:ジョゼファン・ペラダン他倉智恒夫他訳フランス世紀末文学叢書①『パルジファルの復活祭―世紀末傑作短編集』(国書刊行会 1988年)


 ジャン・ロラン、マルセル・シュオヴなどはこの叢書で単独で取り上げられているので、それにこぼれた作家たちを集めたという位置づけだと思います。


 ジョゼファン・ペラダンカチュール・マンデスら世紀末退廃文学史上名のみ高かった作家の作品をついに!といさみこんだが、期待外れに終わりました。また今年こそ原書で読もうとリストアップしていたレミ・ド・グールモンの『Histoires Magiques et autres recits』から採られた短編がつまらなかったので、読む気が起こらなくなりました。


 この本のなかでは、ピエール・ルイスの「前代未聞の訴訟事件」が、論理的な組み立てと、病的で残酷趣味の想像力が両立する不思議な世界を作り上げて◎。


 以下、印象深かった作品を簡単に紹介。
ジョン・アントワーヌ・ノーの名は初めてだったが、「エメラルドの目」はジャン・ロランの「緑の眼」をさらにしつこく散文詩風に仕立て上げた一品。

J=H・ロニー兄「大異変」はSF的想像力が詩的世界を造型する見本のような作品、見たこともないような世界が出現する。

アルフォンス・アレ「厄介な謎」は軽いコントだが、隣室の会話に想像力を刺激される主人公の頭の中の混乱ぶりが面白い。

「間借人」のユベール・スティルネも初めて聞く名。夫を殺し罪の意識に慄く不貞の妻の前に、亡き夫と酷似した間借人が入ってくる。執拗な心理描写で神経衰弱に陥る様子を描く。

シャルル・ファン・レルベルグは名前は聞いたことがある程度。「超自然の選択」は、言葉を順に海に捨てていくという作り物丸出しの寓意話だが、詩的味わいが濃厚。

ジェラール・ドゥヴィユ「知らない女」は妻があまりに突然に事故で死んだためその死が認められず狂人のようになってしまった男の独白が迫力をもって語られる。他の作品をぎこちなく訳していた訳者もなぜかこの作品は流暢に訳している。