2009-10-30 けいおん! 超番外編「ギー太!」
けいおん! 超番外編「ギー太!」
今更なんですが........
て、最近僕いっつも話切り出す際に今更って言ってますね。言いたい事はすぐに言わないのが僕の悪い癖。
で、今更なんですが。
「MY LONELY TOWN」と憂のキャラソンと和のキャラソンがオリコンで並び立ってくれましたね。
確か「MY LONELY TOWN」が4位で
- アーティスト: B´z
- 出版社/メーカー: VERMILLION RECORDS
- 発売日: 2009/10/14
- メディア: CD
- 購入: 10人 クリック: 85回
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憂が8位で
和が9位だったか。
いや、別にどうだっていいんですがね。こっからが本題。
また今更なんですが。
以前ボク、ギー太が人間になる話っていいよね、て言ってたじゃないですか。この絵紹介した時。
右のリンクにある「小説家になろう」て誰でも小説を投稿できるサイトで、そういった内容の小説投稿したんですがここでも載せてしまえ、と思って載せてしまいます。1ヶ月前に公開したものなんで今更なんですが。
ちなみに時系列はアニメ最終回(12話)から3日後、つまり学園祭から3日後。例によって梓以外のメンバーはB'zファンです。そして普段のアニメと同じような感覚で見てもらえばいいです。
では。
唯「イッエーイ! 今日は何だかいい音が出るぜー!」ギャンギャンギャン
彼女の名は平沢唯。1年前に軽音部に入部し、ギターを始めたばかりの女子高生である。今日も今日とて軽音部、改め放課後ティータイムの仲間達と練習に励んでいる。
梓「唯先輩、あんまり無茶しすぎるとギターに良くないですよ」
澪「そうだぞ、唯。弦が切れても知らないぞ」
唯はサイドギターで1年後輩の中野梓とベースの秋山澪に注意された。
唯「大丈夫だよ、あずにゃん、澪ちゃん。何だか今日は私もギー太も調子いいんだぁ! オーイエーーッ!!」ギャイーーーン
3日前の学園祭でのライブがうまくいったからか今日の唯は気分がよく、1年前に初めて買ったギブソンレスポールスタンダードのギター、彼女はギー太と名付けたそのギターを無茶苦茶にかき鳴らしていた。
バツンッ
唯「ぎゅいいいいん.....!て、あ、あれ........? ギー太.......?」
唯は目を疑った。さっきまで何の異変もなく弾いていた自分のギターの弦が全部切れていたのだ。
唯「ああああっ!! ギ、ギー太あああっ!! うわあああん、ギー太の弦が、ギー太の弦が切れちゃったよおおおおっ!!」
唯は大泣きした。そんな唯に向けられた澪の言葉は
澪「あーあ、だから言ったのに」
唯は今度は耳を疑った。
梓「あんなにギターの手入れをちゃんとするよう言ったのに.......」
続いて梓が言った。
律「ギターの弦が切れそうかどうかもわからないなんてなあ〜」
ドラムの田井中律まで。
紬「唯ちゃん、ギー太さんの気持ちをまるでわかってないんですねぇ〜........」
そしてみんなは口々に唯に暴言を浴びせた。
澪「そんな状態でギー太に無茶させるなんて」
梓「全然ギターを大事にしていなんですね」
律「ギー太を持つ資格もないぜ」
そして全員、声を揃えて言った。
「そんなやつはギタリスト失格だな(ですよ)」
唯「ギー太あああああああああっ!!!...................」
チュンチュン.........
そう叫んだ唯の目の前に広がったのは散らかった部屋、窓からは忙しなく鳴くスズメや通勤途中らしきサラリーマン。突如ジリリリリリ、と鳴り出す目覚まし時計。その音でハッとなった唯は呟いた。
唯「...........................ゆめぇ..........................?」
そう呟くや否や唯はバッと部屋を見渡した。そして壁際のギター置きにあるギー太を見つけ
唯「ぎ、ぎいいいいいいたああああああああっ!!」
と叫んでベッドから飛び移ってギー太にしがみつき大泣きした。普段の彼女からはおよそ考えられない身体能力である。ちゃんと弦があるのかも確かめ、安堵しそしてまた泣いた。
唯「うえええええええん!! よかったよおおおおおっ!! ギー太、生きててよかったおおおぉぉぉぉぉ.........!!」
憂「.................お姉ちゃん、何騒いでるのぉ...............」
唯の泣き声を聞いて部屋に入ってきたのは唯の妹の憂。そしてその光景を見て憂は惚ければいいのか呆れればいいのか戸惑った。
唯「おーいおいおいおいおい..........」
憂「.........................遅刻.........するよ...........お姉ちゃん............」
唯「いやぁ〜.....ごめんごめん。ちょっと嫌な夢を見ちゃって..........」
通学路を並んで歩く平沢姉妹。唯の背中にはもちろんギー太が収納されているギターケースが担がれている。そして急ぐわけでもなし二人はゆっくりと歩を進めていく。
憂「どんな夢だったの?」
唯「う〜ん......私が調子に乗ってギー太をメチャクチャに弾いてたら弦が全部切れちゃってみんなにギー太を大事にしないやつはギタリスト失格だって言われちゃう夢」
憂「それでギターにしがみついて泣いてたんだ............. でも学園祭で大成功した後だけに縁起の悪い夢だね.......」
唯「うん......だからちょっと目覚めも悪いんだぁ..... よいしょ」
唯はギターケースをおろして自分の正面に向けた。
唯「ギー太ぁ...... 私、ギー太、大事にしてないかなぁ......?」
不安げにギターケースに入っているギー太に向かって語りかける唯。
憂「お姉ちゃん........... ふふっ、でもそんな夢を見る程にお姉ちゃん、そのギターが好きなんだね。何だかギターが羨ましいな」
唯「憂、ギターじゃないよぉ。ギー太!」
憂「ギー太、さん?」
唯「そ! ギー太!」
超番外編 ギー太!
