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  □これまでの日記一覧

2011-04-30

[][] 「ミラーボール・フラッシング・マジック」/ヤマシタトモコ

ミラーボール・フラッシング・マジック (Feelコミックス)

ミラーボール・フラッシング・マジック (Feelコミックス)

最近ヤマシタトモコさんは、出す本どれもぐっと来るのですごいです。最近の、というか過去のBL作品読んでてもやっぱりぐっとくるんだけど、その理由はすぱっと言い切れるものでもない。ただ、自分の中の、ずっと気になってるけどうまくやれなくて助走ばっかりしている部分を見るような台詞が1冊に1つは必ずあって、でもそれだけじゃない、ってところが好きなんだろうなって思います。

最終話「エボニーオリーブ」の女の子3人話とか、3人それぞれの言葉にそうだねって思うことがあり、もしかしたら誰でも自分の中に3人くらいいるものなのかもなー、と思う。

こんな風に、女の人が3人で会話してるシーンって、女性が主人公の漫画にはよく登場するけれども、ヤマシタトモコさんの作品のクリティカルヒット率はすごいです。

自分の中で近いところにあるのが雁須磨子さんなんだけど(「かよちゃんの荷物」にも似たようなシーンがある)、雁さんの作品とは全然、雰囲気が違うのも面白い

[][] 「なにかもちがってますか」1巻/鬼頭莫宏

なにかもちがってますか(1) (アフタヌーンKC)

なにかもちがってますか(1) (アフタヌーンKC)

主人公は目立つ存在ではないものの、穏やかに学校生活を送っていた中学3年生。しかし彼には物質を小さく切り取って移動させるという超能力があった。そしてその能力転校生に見破られて、どんどん取り返しのつかないことに巻き込まれていく…というお話です。軽いようで、視界の端で何かがじわじわ進行しているような、いやーな感じが鬼頭さんらしい。

終盤の展開から、もしかしたら、デスノート夜神月自分の意志ではなくデスノートを使ったら…というお話になるのかなと感じたりもしました。続きが楽しみです。

タイトルが気になるけどこれは小さく移動させてしまうという能力を現したものなんだろうな。

[] 「っぱ」

週末は友だちとご飯。駅で待ち合わせをしていたのだけど、友人は仕事が終わらず、予約していた店でしばらく1人で飲むことになった。

連休前ということもあって店内は混雑している。両隣は女性二人組みで、奥の席には団体さん、カウンターには何組かカップルがいて、わたしはテーブル席でひとり、日本酒片手に、文庫本の中と、その場の気まずさを行き来していた。「きつねのはなし」を読んでいたせいか、何かにだまされてここにいるような気分になる。外には竹やぶが広がっていて、時折ざあっという風の音が聴こえた。

おかげで友人が到着する頃には少々酔っていたけれど、ご飯はおいしく、積もる話もあって、時間はあっという間にすぎた。

近頃会う人それぞれ「久しぶり」に感じるのは、地震を境に時間の流れ方が少し変わった気がするからかもね、という話をする。ゆっくりとかはやいとかじゃなくて、コマ落としみたいな感じ。でもなんか、何か忘れてるようで、落ち着かない。

帰り道、なんだかすごくのどがかわいて、ペットボトルカルピスウォーターを一気に飲んでしまった。お腹がちゃぽちゃぽだ、と頭の中で言い、なんでちゃぽちゃぽなんだろうなと思う。お腹一杯、と、水飲みすぎてお腹一杯を、言い分ける方法ないのかな、とか、思いつつ眠り、翌朝ようやく「水腹」という言葉を思い出した。

実際に口に出して使ったことはない気がする言葉だけど、これから使っていきたいと思う。水腹。みずはらよりみずっぱら、って言いたくなるのはなんでだろう。

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2011-04-24

[][] 最近読んだ漫画

「めくりめくる」1巻/拓

めくりめくる 1巻 (ガムコミックスプラス)

めくりめくる 1巻 (ガムコミックスプラス)

