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私の時代は終わった。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-09-30

戦慄!救急病棟で本当にあった(私が)怖い話。


霊感があるっつー先輩と夜勤をしてるんですけど。
もう10回くらい夜勤をしてるんですけど。

あれ、私の横で点滴をつめてるのは稲川順二じゃない?
ってくらいに、先輩の霊体験トークを業務の合間合間に聞いてるんですけどー。

あの廊下の影がー、とか。
あの部屋から赤ちゃんの声がー、とか。

オーケー、十分わかった。
いるんでしょう。霊がね。
出てるんでしょう。霊が。

それを承知の上で言いたい。


とりあえず今、霊、どうでもいい。

もうね、テレビの業界では、霊なんつったら、あれですよ。
数字とれっから。
出るならドンドン出ろと。

稲川だってね、何人いても苦にならない。
どんどん話してもらっても構わない。


でもね、かたや、病院なんてね、
生きててナンボの世界ですからね。

霊より患者見てー、と。
言いたい。
けど、先輩なので、言えなかったんですけど。


したら、「今、あそこいるよ。女の霊」つって、これから私が行こうとしてるベッドを指さすわけ。
あの患者さんの枕もとに立ってるつって。


なるほど、と。


えっとね、私だってね、怖い。
見たことないけど、怖い。
多分、これが人気のない夜道だったら、はたまた迷い込んだ廃屋だったら、
思う存分、怖がったと思う。

先輩を十分満足させて余りあるリアクションが取れたと思う。

でもね、先輩、聞いてよ。
今の私には、霊なんかより、あの患者さんから出てる、デリケートな管の方が百万倍怖いわ。

先輩だって知ってるでしょ?
夜勤始まる前の「これ超デリケートな管だから!抜けたら終わりだから!マジ加藤、本気で頼むね!」っていう師長じきじきの申し送り。

主治医からの、「え?今日夜勤、加藤さんなの?!えー!大丈夫かなー、えー!・・・つーか、あの管、ほんと頼むね!ほんと!」っつープレッシャー。


つーかね。
霊?霊ですっけ?
頭に△付けてる方ですっけ?

正直、救急病棟なんですよ、ここ。
人里離れた田舎のトンネルとかじゃないわけですよ。
もーね、江口とかが「開胸するぞ!」なんつって何人飛び出して来てもおかしくない場所なんですよ。

ほんと霊なんていっちゃってる人の方が、全然イキイキして見える。
立ってる時点で、ヨシって思う。
「うらめし…」でも言われようもんなら、「オーケー喋れんね!」つって、ホッとすらする。
そういう場所です。


その上で、「つーか、まぁ見てよ」と。
「役者が違うよね」と。
霊の肩を叩くよね。

正直、霊の存在感とかね、全然薄らいじゃうくらい、
患者さんからあり得ない数の管が出ちゃってるわけ。

おたく、こんな管、出せたことあります?つって。

点滴だけで、5本くらい繋がってるわけ。
お腹の謎の部分から、例の「これ超デリケートな管だから」っつー爆発物処理班もびっくりのドレーンが2本くらい絡まりながら出てきてるわけ。