チャッチャッ、チャラッラ♪ チャラララッラ、ララララ♪
チャッチャッ、チャラッラ♪ チャラララッラ、ララッラ♪
↑タイトルアイキャッチに「一心不乱」のイントロが流れてるのをイメージしてください。
放課後
音楽室
唯「やっほー............あれ?」
音楽室へと足を踏み入れた唯。そこにはPCで何やらB'zのLIVEを見ている澪と律がいてくつろいでいた。
意義あるタイムオブマイ、ライフライライヤアアアアアア〜〜〜〜〜ッ!!!
澪「やっぱここの稲葉さんのシャウトってシビれるよな、律」
律「へいへい、もう何百回と聞いたな、そのセリフ」
ほとほと聞き飽きたように言う律。
唯「ほほう、B'zのLIVE鑑賞会ですかおふたりさん」
澪「あ、唯。ちょっとな。バンドの勉強がてらね」
律「単にお前が見たいだけだろー」
澪「そんな事ないぞー。私達だっていつかこれくらいの演奏してやるっ!て前、意気込んだじゃないか」
唯「でも私、稲葉さんのようにあきゃきゃきゃきゃ〜〜〜っ!!なんて叫ぶ自信ないよぉ..... あれ、このビデオ私初めて見るや」
律「唯が見たのって『BUZZ!!』と『MONSTER'S GARAGE』のと『GLORY DAYS』だけだったっけ?」
唯「うん。曲はそれなりに聴いたんだけどビデオの方はあんまり見る機会ないもんね」
澪「これは93年の渚園でやった『JAP THE RIPPER』LIVEのビデオだよ」
唯「今から16年も前かぁ。二人共はっちゃけてるね」
澪「若かったからなあ............... あ、唯。今から松本さんの凄いパフォーマンスが始まるぞ」
澪にそう言われまじまじと画面に食いつく唯。
Let's drink the night away!! アーーーオッ!!
唯「あれ、稲葉さんどっか行っちゃった........................ おぉ、松本さんのギターソロだねぇ................えっ!? わっ!! ギターから花火が出たっ!! うわわわわわっ!! 色んなとこから花火が出て来たよぉ! 危ないよおおっ!! 松本さんそんなに花火振り回しちゃ危な.........て、えええええっ!!? ギターが爆発したあああああああっ!!!? え......ギ、ギターを.......そのまま........投げたあああああっ!!?」
ドッカーーーーンッ!!!
律「だあああっ!! 唯、興奮するのはわかるけどもうちょっと黙って見て.......て、何で泣いてんのっ!!?」
唯「あう........あんまりだよぉぉぉ....... ギターを爆発させて放り投げて木っ端微塵にさせるなんてえええええっ!! うわあああああんっ!!!」
澪と律は大泣きする唯をただ唖然と見つめていた。確かに一緒にライブビデオを見ていた友人がそれを見ていていきなり泣き出せば至極当然であろう。そして唯は急に泣きやんだかと思うとすっくと立ち上がってドアへと一直線に向かっていった。
律「あのー...........唯ー? どこへー............?」
唯「今から松本さんに抗議しに行きます」
澪、律「えええええーーーーーーっ!!!???」
珍しく唯が真剣な顔つきで何を言うのかと思ったが何をとち狂った事を言い出すんだ、と澪と律は思ったがそれよりも二人は本気で抗議しにいこうとする唯を取り押えるのを優先した。いや、本当に抗議なんぞできるわけないのは二人も火を見るより明らかだという事はわかっているのだが、それの過程で何か厄介な事を呼び起こす事を恐れ、二人は必死に唯をおさえたのだった。
澪「唯っ!! おちつけえええっ!!」
律「何をどうすればそういう結論になるんだっ!!」
唯「ええい! はーなーせーっ!!」
紬「遅れちゃいましたー........あら?」
梓「こんにち....は..........」
遅れてやってきたムギと梓はこの状況を把握できずにただ立ちつくした。
律「ムギー! 梓ー!! み、見てないで唯の暴走を止めてくれーっ!!」
紬「え!? は、はい!!」
梓「全然わかりませんけど、一体どうしたんですか唯先輩!!」
唯「うおおおおおっ!!」
何とか唯を取り押さえる事に成功した澪達はぜいぜいと息をきらして座り込んでいる。唯も既に頭が冷え落ち着いていた。
唯「うう........皆さん申し訳ありません........ちょっと取り乱しておりました............」
深々と土下座して謝る唯。
律「ハァ....ハァ.... と、取り乱し過ぎだろ.......一体あれを見て何をそんなに取り乱す事があったんだよ........」
唯「うん、実はね.................」
そう言って唯は今朝の夢の内容をみんなに話した。