倉敷舞台にした連作短編集。絵柄も好みで楽しくよみました。ただせっかく舞台がよくて絵もうまいのに、あんまりその場所ならではと感じられるシーンが少ないのは残念だった。神社が出てくるシーンは、瀬戸内海の方だなって感じがしたけど、ラスト学校をさぼるお話とか、もっとあちこち行くのがみたかったなーとか思ってしまいました。でもまだ1巻とのことなので続きに期待したいです。

ところで、その場所が印象に残る漫画、でぱっと思いつくのは「ラヴァーズキス」くらいなんだけど他になんかあったかな。

「にがくてあまい」1巻/小林ユミヲ

にがくてあまい(1) (エデンコミックス)

にがくてあまい(1) (エデンコミックス)

最近本屋さんに食べ物漫画コーナーができていて、そこで知った作品。面白いです。

野菜嫌いのOLと、ゲイベジタリアン美術教師が出会い、お互いの利害関係が一致して同居することになるところからはじまるお話。主人公2人のやりとりが面白いし、料理する人がベジタリアンということで、食べたことのない料理ばっかりでてくるところも楽しいです。主人公のリアクションがよくて、どんなものか食べてみたくなる。

ストーリーの中で細かい説明はせずに、巻末にちゃんとレシピがのっているところも気が利いてるなと思った。材料あつめるのが少し面倒そうだけど、雑穀スープとか、イチゴにかけていた甘酒クリームとか作ってみたいです。

「C scene」/武富智

C SCENE (武富智短編集) (愛蔵版コミックス)

C SCENE (武富智短編集) (愛蔵版コミックス)

武富智さんの短編集。AとBはかなり前に読んだ気がするんだけど、新刊のとこにこのCがあったのでつい買ってしまいました。全体的に感情表現が大きくて(熱い、ってのともちょっと違う)、実はちょっと苦手なんですが、読めば面白いなーと思うことが多い作家さんです。この本ではバイオリンの得意な男の子お話と、奥さんの遺したノートお話がよかった。

巻末の広告を見て、キャラメラは読んだ方がいいって友達おすすめされてたのを思い出したので読みたい。

[] 虹、塩麹、れんげ

右の道から行くか、左の道から行こうか、少し立ち止まって考えていたときに、自転車で目の前を通り過ぎた女の子が「あー!」っと叫んで、そちらをみると大きな虹がかかっていた。つられてわたしも虹の方向に向かって歩き始め、写真を撮りつつ、全体が見渡せるとこまで行きたいなと思いしばらく歩いてみたものの、次第に虹は薄まっていってしまった。

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からtwitterを見ると、同じ時刻にたくさんの虹写真があがっていたようで、この日(id:ichinics:20090721:p1)のことを思い出したりした。

近くに住んでいる友人におすそわけしていただいた塩麹がとてもおいしい。湯通しした青菜に合えたのと、鶏肉を漬け込んだものと、この記事(http://portal.nifty.com/2011/03/28/c/)にのってたバケットのせを作ってみたのだけど、特に鶏肉はまぶして2日置いて焼くだけで、まるでスモークチキンのようなうまみがあって香ばしく、思わず皿を持って誰かに食べてもらいに行きたくなるようなおいしさだった。いままで食べたことのない、おいしいものに出会うのは楽しい

つい一昨日にはコートクリーニングに出したことを悔やむような寒さだったのに、日曜は雨上がりの晴天。半そでの人をたくさんみかけた。大根花、花ニラ、ひめおどりこ草、はこべ、ぺんぺん草、など見慣れた草花が今年もちゃんと咲いているのを見かけるとほっとする。ほっとするのは、自然環境が…とかいうことではなくて、それが私の知っている定番の「春」だからなのかなとか思う。

近所のたんぼはいつの間にかれんげ畑になっていて、しばらくしゃがみこんで写真を撮った。立ち上がって振り返ると、先ほどまでの自分と同じ姿勢でれんげの蜜を吸ってる小さな男の子たちがいた。

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[] 魔法少女まどか☆マギカ

とうとう最終回が放送され、自分の見てるTLでもいろんな人がその話をしていたので、あらためてとても人気のあったアニメなんだなーと思いました。

私もとても楽しみに見ていたのですが、何を言っても未見の人にはネタバレになるようなお話なので、感想はここにメモしておこうかなと思います。

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2011-04-21

[][] 竜の学校は山の上/九井諒子

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

とっても読み応えのある短編集。面白かったです!