こんくらい出してかないと、ここじゃ無理よ。と。

しかもだ、ただ出てるわけじゃないんですよ、この管。
全部が1センチでも固定が緩んだら命取り、なんていうね宿命を背負ってて、

赤を切るか白を切るかっつー導火線さながらのドラマティックさで、
私に挑んできてるわけ。

もうね、必死ですよ。
霊をね、見てる暇とか、全然ないわけです。

気を許せば、うーん、とか言ってね、その患者さんがワイルドな寝返りを決めようとしてるわけですよ。
絡まりながら。

ちょちょちょちょちょ!って必死に線という線、管という管を、
右に左に操ってるわけですが。
もう霊の手も借りたい。


だから、もう霊がいようがいまいが、構わないです、私は。


っつーことをね、先輩とデリケートな管を右に左に捌きながら、
とくとね、語ったわけです。

したら、私より数段鮮やかに管を捌きながらも先輩は懲りずに、

「でも、この病院絶対へんだよー。
 床とか変な音するし、壁のシミがあやしいし。個室のドアの建てつけも」

って言ってたんだけど。

もーね、霊感とか言って、それ全部 構造上の問題ですからー。
あと、主任が暗すぎるのは多分霊のせいじゃないですからー。
それ霊感じゃなくて、もはや、悪口ですよー。

「加藤もさ、勤務のあととか、妙に肩こったりしない?」
って、それ先輩、肩こりっす。肩こりって、そうっすからー。

つってね、先輩の話、全然怖くねぇな。って思ってたんですけど。
次の瞬間ね、

「あ、加藤。これ管のワキから結構 浸出液出てない?
 あー、これ、入れ替えなきゃ駄目かも。先生にコールして。」

つってね。
まあ、私を今宵もっとも震え上がらせた一言出たよね。


そうして深夜に、こっちが幽霊みたいな声でコールして、
起きぬけで愛想という愛想を蹴散らかしてやってきた外科医という名のヤクザに比べたら、
トンネルで立ってる幽霊なんて可愛いものです。はい。

「ここで管の位置、調整すっから、すぐに道具もってきて介助して!」
って早口で言われて、「それいけ!」とばかりに今夜もまたドラマティックの渦に飛び込んだわけですが。

今のところ、持ってくる道具が、一個も思いつかないです、はい。
心当たりないです。はい。

とりあえず、数で勝負と、思いつく限りの管っつー管を両手に抱えて参上してみたんですけど、
薔薇だったら求婚するくらいの勢いで先生に渡したわけですけど、
まさかの全問不正解。

恐怖の度合いでいえば、「外科医」っつー怪談話が1つできそうなくらい怒られたわけで。

ふと、枕元にいるらしい霊ちゃんのこと思い出して、
今なら、乗り移られてもOKよって合図送ってみたんだけど、
音沙汰なし、と。


で、まあ、すべてを乗り切った朝。
私のおくれ毛というおくれ毛が飛び出した朝。

救急に差し込む朝日の中で、

「加藤には、霊は取りつかないね。全然うらめしくないもん」

って先輩が言ってたので、もうね、今ならどんな霊より私が化けて出れそう。

2011-08-04

昨日、うちの病棟でアリアドネの弾丸を見かけました。


アリアドネという名は「とりわけて潔らかに聖い娘」という意味があるそうです。
ほぼ、私のことですね。              加藤はいね (30才処女)

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9年目にして配属された病棟の看板に、
「救命救急病棟」って書いてあったのです。がびーん。


いやー、人事の人さー「4階西病棟」つってたから、
「4西、4西」口酸っぱく言ってたからさー、
すっかりね、そのあだ名に踊らされて、
病棟の本名聞くの忘れてたわー。


いやー、看護師になって9年。
お噂は かねがね。
なにやらこの世界には、救急病棟って病棟もあるらしいよ、と。

ほんとにあったかー。
結構、身近にあったー。
ドラマの中だけの架空の病棟かと思ってたわー。


で、まあ、勉強もかねて、ドラマ「救命病棟24時」を
おさらいしたんですけど。

もうね、ドラマティック。
ドラマティック病棟と言ってもいい。

展開が、もうすごいわけ。
これが、あの有名なカードバトルかしら?デュエルかしら?
ってくらいの息を呑むドクターの処置シーン。

もうね、ずっと俺のターン

メス、メス、クーパー、ガーゼ、吸引、
最後にクーパーを添えてターン終了!みたいな。

それに対する看護師がね、もう、全然物語を邪魔しない感じなわけです。

クーパーとかね、ガサ入れかってくらいゴソゴソ捜してる看護師、
一人もいないわけです。
ガーゼを出すとき、袋の切れ目が一生見つからない看護師も、
一人もいないわけです。

江口のキメ台詞が聞き取れなくて、5回くらい聞き返してる看護師も、
ひとっこ一人もいないわけです。


かたや私、看護師暦9年の粋(すい)を結集しても、
ドクターの言ってる言葉は、常時、呪文に聞こえるよー。

先輩の「急いで○○持ってきて!」の○○が、
1回で聞き取れたことがないよー。


そんな私がね、ついに躍り出たわけです、救急のピッチに。
押すなって、押すなって、という上島ナイズされた動きで、満を持して。

加藤、登場!!!




