正規音楽配信を識別するという目的の日本レコード協会が制定したマークについて

社団法人日本レコード協会は2月19日に、レコード会社が許諾した正規の音楽配信を簡単に識別できるマークとして、エルマークというマークを運用開始したと伝えました。

現時点で、moraなどのPC向けサイトのいくつかと、携帯電話向け音楽配信サイトのいくつかで、当該マークの掲載が確認されています。

日本レコード協会が、同法人の会員が権利を有する著作物についてその利用を許諾したサイトについて、その旨をわかりやすくするマークを制定し、その趣旨に賛同するサイトがそれを掲載することは、許諾の有無を分かりやすくするものであり、当協会ではマークの制定を歓迎します。ただし、当協会がこれまでに再三主張してきているとおり、あるサイトに掲載されているすべての著作物が適法であるかどうかということは、一団体が証明できるようなことではありません。利用者は、今回のマークが許諾の有無について一定の参考になるとしても、それは極めて限定的な意味しか持ち得ないことを、充分留意する必要があります。このことは、マークの説明の「よくある質問」においても、

Q マークがないサイトは全て違法配信サイトですか?
A このマークは、レコード会社との契約によって配信されているレコード(CD)音源や音楽ビデオなどに表示されるマークですので、それ以外のコンテンツは原則として対象となっておりません。また、レコード(CD)音源や音楽ビデオなどの配信サイトでもまだこれから対応するサイトがありますので、日本レコード協会では、このマークの利用範囲が広がるように関係者に働きかけを行なっていきます。

http://www.riaj.or.jp/shikibetsu/index.html

と、協会自身が認識しているところです*1

なお、今回のマークについてのプレスリリース下部には、携帯電話からマークの説明を見るためのアドレスが提示されていますが、当初掲載されていたhttp://www.rom-m.jp/shikibetsu/というURLは誤りで、http://www.rom-m.jp/i/shikibetsu/が、携帯電話からのアクセスとしては正しいものであることを指摘しておきます。また、その下部にあるQRコードは、読み取るとhttp://www.rom-m.jp/と読み取れるにもかかわらず、当該画像に設定されたリンク先は、http://www.mamo-on.jp/というサイトであり、かつこのサイトはPCからアクセスしても携帯電話専用のアクセスであることを示すメッセージが表示されるだけであり、リンク設定の意図について理解に苦しむ点があります。

いずれにせよ、携帯電話からも、このマークが掲載された事業者やサイトの一覧が確認できるものかと発行機関についてというページを見ると、「マークの発行を受けた配信サイト及び運営事業者の一覧は、パソコンにてご確認ください。」となっており、携帯電話からのみインターネットを利用する方には、携帯サイトにマークが表示されていても、それが真に日本レコード協会の認証を受けたマークなのかを確認する術がない状況にあります。このマークを実効性あるものにするためには、認証を受けたサイトの一覧PDFファイルの掲載で終えるのではなく、認証サイト検索システムなどを構築しなければ、マーク設置の目的は達成されないのではないかと危惧します。

以上挙げたとおり、日本レコード協会の試みには改善すべき点が多々あるものの、ある著作物が正当な許諾を得たものか否かをわかりやすくしようという目的そのものには、当協会は賛同の意を示すものであります。ただし、その目的の実現のためには、現状はあまりにも不充分であり、仮にこのマークの導入をもって、私的録音録画小委員会などで権利者が主張する「適法かどうかを識別するマーク」であると主張するのであれば、その主張は笑止千万であることも合わせて主張します。

追記

上記で指摘した点について、日本レコード協会のページに掲載されたQ&Aが修正されました。[id:illegal-site:20080426:p1]

*1:ところで、この問答が果たして質問に対する答えになっているのかについては、大きく疑問が残る。