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  □これまでの日記一覧

2010-09-28

[][] 「みどりのまきば」2巻/御徒町鳩

みどりのまきば (2) (ウィングス・コミックス)

みどりのまきば (2) (ウィングス・コミックス)

1年以上ぶりの第2巻で完結。とってもよかったです。

みどりのまきば」は、双子の青葉と若葉、優しいまっちんとお調子者の千尋、引率の先生みたいって言われる小鞠、そして保健室登校をしている萩原さんと、転校生龍之介小学生7人の友情物語です。

お話ごとに視点が変わるのですが、この2巻では萩原さんがなぜ保健室登校をしているのか…というお話と、龍之介が少し素直になるまでのお話が中心になっていました。悲しくなりそうな萩原さんのお話最後までやさしいのもよかったし、素直になれなかった龍之介の意地が溶ける過程がとても丁寧に描かれているのにもぐっときた。

この物語に出てくる人はみんな優しくて、でもそれが都合の良い感じにならず、とても自然に描かれている。友だちができるのって嬉しいよなーっていう気持ちでいっぱいになります。

ただ、とても好きな作品だけに、メンバーそれぞれのお話をぐるりと回ったところで終わってしまったのがとても残念。この皆のお話をもっと読みたかった。巻末の番外編も感慨深くて、でもそこに至るまでのエピソードを、やっぱり漫画で読みたかったーって気持ちになってしまったので、いつか続編がありますように…!

表紙がちょっと見づらい(人が多いからかな…)感じもするんですけど、漫画はとても読みやすい絵柄だと思います。いろんな人におすすめしたい。作者の次回作を楽しみにしています。

第1巻感想

http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20090419/p1

[] Metallica@20100925さいたまスーパーアリーナ

メタリカを初めて聴いたのは、2006年サマソニでした。なんとなく「ちょっとメタリカ見てみる」って友だちと別れて1人でマリンスタジアムまで行って、あのライブを見たときの、なんだこのかっこいいバンド…! って興奮は今もよく覚えている。

そのときはまだ1曲も知らなかったんだけど、大音量と手数の多いドラム変拍子って私の好きなものだらけで構成されてて、で、ギターの音がまたすごくかっこよかった。それまでメタルってギターソロが長そうだから好きじゃないかも…とか(聴いたこともないくせに)思ってたんだけど、メタリカは曲の最初っから最後までかっこいいと思ったし、むしろ自分ライブで見たいと思うバンドの理想みたいだった。

それからずっと、またライブに行きたいと思っていたのがやっとかないました。

とてもかっこよかった。聴きたいと思ってた曲はだいたい聴けたし、わりといい席でステージがよく見えたのも嬉しかった。

一番見たかったラーズさんのドラムはきっちりしてるというよりは勢いなのに、全力で叩いたシンバルを、ブレイクで素早くマメに止める仕草が印象的、というか大画面でそのシーンがよく映されていた気がした。あとギターの音がいいなあと思った。パキッとしててきれい。ソロのあとにどーんとくる展開が楽しみでわくわくする。録音と比べるとあまりにも速くて笑っちゃった曲もあったけど、周りのお客さん(メキシコの人の集団に囲まれていた(ギターソロまで歌ってた))と一緒になって大騒ぎできたのも楽しかった。

やっぱり一番うわーいってなったのは「One」から「Master Of Puppets」の流れでしたけども、とにかく私はメタリカ大好きだな…! と思ったし、またライブあったらなんとしても行きたい。

アンコールで「simple three words」っていってあれやるのはお決まりのパターンらしいけど、それも嬉しかったです。なんていったって初めて単独見るんだもんね。

というわけで大満足のライブだったんだけど、でもなんか、帰り道はちょっとさびしい気持ちにもなった。それは楽しみにしてたことが終わっちゃったからとか、どうしようもないことなんだけど、とにかく、また見れたらいいのになーと思いながら帰った。

f:id:ichinics:20100929140511j:image:w200

2010-09-26

[][] 「いちばんここに似合う人」/ミランダ・ジュライ

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)