冒頭の勇者シリーズは、RPGゲームや童話を元ネタにしたようなお話が中心。少しわかりづらいところもあって、いまひとつ乗り切れなかったのですが、馬人(ケンタウロス)と猿人(ヒト)が共存する世界を描いた「現代神話」がとにかくかわいくて面白くて、一気に好きになってしまいました。

馬人はとにかく働くのが好きで生後三週間から歩いてて、それは猿人からみると脅威でもあるのだけど、でもお互いにいいところがあってね、ってところに着地するまでの過程がとてもいとおしい。

他にも、羽が生えている同級生のお話とか、竜が実在する世界の大学の日常とか、昔話、神話、民話、童話、ファンタジーに近いような、すこし不思議な設定の中で、ごく身近なお話を描いているところが魅力です。

特に馬人シリーズはもっと読みたいなと思った。馬人奥さんのトナカイコスプレで大笑いしてしまいました。ほんとかわいい。

[] 近くて遠い

ちょうど1年ぶりくらいにCD屋時代の友人と会った。最近の出来事をあれこれ話しながら、韓国のりで包んだチーズとかチーズだらけで生地が見えないピザとかパッサパサのピラフとか、なんとも微妙なおつまみを食べつつ、ビールを飲んだ。

大学生の頃、仲のよい先輩たちが「長い付き合いすぎてもう話すことがない」「お互い予想のつくことしか言わないし」などと言い合っていたのを見て、私もいつかそういうことを言うのだろうか、と考えたのをたまに思い出すのだけど、

まだ、相変わらずだと思えるのは嬉しいなと思いながら手を振った。

その先輩のことを思い出したのが久しぶりだったので、帰り道に思いついて iPhone の検索窓に名前を入れた。結果に表示された、その珍しい名前で登録されている facebook を開く。

でもすぐに後悔した。そこには数年ぶりの先輩の顔写真があって、とても愉快な感じで、その表情を懐かしく思うと同時に、自分がこの先輩と会うことはもうないんだろうな、とも思ったからだ。会いたくないとかではなく、ただ、単純に接点がなくなってしまっただけなのだけど、例えばこういったページを見つけたことをきっかけに、メールをしてみようと思う気軽さはないことも確かだった。

でも、例えば道でばったり会ったなら、私は声をかけるんだろうか。

真っ暗な中を走る井の頭線は宙に浮いているみたいだ。最寄り駅に着く頃にはすっかり酔いもさめて、すれ違う人の顔がいつもよりよく見える気がした。

はやく、春になればいいなと思う。

2011-04-20

[][] 最近読んだ漫画

「ヴォイニッチホテル」1巻/道満清明

ヴォイニッチホテル 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

ヴォイニッチホテル 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

なかなか読んだっていいづらい作品が多いですけど、これは別に言ってもいいんじゃないかって気がしました。ていうのはおいといても面白かったです。南国でミステリーでちょっとSFで不条理。むちゃくちゃな展開のようでいて構成が細かくキャラクターの印象ががらっと変わって見えたりするのも面白い

あとはなんといっても女の子がかわいいのがいいですね。続きも買います。

「ジャンキンギャップクラッシュ」1巻/小林じんこ

JUNKIN' GAP CLASH 1 (IKKI COMIX)

JUNKIN' GAP CLASH 1 (IKKI COMIX)

子どもの頃に見た戦隊シリーズエコレンジャー」をきっかけに、全身タイツに欲情してしまうようになった主人公のお話全身タイツかー、と思いながら読み始めましたが、その魅力については主人公がたくさん説明してくれるのでなんとなくわかったような気持ちになります。登場人物がみんなちょっとずつ変態なのがいいですね。

小林じんこさんの描く女の子は強い感じがして好きだなあ。

「恋するサバンナ」/山崎童々

恋するサバンナ (Feelコミックス)

