上橋菜穂子乱読。

お久し振りです。
って、もう四年ぶりかぁ――最近商業の小説をあんまり読んでなかった(学術系中心)のですが、そんなこんななので、ちょっくら。
何か、“何様?”と云うコメが入ってたみたいですが、うん、俺様。
なので、そう云うカンジの自分的通常運転で参りますよ。


† † † † †


んでもって、上橋菜穂子
まぁ何か賞もお取りになったようですし、読んどくべきなのかなぁ(しかし気は進まない)と思って、とりあえず文庫の『獣の奏者』1、2巻と『守り人』シリーズの6巻目(=『神の守り人』上下巻)まで、それから出たばかりの『鹿の王』上下巻を読みました。『鹿の王』以外は、全部×ック×フで¥108-で入手。それ以上かけるかよ。巻数多いから、ISBN入力はしませんよ。
以下、毒吐き注意!! ファンの人は退避して下さい、って云ったからね! 云った! 警告したので、読んでからの苦情は受け付けませんぞ。



とりあえず、この辺読んで思ったのは、“頭で考えて書く人だなー”でした。
って云うか、私のFT入るきっかけはパトリシア・マキリップなわけですが、その後すぐ読んだ和製FTは『グイン・サーガ』だったのですよね。
で、この辺の人(ル・グィンもそうですが)って、あんまり頭の中で物語をこねくり回してないと云うか、キャラとかがはっきり立つと、物語が自然に流れていくタイプみたいなんですよね、ル・グィンなんかは『夜の言葉』(岩波現代文庫)で書いてましたが。
つまり、キャラの性格に破綻がない人の物語ばっか読んでたわけです、良くできてるラノベもそうですが(←よくできてないのは読まないからわからぬ)。


それに較べると、上橋さんって、話を成立させるためにキャラを枉げるなーって云う印象があります。
最初にそれを思ったのは『神の守り人』の上巻、じゃなくて『虚空の旅人』かな、何か、流れ的にこのキャラが云わないような科白を云わせてるなーってのがあって。サブキャラの村長的な人だったから、あんまり強くは感じなかったんですが、『神の守り人』だと、バルサがね……手練れの用心棒は、そこでほだされちゃいかんだろうってのが。まぁ、そもそも『精霊の守り人』から、バルサって凄腕の用心棒って感じはしなかったのですが――何でかね。(多分、平和なとこで生きてる人間の考える“凄腕の用心棒”ってのは、実際の戦地とかではさほどでもない、ってあれかなぁ。考えが甘いんだよね、イマイチね)
これがタンダがほだされて、ってのなら、今までの流れ&キャラ的に違和感なかったのですが(まぁ、それだといつも同じパターン、ってことにはなったでしょうけども)、慎重なはずのバルサが引きずられて、しかもそれが幼少時のトラウマ的なアレが原因、って、あんまり簡単過ぎないか?
『闇の守り人』で出したバルサの過去を、何かもの凄く簡単に使っちゃったなぁって云うカンジが致しました。多少なりとも乗り越えた後の話とは思えなかった。『闇〜』前なら、そう云う過去だからで済んだかも知れないけど、あれがあってこれかよ、って感じは否めませんでした。


もちろん、枉げたったってほんのちょっとで、わかんない人にはわかんないとは思います。流石に金貰ってるだけあって、人物造形も“紙人形ぺら”(←薄っぺらな造形のキャラに対して、こう云う云い方をしてる)ってことはなく、TDLのロボットくらいな出来ではあるので。後ろの仕掛けはやや隠せてませんが。
でも、『守り人』シリーズに微かな違和感を感じてるのは私だけじゃなかった。職場の人も若干名(まぁ、そもそも読んでない人間も多いみたい)、“「守り人」はちょっと……”って云ってる人がいました。その人も、『獣の奏者』はまぁ好きだと云ってましたが、そうですね、私的にも『奏者』の方が、キャラクター造形的には腑に落ちました。ただ、世界設定が書き割りなんだけどね、ものすごくね!!
『守り人』は、主役は何とかTDLのロボットクラスなんだけど、サブキャラが風船人形でね……そこに上橋さんが(作者にとって)都合のいい科白とかをぶち込んでくるもんだから、とっても操り人形の糸が見えて、正直興醒めと云うか。
まぁ百歩譲って、その“糸”が見え見えでもストーリィ的に腑に落ちるんなら良いんだけど、『守り人』はなー、どうも話上の御都合が酷くって、しかも納得し易い御都合でもない、枉げる系のご都合だからなー。
シリーズ最後まで読めと云う方があるかも知れませんが、『十二国記』的破綻はないが気が滅入る展開(小野不由美って、やっぱ巧いですよね)、って云うのでもなし、ここから大逆転ってのは無理じゃないの?