登場して、3ヶ月。
全然、名前を覚えてもらえない。

1年目の超新人 後藤さんは、もう「ごっちん」とか
呼ばれてんのに、
私なんて、待てど暮らせど、無名。

加藤っていうね 安定感あるおなじみの代名詞を
背負ってやってきたんですけど、

完全に「看護婦さん」って呼ばれてます。

「看護婦さん」の名を欲しいままにしてる。
隙あらば、看護婦さんにも「看護婦さん」って呼ばれる。


もうね、今日という今日は名前だけでも覚えて帰ってもらいたい。
救急病棟に、加藤ありき!と。


したら、

「今、入院した患者さん、即オペになったから!」

っつー怒涛の展開がドラマティック病棟に起こったわけ。
もう、一刻も早くオペが必要と。

担当の先輩やドクターは、すごい動き。
口々に指示を出し合いながら、ちょっとしたデュエルを披露。
それ、腕にデュエルディスクついてんじゃないかっつーくらいの雰囲気でね、
もう、バトルと言ってもいいくらいのやりとりをしてるわけ。


飛び込まなきゃ・・・!あの渦に!渦巻きに!
ごっちんも私も、息を呑んだ。

だけど、そこはもう、小学校の長縄とびみたいでね、
入るタイミングが・・・ちょっと・・・

って思ってたら、ごっちんが「何かやれることないですか!」
って飛び込んだ。

ごっちん、憧れるわー。
惚れるわー。
今の間合い完璧だわー。


したら、先輩も、ゆっくり頷いて、
ごっちん、じゃあ、手術部位の剃毛、お願い」
つったわけ。

そしたら、ごっちんがね、あの憧れのごっちんがね、
超マゴマゴしてるの。マゴついちゃってるの。

「あの・・私・・剃毛したことなくて・・・」つってんの。

もう、そのボールいただき!とばかりに飛び出ましたよ。

「私、できます!」と。
「私、剃毛できます!」と。
「この加藤に、剃毛はお任せあれ!」と。

したら、先輩が、じっと私の名札を見てから、
「加藤さん、お願い!」
って頷いた。

ごっちんが、ちょっと悔しそうな顔をして身を引いたので、
私は何ならもう江口になりきった感じで、

ごっちん、剃毛、手伝ってくれない?」って声をかけた。
そしたらごっちんも「はい!」って嬉しそうに言うので、

「グズグズすんなよー」「加藤さんこそー」みたいな感じで、
ドラマティックに和解しつつ、

ごっちんに「俺の背中みとけ」って感じで、ドクターにかっこよく
「先生、剃毛部位は?」ってデキル女風に確認して、
「全範囲だ」って言われて、1発で頷いた。

セーフ。
先生の言ってることが、1回で聞き取れた奇跡。


前の病院では2年間消化器外科で働いてた。
どんな剃毛にも立ち向かってきた。

どんな湿地帯もアマゾンも、きれいに剃りあげてきた。

私は、道具をすばやくそろえて、ごっちんを従えて、
患者さんの病室に飛び込んだ。

そこには、ちっちゃいおじさんが居た。

緊急の手術を前に、やや緊張の面持ち。苦しそうではない。

私は、長年で培ったトークで患者さんをリラックスさせながら、
剃毛へと いざなう。


「手術って、やっぱり、そんなとこまで剃るんですね・・」
という患者さんに、

「そうですね、やっぱり毛の中にはバイキンが多いので、
 ここから手術のあと感染したり うんたらかんたら〜」
なんて軽快なトークで、なめらかに下着を下ろして、びっくり。