恋するサバンナ (Feelコミックス)

初めて知った漫画家さんで、帯に「ヤマシタトモコ推薦!!」って書いてあったのにつられて買いました。

オフィス恋愛もの、っていうのがあらかじめ見えてしまうところが少し残念だったけど、キャラクターの会話は生き生きしてて楽しかったです。ただ最近大判コミックあんまり読んでなかったからか、ちょっとコマが大きく感じたりもした。

[] 理想ポテトチップ

例えば、自分の好きなポテトチップスを作れる権がもらえたならどんなのを作ろうかなーってよく考える。

形状は今のところ厚切りとギザギザカルビー限定)のどちらがいいのかで迷っていて、厚切りだったら暑さ1ミリくらいの堅すぎず柔らかすぎず、セブンで売ってたヤマヨシの厚切りポテト(id:ichinics:20091220:p2)くらい、ギザギザなら断然カルビーのアラポテトタイプ。

味は、厚切りの場合、芋感を生かしてまずは塩味かなと思うけど、ギザギザだったら味がつきやすい(たぶん)ところを生かしたいし、好きな味はコンソメかバターしょうゆかのりしおだけど、せっかくだったら食べたことのない味を作りたい気もする。それだったらこがし醤油とか、ポン酢とか、マスタードや岩塩とかもいいなあ。でも、どんな味でも、味といっしょにじゃがいも食べてる感じがするのが大事だよね。そしてポテトチップスなんだから歯ごたえがよく香ばしいのがいい。むしろちょっと焦げてるくらいがいいよね…!

なんて具合に、ポテトチップスのことを考えてると元気がでるので楽しいです。形状+味だけでも選んで作れるポテトチップ通販がほんとにあったらいいのになー。

2011-04-19

[][] 谷川史子新刊2冊

同時発売だった2冊。どちらもとてもよかったです。

谷川史子さんの作品は小学生くらいの頃から読んでいるけれど、描かれる主人公たちの年齢の幅も徐々に広がっていってる珍しい作家さんのような気がする。少女漫画誌から女性誌へと一気に移る人や、ずっと中高生お話を描き続けているひとというのは多いけれど、谷川さんみたいな人はほかに、とりあえず今は思いつかないな。

「他人暮らし

習字先生をしている純花のところに、友人2人(OLと進行旅行から逃げてきたばかりの花嫁)が転がり込んでくるところから始まる、3人それぞれの視点から描かれる友情(?)物語

そうはうまくいかない、って今は思ったりもするけれど、いつもすこし明るい方向を向いて終わるところが好きだ。

他人暮らし (クイーンズコミックス)

他人暮らし (クイーンズコミックス)

吐息稲妻

「他人暮らし」が働いてる女性を主人公にしたお話ばかりだったのに対して、この「吐息稲妻」に収録されている物語は登場人物の年齢層も幅広い、谷川史子さんの得意技のような短編集。特に幼なじみお話2作品は、短いお話の中に時間を詰め込むのがうまいなあーと思う作品だった。

特によかったのは表題作のラストシーン。少し時間を巻きもどすところにぐっときました。

吐息と稲妻 (りぼんマスコットコミックス)

吐息と稲妻 (りぼんマスコットコミックス)

[] 無害な非真実

先日、たまたま用があって地震の日の夜歩いた道を通りかかったとき、普段は方向音痴で、一度しか通ったことのない道なんてすぐに忘れてしま自分が、その風景をわりと鮮明に覚えていることに気がついた。あそこの喫茶店で休憩した、とか、大通り沿いの小さな美容院に「トイレお貸しします」って張り紙があったこととか。曇り空の下の今とあの夜道が同時に流れ、時間の縦横が入れ替わったような気持ちになる。

ここ最近、何度か、自分の好きなあるものが「役に立たない」と言われているのを、読んだり聞いたりした。そういう時に思い浮かべたことのひとつが、ヴォネガットの「猫のゆりかご」序文にある文章のことだ。

フォーマ(無害な非真実)」を生きるよるべとしなさい。それはあなたを、勇敢で、親切で、健康で、幸福人間にする」(p4)

