「それでも町は廻っている」9巻/石黒正数

それでも町は廻っている 9 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 9 (ヤングキングコミックス)

新刊面白かったです!
レギュラーの登場人物を中心にした1話完結ものというスタイルはかわっていないのに、いろんなジャンルの短編集のように読めたりもするところがとても楽しいシリーズだと思います。
特にこの9巻に収録されている、“べちこ焼き”というお菓子を追い求める男性と静さんのお話「大人買い計画」(70話)は大好物でした。ミステリーから幻想文学になってSFで締める。星新一さんのショートショートを思わせる贅沢な短編でした。
それから、1枚の写真をもとに、嘘つきな友人と見えない10人の霊が見える設定で話すお話も面白かったな。コメディなのにほんとにちょっとうわーってなるのが楽しい。自分もこれやりたいです。

 「BUTTER!!!」3巻/ヤマシタトモコ

げっつと掛井くんのお話が中心の3巻。
以下内容に触れてしまいますので未読の人はとばしてください。

BUTTER!!!(3) (アフタヌーンKC)

BUTTER!!!(3) (アフタヌーンKC)

ダンス部員の中で最もバランス感覚がよく、愛想もよいひとに見える掛井くんが、ことなかれ主義であることを突っ込まれるという展開にはかなりぐっときました。
表面的にわりとうまくやれていれば、そういうことをわざわざ突っ込まれる機会っていうのはなかなかないと思う。しかし、げっつは「友だちにうまくやるなんてないよ」と言う。以前、怒るということは相手に何かを期待するということだと思う、ということを書いたことがあるけれど(id:ichinics:20070106:p3)
「怒る」とはちょっと違うものの、つまり掛井くんは期待されているのだと思った。
部活というものを間においているからこそ、思っていることを言って欲しいという気持ちをぶつけやすいのかなとも思うんだけど、学生のうちにこんな風に、踏み込むことへのためらいを言葉にして気づく機会があるというのはうらやましいなと思ってしまった。
そして掛井くんはわりとあっさりそこを踏み越えてる(ように見えるのも)ちょっとずるい。

一通り新入部員のお話がおわったところで、次の巻はどうなるんでしょうか。とても楽しみです。

 どこでもドアの向こう側

どこでもドアが恐ろしいというまとめが面白かったです。

あれは体そのものがワープしてるわけじゃなくてドアをくぐるとき
記憶から何から全てデータを取り出現場所に再構成している仕組みらしい
http://chaos2ch.com/archives/3014201.html

自分の中で「どこでもドア」は、ドラえもんの道具の中でもあったらいいなと思う道具ナンバーワンなんだけど、空間に穴を開けるみたいなイメージだったので、その発想はなかったなーと思った。
仮にどこでもドアがこのようなものだったとして、とりあえず、なんか問題あるかなーと考えてみる。
自分が使う分には、問題ないような気がする。
もしも故障したらと思うと恐いけれど、あちら側の視点に引き継がれた時点で、こちら側の自分がオフになるのなら、特に恐いとは思わないような、気がする。
考えてみれば、どこでもドアをくぐってあちら側にいった自分の残骸みたいなものは、じつはあちこちに残っているのかもしれない。例えば、その残骸に触れるたびに、すっかり忘れていたことを突然思い出したりする、とか。その残骸と自分が繋がっている証拠はどこにもないけれど、ただ思い出すことで、今にやって来るんじゃないかなと思う。

ただ、身近な人がどこでもドアをくぐるとき、上に引用した設定を知っていたら、自分は止めたくなるような気もしていて、
それは、自分に関しては連続していることを(実際は連続していないとしても)感じることができるけれど、他人の連続についてはわからないから、のような気がするけれど、それはどこでもドアがあってもなくても同じなはずで、じゃあ私たちはどうやって昨日のあの人を今日のこの人とつなげているのか、それは「記憶」だけじゃないはず、というのが「あなたのための物語」に書いてあったような気がしているんだけど、まだいまいちピンときていません。
どこでもドアあったらいいな。