澪「なるほどねえ.....ギー太が壊れる夢か.............」
梓「まぁ、そんな夢見た後ならちょっと過敏になっちゃいますね」
紬「ヘビメタなどで楽器を破壊するパフォーマンスは当たり前のようにあるけど、楽器を心から愛する人にはちょっといただけないものがあるものねえ.....」
律「てか私達、ヤな役で出てるな、その夢に」
4人諸々に感想を述べた。
澪「でも松本さんが爆破したあのギター、今でもボロボロになっていながらも保管してるらしいよ。当時は売れに売れてた時期だったからちょっとパフォーマンスに熱入れてたんだろうな」
律「調子乗ってたとか言ってたしな」
澪、律のB'z常連者は松本孝弘のフォローを入れる。
唯「でもぉ.......ギターにあんな事するなんてギタリストのする事じゃないよお.... ギー太ぁ、私は絶対しないからね、あんな事」
ギターケースを抱えてそう語りかける唯。
律「いや多分、したくてもできないと思う」
律のするどいつっこみが入った。
紬「まあまあまあまあまあまあ、唯ちゃん。ほら、おいしいロールケーキ持ってきたから」
おもむろに高級そうなロールケーキを見せるムギ。
唯「うん、でもプロのギタリストならお客さんを喜ばせるパフォーマンスを積極的にしなくっちゃね」もーぐもーぐ
ロールケーキを頬張りあっさり機嫌を直した唯であった。ずっこける一同。
唯「でも! 私はしないからね! 私とギー太は一心不乱! 死ぬまで一緒だぜ!!」
澪「唯、それ一心同体」
唯「ありゃ」
先程の騒ぎもティータイムにかかればあっさり解決。いつもの談笑タイムが始まり、それが30分以上は続いていた。
澪「さて、と。そろそろ始めるか、練習」
立ちあがった澪が練習にとりかかろうとした。
唯「ううー、もうちょっとゆっくりしようよおー」
律「そうだぞ、澪ー。あと3時間はゆっくりさせろー」
梓「練習する気まったくないんですね........」
澪「じゃあ、まずは唯が前々からリクエストしてた『恋心』のカバーでも練習しようかな?」
唯「りっちゃん! 早くドラムの用意をするんだっ!!」
律「お前.....................」
唯「じゃ、ギー太。この曲、私踊らなきゃいけないからちょっとお休みしてねー、怒っちゃやだよー?」
唯はギー太をイスの上に置いて子供に言い聞かせるように言った。
唯「そんじゃ、あずにゃん。リードギターの方はお任せします!」
梓「わかりました」
律「行くぞー。1、2、3!」
唯「い・つ・ま・で・も! こ・い・ご・こ・ろっ!!」
チャチャチャンッ!!
澪「...............うん、いい感じだったんじゃない?」
紬「唯ちゃんの振り付けもばっちり決まってたしね」
唯「えへへー............あっ! ギー太!!」
唯はギー太の方へと走り寄った。
唯「あうう.......ギー太拗ねちゃった..........ごめんね、ほっといてぇ.........」
澪「拗ねてるって.........わかるんかい」
唯「私にしかわからない波長があるんです!」ふんす
律「電波だな。ま、唯とギー太のためにも次は『ふわふわ時間』でも練習しますっか」
澪「そうだな、唯。準備しろ」
唯「やったー! よおし、ギー太、今日初めてのお仕事だあっ!!」
放課後ティータイムの面々はその後、2時間以上は練習に時間を費やし、練習にこれだけ打ち込んだのは随分久しぶりな気がするほどであった。ひどい時はお茶だけして終る時もある。
律「んー.......何か久々に真面目に練習したな」
梓「いつも真面目にしててくださいよ......」
紬「そろそろ帰らない? 暗くなるのも早くなってきた時期だし、最近不審者が多いらしいわよ」
律「そーだな。唯、澪。もう切り上げようぜ」
澪「うん、今日は充実した練習もできたし」
唯「おつかれー!」
いそいそと片付けをし、全員帰り支度をする。そして音楽室の戸に鍵を掛け部室を後にした。
澪「じゃ行こっか」
唯「うん。あ、わわわっ!!」
唯は階段をおりたが、足を踏み外してしまい転びそうになった。
律「唯! 危ない!!」
律と澪は唯の近くにいたので、素早く反応でき咄嗟に唯の体を支えた。二人が唯の体を支えてくれたおかげで階段から転落という事態にならずに済んだ。頭から倒れたので下手したら大惨事であった。
唯「あ、ありがとおー....澪ちゃん、りっちゃん........」
澪「まったく....気をつけ..............................唯、ギー太は......?」
唯「へ?」
梓「ゆ、唯先輩!! ギターがっ!!ギターがっ!!!」
梓が大声で叫んだ次の瞬間。
ドガッシャンッ!!!