映画君とボクの虹色の世界」(id:ichinics:20070227:p1)の監督でもある、ミランダ・ジュライ短編集。岸本佐知子さんの訳で出版されるときいて楽しみにしていました。

読んでみてまず思ったのは、映画に描かれた世界と、確かに同じ視線から描かれた物語だなということでした。ぐっとくるところがたくさんあって、好ましく思いつつ、とても息苦しい読書でもあった。

この短編集に描かれる人のほとんどは、自分でも気づかない間に、足場のないところまできてしまっているような感じだった。次の一歩をかけるところが見つからないまま、背後にある壁が、もしくは爪先立ちの足元が、落ちそうではらはらする。

行き先がはっきりしないまま車を運転していると、運転しているという実感がわかないものだ。自動車にはオプションで、一か所で足踏みしていられる機能をつけるべきだと思う。(p151)

この本に出てくるひとたちの共通点は、何かを告白したいのでも、解決したいのでもなく、ただそれが許される状況が欲しいだけ、ということに気付いているところじゃないかなと思う。ほんとうはそんなことに気付くべきじゃないし、気付いてもそれをまじまじと見つめる必要なんてないのに、彼らはそれと向き合い、まずは自動車を足踏みさせたいなどと願うことからはじめてしまう。

特に印象に残った物語は「何も必要としない何か」、「モン・プレジール」そして「子供お話を聞かせる方法」。

どのお話も、それまで続いていたことが「終わる」瞬間で幕を閉じる。しかしそれは妙に清々しい瞬間でもあって、できることなら、このラストシーンの後の彼女たちが、どこか、新しいところにいますようにと思う。

最後八分になった。もしお客が誰も来なければ、私は“やめる”と叫ぼう。これっきり、もうたくさん、帰らせてもらいます、の“やめる”を。(p128)

[][] 「にこたま」2巻/渡辺ペコ

にこたま(2) (モーニング KC)

にこたま(2) (モーニング KC)

1巻を読んだときにもへこんだけど(そのせいか感想書いてなかった)、2巻はそれに輪をかけてへこんだ。そして改めて、これはすごい漫画だなーと思いました。

このお話にはいろんな女の人がでてくる。共通しているのはたぶん、それぞれ「過渡期」にいることじゃないだろうか。というか、いつまで経っても過渡期であることに対する、心構えをする時期、というか。

今回特にぐっと来たのは、「おかあさーん」というモノローグ(p80)とそれに続く数ページ。わけもなく、そう呼びかけたくなるときというのはあって、それはなんで「おかあさん」なんだろうなとしばらく考えたりする。

それから、この巻では、主人公の恋人子ども妊娠した高野さんの視線から描かれるシーンもかなりあって、これがまた、しんどいなーと思いました。巻末の読み切りも良くて、何かに期待する「べき」じゃないとか、ここでは相手の「べき」に従う「べき」なんて、べきに囲まれて身動きとれなくなっていく感じがとても切実だと思った。

様々な登場人物に視点を移しつつ、入り組んだ気持ちの流れを編集してみせるのがとてもうまい漫画だなと思います。

続きがどうなるのか、読むのが怖い気もするけど、渡辺ペコさんならなんとなく、腑に落ちるところまで結末をもっていってくれるような気がしてる。

とりあえずは、これ読んだ友だちとあれこれ感想話してみたいです。

2010-09-22

[][] 「かわいい悪魔」/志村貴子

志村貴子作品集 かわいい悪魔 (Fx COMICS)

志村貴子作品集 かわいい悪魔 (Fx COMICS)

志村貴子さん久々の短編集。とてもよかったです。

表題作は、手品師魔女の「のぞみ」が主人公の前にいろんな形で現れて、とても厳しいお父さんとの関係をとりもとうと手助けしてくれ(たりくれなかったりす)るお話。都合のよい存在ではない、魔女ならではの力の添え加減がとってもよかったです。あと台詞回しがとってもかわいかった!