その傾向は、最新作『鹿の王』でも顕著、と云うか、短いから誤魔化しがきかなかった系かこれは。
『鹿の王』は新刊でちゃんと買ったのですが、正直に云いますが、KADOKAWAの戦略にやられたカンジ、と云うか、きっぱりはっきり梶原にきさんのイメージイラスト見なければ買いませんでした。うん、これはKADOKAWAの戦略勝ち(ちなみにこのイラスト、本には一切載っておりません)。
まぁ、主人公の片割れヴァンはいいんだ。流石に十年くらいあたためてたキャラらしく、ヴァンには目立った破綻はありませんでした。
いかんのはもう一人の主人公ホッサル、っつーか、ホッサルまわりがヤバい。
いや、マコウカンはいいんですよ、割とよく書けてると思います。が、ホッサルの嫁とかじいちゃんとか、医療系のキャラが薄っぺらでね! 免疫系の解説をしてる時とか、上橋さんが憶えた知識を一生懸命書き出してるんだな、って云うのが見えちゃって、ホッサルが賢そうに見えないんだもん。
って云うか、そもそも医療系のキャラの顔がわからん。ヴァンとかマコウカンとかは、梶原にきさんのイラストの顔でイメージして読むとちゃんと表情が出てくるのですが、ホッサルまわりは全然駄目だった。と云うよりも、誰がどの科白を喋ってるのかすら判別がつきませんでした。
話自体は悪くもなかった(←あくまでも構想段階の話の流れのことです)が、とにかく人間が(ヴァンとマコウカン以外)ほとんど書けてないので、点数的には55点くらいかなー。


つか、上橋さん、文化人類学とかの学者さんだそうですが、実は頭良くないの?
と思うくらいに、賢い設定の人とか、老賢者タイプの人が駄目……
と云うか、この人は人間のどこを見て話を書いてるんだろうか。人間の何を観察したら、ああ云うキャラ設定って云うかキャラ立てになるんだろうか、もの凄く疑問。
結局、話を頭で考えちゃうのも、キャラの人間性が確立してないから、作者の都合で平気で行動規範を枉げてしまえるからなんだと思う。故・栗本薫とかル・グィンとかは、キャラが勝手に語ってくれるタイプだったので、作者の都合で話を作ることはない(と、両者とも云ってたもんな)のですが、上橋さんは“こう云う話を書いてやろう”って考えて作るタイプなんだろうなぁ。
まぁ、それでキャラがしっかりして、違和感なく“生きて”くれれば良かったんだけど、そこまで物語の神様に愛されてるタイプではないんだよね、この人。だから、平気でキャラを枉げて、話の流れを優先させちゃえるんだと思う。
児童文学だから、って云う人があるかも知れませんが、少なくとも私は、ル・グィンとかミヒャエル・エンデとかでそう云う“枉げてる”感を感じたことはないし、その辺の話で人間が書けてないと感じたこともないんですが。よく云われるように、物語としての良し悪しと、その物語の対象年齢とは、まったく関係ないと思っております。
ので、ここは素直に“上橋さんがストーリィテラーとして駄目”と云う結論を出しておこうと思うんですが。
うん、残りのを読むとしても、やっぱ¥108-以上は出さんでええわ。


正直、一作目ほどのパワーはなくなってきたと云っても、乾石智子さんの方が面白いと云うか、違和感なく読めるなぁ。東京創元のFTは頑張ってると思います、翻訳も含めて。タニス・リーの『パラディスの秘録』も完結させるそうですしね!
児童文学だと、古いですが&今は幻冬舎文庫に入ってますが、『童話物語』も良かった。
定番のファージョンとかも好き。『ラング世界童話集』は、旧訳の方が好きだけど、手許にある6冊のうち5冊は新訳……イラストは新訳版の方が好きな人が多いのですが、なじんだのは旧訳なんだよなぁ。『むらさきいろ』は旧訳で欲しい、が……


