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  □これまでの日記一覧

2012-06-23

[][] 「乱と灰色の世界」1〜3巻/入江亜季

乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)

乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)

すごく楽しかった!

入江亜季さんの漫画は好きなのに、なんでこれを今まで読んでなかったのかというと、「Fellows!総集編」*1で冒頭を読んで、ちょっと主人公が苦手だなと思ってしまったからだったなというのを思い出しました。それは例えば、「となりのトトロ」でサツキ感情移入してしまうばっかりにメイが苦手…みたいなものなのですが、ちゃんと読んでみたらそれも些細なことで、とても楽しく読めました。

そして、これは入江さんの「魔法少女漫画」だったんだってことに、1話の段階じゃ気づけなかったんですね。そしてクリィミーマミで育った自分魔法少女ものを嫌いなわけがなかった。

乱と灰色の世界」はスニーカーを履くと大人に変身できる女の子と狼に変身できるその兄、さらに母親と父親という魔法の使える家族お話

どんな魔法が使えるのかについては、まだ特に詳しい説明はされていないのだけど、どうやら女性は「魔法」が使え、男性動物に変化することができる力を持っている(と同時にその動物特有の能力も得られる?)ようです。

乱たちの暮らす町に住む人々は、たぶん魔法は使えない(見た事もない?)のだけど、乱たちが魔法が使えるとバレないように気をつけるというシーンはあんまりなく、秘密にしつつもあっけらかんと派手な魔法を使います。そしてその魔法がどれも楽しいのがいい。

役に立つとかたたないとかじゃない、こんな魔法があったらすてきだなーっていう魔法を絵にしてみせてくれている気がします。

例えば乱が偶然出会った男性、鳳太郎の部屋で壁に木の絵を書いたら、鳥が沢山集まってくるシーンとか、ほんとにかわいくてたまらなかったな。

様々な恋模様も絡んできて今後がより楽しみです。楽しかった!

乱と灰色の世界 3巻 (ビームコミックス)

乱と灰色の世界 3巻 (ビームコミックス)

[][] 「空と原」/中村明日美子

空と原 (EDGE COMIX)

空と原 (EDGE COMIX)

「同級生」卒業生」のシリーズに登場して、いろいろ報われなかった原先生の後日譚。

片思いを振り切るために訪れたクラブでソラノという男の子(実は自分学校の生徒)と出会い、彼に振り回される様子になんだかにやにやしてしまます

もう大人だし、とかそういうハードルの前で去勢をはりつつも、はりきれていない原先生と、いろいろ察しがいいことで自分の気持ちより他人の気持ちを優先してしまいがちな男の子、ソラノ。ふたりともかわいいので、読み終えて「よかったねー!」という気持ちになりました。

そしてあらためて思ったのは、BLっていうジャンルの魅力のひとつに「感情移入ハードルを下げる」っていうことがあるのかなと思いました。なんというか、少女漫画の「かわいい主人公」って憧れの対象に近くて、でもBLであればそもそも異性であることで、フラットな気持ちで感情移入できるのかなーとか。

とはいえ、私はヤマシタトモコさんと雁須磨子さんとこの中村明日美子さんのものくらいしかBL作品を読んでいないのでかなり偏った見方だとは思うのですが、そんなことを考えたりもしました。

卒業生コンビの佐条と草壁の2人をまた見れたのもよかったな。

[][] Never Is A Promise

以前働いていたCD店に自分が働いていた頃の店長が戻っていると聞き、仕事終わりに会いに行ってみたのだけれど、あいにく今日おやすみとのことで、でもせっかくここまで来たのだから、と近々買うつもりだったFIONA APPLEの新譜を買った。1作前はいつだっけ、と自分の日記を検索するとなんと2005年のことで、でも今その新譜を聴きながらこれを書いているのだけど、この声を聞くだけで懐かしく、思い出すのはむしろ1stと2ndが出た、それこそ自分があのCD店で働いていた頃のことだった。