それから、この本には漫画家が主人公になっているお話も2作収録されていました。

漫画家のひとにとって「漫画を描くお話」というのはきっと、大切なテーマなんだろうなと思う。志村貴子さんが描いた2つのお話は、それぞれ女性男性が主人公で環境も異なるのだけど、伝えたいことのために、「なんとなく」でも「とりあえず」でも、漫画を選ぶというところで共通していて、うまくいえないけど、たまらんなーと思った。

志村貴子さんの短編はとても好きなので、もっと読みたいです。

[] 遠い夜空の向こうまで

朝、つり革につかまったまま、目の前の席に座っている女の子の寝顔をなんとなく見ていた。見かけない制服なので、もしかして寝過ごしているんじゃないのかな、なんて考えながら、そのあまりにも無防備な寝顔に、眠っている人はみんな好きだな、なんてことを思う。

たぶん、人の顔を好きなだけじっと見ることができるのなんて、相手が眠っているときくらいだ。閉じたまぶたの奥はいまここを見ていないから安心だし、それはつまり眠っている人と、起きている私の過ごす時間はまったく別の線上にあるということだ。

眠っている人を見ていると、起きている自分がいないような気分になる。それは心細いようで、でもなんとなく気持ちよくて、

だから眠っている人を見ているのが好きだなと思った。

季節の変わり目は眠いですよね。

2010-09-21

[][] 「大奥」6巻/よしながふみ

まだ6巻ということが意外なくらい、もう長いこと「大奥」を読んでいるような気がします。刊行ペースがゆっくりというのもあるけれど、1冊を読み終わるのに時間がかかるせいでもあると思う。

大奥 第6巻 (ジェッツコミックス)

大奥 第6巻 (ジェッツコミックス)

私は、今までよしながふみの「絵」についてあんまり意識したことがなかったのだけど、今回の綱吉を見てあらためて、自分の絵の魅力をよく知ってる人なんだな、と思った。

この巻での綱吉はすでに年老いている。女性漫画家の作品で、メインの登場人物に皺を描くことは少ないと思うのだけど、綱吉ははっきり「老人」として描かれても綱吉で美しかった。それでいて、決して「美しく」は描かれていない登場人物にも、それぞれの魅力がある。それは、その外見を「目印」のようには扱わず、キャラクターの所作と、表情が丁寧に描かれているからだろう、と思った。

そして、そのひとコマから読み取れることが多いからこそ1ページを読むのに長い時間をかけてしまうのだと思う。

この巻の終盤にはいよいよ吉宗が登場します。1巻で描かれたあの吉宗物語に、どうつながっていくのかとても楽しみです。

[] TGSに行ってきた

今年も行ってきましたー楽しかった!

そもそもそんなにゲームやってないのでなんか気恥ずかしいのですが、TGS はなんとなく、未来!ってかんじがして好きです。うるさいし混んでるし遠いんだけど、わくわくする。

f:id:ichinics:20100922011055j:image:w200 f:id:ichinics:20100922011056j:image:w200

以下覚え書きなので畳みます。

続きを読む

2010-09-16

[] 父さんの富士山

地元の駅がまだ古い駅舎だった頃、改札を通った突き当たりにある窓からは、線路越しに富士山を見ることができた。

晴れた日にはよく、まだ自動ではなかった改札をくぐった先に父の背中を見かけたものだ(駅までは別々に行っていた)。「何してるの」と声をかけたことはたぶんない。家の外では、目が合っても苦笑いで目をそらされるのが常だったし、だからそのまま私は電車に乗って、学校に向かった。父さんが何時頃会社に行っていたのかはわからないけれど、返って来るのはいつも終電間際だったから、あの頃すごく忙しかったのだろうなと今になって思う。

父さんはとにかく富士山が好きで、いつだったか家族旅行に行ったとき、富士山ビデオカメラで数時間、定点撮影していたこともあった。山を。動画でだ。でも誰も突っ込まなかった。父さん富士山好きだしね…というのは家族内で暗黙の了解だった。

父はいつも、ふらっとどこかへ行ったかと思うと、端っこの方で富士山を探していた。

最近富士登山がブームだというので思い出したのだけど、いつだったか父さんに「富士山に登ったことあるの」と訊いたことがある。「頂上とかきれいなんだろうね」なんて言っていたら、かえってきたのはまたしても苦笑いだった。

