これも自分と認めざるをえない展

佐藤雅彦さんがディレクションをした『これも自分と認めざるをえない展』(http://www.2121designsight.jp/id/index.html)に行ってきました。
展覧会は「属性」というテーマで

  1. その本体が備えている固有の性質・特徴
  2. それを否定すれば事物の存在そのものも否定されてしまうような性質

という「属性」の2つの側面について、体験型の展示を通し様々な視点から見せてくれるものでした。
ここで思い出したのは、以前読んだ高田明典さんの本に出てきた

「無根拠に、それを疑わないと決めた」ことを「超越確実性言明」と呼びます。超越確実性言明はたくさんありますが、その「束」こそが「自我」です。」
http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20061014/p1

という言葉のことで、この言葉についてはいまだにちょっとよくわからないままなのだけど、この展示によって示されるのは、そのような「無根拠にそれを疑わないと決めたことの束」と「私」を切り離して眺める作業のような気もした。
ただ、2の「それを否定すれば事物の存在そのものも否定されてしまうような性質」として取り上げられていたものについては、「記憶」だけが特殊すぎるとも感じた。具体的な展示内容については知らないで見たほうが面白いと思うので触れないけれど、
例えば、食べたことのないお菓子を「食べたことがある」という嘘をついたとする。最初は違和感のあるその「嘘」も、つき続けることで「食べたことがあると信じている自分」の方がリアルに感じられることはあるだろう。そんな風に、「記憶」というのは「私」を構成する重要な要素ではあるけれど、その正確さについては、それほど重要ではないように思う。
むしろ、あの記憶についての展示は、その曖昧さを示すものだったのかもしれないけれど、
もしできるなら「存在そのものも否定されてしまうような」形で、記憶というものが切り離されるところを見てみたいなあとも思ったりした。ちょっとこわいけど。

そんな風に、体験して感じたことについてあれこれ考えるのがとても楽しい展示でした。
それから、体験した後に解説文を読むのがとても楽しく、ここで扱われている「属性」について、佐藤雅彦さんが考えていることをもっと知りたいとも思いました。楽しかったです。