『情報社会と共同規制』ブログ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-01-19

[]『「統治」を創造する』シンポジウム(1/23)に登壇します

 一件ご案内です。昨年12月慶應西田亮介さんや一橋の塚越健司さんたちと一緒に執筆した『「統治」を創造する―新しい公共、オープンガバメント、リーク社会』が出版されました。私自身は第7章「オープンガバメントと著作権―欧米の取組と日本への示唆」を担当し、諸外国におけるオープンガバメントの著作権の取扱について紹介した後、日本においてもクリエイティブ・コモンズライセンス等を利用して政府情報オープン化を加速していくべきだということを論じています

 その出版関係の企画として、以下の要領で1月23日(月)に、永田町の憲政記念館にてシンポジウムを開催することになりました。執筆陣全員勢揃いで、今後の新しい日本の統治のあり方について多面的に議論する予定です。18時からとお勤めの方もご参加しやすい時間帯になっておりますので、ご関心ございましたらぜひご来場くださいませ。

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特別シンポジウム『「統治」を創造する ―新しい公共、オープンガバメント、リーク社会

http://ozakiyukio.or.jp/project/2011/12/post-9.html

(財)尾崎行雄記念財団「咢堂塾21」特別シンポジウム

「統治」を創造する

―新しい公共、オープンガバメント、リーク社会

日本を揺るがした大震災。そこで人々をつなげたのは「Twitter」や「助けあいジャパン」などにおけるSNSだった。またウィキリークスによる機密情報のリークやジャスミン革命における「Facebook」の活躍なども連日報告されてきた。これら「支援」から革命」までを横断する、高度情報化社会における変革の背景には何が見えるのか。一人一人が世界を変えられる時代に必要なヴィジョンとは。12月に発売された『統治を創造する』の執筆陣が語り尽くします

登壇者

 西田亮介(にしだ・りょうすけ):

1983年生。東洋大学非常勤講師慶應義塾大学大学院後期博士課程在籍中。中小機構リサーチャー、デジタルハリウッド大学非常勤講師等を兼任。

 塚越健司(つかごし・けんじ):

1984年生。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程在籍中。専攻は社会哲学・政治社会学フーコーからウィキリークスまで幅広く研究

 谷本晴樹(たにもと・はるき):

1973年生。(財)尾崎行雄記念財団主任研究員。Inter Press Service Japan理事。ネットメディア『政策空間』編集委員。政治社会学会監事。

 吉野裕介(よしの・ゆうすけ):

1977年生。京都大学博士経済学)。日本学術振興会特別研究員スタンフォード大学客員研究員を経て、現在京都大学GCOE研究員

 藤沢 烈(ふじさわ・れつ):

1975年生。(社)RCF復興支援チーム代表理事一橋大学社会学部卒業後、飲食店経営マッキンゼーを経て独立ベンチャーやNPOの支援に携わる。東日本大震災復興対策本部非常勤スタッフ

 生貝直人(いけがい・なおと):

1982年生。東京大学大学院学際情報学府博士課程在籍中。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、NPO法人クリエイティブ・コモンズジャパン理事、東京藝術大学総合芸術アーカイブセンター特別研究員等を兼任。

 イケダハヤト:

1986年生。早稲田大学政治経済学部卒業後、大手半導体メーカー広報を経て、独立ライター、講演活動、政治家やNPOのソーシャルメディア活用支援を行う。

 円堂都司昭(えんどう・としあき):

1963年生。早稲田大学第二文学部東洋文化専修卒。文芸音楽評論家。『「謎」の解像度ウェブ時代本格ミステリ』(光文社)で日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞受賞。

【日 時】 2012年1月23日(月)午後6時00分〜8時00分

【会 場】 憲政記念館 第一会議室     

(千代田区永田町1-1-1:有楽町線永田町駅、丸ノ内線国会議事堂前駅2番出口・徒歩5分)

【参加費】 無料

参加希望の方はこちらまでご連絡ください。

(info@ozakiyukio.or.jp宛てに、お名前をお伝えください。)