階段の下から大きな硬い物体が落ちた音が聞こえ全員その音がした方向に視線を寄せた。そしてそれが何なのか気づいた時にはもはや手遅れだった。
唯「あ、ああ......あ.....!! ギー太ぁっ!! ギー太ああああぁぁぁぁっ!!!」
そう、唯が階段から転びそうになった時に唯の肩からギターケースが吹っ飛んでしまい、ギー太はそのまま階段から落ちてしまったのだ。唯はまた取り乱して無造作に転がっているギターケースに走り寄りジッパーを開けてギー太を取り出し泣きわめいた。
唯「うあああああんっ!! ご、ごべん!! ごべんね、ギー太あああっ!! わた、わたじのせいで、わだじがころんだぜいでええええ〜〜〜っ!!」
澪「...........!! 唯、しっかりしろ! とにかく楽器屋に壊れてないか見てもらうんだ!!」
泣き崩れる唯に澪は冷静な判断を下し、全員大急ぎで以前ギー太を買ったり、メンテナンスしてもったあの楽器屋へと向かうのだった.............
ガチャ、ちゃらららららら〜〜〜ん♪ けいおん!
↑アイキャッチ
楽器屋の店員は軽音部一行を見て、正確にはムギの社長遺伝子のあの沢庵眉毛を見て一瞬ビクッとした反応を見せたがそれに構わず、唯らはギー太を修理してほしい、と有無を言わさず店員に見せ、その気迫に負けた店員は慌ててギー太のメンテナンスにとりかかった。そしてそれから数分が経った時。
店員「強い衝撃を受けてネックの部分にちょっと傷がついたくらいですよ。音にも多少の負担はかかっていましたが、何とか直しておきました」
唯「う、うう、う.........!! このご恩は一生忘れませんっ!!」
大袈裟に深々と頭を下げながら、目に涙を浮かべ店員に全霊の感謝を述べる唯。
律「よかったな、唯。大した事なくて」
梓「まぁ、東京タワーから落とした、て訳じゃないんだし、そんなに慌てる事でもなかったと思いますけどね...」
澪「ところで唯、お金はあるのか?」
唯「あ、うん。今度はばっちりだよ。そう何度もサービスしてもらっちゃ悪いもんね」
胸に手を当てほっと安堵の息をもらす店員。そして店員に改めてお礼を言い、軽音部は楽器屋を後にした。
帰宅途中。
律「梓の言う通り、そんな慌てる事でもなかったよなぁ。なんか唯が大袈裟にわんわん泣くもんだから死にかけの人を病院に搬送してるような気分だったぜ」
唯「..................大袈裟.........なんかじゃないよ.............」
あっけらかんと言う律とは対照的に唯は暗い顔と声でそれに応えた。
唯「私のせいで.....ギー太に怪我させちゃったんだもん........どんなに軽い傷でも......私のせいでギー太傷つけちゃったんだもん.........」
唯は今にも泣きそうな顔をしている。
澪「バカ! 今朝ギー太を壊した夢見たって言ったろ!」ボソボソ
律「あ...そっか.... ご、ごめんごめん!唯! そうだな、ギー太は唯の大切な相棒だもんな。どんな大した事ない傷でも軽く見ちゃいけなかったな!」
唯「.........................................」
紬「ほら、唯ちゃん。ギー太さんも無事だったんだしりっちゃんも悪気あって言ったわけじゃないんだから.............」
唯「......ううん、ごめん。その事じゃないの.......何だか私、ギー太に愛想尽かされちゃってる気がしたんだ.......」
唯は暗い面持ちと真剣な声色でそう語り続ける。
唯「いつまで経っても大して上達しないし、服とか着せたり添い寝したり、勝手に喜んでるとか決めつけちゃったり......学園祭の時は忘れてきちゃうし、今日は落としちゃうし...........そんであんな夢まで見て......ギー太は私に使われるのが嫌なんじゃないかな、て.......私のようなぽけーとしたのがギー太持つ資格なんかないんじゃないかな、て...........そんな気がしてならないんだよぉ................グスッ」
唯は最後らへんはもう涙ぐんでいた。そんな唯を見て必死に唯を慰めようとするみんな。
梓「そ、そんな事ないですよ! 唯先輩、合宿の時のように一人でもちゃんと練習して腕を上げてるじゃないですか!」
紬「そうよ、唯ちゃん....一生懸命努力するそんな唯ちゃんとずっと一緒にいるのは他ならぬギー太さんでしょ?」
澪「まぁ、服着せたりとかは確かに自己満足だと思うけど、て、いだぁっ!!」
律は余計な事言うな、と言わんばかりに澪の足を踏んだ。
律「唯、楽器の才能を生かすのは私達、演奏者なんだ。だからギー太の持ち主であるお前がギー太を信じてやらなくてギー太がお前についてくると思うか? こいつが自分についてきてくれる、だから自分もついていける!て思える関係こそ相棒、だろ? もっと自信もてよ。な、唯!」
珍しく律が真剣な口調と顔で真面目でもっともな事を言い出したのでこの場にいる全員が目を丸くした。
唯「............うん、そうだね。私がギー太を信じなくっちゃ、ね。ありがとう、りっちゃん! りっちゃんにしてはいい事言ってくれたね!」
律「私にしては、は余計だ!!」
梓「いやホントにそうですよ」
紬「りっちゃん、B'zの曲の聴き過ぎじゃないかしら?」
澪「さては律になりすました何者か!?」
律「お前らーーーっ!!!」
そんないつも通りのやりとりを見て唯の顔には笑顔が戻った。しかし.............