富士山は見るのが好きなだけで登りたいと思ったことなんてない。登ったら見えないし」と、父さんは言った。「富士山は近くに行かなくても見えるのがいいんだ」とも言っていた。

それを聞いた当時はよくわからないなーと思っていたんだけど、もしかするとあれは、父さんの「一服」みたいなものだったのかなと思う。休憩するのにはなんとなく口実が必要で、そんなとき「富士山見てた」というのは、それがどこからでも見えるという点で便利だし、というのはいかにも父さんらしい。

富士山動画で撮っていたのはきっと、曇っている日用だと思う。

今度富士山中のところを見かけたら、訊いてみようかと思います。

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ところでもうすぐ朝霧ですね。晴れますように。

[][] 麻生みこと新刊2冊

「そこをなんとか」4巻/麻生みこと

そこをなんとか 4 (花とゆめCOMICSスペシャル)

そこをなんとか 4 (花とゆめCOMICSスペシャル)

新米弁護士シリーズの新刊。

今回の事件は「著作権侵害」「示談交渉」「男女雇用機会均等法」の3件。このシリーズを読んでいると、社会のややこしいところに、法律っていうのはうまいこと線をひくものなのだなと思ったりする。もちろん、それだけじゃ仕切れないところもあるというのをきちんと描いていて、面白いです。正直なところ主人公のキャラクターがちょっと苦手な気もするんだけど、でもやっぱりおもしろい。特に主人公の弟がセクハラを受けているのでは…ということからはじまる男女雇用機会均等法の回のラストは、セクハラとは何なのかということをうまくあらわしていたように思った。

路地恋花」2巻/麻生みこと

路地恋花(2) (アフタヌーンKC)

路地恋花(2) (アフタヌーンKC)

職人が集う京都路地舞台にした短編連作シリーズ2巻目。

1巻から引き続き登場している人もいて楽しい。こういう群像ものは大好きです。ただ、「そこをなんとか」と続けて読むと、麻生みことさんは、「自分の考えを譲らないということ」を、山場に持ってくることが多いような気がして少し気になった。いい話なんだけど、おしが強いイメージ。特に短編連作だと、そういったシーンが続くだけで登場人物の印象がかぶってしまうような気がします。

各話後にある「やむおち」コーナーが好き。

ところで、上記2作はそれぞれ出版社が異なるのだけど、発売日が近かったこともあり、帯にお互いの広告が入っていていいなと思った。メロディとgood! アフタヌーンという掲載誌のジャンル違いからか、わりと離れた場所に積んでる書店が多いんだけど、そういうときに帯って店頭ポップみたいな役割するんだなとか改めて思う。

2010-09-13

[][] 「マルドゥック・スクランブル」/冲方丁

冲方丁さんの小説を読むのははじめてなんだけど、これがとっても面白かった!

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)

ある男に「殺された」少女ルーン・バロットが、マルドゥック市の緊急法令マルドゥック・スクランブル〉に基づき、1人と1匹の委任事件担当捜査官に保護されるところからお話が始まります。彼らによって電子機器を操る能力を得たバロットは、共に彼女を殺した男の秘密を探ることになる。

1巻では、バロットの得た能力と、彼女パートナーとなる金色ネズミ、ウフコックの能力描写がとにかく楽しいです。

例えばストレッチで体内の筋肉の動きを探るみたいに、能力キャラクターと一体化していて、読んでいるこちらまで、だんだんとその使い方を覚えていくような気分になる。イメージさせるのがうまい文章だなあと思いました。圧倒的な敵役であるボイルドとの戦いの場面にしても、まるで映像を見ているかのように、滑らかに視線が動いて気持ちがいい。

物語の中盤から、舞台カジノへと移るのですが、ここでの駆け引きはほんと楽しかったなー。特にブラックジャック戦は、かなりのページ数を使って描かれていて、物語バランスとしては多すぎるくらいなのだけど、それがまたこの本の魅力だと思う。肝心なことは、徹底的に描く感じ。

「あるときコンピューターに、人間が喋る言葉を理解させようとして様々な研究が行われた。(略)だが、これがまるでうまくいかなかった。かける言葉がちょっと違うだけで、たちまちバグが発生する。せっかく人間コンピューター言葉を思い出させようとしているのに、他ならぬ人間のほうをバグ扱いしてしまうわけだ(略)」

