『騙王』(秋目人)

騙王 (メディアワークス文庫)

騙王 (メディアワークス文庫)

実質的には王位継承権などない、という第二王子が、口八丁だけで成り上がる——というのがあらすじなのですが。
いやいやむしろ、騙るとうそぶきながら、真っ当に難局を切り抜けて戦い抜く、実に正当な物語。


一つ大きな嘘をついている主人公ではありますが、各種局面での立ち回りは純然たる駆け引き。
だますというより、むしろ「信じさせる」ことで、事態を乗り切っていく姿は、結局誰しも人間なのだよなあ、と感じさせてくれます。
決してイヤらしい攻め方ではなく、信用されなければ仕方ない、というある種の割り切りめいたスタンスは、清々しくさえあるような気がします。


クセのある面々も、それぞれにツボを突いてくるいいキャラ。
ルーはちょっとお人好しに過ぎる(他が皆海千山千なせいもあります)ところがありますが、姫様は非常においしい。
どちらがどちらに首輪をつけるのか、あの二人が今後どうやって国政をまわしていくのかは見てみたいところです。
まあ、これ以上続けると世界制覇でもしないとお話が広がらないので、蛇足になること請け合いですけれども。
ともあれ、総じてひねくれているようで真っ当なお話でした。
これは好き。