このオヤジはまったく・・・

[本]

火宅の人 (下) (新潮文庫)

火宅の人 (下) (新潮文庫)

ほぼ実体験の小説だ。
前から読んでみたいと思っていた。
娘で女優のふみさんは、むか〜し、この作品を「読んでいない」と言っていたのを覚えている。
今はどうなんだろう?
愛人宅と本宅を行き来しつつ、
他に何人もの女性を誘っては放浪を繰り返す。
それでいて子煩悩で、
食材の買出しと料理が大好きで、
酒びたり。
読んでてこっちが二日酔いになりそうだ。
本宅・愛人宅・仕事部屋・母親と長男宅、計4軒の生活費と、
それを全部足した額を上回る自分の放蕩遊興費を前借りで乗り切る流行作家。
こんなに家があるのに、しばしば、どこにも帰る場所が無くて街をうろつくハメに陥る。
な〜にやってんだか・・・と苦笑してしまう。
破滅型と言われる事をむしろ光栄だと言い放つ。
う〜ん。男にしてみればある意味憧れかも・・・イヤ、女から見ても羨ましい。
しかし、そこは作家だ。自己分析と人生観をとつとつと書き、
さらけ出し、それを見つめることをやめない。
生い立ち、出征先での体験、先妻との死別、加えて自分でも持て余すほどの体力。
これらがこの人に元気すぎる落ち着きの無い人生を歩ませている。
でも、多分この人魅力的な人だったのだと思う。
たま〜に本宅へ帰ると「チチ〜!」と子ども達がまとわりつく。
子どもの心をうまく捉えてしまう。
ズルイよなぁ・・・他でやりたい放題なのに。
奥さんはたまんないわ。そこで・・・「あなた達のチチは奥さんが3人いるのです」
ウ〜ン(;-_-;)この奥さんを責める事は出来ない。
最後はこれまた破滅的な形で、自ら孤独と向き合っていく。
多分自分の死期を悟っての事だったのだろう。
放蕩の果てにあるもの、安寧の果てにあるもの、
行き着く先なんて誰にもわからない。