『Zぼーいず/ぷりんせす』(田口仙年堂)

Zぼーいず/ぷりんせす (ファミ通文庫)

Zぼーいず/ぷりんせす (ファミ通文庫)

これはゾ……というネタは、きっといろんなところでいろんな人がやるに違いないのでさておき。
死神出ます。
ゾンビになります。
でもそれはそれ、これはこれ、主人公たる彼らのメンタリティはあくまで「普通」。
この普通っぽさ、だからこそのがむしゃらさとか、笑いとか、涙とか、怒りとか。
そういうものが魅力の、つまりは田口仙年堂印の作品。


もちろん死んじゃってるわけで、いわゆる日常系とは違います。
がしかし、日常を描くって何もそれだけじゃない、どうあったって明日はやってくるし、守れるものも守りたいものもあるよね?
そんな、地に足付いた、ではなく、ちゃんと立つ場所があってそこに立ってる、そういうキャラクタたちの織り成すあれやこれや。
この人、こういう話好きだしいつも素敵よね、としみじみ。


ベースはコメディなれど、さらっと重たいものを放り込んでくるのもいつもの通り。
殺人鬼、なんて、たとえ死なない身体でも高校生には荷が重い……と思っていたら、決着に至るまではしっかりと山あり谷あり。
力業にも近いあの作戦だって、超人でもなければ頑丈でもない、彼らが彼らなりに考えたもの、と妙に納得出来るそれ。
格好良くはないけれど、きっとそれでいい。はず。たぶん。


全体通してみると、どうもいろいろとキャラが立ってるサリさん(ラストもおいしい)に対し、可愛いのは間違いなしながら、もう一つ二つ見せ場のほしかった姫さま、という印象も。
ただ、進行に応じてそれぞれにそれぞれの見せ場をしっかり置いてくれるのも、また仙年堂作品。
ゆるゆると、時に燃えるような熱を以て、ゴールまで駆けていってほしいお話。