樹海だ。
樹海である。

ちっちゃいおじさんが、猛威をふるっておる。

ごっちんが、無理だって顔をしてる。
ここを剃毛するなんて無理だって顔してる。

大丈夫。
私は目で合図した。

ごっちん、見てて。
もし「剃毛病棟24時」ってドラマがあったら、
江口は間違いなく私だよ。

私はごっちんに右手を差し出し「ハサミ」と言った。
ごっちんは、すばやく、私にハサミを差し出した。


「完璧・・ですね」
ごっちんが憧れの眼差しで私を見た。

たった10分。
ノルウエイの森が、更地に。


そしたら、ナイスタイミングで、先輩とドクターが病室に来たので。

私は先輩に子犬のように駆け寄って
「剃毛したんで、確認してください」
って微笑んだ。

見て見て。
私の武勇伝。

先輩が、オーケーオーケーと、微笑んで患者さんを見た。
下半身を見た。
そして叫んだ。




「頭の手術よ――――――――!!」




この叫びをね、私は生涯忘れないと思います。
先輩、大西ライオンかと思った。


で、一同絶句。

患者さんも、私も、ごっちんも、先輩も、ドクターも。


ただ、病室の時計のカチカチカチカチって音だけが響いてた。


ご、ご覧のとおり、頭ボウボウなわけです。
で、でも、下はつるっつるなわけです。

「なんで・・こんなことに・・」ってドクター。


完っ全っに、剃る場所を間違ってるわけです、私。

本丸を手つかずにして、
とんでもないとこを、思う存分剃りあげたわけです、私。
逃げも隠れもいたしません。はい。


患者さんも、「だよね」って言ってた。
「頭の手術なのに、すごいとこまで剃るなーって、
 やっぱグローバルなんだなーって」とのこと。

グローバル間違え。

剃毛っていったら、下しかないと思ってた。


それから無事、頭の手術を終えた患者さんに、
もう、師長も主任も連なって、謝って、

患者さんの家族にも
「上の毛と下の毛を間違って剃ってしまいました」
と謝って、

最終的には、院長まで出てきて、
「上の毛と下の毛を間違って剃ってしまいました。
 患者さんの苦痛を考えると・・・」
って謝って、


最終的に、私は
「上の毛と下の毛を間違って剃ってしまいました」
というミス・トラブル報告書を書いた。

さまざまな角度から、上の毛と下の毛を剃り間違える過程を
分析した、その壮大な書は、

救急病棟の報告書の決まりにのっとり、
朝の申し送りで1週間読みあげられました。とっくりと。


で、こころなしか、最近、先輩たちから、微笑まれる回数が増えたよ。
あと、色んな人に「アレ読んだよ」って言われる。
まさにベストセラー


あと、もう、私の念願だったわけですが・・うん・・、
先輩たちもドクターもね、口々に言うわけです、

救急病棟に、加藤ありき!」と。

2011-07-23

明日から本気出す!

看護師になって9年くらい経つわけですが、
いまだに、挙動不審。

常に、お茶の間でテレビがラブシーンに突入したときの、
家族みたいな動きしてる。

お茶でも入れようかしら・・
新聞、新聞・・えっと巨人が・・

みたいな雰囲気で仕事してます。


もう9年間、見るものすべてが初めて。
いつも初見。
全然、地に足つかない。

常に、
落ち着けー落ち着けー
と思ってる。

大抵の時間をオロオロしながら過ごしてる。



あー、新人の追い上げがキツイ。

今年4月に入った新人とか、すげぇ追い上げてくる。
今年4月に入った新人とかの、伸びが、すげぇ。

私も4月からマジカル転職をしてこの病院に来た身分で、
スタートラインは、いわば同じ。

9年の経験値も なんのそので、結構いい勝負してる。


と、思ってたら、この前、この新人が先輩から、
あだ名で優しげに呼ばれてるところ発見。

す、好かれちゃってる。
7月の段階で好かれちゃってる。

7月とか、あれでしょ?
普通好かれたりしないでしょ?
世間の冷たさを知って、もっと、打ちひしがれる時期でしょ?