唯「じゃ、私ここで。みんな今日は本当にごめんねぇー」
律「いいのいいの」
唯「それじゃーねー.............」
唯のみ別れ、唯を見送る澪達。そして歩きながら4人で語る。
律「...................唯、まだ気にしてる、て感じだったな」
紬「ええ......暗さが残ってるテンションだったものね.....」
澪「唯のひとつの事に集中したらそれしか見えない癖が悪いとこで出ちゃったな......」
梓「.............明日になったら綺麗さっぱり忘れて元気になってるといいんですけど......」
律「唯ならありそうだけど.......でもこればかりは唯自身の問題だな......」
唯の事を本気で心配する軽音部メンバー。こんな友人が持てて唯はどれだけ幸せか、しかし当の本人はこの場にいないのでそれを知る由もない。
だが、仲間達の心配は別の方向で動き出すことになるのだった.............
一人、薄暗くなった帰路を辿る唯。
唯「りっちゃん達に励まされて少しは元気出たけど......でもやっぱり私なんかじゃギー太を使いこなすなんて無理なのかなぁ..........」
澪達が心配した通り、やはり唯はまだ気にしていた。
唯「............ううん、ダメダメ!こんなんじゃ! りっちゃんが言ったようにギー太を信じなきゃ! .....よいしょ」
唯はギターケースを肩からおろして、またギー太に向かって語り出した。
唯「ギー太....ごめんね......こんなご主人様で........」
「あ、あのぉー.........」
唯「ふぁ、ふあいっ!!?」
その時、唯の後ろには男が立っておりいきなり話しかけられた唯は仰天して即座に後ろを振り向いた。
その男の容姿はやや太り気味で、顔もふっくらしてメガネをかけており、髪型はおかっぱで、わかりやすく言うと「相棒」の米沢守を思い浮かべばよい容姿である。息遣いも荒く喋っていない時でもふーふーはーはー言っており、言葉もどもり気味であった。いわゆる世間一般で言うキモオタと呼ぶに相応しい男であった。
唯「あ、あのー.....わ、私に何の用でしょうか.......?」
キモオタ「き、き、君.....ふぅふぅ 平沢ゆゆ唯さん、だよ、ねぇ.......?」
唯「え? さ、左様でございますが.........」
混乱しながらも答える唯。
キモオタ「ぼぼぼ、ぼ僕の事...知ってるでしょう? はぁはぁ いつもいつもライブを...み観に行ってるんだか、ら.......ふぅふぅ」
この言葉でこのキモオタは自分達の学園祭などのライブを観にきていたお客である事がわかった。しかし唯は当然このキモオタの顔を知らない。
唯「あ、もしかして学園祭や新歓ライブを観にきてくれた人....? ありがとうございます〜! で、でも私、あなたの事は知らないけど...........」
唯のこの言葉を聞いた瞬間キモオタの顔は強ばり俯いた。
キモオタ「.............ひ、ひどいよ唯ちゃちゃん........去年のが、学園祭のライブで.......君を初めて見た時から......ぼぼぼ僕は君に一目惚れしししして........はぁはぁはぁ いいい一緒に愛を築き上げようってちち誓ったんじゃないか......!!」
唯「え.....? え...........?」
唯はさらに混乱しておどおどしだす。
キモオタ「そそそそそれなのに、きき君はぜぜ全然、僕に話しかけようともしないし.....僕のいいい家にもききき来てくれないじゃないか.......!! だ、だだだから君の後を尾けたりり.....家のゴミなんかも持って帰ったりし、してたのに..........!!!」
唯はこの時、初めてゾッと背筋が凍った。危険だ、この人は普通じゃない。流石の唯でもこのキモオタの行為の異常さやこのキモオタ自体も危険人物である事を本能的に察した。
キモオタ「あの時の言葉はうううううう嘘だったのかっ!!? 『ずっとずっとキモオタ君の側にいて演奏してあげるよ』って言ってく、くくれたのはっ!!? み、みんな澪たん澪たん言う中、ぼぼぼ僕は君だけを....!! き、君だけをずうううううううっと見ていたんだっ!!! あ、あんなわざと転んでパパパパパパンツを見せるようなビッチ女よよりもっ!! 君の方がずううううううううっとすす、す素敵なんだとっ!! わかってあげられるのにいいいいいいっ!!!」
唯「や、いや.....!! わ、私、そんな事....言ってないよ.......それに澪ちゃんもビッチなんかじゃないよ.......!!」
唯はやや涙ぐみながらじりじりと後ろへと下がっていく。逃げろ、逃げなくちゃダメだ。本能がそう告げている。この男から逃げなくては。唯の頭はその事でいっぱいだった。
