虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「巨人の星」が資本主義による高度経済成長を戯画化する

スポーツ根性物語(スポ根)の一つとして、いまでも知名度が高い「巨人の星」。原作者の梶原一騎は、並行して複数のスポーツ根性物語の原作を手がけており、「あしたのジョー」(ボクシング:高森朝雄名義)、「アニマルワン」(レスリング)、「柔道一直線」(柔道)、「赤き血のイレブン」(サッカー)などなど、多作です。


中でも、ザ・カジワラとして代表格が「巨人の星」(野球)です。この作品については、「クソマジメな」登場人物ばかり登場し、隙無くエピソードが積み重なって高山を縦走するような感想を私は抱いています。それだけ物語の密度が高いのです。


この物語は、「野球道を極める」という感じで、主人公:星飛雄馬(ほし・ひゅうま)が幼少期から、“元巨人軍の選手で、わけあって退団した父:星一徹(ほし・いってつ)の厳しい指導のもと”、様々な苦難を克服し、最後に、プロ野球の場で敵にまわった一徹を相手に、完全試合を達成するという勝利を迎えます。(代償も高かったですが・・・飛雄馬本人は選手生命を絶たれます。)


この作品は、日々の努力をストイックに行うことで、明日は良い日になるというエトス(社会的気分)が充満しています。父によるウサギ跳びの非科学的なメニュー化、野球に益する遊びしか父に許されなかった理不尽、最後に愛息子の正面に立ちふさがり、息子の選手生命を奪う父。(この父は、極めて珍しい性格類型に属すようです。もっとも、この種の人物は他の梶原作品にも登場します。例えば「柔道讃歌」。)


このようなエトスは、マックス・ウェーバーが『プロスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で描いた社会を、高度経済成長期の日本にも見ることが出来るでしょうね。ただ、当時の日本にスイスと同じような「信仰心」があったかは明確には示せません。それがなくて、「日々向上」といった心で、経済活動を行ない、一時は世界第二の経済大国にまでなるのですから、日本人は得体が知れないですね。


上に述べた意味で、「資本主義」というものの日本における受容ということは、大変興味深い問題です。日本で最初に資本主義というものを取り入れたのは、多分坂本龍馬であり、「亀山社中」というのが嚆矢だと思います。かれはカンパニー(会社)というものの本質をよく知り、いろいろ活用した訳ですね。でも、彼にも信仰という二字が見えません。


どうも、日本人という民族は、宗教的な裏づけがなくても、ストイックな資本主義社会を作ってしまうようです。この特性は、日本にとって良いことか・・・池田勇人首相の「所得倍増計画」・・・この政策は確かに効を奏し、日本人の生活は豊かになりました。その裏で、日本各地で公害病・・・水俣病イタイイタイ病四日市ゼンソク、あまたの病気が工場の影響圏で発生しましたが、(有効な)宗教のない日本人らしく、公害企業は責任を取らず、被害住民は、被害者および良心的な科学者の尽力で、発生してから10年以上の歳月を経て、和解に至ったわけです。



今日のひと言:話題がなんだかずれてしまいました。ただこのブログ、「巨人の星」を枕にして、資本主義の話をする積りだったので、ずれてはいません。


参考過去ログ

 http://d.hatena.ne.jp/iirei/20100131#1264877318

   :ここが変だよ資本主義



懺悔録 (幻冬舎アウトロー文庫)

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梶原一騎伝 夕やけを見ていた男 (文春文庫)

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欲望の資本主義

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資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

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プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)




今日の一品



@アボカドのゴマ・ワサビドレッシング



弟作。アボカドがアメリカで、寿司ネタとして登場した際、当然ワサビと合わせて美味しかったでしょう。その意味でこの食材同志の組合せは当を得ているのでしょう。

 (2018.06.29)



@切り干し大根



弟作。ちょっとワンポイントは、クコの実入りだという事。そのほかは通常の作りかた。

 (2018.06.30)



@ドドメおじや



以前取り上げたドドメのおじや。今回は未熟クワの実(冷凍させた)、山椒の実(自家製)、ネギ、ショウガ入り揚げカマボコを、味付けはお茶漬けの素(永谷園)。ふうふうしながら食べました。

 (2018.07.01)



@揚げ鶏のペリル乗せ



市販の揚げ鶏(タルタルソース+南蛮)を食べるとき、シソの葉エゴマの葉を乗せて、風味を加えました。シソ、エゴマともに英語で「peril」(ペリル)とよばれます。ちょっとの風味の違いは反映されていません。

 (2018.07.03)



ポークソテー・セージ&バジルソース風



セージは、特に豚肉料理にマッチするハーブだとされます。プラス、バジルソースで風味付けしました。良い出来です。

 (2018.07.04)




今日の詩


@山羊ヒゲ


今日は久しぶりにある人にお目に掛った。
小柄で工員風の彼。
白髪と化した髪と
30cmはありそうなアゴヒゲ。
年を経た白い山羊(やぎ)のよう。


私が敬愛した放浪の詩人
サカキ・ナナオさんが脳裏に
二重写しになる。
この人も詩を捻るのか?
多分そのくらいの実力はあろう。


参考過去ログ

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20101112#1289519036

 :私が出会った3つの大きな人格:サカキナナオ氏:槌田劭氏:丹下哲夫氏

 (2018.07.05)




今日の二句


美味しそう
ブラックベリー
垂れ下がる



散歩道の途中に見える柵(金属製)に絡む美味しそうなバラ科の木苺の一種。

 (2018.06.30)



用水路
磯の香りは
水藻かや



淡水の用水にも、一瞬磯の香りを嗅ぎ当てました。調べたところ、確かに藻類からこの種の香りが分泌されるらしいです:ジメチルスルフィド

 (2018.07.01)