先輩に好かれるとかのイベントは、
3年後とかでしょ。のちのヤツでしょ。


ならばと。
私も…遅ればせながら、好かれたい。
是非とも、あだ名で呼ばれたい。


と、思ってね、ピッチに踊りだしました。
もうね新人がマゴマゴしてようもんなら、
そのボールいただき!とばかりにね。


「すいませんCT室がわからないんですが…」

とか点滴を引いた患者さんに言われようもんなら、
もうね、よろこんで!とばかりに、

流し目で先輩を見ながら、ご案内してたんですけど。

しめしめと思って、契約1個取ったくらいの気持ちで、
ご案内してたんですけど。


10分くらい経ったかな、
もうびっくりするくらい患者さんの思いにね共感。

すいません…ちっともCT室がわからないんですが…?


今までは、前の病院では、9年間で得た地の利を生かして、
どうにか先輩っぽい風をね、弱風ながらに吹かせてきたけど。
もう、そよ風的に。ほんと心づけ程度で。

「まあ、病院なんてどこでも一緒みたいなとこ、あるよね」
が、口癖だったわけですが。

一緒みたいなとこ、無かった!
まさかの、地の利ゼロ。
全然ちげぇ。見たことねぇ。

あー、クイズところ変われば!って山口さんが
あれほど口酸っぱく言ってたのに。


通っぽく「関係者以外」みたいなエレベーター乗ったら、
若干、お客に見せちゃいけない内部みたいなとこに降り立った。

土管でも潜ったかしら?っつーくらい、完全に地下面。


あれ、CT室・・噂では地下1階って・・あれ・・
ってモゴモゴ言いながら、必死に探したんですけど、

この段階になって、連れてきた患者さんが、
結構コワモテのおじさんでもあるなってことも
気になってきたんですど、

あー無言の点滴台のガラガラガラがね、
背中から、すごいプレッシャーで聞こえてくるんですけど。

その点滴棒、金剛力士像とかが持ってるやつじゃないですっけ?
くらいの猛々しさを背後から感じる。

もうね、1歩1歩が未知との遭遇なのに、
ピッタリついてくるのね、患者さんが。
案内してるから、当たり前なんですけど。

あれ、ドラクエの先頭の重圧ってこんなだったっけ?
みたいなね、
もうね、案内してるんだけど、ちょっともう巻きたい。


で、まあ、しばらく歩いたんですけど、
歩けども歩けども、おばさんたちがね、シーツをたたんだり、
シーツをたたんだり、たまに運んだり、
もー絶対CTを取りそうな気配がないわけです。待てど暮らせど。

白衣を着てる人すらいない。
完全におばちゃんとシーツの国。


で、私もね、大人ですし、後ろの金剛力士像が超無言だし、
ここはね、もう聞いてこ。と。

「えっと、地下1階にCT室があるって聞いたんですけど」

ってね、勇者が村人に話しかける感じで、
おばちゃんに聞いてみたんですけど、

「あーここじゃないよ。
 地下は地下でも、東館の地下でね、
 そこにいくには2階の放射線科の横の連絡通路から、
 右に曲がってね」

つって、丁寧に教えてくれて、

「あー、あそこかー」つって、村人と別れたんですけど、

ピンときた感じ、存分に披露したんですけど。

全然ピンと来なかった。
完全に初耳。

初耳すぎて、最初の東館ってとこしか聞いてなかった。
あと、なんか右みたいな。右が肝みたいな。

んで、結局、おばさんに話を聞いた最初の1歩で道を間違えてね、
ほんと、第一印象から決めてました。

で、患者さんに「いや、こっちじゃない?」ってね言われまして、
結果、患者さんにCT室まで連れてってもらいました。

ほんとね、点滴棒を持つ姿なんて、まるで魔道師じゃない?
ってくらい堂々とした歩きっぷりで。


で、まあ、帰りも普通に迷いましてね。
CT撮ってたはずの患者さんの方が早く病棟についてました。


やっと・・故郷が見えた・・・
くらいの気持ちで帰りついた私を、
先輩がじぃ――――――っと見てました。はい。

え・・えへ・・って感じで笑ってみると、

「あなた、名前なんだっけ?」って聞かれたので、

満を持して

「伊藤です」って答えました。咳込みながら。


えっと、のちの加藤です。のちの・・・。

2011-07-05

カリスミマ!

