'13読書日記29冊目 『ヨハネス・アルトジウス』オットー・フォン・ギールケ

ヨハネス・アルトジウス: 自然法的国家論の展開及び法体系学説史研究

ヨハネス・アルトジウス: 自然法的国家論の展開及び法体系学説史研究

313p
ギールケは1841年生まれのドイツ法学者。ヨハネス・アルトジウスという近世初期の国法学者・政治学者の人民主権論を復活させようとして名高い本の邦訳である。完訳版(とはいえ注は大幅に割愛されていて残念だが)は2011年に出た。アルトジウスって誰やねん、マイナーやないか、という感じもしないでもないが、本のサブタイトルを見ても分かるように「自然法的国家論の展開および法体系学説史研究」ということで、アルトジウスの人民主権論が中世の議論に対してどれほど新しく、またそれが様々な紆余曲折を経つつも受け継がれてルソーに結実していくか(ルソーは「山からの手紙」でアルトジウスの名前を挙げているそうだ)、それが浩瀚で恐れ入るほどの博学ぶりで叙述されていく。つまるところ、アルトジウスよりも中世から近代にかけての自然法的国家論についての教科書、くらいに思えば良い。近代以降の話よりも、中世から近世にかけての法学の変動、とりわけ絶対主義的主権論にどのように自然法論が立ち向かったのか、そこにモナルコマキの一派やプロテスタントカトリック系の論者たちがどう参戦したのかの方が面白い。