2005年にも同じようなことを思い出して、私は「6年前」という日記を書いている。それならこの日記は「7年前」なのか「13年前」なのか。

文字にすると気が遠くなる。13年前の自分は、自分に13年後があるなんてことを想像できなかったし、それは今もかわらないように思う。でもこうしてFIONA APPLEの声を聞いて、そこからよみがえる気持ちの感触を思い出せるということは、確かに私をどこかに繋いでいるような気がしている。

2012-06-18

[][] 少年自転車

監督ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

ダルデンヌ兄弟の新作。うっかりしてて遅くなってしまいましたが、ぎりぎり見に行くことができました。

f:id:ichinics:20120618214008j:image:w300

ダルデンヌ兄弟といえば、手持ちカメラ主人公背中をひたすら追うような撮り方が印象的な作品が多いけれど、この「少年自転車」は、自らの足や自転車疾走する彼の顔を、横から撮影し続ける場面が繰り返し登場するのが印象的な映画でした。カメラで登場人物を待ち構えることを避けつつ、背中を追うのでもなく隣に寄り添うような映画だったと思う。いつものことながら、ほとんどBGMはないのに、少年つんのめるようなスピードとともに、あっという間の1時間半だった。

映画児童養護施設から主人公少年シリルが脱走するところからはじまる。彼は父親(育児放棄して引っ越している)がいなくなった元我が家で、自分の「自転車」を探すのだが、結局それは見つからなかった。

しかし後日、脱走の途中で出会った女性サマンサ)が彼の自転車見つけてきてくれ、シリルの「お願い」によって彼女は彼の週末だけの里親を引き受けることになる。シリルにとっての「自転車」と「サマンサ」はどちらも彼の世界を広げてくれる存在なのだと思う。

それにしてもこのシリルはとにかく自然だった。子どもに触れるのってこわいことなんだよなということを思い出したし、彼の、大人と関わるぎりぎりの間合いが計れない感じとか、1度でわかるはずのことを何度か繰り返して気づくところとか、でも自分が「気づいた」ということはわかっていないところとか。

大人と子どもでは、見えている世界というか、考えの及ぶ時間の範囲が異なる。その視界の高低に見ていてはらはらするけれど、幾度もぎりぎりの選択をせまられるサマンサが、ああいった回答を選ぶことができたのは、行動や発言の前に呼吸をおくことを知っているからなのだと思う。

ラスト数分の展開で、いつでも自分と相手の立場が入れ替わる可能性があるということを、見ているこちら側に提示するのもよかった。シリルのこれからを祈るような気持ちのまま映画を見終え、今もまだ走る彼の横顔を、息をひそめて見守っているような気持ちでいる。

2012-06-12

[][] 「羣青」下巻/中村珍

羣青 下 (IKKI COMIX)

羣青 下 (IKKI COMIX)

待ちに待った完結巻。じっくり時間をかけて読みました。疲れた。でも頭の中で開きっぱなしになっていた物語から、やっと目を離すことができると、ほっとしたりもした。

初めて「羣青」を読んだのはIKKI移籍前のこと。絵は迫力があるけどなんか暑苦しいし、主人公のひとりの「あーし」という一人称にもなんとなくなじめなかった。でも「あの2人はその後どうなったんだろう」ということをつい思い返してしまうような切実さがそこにはあって、連載が止まっている間にも気になっていたので、再開が決まったときはとても嬉しかったです。

物語の着地点はずっと決まっていたのだと思うけれど、読みながら2人が何をどう選ぶのかを予想しようとは思いませんでした。ただ最後、2人のお互いに対する考えの脱落していた部分に、ちゃんと触れられていたことに野次馬として大変満足したので、自分がこの漫画のページをめくる動機はそこにあったんだなとも思った。

正直なところ、家族の話とか、「あーし」の背景にいる様々な人の物語とか、押し問答とか、長いなと思うところもないわけじゃなかったけど、この物語がこんなにも頭に残るのは、登場人物の表情が、言葉を補って余りあるからだとも思う。

