虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「山海経」と「怪奇鳥獣図巻」

 私が「山海経:せんがいきょう」を知ったのは、諸星大二郎のマンガ作品「孔子暗黒伝」に登場する崑崙山(こんろんざん)の聖獣・開明獣を見てからです。人面獣身のこの珍獣は、私に大きなインパクトを与えました。


 さて、その山海経についてですが、wikiでは以下のように紹介されています。

山海経』(せんがいきょう、山海經、中国語 Shān Hăi Jīng)は、中国の地理書。中国古代の戦国時代から秦朝・漢代にかけて徐々に付加執筆されて成立したものと考えられており、最古の地理書(地誌)とされる。
 (中略)
山海経』は今日的な地理書ではなく、古代中国人の伝説的地理認識を示すものであり、「奇書」扱いされている。著者は禹の治水を助けた伯益に仮託されるが、実際は多数の著者の手によるものと考えられる。


そう、中国から見た四方八方の山や海に(あるいはその向こうの陸地)に住む怪奇な鳥獣を記載しているのです。


ここに登場する鳥や獣は、極めてグロテスクで、その名前も、「はああ、こんな風に漢字の部首を組み合わせられるのだな」、と思わされる奇天烈なものが多いのです。


フケイ

頭が人間で胴体が鳥。



リュウテツ

9個の頭と9本の尻尾を持ち、胴体は虎。



全編がこんな感じです。恐るべき想像力(空想力?)です。どうでしたか?他にも、鼠(ねずみ)の尻尾を持つ怪鳥、人の足の下半分を持つ怪鳥、手と足がそれぞれ一本だけの獣などなど・・・また、「それが現れると、大旱魃(だいかんばつ:日照り)になる怪鳥」とか「戦争が起きる獣」とか逆に「大豊作になる獣」とかの「良かれ悪しかれ」人間と関わりをもつ鳥獣たちなのです。


昔の中国の人は、意味不明にして襲ってくる天変地異を怪物の仕業だと思っていたかもしれないですね。そこに、山海経編纂された経緯があったのであろうと思います。もっとも、歴史家の司馬遷は、この書物を完全に無視したらしいです。


そして、江戸時代の日本で、この山海経をリメイクする人がいて、出来上がったのが「怪奇鳥獣図巻」です。怪物の中には欠落したものもあり、完全には山海経をフォローしていませんが、まあ、だいたいの雰囲気はわかります。また、山海経に出てこない怪物をも数例編入しています。


もっとも、山海経自体は、奈良時代に日本に伝来していますし、中国の清の時代にも模写版が発行されていますから、案外日本人の目にも晒されたのだと思います。



今日のひと言:「怪奇鳥獣図巻」は工作舎から2001年に発行されています。監修・解説は伊藤清司さん。(1924年生まれ、慶応義塾大学卒、同教授。専攻は中国古代史、民俗学。主な著書に「日本神話と中国神話」(学生社)、「中国の神獣悪鬼たち」(東方書店)など。)


なお、今年(2014年1月)に白魔女さん(id:whitewitchさん)を訪ねた際、「脚が6本ある鶏」の画像を見せてもらいました。遺伝子操作をして、可食部を無理やり増やそうというさもしい根性が透けて見え、気分が悪くなりました、一種のキメラ・・・山海経の世界は、現代、実現されているのです。


怪奇鳥獣図巻―大陸からやって来た異形の鬼神たち

怪奇鳥獣図巻―大陸からやって来た異形の鬼神たち



今日の料理



@味噌汁2題

1)コリアンダー入り味噌汁



コリアンダーパクチー香菜)は、ひろく東南アジアや中国で食べられているハーブ。癖のある風味で、好き嫌いが分かれるものですが、私は嫌いではありません。今回は、越冬した株から3cmくらい切り取って、いつもの味噌汁の香りづけに使いました。なかなか良い出来でした。

 (2014.04.14)


2)金時草(きんじそう)入り味噌汁




越冬させてやや徒長した苗の枝から葉を取って入れました。苦みを感じました。
この植物については

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20091007#1254919782

 :金時草はいかがですか?

を参照してください。

 (2014.04.15)



身欠きニシンの煮つけ



ニシンを乾燥、ないし半乾燥させて、保存性を持たせた食材をこう呼びますが、新鮮な海の魚が入手しにくい山間部では、根強い人気があります。ニシンも青魚とされるようで、川魚では摂取できないDHAとかEPAなどを含んでいるのです。

 (2014.04.16)



@ウコギ飯



ウコギ(五加皮)はウコギ科の木で、ウドタラコシアブラなどの有名な植物の元締めです。春先に生えてくる新芽を洗ってみじん切りにして、ご飯に混ぜて食べます。ほのかな苦みが持ち味で、その昔、直江兼続とか上杉鷹山など、庄内藩の指導者が、飢饉に備えて垣根にすることを奨励したことで有名です。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090824#1251092373

  :上杉鷹山と「かてめし」(かてもの)

 (2014.04.16)




今日の二句


この高さ
手に取れまいに
柿の実を


柿の巨木を見て。実を取ろうと思えば、脚立などが必要になるでしょう。

 (2014.04.17)



初に見る
月桂樹花
秘めやかに



クスノキ科月桂樹は広く料理に使いますが、ローレルローリエベイリーフなどの別名が多いです。この木はわが家の裏の家に生えているものです。

 (2014.04.18)