Information Society and Co-regulation このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-06-08

[]「アメリカとEUの情報政策の違い(各論編その2:表現の自由・サイバーセキュリティイノベーション)」公開しました

 先日ご案内したヤフーさんの「生貝直人の情報政策論」ですが、「各論編」の後半公開致しました。たぶんこのくらいが要約の限界(汗)。導入編はこれで一段落なので、あとは適宜キーワード解説なんか織り交ぜながら「最新の話題」を書いて参りますー。

2013-06-06

[]「生貝直人の情報政策論」@Yahoo!ニュースはじめてます

 ここでのご案内が遅くなりましたが、先月からYahoo!ニュースの個人ニュースコーナーで「生貝直人の情報政策論」と題したコラムはじめました。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/ikegai/

 今のところ記事はまだ下記の3本だけなんですが、EU・アメリカ・日本の情報政策(主にプライバシー著作権、表現の自由、サイバーセキュリティイノベーション)の基礎知識から最新の話題まで色々書いていく予定ですので、よろしければぜひお付き合いくださいませ。

2013-05-25

[][][]スリストライクから共同規制

 少しだけ日本語に戻ります。さいきん諸般の事情により急ぎでフランス語とフランス法を強化中ということで色々やってましたところ、前にモルガン先生から教えて頂いた今月公開のPierre Lescureの報告書に基づいて(Merci beaucoup, Dr Morgan!)、オランド政権文化通信大臣がHadopiを来月にも(extrêmement rapidement, dans le mois qui vient)廃止することを正式に発表したとのこと。兎園さん(いまだご正体は不明)のtwitterにて見つけたのですが、なぜかまだ英語圏ではニュースが見当たらず。

http://www.lemonde.fr/technologies/article/2013/05/20/hadopi-la-coupure-internet-sera-supprimee-en-juin_3385291_651865.html

 

 ということでグーグル翻訳使ってちくちくと報告書読み。本体はこちらの右側PDF

http://culturecommunication.gouv.fr/Actualites/A-la-une/Culture-acte-2-80-propositions-sur-les-contenus-culturels-numeriques

 基本的には代わりに検索エンジン等を含む媒介者の対応を強化させるという形で(34p-)、しかもそのやり方は公的枠付けを受けた自主規制に依るべき(Ainsi, la puissance publique pourrait promouvoir, tout en l’encadrant, une autorégulation fondée sur des engagements pris volontairement par les différentes catégories d’intermédiaires ... Cette forme d’autorégulation encadrée par la puissance publique offrirait une souplesse et une réactivité..)ということで、まさに「政府規制から共同規制への移行」とも言うべききわめて興味深い内容。『情報社会と共同規制』第6章では欧州のスリストライクに関して、

 

・米やアイルランドなんかはプロバイダ権利者団体の協定に基づく「自主規制

・英国なんかは自主規制の失敗に基づく「共同規制」(ただその実現は微妙

・フランスはHadopiの「政府規制

 

 という整理をしてみたんだけど、政権交代という背景があれど、フランスで政府規制たるHadopiが失敗して、共同規制に移行というのは英国と対照的で面白い。「イノベーションと共同規制」では21pに書いたオンラインプライバシーを巡るEU・米国の相互接近の図が、まさに著作権スリストライクを巡って対照的だったフランスと英国の間にも該当し始めているという。やはりネットの問題は自主規制でも政府規制でもだめで、共同規制によってのみ解決されうる。

http://ikegai.jp/Innovation_and_coregulation.pdf

 ちなみにSelf-regulationの訳語として自主規制を充てるのはよいとして、フランスを対象にするときは文脈によってはautopoïèseよろしく「オートレギュレーション」とちゃんと訳し分けるべきなのかなというあたりの問題は専門ど真ん中なので、概念の経緯と実際の運用をよく調べつつ要検討。翻訳言語文化への敬意をもってこそ、ですよね。しかしだとしたら、フランスの共同規制は「セミオート・レギュレーション」、なのか?滝汗

 