2011-12-28

[]EU行動ターゲティング広告業界団体の自主規制案が大苦戦中

 少し間が空いてしまいましたが、引き続き『情報社会と共同規制』では第5章「行動ターゲティング広告プライバシー保護」で取り扱ったEUのプライバシー政策関連でこれまた重要な動きがありました。

 先のポストで取り上げたデータ保護指令全面改正ドラフトでは、行動ターゲティング広告に関わるクッキー等の取り扱いは含めず電子プライバシー指令で引き続き対応していくことが確認されていた(ドラフト89条)ことを書きましたが、そちらの電子プライバシー指令に関わるクッキーの取り扱いについて、「行動ターゲティング広告業界団体の自主規制案を29条作業部会がリジェクトした」件についての詳細なopinionが出されました。

 少々文脈が複雑なので拙著をかいつまんで背景からご説明致しますと、EUではクッキーを利用した行動ターゲティング広告につき、2002年当初の電子プライバシー指令(2002/58/EC)の5条(3)において「ユーザーの端末(terminal equipment)に蓄積された情報は、当該ユーザーがその利用目的等についての明確かつ包括的情報を与えられている場合に限り利用可能であり、ユーザーはその利用を拒絶する権利を持たねばならない」として、オプトアウトでの対応を規定しておりましたところ、

 2009年の通信関連指令大改正に伴う電子プライバシー指令改正(2009/136/EC)において同条は「ユーザーの端末に蓄積された情報は、当該

ユーザーがその利用目的等についての明確かつ包括的情報を与えられた上で同意を得た場合に限り利用可能である」と書き換えられ、オプトインでの対応が求められることになりました。

 この改正については関連業界からは当然大きな抵抗が起き、いまだ改正指令自体が数カ国でしか国内法化がされていない状況が続いておりましたが、中でも英国では、オンライン広告業界団体が中心となって「あくまでオプトアウトにこだわった」自主規制案を作り、それを英国内個人情報保護当局に承認してもらう共同規制の体制作りに向けた努力を続けておりました(このへんまで5章で紹介しました)。

 この動きは英国を超えてEU域内のオンライン広告業界全体に広がっており、2010年ごろからEUレベルでの広告業界団体European Advertising Standards Alliance (EASA)とInternet Advertising Bureau Europe (IAB)が中心となり同じく「あくまでもオプトアウトにこだわった」自主規制原則を策定し、EUレベルでの共同規制の構築に向けてEU当局の承認を求める作業を進めておりました(背景では欧州市場規制強化を止めたい米国のIT企業勢がスポンサーになっていると聞いています)。

 雑駁に要約しますとこれは「改正電子プライバシー指令の文言ではオプトインが原則と書いてあるけれど、それではライフログ商売が成り立たないので、オプトアウトでの自主規制業界全体としてちゃんと責任持ってやっていくので、それをもってオプトインは勘弁してください」ということを業界側が欧州委員会にお願いに行っていたという話なのですが、今回の29条作業部会のopinionは、それに対して「いや、やっぱりオプトインじゃないとダメだ」という回答を明確に返したということになります。

(さすがに「ダメだ」だけでは「それじゃ一体どうすれば、、」という話になってしまいますので、29条作業部会としても上記opinionのp.9-10にてオプトイン同意取得の方法論としていわゆるポップアップ型の他、バナー型やブラウザデフォルト設定等のいくつかの類型を示しており、正しいオプトインのやり方として参考になります。)

 この自主規制原則が認められるかどうかは、EUにおける行動ターゲティング広告産業の将来を実質的に占う試金石とも言えるものだったので注目しておりましたが、やはりEUのプライバシー重視の姿勢は強硬の模様です。もちろん業界側としてもまだ完全に諦めたわけではなく、引き続きギリギリのラインを巡る鞘当が行われていくものと思いますが、業界側としてはかなり厳しい戦いを強いられることになりそうです。