キモオタ「...................今日こそ......今日こそ.......わ、わからせてあげるよ.......!! はぁはぁ......僕がいいいい一番君の事を.......ああああ、あ愛しているかをおおっ!!!」
そして唯が頭の中で思い描いていた最悪の事態をこのキモオタはついに行動にうつした。そう、襲いかかってきたのだ。
唯「や、やだああああああっ!!」
唯は全力で逃げた。唯はそこそこ運動はできるがものすごく速いというわけじゃない。しかしそれでも彼女なりの全速力で走っているつもりで逃げたのだ。
唯「誰かっ!! 誰か助けてっ!! 助けてえええっ!!」
唯は走りながら大声で助けを呼んだ。しかしここは人通りが少なく家も見当たらない道路。助けが来るという希望はまず持てない。
唯の足はどちらかと言うと遅めだがそれでも追いつかれないのは、キモオタの方も運動などまったくしていないので鈍足だったからだ。そこは唯にとって幸いだったが、それでも唯の足ではキモオタを振り切る事はできない。振り返れば狂ったような顔つきで追いかけてくるキモオタがいる。それが唯の恐怖心をさらに煽る。
無我夢中に逃げる唯は道路沿いの林を見つけ、その中に逃げ込んだ。
唯「はぁ.....はぁ.......はぁ.......はぁ..........」
林の中に逃げ込んだ唯は人が隠れるには十分な草むらを見つけその中に隠れた。
唯「はぁ.....うっうう.....やだよお......怖いよお......誰か助けてええ.......!!」
唯は泣きながらギー太にしがみついていた。しかし泣き声がキオモタに聞かれたらまずいので、泣くのを堪えた。捕まったらどんな事をされるか。それを想像しただけでまた泣き出しそうになるが、堪えてただただ縮こまるしかなかった。
唯「あ....そうだ....! 携帯! 携帯で憂や澪ちゃん達に知らせればいいんだっ!! 現代科学BANZAI!!」
携帯で助けを呼べばいいことに気づいた唯はポケットに手をかける。何だったら110番で警察に知らせてもいい。しかしポケットに手を入れた瞬間に
「はぁ.....はぁ.....はぁ..... ん? ここ、これは.......携帯.........?」
とキモオタの声が聞こえてきた。もう追いついてきた上に携帯を拾われてしまった。
唯「え....!?うそ.....!? 携帯......落としちゃった..........!!」
唯は自分のドジさを恨みたくなった。しかもこれでは自分がこの近くにいる事をバラしてしまったようなものだ。これでキモオタはここら一帯を重点的に捜してしまう。
キモオタ「フ、フヒ、フヒヒヒ......ゆ、ゆゆ唯ちゃん......出ておいでよおぉ.....はぁ.....か、かくれんぼや、おお鬼ごっこは.....はぁ.....後にしてさぁぁぁ.........!!」
キモオタは草むらを掻き分き始めた。
唯「や、やだ........!! 来ないで........こっち来ないでえぇぇ.....!!」
唯はもはや追い詰められた鼠の状態で、ギターケースにしがみついていた。
しかし唯は気づいた。自分がしがみついているのが何なのかを。
唯「.............これだけ重いものがぶつかれば........あいつも気絶して、逃げられるんじゃ...........!!」
唯はギターケースのジッパーを開けギー太を取り出した。確かにギターがぶつかればある程度怯ませる事はでき、その隙に逃げる事はできるだろう。
唯「ギー太を思いきりぶつければ.............あいつから逃げられる........!! 正当防衛、だよね.......うん!!」
唯はギー太を構えた。キモオタが近づいてきたら自分が出せる限りの力を振り絞って、ギー太を振り回すつもりで。
ーーーーバツンッ
しかし途端に唯の脳裏にはギー太の弦が切れたあの夢が浮かんだ。
ギー太を初めて楽器屋で見つけた時、ギー太を初めて買った時、ギー太を初めて持って鏡の前でポーズを決めた時、ギー太を初めてみんなの前でアンプを通して弾いた時、ギー太を初めて観客の前で披露した時、先日の学園祭でギー太を忘れてしまい急いで取りに行った時、大好きなみんなと共にギー太を演奏してる時..........
ギー太と共に過ごした時間が一気に唯の頭になだれ込んできた。
ーーーーー私......ギー太にはいつも助けられてた。ギー太がいないと私、演奏も何にもできない。ギー太がいるからみんなと一緒に演奏できて軽音部にいられるんだ。みんなと楽しい時間が過ごせるんだ。
それはギー太がギターとして存在してるから。私がギー太をギターとして扱ってるから。でも私はギー太に何にもしてあげてない。それどころかメンテナンスもろくにしなくて、勝手に服着せたり、添い寝したりしてるだけだし、今日みたいに落としちゃうだけだったーーーーー
そんなギー太を私は、今何をするつもりで握ってるの?