全国の今日怒られたみんなー!
そして昨日怒られたみんなー!
でもって、明日怒られるかもしれないみんなー!

円陣組もー!おー!


もーね、1個も怒られたくないんですけど。
いまだに、コンスタントに怒られる。
週5ペースで怒られる。


割とね、今まで軽い気持ちで人々に怒られてきたけど、
怒られるうちが花なんつってね、咲き乱れてきましたけど、
もう満開。ずっと見ごろを迎えてる。


なんていうのかな、
政権交代っていうのかな、世代交代っていうのかな、
そろそろね、怒る側からのオファーとかもあっても、
おかしくないっていうか、

正直、30歳ともなると、ビジュアル的にもね、
怒られるのに無理がでてくる。

怒られるギリギリの年齢ですよ。


10年くらい前に、怒られてる私を見て、先輩が、
「加藤。それは誰もが通る道だよ」
ってね教わったんですけど、

驚くことに、私この道しか通ったことがないんですけど。
10年、1本道。
完全に、この道から出られないんですけど。
ほんと、この道であってる?行き方、あってる?


で、そんな私がですね、満を持してこの春、
何かの手違いで奇跡の大学病院に転職いたしまして、

もーね、びっくりするくらい、パチンコで言ったら確変くらい、
怒られてます。

玉、すげぇ出る。


なんていうかな、大学病院って、ざっとでかいよね。
怒る人の分母がね、もう全然違ってきたわけ。

もうね、「あの人すぐ怒るからなー」とかのね、
目星が付けられるようなもんじゃないわけ。

いうなれば、ドラクエみたいなもんで、
るんるん気分でフィールド歩いてるだけで、
突如「センパイがあらわれた」つって戦闘画面に突入するわけで。

もうね、「逃げる」のコマンド、連打してんですけど。

あと、まあ、昨日なんかは、軽くよそ見をしててね、

かっこよくレントゲンを掲げながらウインクして、
なんか言ってる先輩に
「まかせて!私が運びますよ!」つって親指グーつって、
飛び出した先が、白い巨塔でしてね。

白い巨塔の院長行列の、
そのど真ん中の院長に思いっきりヒットしまして。

ほんと、少女漫画だったら、院長、今日あたり、
うちのクラスに転校してくるんじゃないかってくらい、
思いっきりぶつかったんですけど。

したら、もー院長を頂点にして、
副院長、事務長、外科医長みたいのが、
もーね、ボーリングみたいにね!

まさかのストライクとるかと思ったんですけど、
3列目が意外と粘りまして。


まあ、その後ね、これがあのバルスかな?ってくらい、
怒られたんですが。

目がー目がーって、なるくらい怒られたんですが。

でも、なんつーか、私もなかなか結構転んだもので、
若干、肩をね、やったみたいなとこあって、
すげえ肩を押さえてたんで、
のちに、この春一緒にこの病棟に入った新人(22歳)に、
超かっこよかったって言われたんですけど。
負傷しながら怒られてる感じが。



で、まあ、今日、
その22歳(新人)とわたくし30歳(10年来の新人)と、
すげぇ怖い先輩で仕事をしたわけで。


その怖い先輩は、なんていうかなー、もうね、すっごい怖いの。
怖い100%。
どこを切っても怖い。

外交のカードとして使えるんじゃないかなってくらいの、怖さ。


で、まあ、3人でナースステーションに座ってたんですけど、
なんだろ、
まだ、何も起こってないのに、
私も後輩の子も、なんかイスにちゃんと座れてないのね。

怖すぎて、その人の威圧で半ケツ状態なわけです。
なんかわかんないけど。

怖すぎると、イスに座れなくなるってことを、
今日発見しました。


で、まあ、仕事って、チームワークなわけですよ。
なんていうか、声の掛け合いが大事なわけですよ。

「昼休憩、誰から入りますか?」とか、
「この入院、誰が取りますか?」とか、
「田中さんの薬、ここに置いてありましたよ」とか。

でも、なんか、あら、先輩 結界張った?
強い結界張った?