原語ではどう書いてあるのか知らないけれど、「無害な非真実」とはどんなものなのだろうか。物語の中では、それこそが「ボコノン教」という架空宗教なのだけど、

もしも自分を「勇敢で、親切で、健康で、幸福」にするよるべとなるものがあるとするなら、と考えてみると、それは真実でも非真実でもどちらでもいいようなことなんじゃないかと思う。

ときどき、10年後の自分今日自分を見ているところを想像する。同じように、日差しの加減や空気のにおいがスイッチとなって、10年前の自分をのぞいているような気持ちになることもある。

どちらもたまの晴れ間みたいに気持ちのよい瞬間で、その視線はわたしの「無害な非真実」のひとつなんじゃないかと思う。

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2011-04-13

[][] 「ざらざら」/川上弘美

少し前に読んでとても気に入った「パスタマシーンの幽霊*1と同じく(たぶんそれより前に)雑誌「クウネル」に掲載された掌編を中心とした作品集。「パスタマシーンの幽霊」よりは、じゃっかん、テーマが偏っているし、ひとつひとつお話も短いです。鞄の中に入れておいて、毎日ちょっとずつ読むのにぴったりな本だったと思う。

ざらざら (新潮文庫)

ざらざら (新潮文庫)

本の中には、いろんなことを考えながら暮らしている、いろんな人がいて、ここで切り取られた瞬間より前にも後にも、続いていつづけているような手触りがある。

例えば、生姜がうまく刻めたとか、煮物に失敗したとか、喫茶店に寄ろうとして寄らなかったとか、風邪をひいたとか。毎日の中で、手を握ったり、開いたりする、その瞬間の前後にも私はいるみたいに。

「パスタマシーンの幽霊」にも登場する“杏子”のお話もあった。切ないお話だったけれど、私はその後の彼女お話を知っているんだよな、と思いながら読むのは、なんだか不思議でよかった。

[][] 英国王のスピーチ

2月くらいに見ました。予告を見てぐっときて見に行ったのだけど、見せ場は予告でほとんど見せてしまってるんじゃないか…と思いました。でも面白かったです。

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見ながら思い出していたのは小学校の同級生の古川仮名)君のことでした。古川君はこの映画の主人公と同じく人前で話すのが苦手な子だったんですけども、例えば隣の席で、授業中に小声で話したりするぶんには言葉に詰まるようなこともなかった気がします。

彼はサッカーがとてもうまく、男女問わず学校内の人気者でした。確か私たちが大学生になった頃、ある有名なスポーツクラブに入った、という話を聞いたときには、サッカー上手かったもんねえと話し合い、元同級生として誇らしいような嬉しいような気持ちになったものです。

放課後教室で、サッカー部男の子たちが靴下の中にサポーターを入れている様子を今でもよく覚えています。足が少し太く見えるのがかっこよくて、私も運動が得意だったらなーというようなことを、私は古川君に言ったことがあります。

古川君は口をちょっと曲げて笑い、何も言わずに教室を出て行きました。古川君のことを思い出すときに、まず浮かぶのはその表情です。

私は、この映画コリン・ファースが演じる主人公を見て初めて、もしかしたら古川君も吃音で悩んでいたことがあるのかもしれないということに思い当たりました。今となってはわかりません。

ただ、その人が魅力的であることと、その人の悩みを解くことはまた別のものなんだろうなと思うし、この映画でも当然ながら、そこは別物として描かれていたと思います。

2011-04-08

[][] 「PK」/伊坂幸太郎群像201105号)

twitterモーニング編集部の方が感想を書かれているのを読んで*1、買って読みました。読んでよかった。

群像 2011年 05月号 [雑誌]

群像 2011年 05月号 [雑誌]

伊坂幸太郎さんは、出版されているもの全てではないものの、自分が新刊を追いかけている数少ない作家のひとりだし、たぶんとても好きなんだと思う。

でも、好きと言い切るのもちょっと違う気がするのは、正直にいって、たぶん『フィッシュストーリー』くらいからの作品は、好きな作品、というわけではないからだ。『オー!ファーザー』のあとがきには『ゴールデンスランパー』からが第二部、とあったけれど、個人的には『終末のフール』が区切りだったような気がしていて、それは『終末のフール』までの作品は確かに好きだったからでもある。