† † † † †


ってわけで、久々の読書日記は激辛ver.でした。
最近はちまちまと新刊小説も読んでるので、もうちょっと他のも書くかもですが。
まぁまぁ、俺様が駄目な方はバックでね。
宜しくお願い致します。

『観 -KAN-』

えーと、昨今資料関係は源平中心になっていたりするのですが。
源平の読み物はどうもアウト(汗)なので、何故か南北朝あたりで(や、源平はもう自分イメージが確固としてあるので、他の人の書いた源平は駄目なんだよね、そんだけ)。
通勤利用駅(乗り次駅)でやってた古本市でGETの『観 -KAN-』(永田ガラ メディアワークス文庫)。観―KAN (メディアワークス文庫)
“観”は観阿弥の観ですね。ずばり、若かりし観阿弥太夫17歳のお話でございます。


この本、実は出た時から気になってはいたのですが、どうも正値(や、社割ですが)では買いたくないカンジがしてたのですよね。
メディアファクトリー文庫で気になってたのって、他には渡瀬草一郎陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼』くらいで、しかもこれも、慶滋保胤や保憲さん、光栄やメタボ様もとい安倍晴明etc.のイメージが違い過ぎて、迷ったけど止めたくらい……
今回投げ売りだった(古本ですからね)ので、まァ読んでみるかと思って読んだわけですが。


……うん、何で正値で買いたくなかったか、何となく了承。
この人(=永田ガラ氏)、これがデビュー作だそうですが、巧くないわけじゃあないんだけど、少々不親切だ。
最初の最初、南北朝の簡単な説明の後は、ほとんど社会情勢に言及していない、って云うか、言及してても、我々が学校で習ったような名前や表記を織り込んでいない、と云うか。や、別にいいんですよ、足利直義を“武衛”と書こうが(←どうも、今吾妻鏡を読んでる関係で、“武衛”と云われると佐殿しか思い出せねェ)、南朝方を“宮方”と書こうが。
でもさァ、最初に“先の帝(後醍醐天皇)”とか“六波羅(京における、鎌倉幕府の分庁)”とか云う表記をするんなら、南北朝のあれこれに関して、もうちょっと細かくフォローして欲しかった。
いっそまったく観阿弥の主観で世界を見てるんならまだしも、中途半端に作者視点の注釈っぽいものが入ってるので、その後の北朝南朝、尊氏と直義の動向のあれこれが、ぼやけちゃって全然わからなかった――はじめっから観阿弥視点だけだったら、まだしも諦めがついたのに。
大体、南北朝あたりって、イマイチ人気がない(某国.史.国.文.同.人.検.索だって、平家物語に較べると太平記の登録件数三分の一ちかくだしな)わけだし、その割に状況もややこしいしで、普通に知識のある人間も少ないんだから、きっちり説明してやるか、いっそ作中人物の視点でぶった切るか、ふたつにひとつだと思うんですよね。その辺、中途半端に現代の知識で処理しちゃってるので、少々もやもや感がありました。


あとね、デビュー作だからしょうがないのかも知れないけど、せっかく一人称で攻めてきたのに、クライマックスが三人称ってのはどうか。
観阿弥の一人称で、あの舞のシーンを書き切ったら、総毛立つような物語になっただろうに。
あそこを三人称にしちゃったせいで、どうもこの作者には、あのシーンを書き切る力が不足していたんじゃないかと思わせてしまって残念でした。
っつーか、それよりも、この作者って、このシーン頭で考えて書いたろ? ってカンジか? ここだけじゃなく、ちょっと前の、観阿弥が志津とその仲間たち(?)に××されたシーンとかも、“おれ”で語られながら、もみくちゃにされてる感がなかったので――ああ云う目にあってるんなら、諦念とかがあったにせよ、恐怖とか怨嗟とか悔恨とか、ぐしゃぐしゃした気持ちがすこしはあるはずなのにね。何か、作者の想像力がそこまで至っていないような感じがしてなりませんでした。
まァ、それより何よりクライマックスなんだけどね!
あそこを、舞の狂熱と見物の熱狂、武家の感歎と南阿弥の切歯――それを感じて溜飲を下げるところ、まで込みで、観阿弥視点で書き切れたら、この話はかなり凄い出来栄えになったと思うんだけど。
まァ、それができなかったから、この話は電撃小説大賞の最終選考に残らなかったんだろうけどね。そう云うことだよね。


