎会してもらうっていうの思い出して、ちょっと気が重くなる。自己紹介っぽい会話は、いつまでたっても苦手だ。猫かぶりっぱなし。
サムサッカーを見た後、バスの中で「依存」ということについて考える。是非ではなく、私は何かをやめたい、ということで悩むくらい、何かに依存したりはまったりしたことがあっただろうか? ないかもしれない、それって少し、寂しくないか、ということを。
思い当たることがひとつだけあるけれど、手に入らないものに執着することほど、疲れることはないと知ってから、意識的にそれを遠ざけているような気がして、これも不自由なことだな、と思うけれど、それ以外は私にとって執着しっぱなしで問題ないということでもある。