写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

どう呼ぶの?各誌のこだわり

去る3月11日のCP+パネルディスカッションでおもしろい場面がありました。セイコーエプソンの枝常伊佐央さんが「エプソンR-D1は元祖ミラーレス一眼だ」というような発言をしたのですが、すかさずパナソニックの房忍さんが「あれはレンジファインダー機で、元祖ミラーレス一眼はうちです」というような発言をされていました。その場はそれで収まりましたが、枝常さんはちょっと残念そうでした(実はお二人はそれなりのライカファンらしいのですが)。そして我が家に「日本カメラ」の最新号が届いた日に、改めてPMAとCP+関連の製品記事を見ると“ミラーレス一眼”という名称はどこにも載っていないのです。あれっと思い、各写真雑誌はどのように呼んでいるのかとりあえず手元にあるもので調べてみましたら、意外や意外「ミラーレス一眼」とはどこも呼んでいないのです。
ざっと紹介しますと、【日本カメラ】レンズ交換式ミラーレスカメラ、【アサヒカメラ】ミラーレス機(フォーサーズミラーレス機、APS-Cミラーレス機)、【カメラマン】レンズ交換式小型カメラ、【キャパ】マイクロフォーサーズ一眼、新レンズ交換式小型カメラ、【デジタルキャパ】マイクロ一眼、【フォトコン】デジタル一眼レフカメラ、【フォトテクニックデジタルマイクロフォーサーズ、【風景写真】マイクロフォーサーズ一眼、【ファットフォト】マイクロ一眼、というわけです。まさかミラーレス一眼とはパナソニックの商標登録ということはないでしょうが、意外な感じでした(女流一眼はそうかも)。調べたのは4月号でしたので、オリンパスペンLite E-PL1ルミックスG2、ソニーαレンズ交換式小型カメラ、サムソンNX10など同種のカメラが相次いで発表され、その関連記事が目白押しというわけです。それぞれの雑誌には、それなりの言い分があるのは当然のことでして、はっきりと共通しているのは“ミラーレス一眼”をそのまま使わずに、それぞれ苦悩のネーミングという感じがします。一般的には商品を紹介するときに、大雑把に分類(たとえばコンパクトとか、一眼レフとか)して、詳細を述べていくというのが正攻法だと思うのですが、明らかにそれを避けて、いきなり商品名から入っている雑誌がいくつか見受けられました。というか、ほんとうは分類できないから困っているわけです。フィルムカメラの時代には、それぞれ機構的な分類で何とかなっていたのが、なんともならなくなったのがデジタルカメラの時代なわけです。かつても一部にブリッジカメラとかネオ一眼とか呼ぶこともありましたがほとんど今は聞かなくなりました。ということで、デジタルカメラの総本山であるCIPA(カメラ映像機器工業会)ではどのように分類しているのだろうかと見てみましたら、「レンズ一体型」と「レンズ交換式一眼レフタイプ」と2分されていました。このうち“一眼レフタイプ”と呼ぶところがポイントで、あくまでもタイプであり、一眼レフではないものも含むわけです。さらにリコーのXGRは交換式でも、カメラユニットの交換式なのです。
以前このコーナーで「明日のデジカメの姿が見えてきた」を書いたときに、楠見さんから「EVFレンズ交換カメラはミラーレス一眼というような名前でなくダイレクトプレビュービューファィンダーカメラ(DPVF)という区分けで行って欲しいです。デジタル一眼とDSLRとDPVFで生産統計も分けるといいですね。そうすればお互いに変に設計思想やユーザのイメージが混濁することなく正常進化するのではないでしょうか。」というコメントをいただきました。いずれにしても皆さんが困惑していることは間違いないようですね。
そして最後に、枝常さんにはエプソンR-D1にもし次期モデルがあるなら、背面液晶にはライブビュー機能を組み込み、光学ファインダーの代わりにEVFというのを実現してもらいたいのです。そうすれば、レンジファインダー機のネックであった望遠も楽に使えますし、距離計連動の限界であった焦点距離135mm以上も軽く突破でき、かつての一眼レフ用交換レンズは、アダプターを介してすべて取り付くことになり、ミラーレス一眼になるわけです。たしか平成写真師心得帳・柳沢保正さんの書いた「すべてのレンズはライカに通じる」という本がありましたが、そんな時代も夢ではないわけです。大いに期待したいものです。もちろんフルサイズで。