多分この続篇と思われる『舞王 -MAIOH-』が、今月下旬に刊行されますが――
うーん、まァ、やっぱり正値では買わないと思う。よっぽど表紙にオーラがあれば話は別だけど、イラストレーターさんも、2作目は最初ほどの力は(出来が凄ければともかくとして)入らないだろうから、次がホントの正念場ですわね。
まァまァ、チェックはしますけども――うーん、やっぱちょっと、多分買わないんだろうなァ……
それよりも、高畑京一郎氏の『Hyper Hybrid Organization』の続きはどうなってるんでしょうか……マジ待ってるので、そろそろ出ませんかね。メディアファクトリー文庫なら、あの内容でもいけるだろうに……

『天地明察』

……と云うわけで、3年ぶり(汗)の読書日記は、本屋大賞受賞おめでとうございます! の、冲方丁天地明察』(角川書店)。天地明察


実は、初版発売時からキープはしてたのですが、実際に買ったのはつい先日、読んだのは今日と云う、何ともかんともなアレコレ。いや、実は本屋大賞獲るって話は随分前に聞いてたので、買わなきゃ読まなきゃとは思ってたんですが――今回は、何か食指が動かなかったんですよねぇ。


読んでみて、そのわけがわかりました。
うん、何て云うか、私が冲方に期待してたのとは違うなァ、って云う。
いや、面白くないわけじゃあないんですよ? 普通にするする読めたし、建部昌明&伊藤重孝のおじさん(おじいさん?)コンビなんか、笑わされるは泣かされるはだったし。水戸光圀公は水戸の閑隠居じゃない烈公を思い出して(ちょっと似てる)面白かったし、保科正之公なんかもいろいろ思うところがあったりして、それはそれで良かったのです。
ただ、何かねェ……フツーなんだよなァ……
何ていうか、心の表面15cmくらいのところに手を突っこまれたくらいなカンジ、と云うか、心の奥底までは揺さぶられなかったんだよねェ。うーん。


私はそもそも『マルドゥック・スクランブル』(全3巻 早川文庫JA)から入った人間なので、あれとか、それ以前の『ばいばいアース』(全4巻 角川文庫)とか、あるいは『微睡みのセフィロト』(徳間デュアル文庫――早川文庫JA)とかのSF、あるいは『ストームブリング・ワールド』(1〜2巻 MF文庫)や『カオス・レギオン』(富士見ファンタジア文庫)なんかのラノベあたりのイメージがあるんですけれど。
このあたりの、何ていうか“若さゆえの体当たり”的なお話と、今回の『天地明察』ってのは、もうずいぶんはっきり違ってきちゃってるんだなァ、と云う、妙な感慨がありました。
そう云えば、最近の『シュピーゲル』シリーズにも手が出なかったんだよね。多分これも、読んでもそんなに面白いと思わないんだろうなァ。
この辺の自分的直感のわけはよくわからないのですが――こういう勘は外れたことがないんだ、実は。


相方に云ったところ、「それは、冲方が守りに入ったって云うか、昔ほどの情熱がなくなったんじゃない?」と云ってましたが――そうなのかなァ、まァ、いろいろ成功しつつあるみたいだし、やっぱもう冒険はできない年齢に入っちゃってるのかなァ。子どももいるわけだし、失敗できないところはあるんだろうけども。
まァでも、相方の云うように、『マルドゥック』書いてた時みたいな“吐きながら書く”って云うのは、もう冲方にはできないのかもね。安定しちゃったと云うか。
安定するって云うのは、一般的には悪いことじゃあないと思うんですが、ことものを創る人間にとってはなァ……
感動させるって、人の心の深いところを揺り動かすことなんだと思うんですが。結局それって、“正常”からの大幅な逸脱によってしか、難しいんじゃないのかなァ。
いや、浅いところを掬ってだって、心が動かないわけではないとは思いますよ? だけど、存在の根底に近いところまでを揺り動かすってのは、やっぱり相応の苦労って云うか、ううぅぅん、何だろう、凄いパッション? とかが必要なんじゃないのかなァ。