ただ、そんなことを言いつつも新作を手にとるのは、伊坂幸太郎さんの小説にある誠実さを、自分勝手に信頼しているからだと思う。

まったく異なるお話を書いていても、その作品には書かれた時期を通じて、何度も繰り返し描かれるテーマがある。それに簡単に結論をつけるのではなく、作者自身が考え続けていることが作品を通して伝わってくる。そのことを私は心強く思うし、1つの作品だけでなく、作品を続けて読みたいと思う理由にもなっている。

そしてこの「PK」はそのテーマひとつに、ある決着をつけたお話だ、と感じました。

物語は3つの時間軸を行き来しながら描かれる“勇気とはなにか”という物語だ。読みながらまず思い浮かべたのは『魔王』に同時収録されていた「呼吸」のラストシーン*2だった。そこで描かれていた“圧倒的なものに流されるのではなく、自分の中の倫理を信じて行動することについて”主人公が語る場面に、私はえらく感銘を受けたのだけど、

この「PK」で、登場人物のひとりである小説家が抱えている不安は、その倫理を信じることの難しさについてでもあった。

彼が心配しているのは、ミサイルが落ちて物理的な被害が出ることや、大地震によって家や財産を失うことではなかった。もちろんそのことも恐ろしかったが、それ以上に、社会の秩序が失われることが、守ってきた法律道徳が、実は張りぼてに過ぎない、と露になることが、恐かった。

この小説は、3月11日地震より前に書かれたものというのは読む前に知っていた。しかし、私はこの部分を読んで自分3月末に考えて、日記に書いた「ひとはおおむね、相手に信頼されようと振舞うことを自分は前提にしていたい」*3ということはこのような不安からきたものだったのかもしれない、と思った。思ってちょっとぞっとした。

それでこの物語がどうなるか、というのは書かないけれど、私は作者がいまだにこの問題について考え続けているということを心強く感じたし、やっぱりこれから伊坂幸太郎さんの小説を読みたい、と思った。

…というテーマについての話を抜きにしても、3つの時間軸を行き来しながらラストそれが実を結ぶ構成伊坂幸太郎小説ならではの鮮やかさだったし、小説としてもとても面白く読みました。

この短編を、今読んでよかったなと思います

特に気に入った台詞を以下にメモするけれど、ここは大事なので畳んでおきます

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[][] 最近読んだ漫画

感想書いてない漫画山が高くなってきたので。

花のズボラ飯」/水沢悦子

花のズボラ飯

花のズボラ飯

TLで話題になってて気になって買いました。ズボラグルメ漫画。主人公が食べ物をひたすらおいしそうに食べるところがいいなと思いました。ズボラ飯のラインナップはわりと想像のつくものだなとおも思いました。ただ、どこか読んでて後ろめたい気もする漫画でした。

「エスニシティゼロワン」1巻/多田乃伸明

「70億の針」の人の新作。面白かったです。近未来管理社会ものSFで、機械的に人口が調整されている街「センソラム」に暮らす少女が、その周辺にある「空白地帯」にも人が暮らしていると知るまでがこの1巻。続きがとても楽しみです。

「繕い裁つ人」1巻/池辺葵

繕い裁つ人(1) (KCデラックス)

繕い裁つ人(1) (KCデラックス)

表紙買い。ある洋裁店を舞台にしたお話洋裁店の二代目である主人公のところへ、彼女の作る洋服にほれ込んだ百貨店男性が通いつめている様子をきっかけにお話がはじまります。そのやりとりから彼女がどのようにお客さんと洋服に関わっているかが明らかになっていく展開がとても丁寧でいいなと思いました。『路地恋花』のようなお話好きな人に特におすすめしたいです。

2011-04-07

[] 桜

そろそろなんじゃないかなと思い、昼休みに武道館前まで散歩しに行った。

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道を挟んで靖国神社側と武道館側、どちらに行くか迷ったけれど、武道館側の方がもこもこしていたのでそちらに行くことにする。