≪じゃあ、どうやって覚えさせたんですか?≫

(略)

言葉確率さ。それがコンピューターによる言葉の理解だった。バグは生まれない。どんな言葉だって、たちまち応用で覚えてゆく。(略)」

≪私たちは、偶然、喋ってる?≫

(略)

「我々が生きていること自体が偶然なんだ。そんなこと、ちっとも不思議じゃないじゃないか? 偶然とは、神が人間に与えたものの中で最も本質的なものだ。そして我々は、その偶然の中から、自分の根拠を見つける変な生き物だ。必然というやつを」

「The Third Exhaust 排気」p189〜190

カジノでのこのやりとりは、物語全体のテーマでもあると思う。そしてこの会話に含まれるテーマを裏付けるために、あのカジノでのシーンがあったのだとも思った。

けして明るい話ではないのだけど、登場人物たちを信頼できるような気がするのは、このテーマがずっと、繰り返し語られているからなのかもしれない。

かしこ物語の何よりの魅力はといえば、とにかくウフコックのかわいさですよ! 金色半熟卵。煮え切らないウフコック。

ウフコックが魅力的だからこそ、バロットがウフコックを必要とし、信頼されたいと願う気持ちについつられてしまう。祈るような気持ちでページをめくり、ウフコックの言葉にいちいちほっとした。

ほんとうに、とても楽しかったです。

マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)

[] 乗り物酔い

誰かに話したいけど、何を話していいかわからないようなときに、インターネット日記は便利すぎるなと思う。でも、もしこれがなかったら、誰かに電話をしたりするのかというと、それも違うだろうなと思う。

ビッチマグネット」という小説のことがわたしはあまり好きになれなかったけれど、あそこにでてくる『架空物語っていうのは、本当のことを伝えるために嘘をつくことなのだ』という言葉は本当にその通りだと思っていて、だから

そのたったひと言にたどり着くために、長い回り道を必要とすることもあるのだ。

なんて具合に、最近はずっと何かのまわりをぐるぐる回っているようで、そろそろ目も回りそうで、ちょっときもちわるいです。

要するに! とジョッキ片手に勢いよく口を開いたら、簡単なひと言になって出てきそうな気もするんだけど、なにがでてくるかわからないので危ない。

ともかく、日記を書くのは目が回らないよう一時停止するようなものでもあるんだなと思う。

2010-09-07

[][] 「花に染む」1巻/くらもちふさこ

花に染む 1 (クイーンズコミックス)

花に染む 1 (クイーンズコミックス)

「駅から5分」の舞台となった花染町へと続く、番外編のような物語

くらもちふさこさんは、時系列が複雑に絡んだお話をすっきりとうまく描くなあと思った。

「駅から5分」を読みすすめていて、どことないくえみ綾さんの「潔く柔く」と雰囲気が似ている気がしたけれど、この「花に染む」でもそう感じた。お話の内容が似ているというわけではないのだけど、あのくらい長い話になるのではないか、時系列も、視点も、ここにとどまるんじゃなくて広がっていくんじゃないか、…というのはあくまでも個人的な期待なのだけど、そんな風に思いました。

まだ冒頭部分という印象の1巻なので、今後を楽しみにしたいと思います。

また「天然コケッコー」くらい時間の流れる作品が読めたら嬉しいんだけどな。

関連

「駅から5分」の感想

http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20071127/p1

[][] 「引き潮」/いましろたかし

引き潮 (ビームコミックス)

引き潮 (ビームコミックス)

漫画を読んでいると、ある程度「こうなるかな」なんて予想しながらページをめくっていることがあるけれども、この「引き潮」という本は、どのお話を読んでもラストはまったく想像外のところへ放り出されるかんじだった。現実と地続きにあるような説明のつかなさがあって、つい事実小説より奇なりという言葉を思い浮かべてみたくなる。

おちのない話を、ビール片手に聞いてるような感じ。でもけして退屈ではなく、つい前のめりでページをめくってしまうのは、やはり組み立てのうまさなんだろうなと思います。むしろ、読者の予想を予測しながら「そうならなかったこと」を語っているのではないかとすら思う、けど、どうなんだろう。