でもまァ――確かに、安定したからこその本屋大賞なのかもね。
何て云うか、これまでの本屋大賞に選ばれた作品(すべて未読ですが)を見ていると、そんなカンジがしますもん。逸脱じゃなくて、小幅な揺れの心の掬われ方をする話、って云うイメージ? 奇怪なもの、グロテスクなもの、過剰なものは、大勢の支持は得られないのかも知れないなァ。
でも、それでは掬われない/救われないものも、たくさんあると思うんだけどね。
少なくとも私は、『マルドゥック』や『ばいばいアース』なんかの、あの過剰なまでの熱情、蕩尽に近い労力の浪費(だと思う)が好きだし、それが欲しいのですが。
ううぅぅん、世間のニーズとはつくづく合わないなァ。
でも、実は後々まで残るのは、安定したものよりそう云うものだと思うんですけども。


どうも今ひとつすっきりしないなァ……
まァでも、今年のノミネート作を見たら、確かにこれは凄い快挙だとは思うんですが。
個人的には諸手を上げてはちょっと……
まァまァ、これでこのまま安定して、直木賞でも獲ってくれたら、それはそれで嬉しいんですけどね、ファンとしてはね。
でもまァ、何か淋しい気がするんだろうなァ、きっと……
とりあえず、今後の冲方に注目したいとは思います……

まだ引っ張ってます、新撰組。

おっかしいなぁ、イタリア行って帰ってきたってのに、まだ新撰組かよ……


えーと、漫画リスト続きは黒鉄ヒロシの『新選組』(PHP文庫)。新選組 (PHP文庫)
さすが“漫画家”(漢字表記っぽい)、絵の描き方やらコマの進め方やらが、今まで読んできたマンガとは違う――沖田が美形じゃないし(笑)。
すごい厚み(本文582P)で、池田屋から副長・土方(この呼び方、どうも何だか……)の死までを追ってます。
うん、面白かったよ。史実好きな人には、他のマンガ(『風光る』とか『月明星稀』とか)より面白く読めるんじゃないかな。つーか、キャラ把握が! 鬼とか総司とか、そうねー、そうですよねー、すんません(←?)ってカンジに笑えます。やや生ぬるく。


異色と云うべきか、もりやまつる『疾風迅雷』(小学館ビックコミックス 全五巻)。疾風迅雷 1 (ビッグコミックス)
近藤さん、鬼、総司、原田さんの四人が、池田屋直前でいきなりタイムスリップ! 現代日本で大暴れ、と云うお話。
原田さんが(美男だったはずなんですが)×ブで泣ける、けど、話自体は面白かったですよ!
この方の絵、基本的に怖い顔なので、美男の鬼ですら悪役系――しかし、発想とかは面白かったです。
ただ、(以下、ネタバレにつき反転)近藤さんは、将軍とか云う器ではないので、その辺がちょっと嘘くさい落ちになってるかも。まだ、慶喜くん担ぎ直してどうこうの方が、個人的には腑に落ちた、つーか、近藤さん将軍には担ぎたくねー!(反転終り)


小説は、結局定番攻めなんですが、買って良かったと思った本が一冊――『新撰組興亡録』(角川文庫)。新選組興亡録 (角川文庫)
元々、これと『烈士伝』は、司馬遼太郎の短編を読むために買った(『烈士伝』は、池波正太郎の『色』も入ってたしね)んですが、こっちに収録されてた草森紳一氏の『歳三の写真』が良かったので。
結構好きずきあると思いますが、出だし3頁目の鬼の述懐が、それっぽくてよかったですよ。あと、写真技師の田本さんとのやりとりとか。未読の方は、この短編(いや、分類的には中篇か)だけでも読まれると宜しいかと。