 さはさりとて。他に全体的に報告書を拾い読みしている限りでも、現行フランス法にも明文規定のないdomaine publicを明文化すること(38p-)などが含まれており、これは先日の著作権学会島並先生たちのご報告の文脈からも興味深いところですよね。「利用」や「自由」は利用者の権利とし得るのか、あるいは「文化の発展」の上位概念として位置づけられるべきであろう「公共/公益の増進」は、そもそも著作権法の実現しようとする価値に(どの程度)含まれるんだろうか?問題など、など、など。

 ここのところいくつか欧州各国の先生方とやりとりさせて頂く機会が増えているけれど、その中でもフランスは米IT勢との戦いという意味でもとても興味深い一方、孤児作品どころか絶版書籍をもオプトアウトでデジタル化・公開しようとするBNFのReLIRE(http://relire.bnf.fr/)に代表されるように(Merci encore, Dr Morgan!)、自国の「文化のためであれば」逆向きの方向性も非常にアグレッシブなことをしていらっしゃいます。これが本当の「カルチャーファースト」なんだなあと感銘を受けるばかり。日本ももっと真似したいところです。なにしろLe droit civil japonais est basé sur le droit et l'histoire française!ですから

2010-11-13

[]学際学徒の心得

 学部時代も含めて学際学徒10年近くもやってると色々心得みたいなものも見えてくるな、ということで私家版「学際学徒の心得」をtwitterhttp://twitter.com/ikegai)でつぶやいていたのをちょっと転載します。まだまだ勉強していく中で間違いも分かってくると思いますので、たまにアップデートしていけましたら。

 

●学際学徒の心得その1、とにかく数を書くべし。学際分野では「彼は論文少ないけれど実力あるよね」とは誰も認めてくれない。一見関係なさそうな色々な物を結び付けたり新しい現象を論じるためには研ぎ澄まされた分析力と文章力が命。そしてその能力はとにかく数を書く中でしか身に付かない。

 

●学際学徒の心得その2、とにかく色々な人に読んでもらうべし。既存のディシプリンと違ってどんな論文が素晴らしいかの尺度は一義的には存在しない。書きたいこと・書くべきことは片端から書いてできるだけ多くの人に読んでもらう中で初めて価値は見出される。当然文章は極力ネットに載せる必要がある。

 

●学際学徒の心得その3、実践は何だかんだ業績にはならないと心得るべし。認めてくれるところもあるけれど少数派、学界で認められて学者になる以上やはり文章が命。実践で手足口を動かしてる間でも、「この実践をやった人間にしか書けない文章は何か」を見出すことに常に頭を回し続けているべき。

 

●学際学徒の心得その4、殊更博士課程以上になったら日本語の文章は読んでる時間は無いと心得るべし。英語圏ではとんでもない量と質の人たちが本気で学際を学問として何十年もやっている。あらゆる言語・分野から自分の研究に関係する最も優れた文章を探してきて、徹底的にその内容を盗み取るべき。

 

●学際学徒の心得その5、査読に出すべし。学際の場合特に既存分野の先生方に査読で認めてもらうのは難しいけれど、一流の研究者から指導を頂くまたとない機会になる。関係学会が無数ある中でどの雑誌にどんな書き方で出すとどの位の確率で通るかの方法論を体得する必要がある。

 

●学際学徒の心得その6、実業と学問の境目を体得するべし。学際の世界では両者は常にある程度曖昧、その境目は誰にも説明できない。とにかく経験する中でその境界を体得して初めて学問ができるようになるし、それがわからなきゃ「実業と学問の架け橋」だってできるはずがない。

 

●学際学徒の心得その7、競争するべし。学際は常にイノベーション、それは競争の中からしか生まれてこない。学際分野はともすれば「この分野は自分だけ」という場合もあるけれど、そこには競争圧力がない。擬似的にでも競争集団を作り出してその中に身を置く必要がある。

 

●学際学徒の心得その8、研究者にこだわるべし。学際には多才な人たちが多いから他業種に移ることが比較的容易だしそれは望ましいんだけれど、その退出可能性が研究者としての甘えになっていないか。自分が考える研究者像とは一体何で、それにこだわる理由とは一体何なのかを殊更明確に持つ必要がある。

2009-09-11

[]社民党雇用担当相と「多様な労働形態」

 

 twitterだけで済ましているのもさすがにアレなので少しずつブログも生き返らせていこうかと思います。というわけでまずは政治ネタから

 