ギー太は私やみんなと一緒に演奏してこそギー太で。ギー太は演奏している時が一番輝いていてーーーーーー
そんなギー太を人に対して振り回すだけなの?私はーーーーー
唯「...............できないよぉ.........!! だってそんな事したらギー太また痛がっちゃうもん.......! ギー太もそんな風に使われたくないと思ってるもん.........!!」
唯は大粒の涙をこぼして呟いた。ギターは演奏するためのもの。人を傷つけるために使うものではない。唯はギー太をあくまで「ギター」としていさせたいのだ。もはやギー太は唯の「相棒」なのだ。
相棒をそんな事に使いたくない。唯はそう思いギー太を構えるのをやめ、ギー太に抱きついて泣いた。
キモオタ「はぁぁ........! 唯ちゃん.......こ、ここにいいいいたんだねえええ........」
唯にとって悪魔の声が聞こえた気分だった。唯の背後には既にキモオタが立っており、その荒い息をさらに荒げて不気味な笑い声をあげていた。
唯「あ.....!! や、いやっ!! やだああああっ!!」
唯は泣き叫び逃げようとした。しかしこれだけの近距離で逃げれる確率は0。腕を掴まれついに唯はキモオタに捕まってしまった。
唯「やだっ!! やめてえっ!! 誰か、誰かたす....ムグッ....!?」
唯は精一杯の声を出して助けを呼ぼうとしたが何か布状のものを鼻と口に押しつけられた。
キモオタ「はぁはぁはぁ... ごめんねええ...... ききき君があんまりてててて照れ屋なもんだから......この強力なお薬でちょっとね寝ててもらうね.......ぜぇぜぇ........」
薬品の臭いを嗅いでしまった唯は体中の力が抜けてその場に倒れこんだ。
キモオタ「フヒ、フヒフヒヒヒヒ...... ゆゆゆゆ唯ちゃん..........やっと.....やっと僕の元へきき来てくれるんだねえええええええ......... うううううううう嬉しいなああああ....... どどどんな服着せようか........ や、やっぱまずは.....リリスのコスプレからかなあああああ.........い、いや......僕を焦らさせたお仕置きとして.......監禁するのもいいいいかも........はぁはぁはぁはぁ........!! 18禁ゲーもきき規制が多くなって......スススストレスも溜まってたしぃぃぃ.........!!」
キモオタは倒れる唯にアブナい発言をしながら息を荒げて手をのばした。しかし唯は倒れていながらもギー太にぎゅっとしがみついていた。
キモオタ「.............じゃ邪魔だなああ...... こんなガラクタ.....いらないんだよお.....!!」
キモオタはギー太を後方に投げ飛ばした。ガシャッ、と地面に落ちるギー太。幸い地面には木の葉などが集まっているので大した衝撃は受けない。
キモオタ「さああ..... 唯ちゃん......とととりあえず....この袋に入って....僕の家にいいいい行こうねええええ..........フヒヒヒヒ........!!」
そして唯はうっすらと瞼が閉じていく中、まだかすかに残っている意識の中で思った。
やだ.....よ......このままじゃ........私...........
助けて....憂........お母さん....お父さん..............助けて........澪.....ちゃん........りっちゃ......ん......ムギちゃ....ん..............あず............にゃ.....ん......和.....ちゃん........さわ..........ちゃ...............ん.......................助けて.........ギー太................
「おい」
キモオタの後方にはいつの間にか男が立っていた。
キモオタ「え............!!?」
キモオタは突如現れたその男の存在に気づき、首を一瞬にして後ろに向けその男の姿を確認した。
黄色いジャケットを着ており、右腕には糸が張り巡らされた黒髪の男だった。身長も170cmは越えてるであろう細身の端正な顔立ちである。しかしその表情はキモオタを獣の如く鋭い目付きで睨みつけていた。
キモオタ「な、なな、何だおおおお前っ!? どっから湧いて出たアアアっ!!?」
突然の状況にパニくるキモオタ。その言葉を無視するように男はキモオタにその鋭い眼光を保ったまま歩み寄って来た。
キモオタ「くくくくく来るなあああああっ!! ぼぼぼぼ僕にちちち近づくと........こここいつの餌食だぞおおおおおっ!!!」
焦ったキモオタはポケットから護身用道具としてポピュラーなスタンガンを咄嗟に取り出した。スタンガンはバチバチとその音を鳴らし電気が飛び散る。
しかし男は一瞬とて怯まず表情も変えずにひたすらまっすぐと、キモオタにずんずんと近寄ってくる。
キモオタ「....................!!! なななな何なんだ.......!? 何なんだよおおお前ええええええええっ!!!」
スタンガンを全く恐れず近寄ってくるその男にキモオタは逆に恐怖して、スタンガンを男の胸目がけて突き立てた。
しかし男は右腕でキモオタのスタンガンを持つ腕を目にも止まらない速さで横へと逸らした。キモオタはまったく反応できなかった。まさにDIOを前にしたポルナレフのような感覚だったであろう。
「................は?」
と思う頃にはキモオタは宙を舞っていた。腕を逸らされた次の瞬間には男の強力な回し蹴りがキモオタの脇腹目がけて炸裂し、キモオタはゴミクズのようにぶっ飛んでいったのだから。
キモオタ「ごべしゃあああっ!!!」
そのまま木に激突したキモオタは北斗の拳のやられ役のような叫び声をあげ気を失った。
だ........れ..........?