嬉しい、という自分の気持ちが彼女たちのどちらに寄せている感情なのかはよくわからないけれど、そう言ってくれてよかった、と思う。

カバーを外した表紙にも大事メモがあるので必見です。

あと、いつか映像で見てみたいなとも思う物語でした。

キャスティングは誰がいいかな、とか考えるのも楽しい監督青山真治監督がいいな。

1巻の感想

http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20100228/p1

[] 銀のコップ

湿度が高くなってくるとよく思い出すのが、学生の頃に旅行したタイの街のことだ。

腐りかけの果物クーラーのにおい。じりじりというよりは、見えない雲にくるまれているような暑さの中、カフェの軒先には欧米人旅行客が日がな一日暇そうにしていて、お祭り金魚を入れてもらうようなビニール袋であまい水を飲みながら、私はお土産を物色していた。

お土産というのは、買わなければいけないとなると面倒だけど、誰かにぴったりなものを見つけるのは、宝探しをしているみたいで楽しい。そして私が当時好きだった男の子に選んだのは、ひと組の銀のコップだった。町の小さな銀細工やさんで、お店のおばさんは「すごくいいもの」みたいなことを言いながら、深爪の指できれいに値札をはがしてくれた。

空っぽだと軽くて頼りないのに、冷たい水を注ぐと氷を入れなくてもずっと冷たくて、今から思うと熱伝導率がいいってことだと思うけど、気に入って夏場はよくそれで麦茶を飲んだ。握っているときの吸い付くような冷たさがよかった。よく褒めてもらったので、我ながらいい買い物をしたと、満足してもいた。

それからしばらくして、その男の子とは別れることになったのだけど、遠くへ越すというので引っ越しの手伝いに最後に家に行ったとき、山盛りの食器を箱詰めしながら私が考えていたのは「このコップくれないかな」ということだった。

我ながらせこいと思う。でもきっと、いつか捨てられちゃうだろうし、それなら欲しいな。でも自分があげたものだしな、などと、日当りのわるい台所で逡巡し、結局言い出せずにそれも箱につめて送り出したのを覚えている。

その後、包んだ新聞紙の中からあのコップが取り出されることはあったのだろうか。それともそのまま今もどこかにあるんだろうか。そういうことを知るチャンスはきっともうないけれど、今あれが手元にあったら、きっと大事にするのになということを、夏になるたびに考えている。

2012-06-09

[][] ミッドナイト・イン・パリ

監督ウッディ・アレン

f:id:ichinics:20120609233315j:image:w300

パリへ婚前旅行に来た主人公のギルが、真夜中に1920年代タイムスリップして…というお話

脚本家として成功しつつ、小説を書いているギルは、パリとそこから生まれた芸術家たちに憧れを抱いていて、しかし婚約者イネズはそういったことには興味がなくそ意見の食い違いっぷりの描き方とかは、相変わらずのウッディ・アレン節でした。

言い分はどっちもどっちなんだけど、カメラはギル寄りの視線で、とにかくパリが魅力的な街に描かれているのがよかった。パリには一度だけ行ったことがあるんですが、正直当時はこんなふうに余裕をもって街を見れなかったから、いつかまた行くことがあるなら、行ってみたい場所が増えました。

タイムスリップした先の、1920年代に登場する芸術家たちも面白かった。特にすてきだったのは、フィッツジェラルド役のトム・ヒドルストン遊園地でのパーティー動物剥製がたくさんある場所でのパーティーも楽しそうだった。けどほんとに当時の人はあんなにパーティーばかりしていたんでしょうか。

やがて、ギルはある女性出会って彼女に惹かれていくんですけども、彼女価値観を通して、自分がいままで見ないようにしていたいくつかのことに気づく様子はとても自然な流れになっていてよかったなと思います。というかギルのファッションとか完全にウッディそのまんまですよね。

ただSF的に考えて、彼女の日記を発見したにもかかわらず彼女があそこに残る選択をする、ってのは矛盾しないんだろうか? 残りたいっていっても残れないってことなのかな。それはあの日記に書いてなかったのかな? とかちょっと気になりましたがまあいいです。

見終わった後、雨が降っていて、今日見てよかったなと思ったりしました。