そうして、新撰組ブームに伴って、なぜか勝海舟もマイブーム。勝さん好きだ!
子母澤寛の小説で勝さんに目覚めたくち(しかも、どちらかと云えば勝父=小吉さん贔屓)なので、読み返したいなぁ、と思っていたら――
ありゃ、こないだまで『おとこ鷹』も『父子鷹』も店頭にあったような気がしてたのに! 新潮の『勝海舟』しかないのかよ! しかもこれ、全6巻だし! と云う事態で、ちょっと呆然。
しかも歴史の専門書も、勝さん関連少ないんだ――何でだよ!
仕方がないので、講談社学術文庫の『氷川清話』『海舟語録』を買いました。本当は、『勝海舟日記』も読みたいのですが、既に版切の巻もあり、見たいところ(ぶっちゃけて云えば、慶応四年四月四日あたり)がちょうど版切の巻だったらやだなーと思って、手が出せません。
まぁ、勝手に妄想してますよ。もう、それでいい。つーか、これ以上本を増やさないようにしないと……!


と云った舌の根も乾かぬうちに、明日あたり、花田一三六の『戦塵外史』の続き(つーか)を買っちゃうんだよね、きっと……
仕方ない、だって、未収録短編が載るって聞いたら、ねぇ……そりゃあ買うよ、ねぇ…………

あけましておめでとうございます。

一月以上間が空いてるので、今年の抱負か去年の総括をすべきなのかなぁと思いつつ、結論が「面白い本が読みたーい!」で終わりそうなので、いつもと変わらないカンジでGO。


えーと、新撰組はまだ引っ張ってまして、とうとう『風光る』(渡辺多恵子 小学館フラワーコミックス)風光る (1) (別コミフラワーコミックス)を揃えつつあります。
うん、昔は全然興味なかったんだけど(ピスメは1巻出たとき即買いだったのになー)、今回読んでみて、この話、結構史実押さえてるなぁと、改めて感心しました。
つーか、キャラの把握がね! 結構それっぽいと云うか。副長がへたれで、沖田がややニート……でもないか。まぁ、組織内権力闘争の汚い部分ってのは、少女漫画なので7割引くらいで描いてありますが、比較的逸話とかもおさえてるなぁとは思います――でも夢はかなり見てると思うけどね!(笑) 特に沖田! もし可能なら、是非とも三浦啓之助のエピソード(下参照)を入れて戴きたいです(笑)。慶応二〜三年あたりに脱走してるから!
現在連載中の時制が慶応元年〜二年くらいになるので、総司が倒れるまで一年強、鳥羽・伏見まで二年弱、この先どうなるのか注目ですね。いえ、いろいろと。
つーか、セイちゃんは、どこで新撰組を離れるんだろう。総司と一緒に、江戸に居残りか? 鳥羽・伏見でさよならか? そのあたりが気になります。


新撰組異聞 PEACEMAKER』(黒乃奈々絵 スクウェア・エニックス)新撰組異聞(いもん)PEACE MAKER (1) (ガンガンコミックス)、そう云や、これ処分しちゃってたなぁ。個人的に、『鐵』になったら捨てましたが。まぁ、土沖らしいので(笑)、沖田がお嬢さんのようですよね。これで、佐久間象山の息子を「馬鹿野郎!」と怒鳴りざま、畳に顔押し付けて引きずり回したり(という逸話有)は……できねぇなァ。黒いところはありだと思いますが。
何やら、無期限休載とのことで、このままフェイドアウトなのかなーというカンジが芬々といたしますが、もし再開したとしても、まぁその頃には、この熱も冷めてる――といいなぁ(汗)。
ただ、『鐵』はホントに微妙なので、再開したって読まないかもなんだけどね。新書の方は、集めなおしてもいいかなぁ。結構ブックオフとかに出てるしね。


次。
『ひなたの狼-新選組綺談-』(斎藤岬 幻冬舎)ひなたの狼-新選組綺談-(1) (バーズコミックス)、珍しく、鬼が総司よりかわいい。本当に女の子のよう。
これも第一部完、で、“新選組綺談”だけ残して、今後はオムニバス形式で進むことになるらしい、のですが、まぁ既に鬼のキャラ設定(躁鬱気質)が間違ってるので(あんな躁鬱いるかー!)、今後は微妙だなぁ。つーか、全体にキャラが薄いよね。鬼以外が、誰が誰なのかわかり辛い……まぁ、過ぎたことだ。


