虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

藤島武二〜〜近代日本洋画の父

切手の教化力はものすごく、一度見ただけの切手の図案に大いに感動することがあります。藤島武二の作品「蝶」も、1966年の切手趣味週間切手として発行されていて、幼い心に「なんだかHなことを描いているのかな」、と思われたものです。実際、この絵は一輪の花に口づけする美女の周りを沢山の蝶が飛び交っています。花と蝶・・・花は女性、蝶は男性を暗示する・・・森進一の初期の演歌に「花と蝶」というのがあり(ふっるー!!)、この組み合わせだけでもエロチックなのに、女性は髪が乱れています。(藤島は同時代の与謝野晶子の「みだれ髪」の官能的な表紙絵も描いたそうです。)






さらにこの絵のモダンさはどうでしょう。この絵が描かれたのは1904年(明治37年)、日本は日露戦争真っ只中で、よくも軍部がこのようなエロチックな絵を認めたものです。
一般には藤島武二は「ロマン派」の画家であると言われますが、この絵を見た限り、アルフォンソ・ミュシャにも近いものを感じます。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080710#1215644390

 :ミュシャのゾディアック(黄道12宮)



Wikiから略歴。


藤島武二(ふじしま たけじ、1867年10月15日(慶応3年9月18日) - 1943年(昭和18年)3月19日)は明治末から昭和期にかけて活躍した洋画家である。明治から昭和前半まで、日本の洋画壇において長らく指導的役割を果たしてきた重要な画家である。ロマン主義的な作風の作品を多く残している。


鹿児島市薩摩藩士の家に生まれた。はじめ四条派の画家や川端玉章日本画を学ぶが、のち24歳の時洋画に転向(日本画の作品は殆ど現存しない)。1896年(明治29年)、1歳年上の黒田清輝の推薦で東京美術学校(現・東京藝術大学助教授に推され以後、没するまでの半世紀近くに渡り同校で後進の指導にあたった。1905年(明治38年)、文部省から4年間の留学を命じられ渡欧、フランス、イタリアで学ぶ。帰国後、教授に就任。

(中略)
1901年(明治34年)2月ごろから6年間担当した与謝野鉄幹・晶子が刊行した雑誌「明星」や、晶子の歌集『みだれ髪』の表紙では流行のアール・ヌーヴォーを取り入れている。ほかにも装丁本がある。


晩年は宮内庁からの2つの依嘱、昭和天皇即位を祝い学問所を飾る油彩画制作と、宮中花蔭亭を飾る壁面添付作品の制作が切っ掛けで風景画の連作に挑んだ。1937年(昭和12年)、最初の文化勲章受章者の一人となる。1943年脳溢血のため永眠。享年75。

さほど有名ではないですが、日本洋画家界の重鎮であり続けたのですね。


「芳恵」(1926・大正15年)





この細密な絵は、もちろんフランス、イタリア留学の賜物でしょうね。油絵でこれほど堅牢さが絵の手触りとして伝わってくるのも彼の手柄でしょうか。その微笑は「不可解」で、ある意味ダ・ヴィンチの「モナリザ」の東洋版だと言えますか。



琉球の女」(1936・昭和11年)





クロッキーもお手のものです。この素描の完成画はないようですが、もし描いていたらどんな出来になっていたか、気になるところです。


「噴水」(1908−1909・明治41−明治42年)




私にはこの絵、ロマン主義とかフォービスムというより、印象派クロード・モネを範としたように見えます。藤島武二は、日本洋画界発展のため、ヨーロッパのあらゆる美術形式を学んだのだと思います。



今日のひと言:藤島武二は、蝶が好きで、「蝶」の絵を描くために2000羽からの蝶を観察・写生したそうです。絵一枚描くというのも、大変な作業になりうるのですね。


また、今回挙げた4枚の絵には男性を描いたものはありませんでしたが、自画像、半裸の男性の後姿を描いた絵もあります。


なお、今回参考にした画集は「カンヴァス 日本の名画 6 藤島武二」(中央公論社)です。



藤島武二 (新潮日本美術文庫 (28))

藤島武二 (新潮日本美術文庫 (28))

藤島武二 日本編65 (アサヒグラフ別冊)

藤島武二 日本編65 (アサヒグラフ別冊)




今日の料理



@ウルイの浅漬け






ウルイ(ないしギボウシ)。庭の片隅に植えて、幾年月、あまり面倒を見なくても、毎年姿を見せます。山菜の一つに数え上げられますが、味はいまいち。そこで若葉を摘んできて、塩もみしてしばし置き、塩を流して改めてエバラ浅漬けの素で1時間ほど置きました。ちょっとは美味しくなったかな?

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20120529#1338286796  :草姿についての記述のある過去ログ


(2015.05.18)





@セロリ料理2品


 @1:セロリの葉のオイスターソース炒め





弟作。文字通りの料理です。仕上げにカツオ節を散らします。

 (2015.05.20)



 @2:セロリの茎とキャベツの煮物





弟作。コンソメスープで両者を煮込みました。最後にカツオ節を振りますが、今回2品ともカツオ節を入れたのは、セロリが体内のカルシウムを排出してしまう、と聞いたことがあるからです。

 (2015.05.20)




今日の詩


弟と雛



わが弟は喩えようがないほど 優しい。
昨日弟の寝室のエアコンを抜去した穴・・・


タオルをねじ込んで塞いだところから
雛の啼く声がした。


私なら、撤去してしまうことも有りだが
弟は放置しておくという。


微かな声が気にならないのは
弟の寛容さによるのだろう。


もしかしたら弟は啼き声に
川のセセラギを聴くのかもしれない。

 (2015.05.22)