(9/10)福島氏入閣、社民は雇用担当を要求 鳩山氏、閣僚人事を加速

http://www.nikkei.co.jp/senkyo/2009shuin/elecnews/20090910NTE2INK0210092009.html

 

 本当に福島氏の雇用担当相が通るのならある意味政権最大の意思表明ですよね。政治的には妙案なのかもしれませんが国民最大の関心事を衆参合わせて12議席の政党に投げるというのはなんともはやという話ではあります。とは言え総理大臣が決めてしまえばまあそれはそれで一つの決定として受け止めるしかないので、敢えてポジティブな方向から雇用担当相に期待する向きを思考実験してみたいと思いますあくまで仮説・希望ベースながらとりあえず論点は2つです。

 

1:正規雇用者vs非正規雇用者の対立を止揚できるか?

 雇用問題への伝統的な視点というのは言うまでもなく「資本家=大企業」vs「労働者=労働組合」の対立軸を中心に考えられてきたわけですが、現代ではむしろ池田信夫氏らが主張されるように「(現状の労働組合の大半を占める)正規雇用者」vs「(アルバイトや派遣社員を中心とした)非正規雇用者」の対立軸のほうが重要になりつつあると言えます。例えば社民党が雇用政策を主導することになった時に彼らはこの問題をどう取り扱うのか。現時点では与党の支持基盤との関係もあり正規雇用者寄りの政策に傾くことが予想はされますが、無党派層の取り込みということも考慮するとあまりあからさまなことはできず、むしろ民主党よりもバランスの取れた方向に進んでいってくれる「可能性も」考えられます。いわゆる社会主義政党としての存在意義が薄れる中、社民党が党を挙げて「適切な」雇用政策を集中的に考える集団として生まれ変わっていけるならば、こういう采配も一つの方向性としてアリなのではないかと思います

 

2:「多様な労働形態」を社会制度に埋め込むことができるか?

 上記とも関連しますがこちらはより重要です。僕自身の立場はかなり強固な「市場・イノベーション重視」なので直感的には企業の利益や経済成長を擬制にしてでも雇用を守れという議論とは相反するようにも思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。私自身(そしておそらく多くの経済学者も)、経済成長と社会的安定の両面から見て、安定した雇用はあらゆる社会制度・政策の中で最も重要なものの一つだと信じています

 イノベーションという視点から見た時、おそらく最大のキー概念は「雇用・労働形態の多様化」をいかに社会制度全体の中に埋め込むかという問題でしょう。ダニエル・ピンクの『フリーエージェント社会の到来』までは行かないにしても、非正規雇用労働や複属型労働、そして雇用流動性の確保は経済成長とイノベーションの拡大にとって不可欠な要素として認識され始めています。生産性の低い産業からいかに生産性の高い産業へと労働者を移行させていくのか、一つの会社や組織にとどまらず様々な技能を身につけいかに新結合を引き起こしていくのか。フルタイム・終身雇用の組み合わせが完全に無くなるとは思いませんが、望む望まずに関わらず少数派になっていくことは明白だと言えます

 そして多様な労働形態を進めていく中では、そうした流動性と「個人と社会の安定性」どう両立させていくのかという難しい課題が付いて回ります。これはある意味相矛盾していると考える向きもあるかもしれませんが、私はそうは思っていません。セーフティネットや雇用保険などの各種雇用制度、そして高等教育のあり方といった国家の「プラットフォーム機能」を再構築して両者を両立させ、「大きな政府」と「小さな政府」での極端な揺り戻しが繰り返されることのない継続的なイノベーション国家を実現していくことは可能なはずです。

 制度改革と同時に中長期的にはさまざまな意識面での改革が行われる必要がありますが、雇う側=企業の意識変革と同時に雇われる側=労働者の意識変革を進めていかなければなりません。そうした中で、労働者側との親和性を党是に掲げる社民党が前述のように労働政策を専門的に考え実行する中で労働者の意識に「多様な労働形態」を浸透させていってくれるならば、こうしたある種のトライアルも必ずしも無駄なものにはならないのではないでしょうか。