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Spare time

09/09/09

[]新しい労働社会 ーー雇用システムの再構築へ

 確か、ブログによると「序章は最後に書き加えた」と書いていたはず。が、日本の労働に関する問題を俯瞰しようと思ったら、序章は不可欠である。自分自身、日本の雇用システムの特殊性を少しは知っているつもりだったが、歴史的経緯やそれぞれのトピックの関連性について説明されると、新たな視点が見えてきた。

「序章 問題の根源はどこにあるか」

...どういう種類の労働を行うか、例えば旋盤を操作するとか、会計帳簿をつけるとか、自動車を販売するといったことについては、雇用契約でその内容を明確に定めて、その範囲内の労働についてのみ労働者は義務を負うし、使用者は権利を持つというのが、世界的に通常の考え方です。...これに対して、日本型雇用システムの特徴は、職務という概念が希薄なことにあります。

...

雇用契約それ自体の中には具体的な職務は定められておらず、いわばそのつど職務が書き込まれるべき空白の石版であるという点が、日本型雇用システムの最も重要な本質なのです。こういう雇用契約の法的性格は、一種の地位設定契約あるいはメンバーシップ契約と考えることができます。


[pp.2-4]

 「これは私の仕事ではない」と日本では言えないということ。「最も重要な本質」とあるが、これが根本となってありとあらゆる面に影響し、現状問題になっていることを解決しようとすることを困難にしている。「日本型」という部分を「世界的にはレアなやり方」という程度で認識をしていると、あとでどんどんヤバさ*1に気づくことになる(笑)

...日本型雇用システムでは、雇用契約で職務が決まっていないのですから、職務に応じた賃金を支払うというやり方は困難です。もちろん、たまたまそのときに従事している職務に応じた賃金を支払うというやり方はあり得ます。しかし、そうすると、労働者は賃金の高い職務に就きたがり、賃金の低い職務には就きたがらなくなるでしょう。...そのため、日本型雇用システムでは、賃金は職務とは切り離して決めることになります。その際、もっとも多く用いられる指標が勤続年数や年齢です。これを年功賃金制度といいます。


[pp.6]

 「日本は年功賃金である」ということを知っていても「なぜ日本は年功賃金制度なのか」という疑問については考えたことがなかった。同一労働同一賃金なんて言葉1つとってみても、結局はどこにたどり着くのか。別の章で、マスコミの報道の問題について言及しているけれども、「同一労働同一賃金にすべきだ」とただ言ってみても、立ちはだかる壁はとても高いのだと感じさせられる。

...重要な留保をつけておかなければなりません。それは、このシステムが適用されるのは正社員のみであって、日本には膨大な数の非正規労働者が存在しているということです。彼らは、企業へのメンバーシップを有しておらず、具体的な(多くの場合、単純労働的な)職務に基づいて、(多くの場合、期間を定めた)雇用契約が結ばれます。しtがって、彼らには長期雇用制度も、年功賃金制度も適用されないばかりか、企業別組合への加入もほとんど認められていません。

...

 高度成長期以前は臨時工の存在が大きな社会問題だったのですが、高度成長期の人手不足によってその大部分が正社員化し、主に家事を行っている主婦によってパートタイマーや、主に通学している学生アルバイトとなりました。彼らは企業へのメンバーシップよりも、主婦や学生といったアイデンティティの方が重要でしたから、このような正社員との格差は大きな問題とはなり得ませんでした。


[pp.17-18]

 これも、ふとすると勘違いしやすいのだが。「過去は問題が無かった」わけではない。「過去においては問題とならなかった(orそれなりに解決されてきた)」のである。これは1人の個人について、家計と労働を考えていても今の問題の本質には迫れない。以下の問題とも関連してくるからである。

 女性については、男女雇用機会均等法制定以後、雇用システムにおける位置づけが大きく変わってきました...


[pp.19]

 一言でいうと、彼女たちは(フル)メンバーシップではなく「準メンバーシップ」であったということになる。簡単にまとめると

  • 長期雇用で就職するとはいえ、「結婚退職」をするのが一般的→企業としては年功賃金による将来的な人件費上昇を心配する必要がない
  • (名目上はともかく、実質は)長期的な雇用ではないので、男性ほど教育訓練を施す必要がない→配置転換を繰り返しながら教育訓練を受ける男性に対し、女性は補助的な職務

となる。男女雇用機会均等法制定以後は、

  • 制定以前の男性が主に担っていた職務:総合職(配置転換あり)
  • 制定以前に女性が主に担っていた職務:一般職(配置転換なし)

というコース制にすることで、対応をとった。


 過去においては(男性の収入)>(女性の収入)が成り立つようなシステムの下(このシステムは動かさない)、収入の低い(労働をアイデンティティの主としない人)で調整すればよかった。個人ではなく家族という単位で家計を考えれば、非正規労働による収入が減少したとしても、正規が守られるのだから我慢できる、という論法が成り立つ。

 けれども、現在はこうした単純な論法が成り立たなくなっている*2

 

*1:という言い方はかなり乱暴だが。

*2:かつて、某匿名掲示板で「女性が男性と同じように働くようになって、男性は仕事を奪われた。女性が悪い」といった主旨の書き込みを見かけたことがある。これは男女平等を再び否定する流れにいきかねない。これは、筆者も主張していたが、単純な図式化は解決から遠ざかるばかりである

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