『北走新選組』(菅野文 白泉社)北走新選組 (花とゆめCOMICS)、珍しく箱館新撰組の話。
そういえば、
この話、相馬主計の話だけ雑誌で見た記憶がありました。その時は何にも思わなかったんだけど、今読み返すと、いろいろ考える、のは、話をちまっとでも書いているからか。
鬼が美しすぎる、が、確かに写真を見返すと、女装してもいけそうな顔(←オイ! でも、島田結って化粧したら、女に見えなくはないと思うんですが……)なので、この絵もありか。ただ、性格はかなりはっちゃけてるので、こんなもの静かな喋りじゃねーぞとは思いますがね(笑)。
とりあえず、相馬の話と、戦死の話は好きと云うか、うん、何か思うところはありました。島田さんと相馬がいい男なので、ちょっとお勧めしておきたいな。個人的贔屓ですが。


ってカンジで読んでます――『無頼』(岩崎陽子)は、昔、岩崎さんのファンだったときも燃えなかったのですが、今読み返すと、新撰組としても笑うしかない(所詮は史実おっかけ派ですから)ので、パス。『月明星稀』(盛田賢司)は、歴史は追っかけてるけど、何だか漫画として……うぅぅん。お話として面白いかどうかはともかく、押さえておくべきかなぁと思うのは『新選組』(黒鉄ヒロシ)。あああ、手塚治虫の『新選組』はどうなんだろう……
って考えると、結構いろいろあるもんですねー。


あ、話は、実ははてなサブアカウントで取ったブログで書いてます。興味があったら――探してみてください。大したもんじゃありませんが。


さて、今月は何か出たかしら。
とりあえず、『イレブンソウル』(戸土野正内郎 マックガーデン)の2巻目が出る、くらいだったような……
今年も読むもの少なそう……

新撰組の波が!

久々に巡ってきてしまった……


いや、ご多分に漏れず、高校時代とかに土方歳三にはまっていたのですが、今回の波は、相方の夢からだからなー。ヘタレとニートの副長と一番隊組長(苦笑)。


で、昔の『燃えよ剣燃えよ剣(上) (新潮文庫) 燃えよ剣(下) (新潮文庫)を引っ張り出してきて読んだのですが、うん、何かこれで沖田がもっと黒いオーラを放ってれば、充分“ニートな人斬り”だし、副長も、俳句の件とかをクローズアップすれば、十二分にヘタレですね。
まぁ、ちょっとヘタレエピソードがあるので短い話書きたいなぁと思ったのですが、沖田、これなら黒くても全然平気ね! 怒られないわ! ヘタレ副長は……まぁ、“ カワイイ♥”となるように頑張ろう(苦笑)。


で、ついでにブックオフで『新撰組』(松浦玲 岩波新書)新選組 (岩波新書)を手に入れたのですが――
うーん、作者の人は不満かもしれないけど、多分近藤さんは司馬遼が書いたのとそんな変わんなかったと思う。だって、拳骨口に突っ込むような人が、“いいひと”以上だとはあんまり思えないもんね。おそらく、試衛館時代ってのは、近藤さんを中心にして、和気藹々とやってたんだと思いますよ、ええ。楽しかったんじゃないかな、何と云うか、悪餓鬼の一群が、それなりに幅をきかせてた感じで。
でも、うん、少なくとも、鳥羽・伏見あたり以降の近藤さんってのは、やっぱり何か駄目になっちゃった感じはあったんだろうなぁ、とも思うのですよね。つーか、逆境に強いタイプじゃなさそう、と云うか。
男のひとは、近藤さんみたいな、豪傑っぽい人を担ぐのが好きなんだろうなぁと思いつつ、しかし土方・沖田あたりが好きな女の人の気持ちもよくわかる、と云うか、一応生物学的には女ですから(笑)。
何と云うか、組織のいち歯車として戦い、死んでいったひとに、ロマンを感じるんだと思うんですよね。まぁ、それを“男ってのは仕方ないわね”と云う気持ちも実際あるんだろうけど、でも、カッコよくてストイックでイケメン、とか云ったら、普通の女の人は好きだよね。不可能な理想追っかけてたら、“一途でかわいい♥”だろうし、ちょっと怖いタイプなら、“いけない魅力が♥”なんだろうし(笑)。


まぁ、私の中ではもうヘタレとニートに変換済みなので(苦笑)、書くにしても、そんな調子でいきますが。
とりあえず、資料は集めないぞー!(新撰組関連、資料本多いんだもん) 頑張るぞ! おー!


