写真にこだわる

写真の楽しみ方それぞれ。デジタルからフィルムまで、さまざまな話題を提供します。市川泰憲

キヤノンEFマウントが登場して30周年

 キヤノンがEFマウントを採用したEOSシステム最初の機種は、1987年3月1日に発売された「キヤノンEOS 650」でした。この年キヤノンはちょうど会社創立50周年を迎えたときでもあり、今年2017年は、このEFマウントを採用したEOSシステムが登場して30年、キヤノンが創立80周年を迎えたことになるのです。

 一眼レフへの本格的なAF機構の搭載は1985年2月に発売された「ミノルタα-7000」にまでさかのぼることができるのですが、キヤノンではその1985年の4月にキヤノンとしては初のCCDラインセンサーを利用したTTLコントラスト検出方式のAFを採用した一眼レフ「キヤノンT80」を発売しています。そのとき新聞広告は、ミノルタがα-7000の全面広告を打った翌日に、キヤノンがT80の全面広告を打つといった具合に衝撃的なものでした。結果はカメラファンならご存知の通り、ミノルタの圧勝だったのですが、それに遅れること2年、キヤノンが発売したEOSシステムは、1986年に発売された「キヤノンT90」で採用されたデザインを踏襲しながらも、交換レンズマウントには新たにEFマウントを採用したのです。このEFマウントは、カメラボディと交換レンズとの情報交換をすべて電気接点により行う「完全電子マウント」であり、AFのレンズ内駆動、電磁駆動による絞り制御など、それまでのAF一眼レフとはまったく異なった手法でカメラシステムを構築したのです。それは、今日の各社カメラシステムの根幹となる技術をも内包した、未来型のカメラシステムだったのです。
 発表会当日、当時のカメラ開発センター所長であった相沢紘さんは、右手にEOS 650を掲げ、『EOSとは「Electro Optical System」の略称で、EOSはギリシャ神話に登場する“曙の女神”の名前でもあり、将来に向かって大きく飛躍する新しいシステムの性格を象徴するもので、これからは“交換ボディの時代である”』という挨拶をされていたことを今でも鮮明におぼえています。
 このEOSシステムに採用された新技術は、AFのレンズ内駆動、電磁絞り制御などに加え、新開発の高SN・高感度ラインセンサーBASIS(Base Stored Image Sensor)、超音波モーター、ガラスモールド非球面レンズの採用などがあり、今日各社の交換レンズシステムが、AFのレンズ内駆動、超音波モーターの採用、電磁絞り制御などに向かっていることからも、いかに将来を見据えたシステムであったかわかるのです。時代は変わり2012年には、ミラーレス用としての小型・軽量を目指して「EF-Mマウント」をスタートさせていますが、マウントアダプターによるEFレンズの活用など完全電子マウントならではの特徴がフルに発揮されているのです。EOSシステムが登場した30年前といえば、一眼レフカメラシステムはボディ至上主義でした。当時はボディをないがしろにするものだという声もありましたが、カメラはフィルムの時代からデジタルへと変わり、ボディはまったく変わりましたが、交換レンズは30年前のものが、今も機能をフルに生かして最新ボディでそのまま使えるのです。30年前、EOSの発表会で相沢さんがいわれた、『これからは交換ボディの時代』といわれた意味がやっとわかった気がします。  (^_-)-☆