ってくらいの、なんつーの、すごい感じになってるの。
気が。
スカウタ―つけてたら、ぐんぐん数値が
「1000・・・2000・・・5000・・!!!」みたいな
雰囲気なの。


で、もう、怖い先輩が、怖いくらい忙しそうなの。

私はね、もちろん後輩に目線を送るわけ。
「お昼だよね」っていう目線を。

後輩も「完全なるお昼です」って目線を返してくるわけ。

「3人でここにいても仕方ないから、
 誰かはお昼に入らないとね」って目線を送ると、

「むろん」って目線が返ってくる。


ただ・・・、お互い、言いだせない・・・。
サイヤ人に「お昼行きます」て言えない・・・。


まあ4択問題なわけです。

A 先輩、お昼、どういう順番で入りますか?
B 先輩、先、お昼に行ってもいいですか?
C なんか手伝いますか?(ひと段落ついてるアピール)
D 先輩、先、お昼入りますか?

もう、口とかね、カラカラになってくるわけです。
緊張で。

ナースステーションが一瞬でミリオネアに化すわけです。
お昼ご飯を賭けた挑戦。


したら、後輩がね、震えながら、
みのもんたに向き合ったわけ。

あの後輩、いつかやると思ってた。
ゴールを決めてくれると思ってた。


「先輩・・・、おおお昼、・・どういう順番で入りますか?」


決まった――――――――!
(言った――――――――!)


先輩「・・・・・見てわかんないの?」


打たれた――――――――!
案外、さっとスタンドに運ばれたー!


あ、後輩、マウンドに立ちつくしてる。
膝から崩れそう。

そうだよ、見てたらわかるよ。
先輩を見てたら、おのずと答えはある!

ここでは新人でも、看護師歴なら10年目の私の出番とばかりに、
キャッチャーの気分でマウンドに駆けあがって、
ピッチャーを支えながら、

「あ、じゃあ、私たちからお昼入った方がいいですよね!エヘヘ」

つったんですけど、

先輩「加藤さんって、手伝う気、全然ないのね」

つって、すぐバレタ――――――――!
球種ごとバレタ―!



で、「手伝います!」つって伸ばした手で、
先輩が綺麗にわけて置いてた薬をザーって落としたのは私です。


あ・・今、スカウタ―つけてたら、多分、壊れたな。
って瞬間があったんですけど。


放課後、その伝説のザーを、後輩が何回も
他の後輩たちに再現して、
私の右手を「神の手」つってくれたので、
この病院でも怒られのカリスマとして、どんどん名をはせていくつもり。


新人たちが、いつかあんなふうに怒られたいと思えるような、
そんな先輩をこれからも目指す!!

2010-04-27

ゆび災

お医者さんが診察する時によく、
下まぶたを引っ張って「ベー」ってさせるアレは、
貧血がないかを診てるんですけどね、

あの小技を看護師の私もよく使うわけで、

こないだ貧血のある女子高校生の患者さんにやろうとしたら

「うわ!看護婦さん、指、臭いっ!」

って言われました。率直に。


もう、そのストレート、球威にして150キロくらい出ちゃってんじゃないのー?っつーくらいの直球を、まあ、軽く受け止めきれないまま3日が過ぎようとしています。


いや、まあ、その瞬間は、全てを無かったことにして、
「くさー!くさー!」つってる女子高生を
「あはは、なに言ってんの、もー、あはは」とか言いながら診察したんですけど、
「いや、マジで指、くさっ、ほんと!なんで!?」って、ずっと言ってて、

シー!シー!シー!
つーか、なんでなんて、こっちが聞きたい!
一分前に手洗ってきたっつーの!