ハーツ&マインズ」の頃のような切実さとは明らかに違っているのだけど、あの延長線上にこの「引き潮」があるのは確かで、でもそれを簡単に結びつけられない感じも、いましろたかしさんらしいなと思います。

2010-09-06

[] 9月

この週末は、楽しいことと悲しいことと、嬉しい出来事が次々にやってきて、いったいどんな顔をすればいいのかよくわからなくなった。

自分の気持ちを、それが言葉という形にならなくても、なるべくその通りに伝えたいと思うのだけど、そういったことに勇気が必要だと思うようになったのは、一体いつからなのだろうか。

先日、小学生の子どもたちと接する機会があったのだけど、彼らの反応の仕方はなんだかスーパーボールみたいで、こちらが笑えば、ぱっと、安心した顔をしてくれるのがとても嬉しかった。同時に興味を失うのもあっという間で、輪の端からほどけて散り散りになっていく背を見送りつつ、

なるべくその通りに、と思いながらもためらったりするようになってしまったのは、たぶん反応をする前に、相手がどう感じるだろうかということを、くよくよと考えてしまうからなんだろうなと思った。

でも、どんなに頭で考えてみても、実際目の前に立ってみなければ、伝わるかどうかはわからない。そのことに気付くたび、言葉がどのような意味をもつかはほとんど、目の前にいる人次第なのかもしれないなと思う。

月曜日、いろいろと覚悟していたつもりだったけど、久しぶりに母の顔を見て、自分の方が助けられた気分になってしまった。

挨拶をすませて、庭に出る。ししとうの上に青虫を見つける。大きなカラスアゲハが目の前を横切り、覗き込んだ葉の裏には蝉の抜け殻が並んでいる。古い物干を使って作った鳥小屋を見つけ、この家で過ごしたいくつもの夏休みを思い出す。

f:id:ichinics:20100907223604j:image:w200

そういったことを、忘れないでおきたいなと思った。

2010-09-01

[][] 「ウイちゃんがみえるもの」/衿沢世衣子

ウイちゃんがみえるもの

ウイちゃんがみえるもの

日常のあちこちに現れる「へんなの」がいろいろ見える女の子、ウイちゃんのお話。とてもよかったです。

ぼんやりしててちょっと人見知りなウイちゃんのキャラクターも、ウイちゃんの身の回りの人もいい感じ。

ウイちゃんに見えているもの、は人に近いものなのかなあと思う。物に気持ちが宿るような、って、そうじゃないっぽいものもあるけれど、よく人に使われている「もの」たちの主張とかも面白かった。

この漫画はフルカラーなのですが、ぐっとくる風景がいくつもあって、楽しい

もちろん大人が読んでも面白いのですが、ウイちゃんと同世代の子どもが読んでも楽しいんじゃないかなあと思う、絵本のような漫画でした。

もっと続きが読みたいな。

[] 8月31日

高校生の頃、夏休み合宿中につかっていた講堂にはマウンテンデューがあった。アンバサもあった。懐かしい! めずらしい! なんて大騒ぎして、「明日はアンバサ飲む」「じゃあわたしマウンテンデュー」とか言いながら、土ぼこりの舞う畑沿いの道を歩く皆の背中を少し後ろから見ているとき、自分はここにいていいんだろうかとか、そんなことを考えたりした。このままいきなりフィルムが切れて暗転して、眼が覚めるんじゃないか、とか、「あーしたはまず8時に起きてー」なんて歌いながら、少し気が遠くなる。

高校生の頃っていうのは、そんな風に、今がいつまでも続くわけじゃないということを、意識することがとても多かったような気がする。「卒業」はすぐそこにあって、でもまったく想像できなかった。

合宿最後の日、「じゃあまたね」といって皆が降りていった後の電車で、何度か手を握って、開く。

窓の外は夕焼けだったりして、おなかもすいていたりして、そろそろ自分の降りる駅に近づくとき、そんなことを思い出したりして、よし、と思う。

f:id:ichinics:20100816231008j:image