しかし、今『新撰組血風録』を探しているのですが、どうして新装版って、あんなにフォントの等級が大きいんだろう――個人的には、ページまわりの余白のことも考えると、文庫なら7〜8ポが一番可読性が高いと思うんですけども、どうでしょう。
それなのに、『血風録』の新装版でないのが見当たらなくて泣けるんですけど……角川文庫版は、字デカ過ぎだから!
ううう、古本屋回らないと難しいかなぁ――しかし、既に4店舗くらい回って、見つからないんだけどなぁ……

読まないままってのもアレなので、

読んでみました、惣領版『チェーザレ』。チェーザレ 破壊の創造者(1) (KCデラックス)


う〜ん……
び、ビミョー……
何がって、だからヴァレンティーノ公の性格とかが!
いや、時代考証はかなりしっかりやったんだなー(まぁ、講談社モーニングだしね)とは思うのですが、しかしながら、チェーザレ(この呼び方、何か落ち着かねーなー)の性格って、あんなんじゃないと思っちゃうのは、私の性格がアレだからか。


でも、結構有名な話の、弟のホアンを殺した疑惑とか、ああいうことを(まぁ事実であるにせよないにせよ――事実じゃないかとは思いますが)囁かれるような素地があるってのは、あんな温和なキャラじゃねぇだろって云う。だって、2歳年下の弟を殺しそうだと世間に思われる(まぁ、当のホアンがどうしようもない駄目男だったとしても)ってのは、やっぱ何か人と違うとこがあったんじゃないのー? と思いません?
で、22でその弟殺しの疑惑が浮かぶんなら、そこに至るまでの確執なんか、表立っての争いにまで発展していなくても、ずっと前からあったと思うんだよね。つーか、ないとおかしい。普通に考えたらあるだろう、絶対。
そうなると、16(惣領版開始時)のヴァレンティーノ公が、あんな素直なわきゃねーよと思うのですよ。きっとひねまくったキャラだっただろうなぁと。
同じような意味で、コロンブスもあんな性格じゃなかったよ。つーか、ああ云う“気の良いおっさん”タイプは、自分の信念貫き通して、未知の大陸目指したりはしない。結構エキセントリックで、陰鬱な狂信者、くらいじゃないと、行けるかどうかもわからない“ジパング”目指して旅だてっこないですよ。


そういう意味においては、新資料だか何だか知りませんが、人物の掘り下げは甘いなぁと思いますね。これは、資料云々の問題じゃないか。
まぁ、歴史の評伝とか見てると、心理学的&精神医学的にはどうよと云うような解釈も多いので、これは惣領冬実&編集部の責任に帰するのもどうよと云う部分はあるのですが、しかしまた、確かに最近の創作物ってのは、心理学的に甘い人物設定が多いことも否定できないのですが。


うーん、とりあえず本当に時代考証は頑張ってると思います。ミケの天井画が描かれる前のシスティーナ礼拝堂とか、いろいろね。
でも、でもなんだよなぁ。
あと、いつも書いてますが、レオナルド・ダ・ヴィンチは、ロレンツォ・イル・マニフィコには冷遇されてたんだってば。まぁ、見せ場を作ってあげたいのかもしれないけど……あまりにも買いかぶられた評価してると、ちょっと微妙な気分になりますよ……
大体、ヴァレンティーノ公16歳時は、先生、サライを拾ったばっかりで、それに夢中(つーか日々ばたばた)だったと思うんだけどね! まぁフィクションだけどさ、『チェーザレ』そのものはね……
まぁ、次巻以降も気が向いたら買うかも。気が向いたら。


とりあえず最近では、『レオナルド神話を創る』(A.R.ターナー 白揚社)レオナルド神話を創る―「万能の天才」とヨーロッパ精神が面白かったですよ。まぁ、一般向けの本じゃないですけどもね……(苦笑)