『ごめんねツーちゃん 1/14569』(水沢黄平)

ごめんねツーちゃん  ‐1/14569‐ (富士見ファンタジア文庫)

ごめんねツーちゃん ‐1/14569‐ (富士見ファンタジア文庫)

各章題と冒頭で、これは自分好みの傑作ではないか……と思ったのですが、結果としてはやや物足りず。
いやもうあと一歩というか半歩というか、自分的ストライクゾーンをギリギリでかすめていったような。
でもこちらは全力でバットを振ったし、空振りではあっても気分は全然悪くない。
しかしこのちょっと変わったテイストは薦めづらいのもまた事実。
また狭いとこ狙ってきてるなあ……


思わせぶりなプロローグ、そしてイブとツバサ、という存在を提示する序盤は、これが「終わってしまった」物語である宣言でもあります。
のち、副題の14569という数字の意味、ワダツミトーコという存在が示され、ますますこれは「失うこと」のお話である確信が高まる……のですが。


ユキムラ。
彼の存在がいったいなんだったのかを考えると、よく分からなくなってしまうのです。
彼と彼女に閉じてしまってもよかった物語。
そこに、ユキムラ、そして真由美が存在した意味/意義。
まったく分からない、のではなくて、もう一つの結末めいたものであったことは理解出来ます。
が、はっきりとそれが何かを言い当てる言葉が出てこずに、なんとももやっとした、つかみどころのない感情だけが手元に残ります。
ああ、もどかしい。


そして結末。
喪失の物語であることに間違いはないのですが、これもまた、誰が何を失ったかと聞かれると難しい。
失われたものは確かにある、けれどそれを所持していた者は果たしていたのだろうか、と。


あー、もうとにかくすごく好きなタイプの作品なのですが、とにかく魅力が伝えづらい。
結局なんだったのよ、と聞かれたら、なんだったんだろうね、と困り顔で返します。
でもこのもどかしこそ、愛おしい何かであるのも事実、なんじゃないかなあ。
きっと。