って合戦を繰り広げた末に、

たまたま近くで見てた主治医に、
「貧血、だいぶ改善してるみたいです」
って報告したら、

もう、ほんと貧血そっちのけで、私の指、凝視しすぎ。
貧血より、そっち治そ みたいな雰囲気なってた。


指が、臭いの私?


いや、むしろ指だけで済んで良かったじゃない。
全体じゃなくて、局所的な問題でしょ?
全国的には晴れるけど、ところにより一部雨、みたいなことでしょ?
セーフだよ、セーフ!
ぬ〜べ〜みたいに手袋して生きてこうぜ☆

っていう心の応援がだいぶ巻き起こったんですけど、
頑張れ頑張れ言ってたんですけど、

なんだろ、この、思ってもよらなかった場所が臭い攻撃。


いやいや、たまたま、その瞬間だけ、奇跡の化学変化が起きたのかもしれない。
指として万全を期して挑んでなかった節も見受けられた。
手洗いが遠足気分だった。

あと、もう、女子高生のご機嫌がナナメで、
いや、もう、そのちょっと前まで笑顔で話してたけど、
なんていうか、ほら、女心と秋の空っつーくらいで、
気分は刻一刻と変わりやすいもので、
一瞬にして、指を臭いとか言っちゃいたい年頃になったっつーか、

そういう可能性もある。
あるにはある。


って考え抜いた3日後、東京、晴れ。

満を持して、再びあの女子高生の担当になった日、

後輩に「あれ?これからオペですか?」って
内科なのに聞かれるくらいゴシゴシ手洗いして、

あれ執刀すんの?っつーくらい手を上に上げたまま
女子高生の病室を訪れて、

磨き抜かれたゴッドハンドで、出会いがしらに
彼女の貧血をチェックしたんですけど、

「わ、やっぱクサ!なんで!」

て5回くらい言われた。大事なことじゃないのに5回言いました。


もう、泣きたい。

貧血チェックするたび、この仕打ち。

「ほら、私たちって手洗いよくするからね!多少の消毒液の匂いはね!」
みたいに必死に言ったんですけど、
来い消毒液!って願いを込めて言ったんですけど、

「いや、ゴルゴンゾーラみたいな」
つってた。ゴルゴン来ちゃった。

やー、ゴルゴン。
ゴルゴンねー。

・・・それ呪文?

割と偉大な名前が出たわけで、
私ったらすっかり知ったかぶった感じで病室をあとにして、
ナースステーションで、

「ねえ、私、指がゴルゴンゾーラって言われたんだけど、
 ゴルゴンゾーラって何者?」

って聞いたら、

目をそらしながら、後輩が「チーズ」と。

チーズ!
…か、かろうじて、食べ物に踏みとどまったってこと?

って思ってたら、後輩が言いにくそうに、あと、付け加えてきて、
「青カビの…」と言った。

そばにいた医療事務の子が、颯爽とパソコンで検索をかけてて

「あ、ゴルゴンゾーラ出ました!
 なんか、ヤギや水牛の乳を固形物にしたものと、
 …青カビを…交互に…重ねて…
 内部には筋状のアオカビが…走っており…、
 えっと、その、…特徴的な刺激臭がある…とのこと」


とのこと――――――っ!!


全然踏みとどまってなかったー。

あと、もう、聞いてた先輩たちが、笑いすぎ。
笑いながらE.T求めすぎ。
4人くらいと無言でE.Tを交わしまして、

あと、まあ、帰り際に犬に噛まれました。


3人くらいで触ってたっつーのに。
私くらい完璧なソフトタッチもなかったっつーのに。

あと、なんか飼い主のおばあちゃんが
「この犬は人を噛んだとこ見たことないのよ」的な
名文句を発してたわけですが、

ファーストインプレッションから決めてました、くらい見事な噛みつき
でした。

それを見た先輩たちが、またE.Tを求めてきたので、
ほんともう、スピルバーグは私とかを撮ればいいんじゃないかな、
来期あたり。