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スーツ姿で手ぶらで歩いているひとも、旅行鞄を転がしている人も、おじいさんもおばあさんも、入学式帰りらしき親子も、少し顔をほころばせた人の流れがゆるやかに淀み、桜を見上げていた。

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そういえば去年の今頃も桜は咲いてたな、というのを、ここで見たライブのことと一緒に思い出す。大根花、菜の花も咲いている。確かに春だなと思う。

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開きたての花びらはピンとしていて、こんな風に、満開の瞬間を見るのは久しぶりだと思った。

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2011-04-04

[][] わたしを離さないで

監督:マーク・ロマネク

好きというのに加えて、個人的に大切に思う作品というのがあるけれど、この映画原作小説も個人的にはそういった、特別な物語ひとつです。この映画も、海外版のトレイラーを見たときからずっと楽しみにしていました。

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映画を見る前、ロビー原作者インタビュー記事をちらっと読んで、そこには「原作とは異なるものを撮ってほしい」というようなことが書いてあったのだけど、私がこの映画を見てまず思ったのは、小説を読みながら抱いていたイメージに、焦点をあわせるような映画だった、ということでした。だから原作を読んでいない人がこの映画をみてどう思うのかはよくわからないのだけど、特にヘイルシャム時代の学校の様子、子ども時代と大人時代それぞれのキャスティング納屋のシーン、何より映画全体の色合いに、私は小説のページをめくるときのまぶしさを思い出したし、いまは早く原作を読み返したくなっている。

特にぐっときたのはキャシー役のキャリー・マリガンでした。彼女存在が、この物語の肝心な部分でもある「設定」を生きるということの、あきらめでもなくかといって抵抗がないわけではないという繊細な立ち居地に説得力をもたせていたと思うし、そのことが、映画化に際して変更が加えられた部分(映画ラブストーリーが主軸になっていたと思う)と原作をうまく繋いでいた。

ただ、その「設定」について、小説を読んでいたときは感じなかった腑に落ちなさを感じたりもして、それは小説映画という「場」の違いによるものなのかもしれないなと思いました。

あと個人的には衣装もとても気に入りました。キャシーの服装はとても好みだったし、大人になってからトミーのあの首元の少しだらしない感じなどはイメージにぴったりだった。

個人的に、原作の中でもっとも好きな場面であるトミーの回想については、映画で描かれていない。でもこの映画があまりにも自分イメージに近かったことで、むしろそこはイメージのままとっておくことができて、よかったとも思いました。

[] 魔法瓶

魔法瓶にコーヒーをいれて、散歩に出る。数か月前、閉店セールをやっていた雑貨店で買った緑色魔法瓶魔法瓶、って名前はなんだか大げさでいい。歩くたびに腰に当たるかばんごしの重みを感じつつ、特にあてもなく咲いた花などに釣られて歩いていると、ゆるやかな坂をのぼりきった先に小さな公園をみつけた。けやきだろうか、大きな木があって、その脇で濃さの異なるピンク色のジャケットを着た女の子が2人、自転車にまたがったままなにやら思いつめた顔で話をしている。

ベンチに腰を下ろし、文庫本を開く。コーヒーはすこし薄かった。行間を漂う昼間の明るさに反して、すぐに手元が暗くなる。

顔を上げると夕焼けの中にいくつかの灯りが沈んでいて、あそこに人がいるんだということがすこし不思議に感じられた。ピンク色の女の子たちはもういない。ざあっと吹く風がにせかされ公園をあとにしながら、どうしてこんなとこにきたんだっけな、と思う。

どうして、という言葉に続いて思い起こされることのひとつひとつはありふれていて、残るものはいつもほんの少しだ。それはなんでだっけ、なんででもない、そうだから、そうだ。

家に帰ってから、あまったコーヒーを飲みつつ、本の続きを読んだ。誰かに見下ろされているような気持ちで、灯りをつけて、昼間の物語を読んだ。魔法瓶の中のコーヒーはまだあたたかくて、魔法みたいだなと思う。

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