「STAND ALONE COMPLEX」

自分が意識的に考え事をするとき、そのほとんどは自問自答のような気がする。私は今、って書くうちに「それはもう今じゃなくなっていくじゃないですかー」、とか言ってる自分がいて、たまにめんどくさい。
何かに腹が立った、ということを言葉にしにくいのも、「だからといってそれが全部ってわけでもなく…」とかつい言いたくなるからだし、そんな風に、どう読まれるのか心配ならば、注意書きしないでいられないならば、やっぱり口をつぐむべきなんじゃないですか…、って書いたそばから、いやいやそこは「口をつぐむべき」ではなくて、口をつぐんでいたほうが楽、でしょうという声がするし、なるほどそのとおりだなと思う。

口をつぐむというのは、たぶん頭の中でこんなふうに、喋っている自分を止めるということだ。
目の前にあることに対する反射のようなもの、練習を積み重ねた動作、などは「言葉」にする過程を省くから滑らかなのだと思う。みじん切りするときにいちいち「包丁を持ち上げて、下ろして」なんて考えていたら指を切ってしまう。
でも、その一時停止が解除できなくなったら、どうなるんだろうか。

「世の中に不満があるなら自分を変えろ、それが嫌なら耳と目を閉じ口を噤んで孤独に暮らせ、それも嫌なら…」
攻殻機動隊S.A.C.」第1話

目と耳はインプットで口はアウトプットだから、ただ文句を言うな(喋るな)ってことなら口をつぐむだけでいい。ここで言ってるのは、つまり見聞きしたものを「不満」という言葉にする過程をやめろってことで、その「言葉にする」過程が「考える」ってことなんだと思う。

「耳と目を閉じ、口を噤んだ人間になろうと考えたんだ。ザ・キャッチャー・イン・ザ・ライ25章からの引用と言う話ね?」
「ええ、報告書にも書きましたけど、その一部を施設の中でも見つけたんです。最初は小説のまんまだと自分でも思いこんでいた。でも俺が見つけた文章は、なろうと考えたんだ、の後に続きがあったんです。「 or should I?」だがならざるべきか。そう書き加えられていたんです。あれは彼自身の自問自答だったんじゃないでしょうか?(略)」
攻殻機動隊S.A.C.」第20話

この台詞に続くトグサの考察は、いま私が考えてることとはまた違う気がするんだけど、でも改めて、この「 or should I?」はすごく大切なキーワードだったんだなと思う。
止まっていると、それが結論のようで居心地がいい。たぶん。でも、と考えてしまうのは楽しいけど、たまに鬱陶しいし、それをはじめたらたぶんずっと追いかけることになる。