2009-11-02
水商売化する萌えアニメ――とある科学の超電磁砲・とらドラ!・小悪魔ageha
反=アニメ批評, 2008年秋期アニメ, 2009年秋期アニメ, エッセー
2008年秋からアニメ版が放送されていた『とある魔術の禁書目録』のスピンオフ作品であり、またそれと同時期に放送されてはこれまた同じくJ.C.STAFFが制作した大人気作『とらドラ!』の「長井龍雪」が監督をつとめていることでも話題の今期人気作『とある科学の超電磁砲』。
人気作ということもあってか、長井監督自身がコンテ・演出をつとめるED、およびその色調に関しては、『とらドラ!』との類似性を絡めながら、既に様々な方々が言及してもいらっしゃるでしょうから、ここでは以前このブログに載せた『とらドラ!』の色彩表現に関する記事を載せるにとどめておけば、
■『とらドラ!』における本歌取とミスリードの技法――『true tears』とニワトリと四神説をめぐって
概要:概要:『とらドラ!』の主要キャラたちが、四神(白虎、青龍、玄武、朱雀)になぞらえて設定/造形されていると言い張る。
■『とらドラ!』における「赤」の誘惑――『とらドラ!』第20話における色彩をめぐって
概要:『とらドラ!』第20話で氾濫する「赤」を指摘しては、それが担うことができる役割を明らかにし、さらにそのことを通じて『とらドラ!』という作品全体、およびその人気の理由を分析する。
また同時に、パンツ論壇人としては見逃せないだろう表現、つまり、「鉄壁のスカート」などと言ってはありえない隠蔽能力を発揮する非現実的なスカート描写ばかりが繰り返されるアニメ界への挑戦であるかのようにすら見える、流石、タイトルに「科学」を冠するだけのことはあってか、ヒロインのまとう丈の短いスカートからは、物理法則に忠実な頻度でもってショートパンツがチラリズむという『とある科学の超電磁砲』におけるリアリスティックな表現に関しても、
「ショートパンツは、いみじくも己が名の中にパンツを含んでいるわけなのだから、これらのシーンもパンチラの一種として目に焼き付けねばならないのではないか」
「いや、ショートパンツにおけるパンツ性なぞ所詮自称に過ぎず、あれらの衣料は、現実的にはパンツ露出を忌避するための防衛壁としての機能を担わされているわけなのだから、例えるならば桂ヒナギク的なスパッツと並べて語られるべきであろう」
「しかし、ショーパンをスパッツと同種の存在として位置づけるならば、ショーパンによるパンツ防衛策は、パンツよりスパッツの方がエロいという意味において本末転倒と言うほかあるまい」
「確かに。さらにいえば、そもそもショーパンという略称自体が、ショーツ+パンツという、紳士語の重ね言葉として卑猥さが強調される構成となっているようにも見えてもこよう」
といった争点にまで踏み込む余裕も、今はありません。
ここではただ、お許しいただけるならば、そんな『とある科学の超電磁砲』と並べて語られがちな『とらドラ!』に関係した、個人的なエピソードを語らせていただきたい。
というのも。
つい先日、自宅から歩いてすぐの場所にこんな店がオープンしていたのです。
その名も、『 萌 え ド ラ 』。
しかも店の前まで来てみると、
入口には、 大 河 の タ ペ ス ト リ ー が ! !
この『萌えドラ』、どうやらコスプレスナック的なお店のようなのですが、ええと、どうなんでしょう。
確かに、肯定的にとらえてみれば、作中において竜児の母・やっちゃんは「スナックバー」に勤務しているという設定だったわけですし、
ヒロイン三人の中でも、亜美様などからは如何にも風俗嬢的な不敵な色気を見い出すことはできるでしょうが、
それにしたって、『萌えドラ』とは流石にいささかピンポイントすぎやしまいか……ぼくも最初はそんな不安に駆られもしました。
しかしです。
この狙いを絞ったピンポイントぶりには正当な理由があったのだということが、ある補助線を引くことによって浮かび上がってきます。
ではここで、現代を代表する前衛芸術誌『小悪魔ageha』を紐解いてみましょう。
「昇天ペガサスMIX盛り」という難解な専門用語の意味はぼくもまだ十分に捉えきれてはいませんが、とりあえず、キャバ嬢をはじめとする風俗・水商売業界では、このような「盛り髪・盛りヘア」と呼ばれる、頭頂部分が盛り上がっている髪形が流行していることまでは把握できます。
そして、ここまで来てようやく、われわれは『萌えドラ』の入口に「大河」のタペストリーが貼ってあった理由を察しはじめることでしょう。
そう、以前このブログでは、大河の(体型まで含む)髪型がツンデレの表象としての機能している、などと悠長なことを書いたことがありましたが、
■アニメにおけるツンデレ描写――『とらドラ!』における大河様の髪型をめぐって
概要:ツンデレキャラにおける典型的な外見的特徴・髪型を指摘し、それがツンデレアニメ『とらドラ!』においてどのように描かれていたかを確認することを通じて、『とらドラ!』における描写の強度を分析する。
なんてことはない、あの大河の特徴的な髪型・頭頂の謎の突起物は、今にして思えば、キャバ嬢的な「盛り髪・盛りヘア」以外のなにものでもない。
その証拠に、早くも第3話において、残った最後のヒロインである「みのりん」が
「 盛 る ぜ ぇ 〜 超 〜 盛 る ぜ ぇ 〜 」
と、われわれに対していささか露骨すぎるほどに、キャバ嬢的な符牒を印象付けていたではありませんか。
このように『とらドラ!』作中においては、やっちゃんまでを含むメインヒロインの全員が、風俗・水商売との高い親和性を持つことが描かれていた。
そしてその意味において、『とらドラ!』をモチーフとして水商売を経営するという「萌えドラ」の発想は、圧倒的に理に適っていると言わざるを得ません。
ついでにニワトリ論壇人として一言付け加えさせていただけるならば、盛りヘア界を賑わした作品の一つであるこの頭の鳥籠、
これなどもはや、『とらドラ!』と水商売の深い関連性を理解したもわれわれには、インコちゃんを収監するための装置として以外、いったいどんな解釈が成り立ち得るのか、他の可能性が想像し得ないほどです。
「萌え産業」というと、表面上だけオタクに媚びるだけで、その実、オタクを小馬鹿にしてはカモにする存在としてネガティブにとらえられがちでしょう。
しかし、そんな中、『とらドラ!』という作品を正しく理解しては、そこに込められた風俗性までをも看破した批評的な店舗としてこの『萌えドラ』を擁護するとともに、そうはいっても、いくらなんでも男性の性的妄想をくすぐり弄び搾取する水商売に釣られて欲情するほどは愚かではないわれわれも、そこが「鳥籠=インコちゃん」的な「鳥表現」にまで関わる場であってしまうならば、学問的研究のため止む無く、もちろん下世話な下心とは無縁にですが、ニワトリ論壇人として『萌えドラ』へと、股間をペガサスMIX盛りに膨らませて駆けつけることもやぶさかではありません。
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