 一方米国では最近のいわゆるDo Not Track法案などを見ても基本的にはオプトアウトの仕組みを強化していく方向で対応する模様で、我が国としても昨年2010年5月の総務省「配慮原則」によって米国型の仕組みを暫定措置として採用していくことが確認されましたが、EUの側がこのような強硬姿勢を堅持するとなると、所管の消費者行政課としてもこれから先EU型(オプトイン)と米国型(オプトアウト)の「どちらを採るか」という判断は、悩ましいものになっていくだろうなあと思います。

 ちなみに米国型を続けるとしてもオプトアウトの強化策は日本ではまだほとんど手が付いていないところなので、いずれを採るにしても自主規制関連の仕事は多くなるところです。最低限でもEU・米国共に構築を進めている業界団体レベルでの一括オプトアウトの仕組みは必要になってくると思います。

2011-12-13

[]EUデータ保護指令の全面改正草案リーク

 というわけで最初ポストは、『情報社会と共同規制』第5章「行動ターゲティング広告プライバシー保護」で主に取り扱ったプライバシー政策の中でも、特にEUの個人情報保護指令であるデータ保護指令(data protection directive、95/46/EC)についての動きです。データ保護指令については1995年に制定されて以来デジタル時代の変化に対応するための改正の必要性がここ数年議論されてきており、来年2012年1月にはその全面改正草案が公開される予定だったのですが、なんと先日その草案が誰かによってリークされてしまいました。

 

http://www.statewatch.org/news/2011/dec/eu-com-draft-dp-reg-inter-service-consultation.pdf

 

 まず何より大きいのは加盟国が国内法で対応を行うこととなる指令(directive)から、発行と同時に域内における強制力を持つ規則(regulation)への変更が前提になっているところです。その他主な改正内容だけ挙げても話題の「忘却される権利(right to be forgotten)」の導入や医療・遺伝・生体認証センシティブ情報定義と取扱区別の明確化、29条作業部会の強化改組、越境的個人データ流通を円滑化するための拘束的企業ルールBCR)の見直し、データ管理者と対象の力関係が甚大な場合への対応などを含めた「同意」の実質性の強化、年間利益の5%を上限とした罰則金などなどなど本当に多岐に及びますが、その辺は英語の解析記事も多いのでそちらに譲るとして、本書の関係から特に重要なのものとしては以下の2点が挙げられると思います

 

・第一に、ドラフト89条で確認されているように、今回は電子プライバシー指令(e-privacy directive、2002/58/EC2009年に2009/136/ECで大幅改正)との統合が視野に入っていないことです。本書5章で取り扱ったような行動ターゲティングに主に用いられるブラウザクッキーや、DPIdeep packet inspection)に関わる通信の秘密等は基本的に引き続きE-Privacyの方の指令で担保されることになります。ここしばらくネット関係のプライバシーの話題としては行動ターゲティング広告関係がホットだったのでその方向の改正もあるのかなと予想していたんですが、行動ターゲティングライフログの問題はいまだレギュレーションで取り扱えるほどのコンセンサス存在しておらず、引き続き各国の取組と産業界自主規制の進展を注視していく段階という現状認識なのかな、と思います。もちろんまた電子プライバシー指令の方の改正が入ることもあるのかもしれません。

 

・第二に、ドラフト35条で現行27条にあった産業界の行動規定(Code of Conduct)の取扱についての記述を大幅に拡充しコミッション承認等の手続きを詳細化していること、そしてドラフト36条でcertificationの規定を新設しEUレベルでのプライバシーマーク的なものを促進するとしているなど、自主規制・共同規制方法論を積極的に活用していく姿勢が示されていることです。これは単一のレギュレーションで全産業分野を包括的に取り扱うことにはやはり限界があることに一定の配慮を示したものだと考えられますレギュレーション化によって確かに「各国毎の」規律の差異はなくなりますが、(ある意味では日本の個人情報保護法について各省庁が数十のガイドライン作成していることと同じように)今後EUレベルでの「産業セクター毎の」自主規制・共同規制が形成され、実質的セクトラル型の(いわば「タテ」から「ヨコ」への)ルール形成が少なからず進展していくことになるのではないかと思ったりしています特に忘却される権利ドラフト15条で表現の自由等の例外を含めてそれなりの分量を使って記述していますが、やはりそれだけからウェブサイト等はじめとする色々な企業の具体的な振る舞いを指定できているわけはなく、この権利の実現にこそ共同規制手法が駆使されることになるのではないかと予想(期待)しています

