さらばヒヨドリ

さて、先日ちょっとした騒動を起こしたヒヨドリのヒナだが一羽をのぞいて巣から姿が消えていた。とうとう巣立ちしたのかと、一安心したのもつかの間、例によって朝になるとギャーギャーうるさい親鳥二羽が餌を運んでくる。おかしい、巣立ちしたはずじゃ?よく耳を澄ますと「ピイピイ」とヒナの声が聞こえる。その声をたどり、うちの工房ととなりの倉庫の間の側溝のある場所へ行ってみる。確かに声はこのへんから聞こえてきたのだが?そこにはとなりの倉庫の持ち主のいらなくなったオーディオやパソコン、古タイヤなどが積まれている場所だが、その積まれた古タイヤの中から鳴き声が聞こえる。四つ積まれたタイヤのホイールの隙間をぬって一番下まで落っこちているヒナ。何やってんの?どうやってそんなところへ入ったんだ?とりあえずこの状況ではいくら親ヒヨドリが餌を運んできても、タイヤの一番下の空間までたどり着けまい。よっこいしょ、と、タイヤを四本動かして、むんずをヒナを掴み(ヒナ驚いて大騒ぎ)とりあえず助け出す。
ところでどうする?
しばらくはダンボール箱に入れて様子を見ていたが、腹が減っていたようなので、車でペットショップまでひとっ走りして「ミールワーム」という見た目がかなり気持ち悪い虫の生き餌を買ってきた。何でもあるなペットショップ。しかし、当たり前だが、食べない。食べないながらも食べないとヤバイじゃんコラ、とかヒナにいいながら(無駄)なんとか食べさせようと気持ち悪い虫をピンセットでつまみ、口に押し込もうとするのだが、なかなか食べようとしない。ようやく何匹か食べてくれてホッとして鳥籠に移下。一時間ほど後に見に来たら、せっかく食べたミールワームを全部はき出してている。どうもミールワームが消化できなかったらしい。「ウワッ、食べてくれないとヤバイじゃないか」すでに自分はかなりパニックしていた。そうしている間にも、二羽の親ヒヨドリたちがやってきて「こら。、ヒナ返さんかい」と、かなり激しく威嚇の声を上げている。どうしたらいい、どうしたらいい、そうだ!!「親ヒヨドリが餌をヒナにあげれるように、鳥籠の戸をあけておこう」スバラシイ考えが思いついて、実行した。
よく考えて欲しい、普通親が餌を上げにやってくる前に....
ヒナが逃げるよ...
そういうことで、だいたい半分パニック起こしている人間というのは、この様にろくでもない考えを素晴らしいアイディアだと思い違えしてしまう。
逃げてしまったヒナと親鳥を、しばらく影に隠れて観察していると、ピイピイ餌をねだるヒナに親が一生懸命餌をあげているよ。そりゃもうバクバク喰っていますよ。ああ、親の力はスゴイね〜ちょっと感動してみていた。しばらくすると、親がヒナを連れていこうとしだす。この親は昼間にうちの巣のヒナの所へ来ていて、夜はどこか別のねぐらへ行っていたので、きっとそこへ連れて行くのだろうと、安心した。あんまりじろじろ観察していると、親鳥が警戒しちゃうとまずいので、自分は早々に退散した。
コレでめでたしめでたし....
ところが急転直下だった。しばらくピイピイいっていたヒナの鳴き声が聞こえなくなった。
いよいよお別れだなと、その状況を確認しようと外へ出てみると、そこにはまだ親鳥がいるじゃないか?アレ、親鳥がいてヒナがいない。てか、何で親がもう用のなくなったこの場所にたたずんでいるんだ?しばらく親を見ていると「ギャーギャー」おもむろに大声を張り上げた。この声はヒナをよぶ時に出す声だ。いったい何があったんだ、どうしたんだ?
ふと親が止まっている壁の下を流れる用水を見ると、ヒナがそこに落っこちて死んでいました。