'11読書日記3冊目 『彼岸過迄』夏目漱石

彼岸過迄 (新潮文庫)

彼岸過迄 (新潮文庫)

328p
総計930p
夏目漱石は「こころ」が一番好きだった(といってもあとは「行人」くらいしか読んだことないねんけども)。そもそも「吾輩は猫である」を小学生くらいのときに読んでしまってすぐに断念してしまった苦い経験があるため、ぼくは数年前まで夏目漱石は完全に古臭い文学者だと思っていたのだ。なんたるちあさんたるちあ!ともかく、この「彼岸過迄」を僕はかなり面白く読んだ。

敬太郎の冒険は物語に始まって物語に終わった。彼の知ろうとする世の中は最初は遠くに見えた。近頃は眼の前に見える。けれども彼は遂にその中に這入って、何事も演じ得ない門外漢に似ていた。彼の役割は絶えず受話器を耳にして「世間」を聴く一種の探訪に過ぎなかった。