 

 この件は1月に正式なドラフトが出てきた後にもまた詳しく検討して参ります。色々と批判は多くてどの程度の大改正になるかはまだまだわかりませんが、もし大筋でもリーク文書の通りになるとすればそもそも現行指令を大きく参考にしている日本法も改正の機運が大きく出てこざるを得ないところだろうと思いますし。

 

2011-12-12

[]ブログタイトル変更しました

 本ブログは元々「ikegai.jp@hatena」というタイトルで運営していましたが、2011年10月に拙著『情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究』が出版されたことを受けて、そのアップデートを中心に、EU・米国を中心とした世界各国の情報政策について書いていくことに致しました。

情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究

情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究

 「共同規制(co-regulation、コレギュレーション)」という言葉は日本ではまだあまり知られていませんが、主にEUの情報政策分野を中心に世界各国に広がりつつある、企業や業界団体の行う「自主規制(self-regulation)」に対して、政府が枠組設定や監視・罰則権限の保持等を行うことによって、柔軟な自主規制のメリットを活かしつつも、適切な政府関与をすることで確実に目的を達成していこうという政策手法です。

 『情報社会と共同規制』では2011年7月の脱稿まで、できる限り最新の内容を含めるよう心がけましたが、やはり情報政策はおそろしく動きが激しい分野で、ここ数ヶ月の間にも本書で取り扱ったテーマに関わる重要な立法や判例が出始めています。あまり頻繁な更新はできないと思いますが、EU・米国・日本の著作権・プライバシー・表現の自由に関わる最新の状況をちくちくとお伝えしてければと思いますので、よろしくお付き合いくださいませ。

2011-10-19

[][]拙著情報社会と共同規制インターネット政策の国際比較制度研究―』

 今月、初の単著が刊行されました。

 企業や業界団体による私的秩序形成としての自主規制(self-regulation)と、それに対する政府の補強措置によって構成される公私の「共同規制(co-regulation)」という概念を軸に、プライバシー著作権保護、表現の自由等、最先端情報政策についてのEU・米国を中心とした幅広いケーススタディ比較検討、政策提言を行っております

 

■生貝直人『情報社会と共同規制インターネット政策の国際比較制度研究―』勁草書房

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b93990.html

f:id:ikegai:20111019212649j:image:w200

 

私人による自主規制でもなく、政府による直接規制でもない。公私で問題解決に向かう新しい政策手法「共同規制」が情報社会を拓く。

 

■内容説明

拡大する情報社会のガバナンスに、公私の「共同規制」ははたして有効か。通信・放送融合時代コンテンツ規制モバイルSNS上での青少年保護ライフログ技術プライバシー保護動画共有サイト音楽配信サービス著作権問題といった現代的課題を中心に、EU、米国、日本の法政比較を通して、情報政策の将来像を議論する。

 

■目次

序章 情報社会における公と私

第I部 政府規制自主規制,共同規制

 第1章 自主規制から共同規制

 第2章 共同規制フレームワーク

第II部 「団体を介した」共同規制

 第3章 通信・放送の融合とコンテンツ規制

 第4章 モバイルコンテンツ青少年有害情報対策

 第5章 行動ターゲティング広告プライバシー保護

第III部 「団体を介さない」共同規制

 第6章 UGCP2Pにおける著作権侵害への対応

 第7章 SNS上での青少年保護プライバシー問題

 第8章 音楽配信プラットフォームDRM

IV部 制度設計

 第9章 共同規制方法論の確立に向けて


情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究

情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究