唯はまだかろうじて残っている意識の中、今の光景を見ていた。唯はこの男の事を知らない。見た事もなかった。
しかし何故だか唯はこの男に対して安心感を持っていた。それはいつも学校で楽しく会話する澪達と一緒にいる時と同じような感覚であった。
そして男は唯の目の前にまで寄ってきた。
ここで唯の意識は完全に途切れる事となる。
「お姉ちゃん........お姉ちゃん..........!! お姉ちゃんっ!!」
唯「ほやっ!!?」
唯は目を覚ました。
唯「.............................ふえっ?」
あたりを見渡す唯。周りには涙を流す憂、唯が起きた事に驚く澪、律、ムギ、梓、唯の幼馴染みの真鍋和、軽音部顧問の反面教師山中さわ子と白衣を着た医者らしき男がいた。
そして自分が病院のベッドの上にいることにも気づいた。
憂「..............!! お.....お姉ちゃあああああん!! うわああああん!!」
憂は号泣しながら唯にしがみついた。
澪「よかった........本当によかった..........」
律「心配させるなよおっ!! このバカッ!! うう....ホントよかったよぉ....!!」
紬「唯ちゃん........うぅ.....」
涙を流して唯の意識が目覚めた事に喜ぶ澪、律、ムギ。
梓「先輩..........!! 本当に......どこまで人を心配させれば気が済むんですかっ!! もう.......!!」
叱りながらも涙と安堵の笑みを浮かべる梓。
唯「......................えと.................何があったんだっけ............?」
唯のこのセリフに拍子抜けする一同。
和「唯.....あなた、道端で倒れてるところを通行人の人が見つけてくれて病院に運ばれて来たのよ....... 薬品で眠らされてるだけだから命に別状はないだろうけど万が一もある、て言うから.........1時間は眠ってたのよ..........」
今の状況を冷静に説明する和だがやはりその目には涙が浮かんでいる。
さわ子「私達はすぐに病院から報せを聞いて飛んできたのよ。ホント....唯ちゃんが倒れたって聞いた時には生きてる感覚しなかったわよ.......あんまり大人を心配させないでよね」
さわ子もまた今までの緊張がほぐれたようにあっけらかんと言う。
唯「...........そっか.......! わ、私......怖い人に追いかけられて..............」
和達の説明でさっきの自分の状況を思い出す唯。それと同時にあのキモオタを思い出しゾッとした。
澪「あっ.......や、やっぱり一緒に倒れてたって男に襲われたんだな!? 唯!」
唯「うん........私の事好きだから、て.......私すごく怖くって必死に逃げてきたんだよぉ」
これを聞いた憂の表情が強ばった。
憂「お、お姉ちゃん!! 何もされなかった!? な、何かひどい事......!!」
そして血相を変えて唯に問う憂。
唯「ううん........私、眠らされちゃって.........でも......その後.............えっと...........」
律「やっぱあいつが犯人だったか......! あいつはお前を襲った不審者の可能性が高い、て事で警察に取り調べされてるらしいよ。でもあいつ、何で倒れてたんだよ? 唯がぶっとばしたのか?」
唯「できるんだったらしたかったけど.....私じゃそんな事できな............あっ!!」
律の言葉に唯は思い出した。
唯「ギー太っ!! ねぇ、ギー太はっ!?」
血相を変えて澪達にギー太の事を聞く唯。
澪「ギー太なら........お前のすぐ側に落ちてたからちゃんと保管してあるよ。安心して。傷も大してついてなかったよ」
澪が指さした先の壁際にはギターケースに入ってあるギー太があった。
唯「うぅ......よかったぁ..........!」
梓「あ、ギターと言えば......さっき警察の人から聞いたんですけど.....あの通りって人家もあんまりなくって人の通りも少ないから滅多に人が来る事はないらしいです。でも、唯先輩が倒れたあの時.........ギターの音が何度も聞こえてきたらしくて近くを通りかかった人が見にきたら唯先輩と犯人の男が倒れてたそうです」
医者「発見が遅かったら少々危なかったかもしれないんだよ」
梓の説明に補足を付け足す医者。
律「不思議だよなあ.......唯は倒れてるんだからギターなんて弾けるわけないし、誰か来てくれてギターを弾いて助けを呼んだ、ていうのもちょっと考えづらいし.......」
澪「第一、あんなアンプも何もないところで周りの人が聞こえるくらいの音なんか出ないし...........」
紬「それに、何であの犯人の男が気絶していたのかも気になるわね......」
うーん....とこの不思議な出来事にみんな考え込んだ。
医者「まぁ、君もこうして無事だったんだ......とりあえず今夜はこの病院でゆっくりしていきたまえ。平沢さん。お友達や先生に感謝しなさい。君が起きるまでずっとついていてくれたんだからね」
唯「うん...........みんな。本当にありがとう!!」
深々とお辞儀をする唯。みんなはそれに笑顔で応えた。
その後は妹の憂だけが残り、澪達は全員帰っていった。仕事の関係で遅れてきた両親も唯の無事な姿に号泣した。警察の事情聴取は明日になると聞かされ、憂も両親もとりあえず帰宅した。
23時頃。やっと落ち着いた唯はベッドで寝転び目を閉じ眠りについた。そしてあの出来事を振り返る。追いかけられた恐怖はもちろんだが、何かひっかかるもやもやとしたものがあった。
唯「不思議だなあ......アンプも弾く人もいないのにギー太が鳴るなんて...... ん?あれ? 私、道端で倒れてた、て言われたよね.......? おかしいな.......私、あの人に眠らされたのって林の中なんだから私が見つかるのって道端じゃおかしいんじゃあ.......? それにあの人も私と一緒に道端で倒れてたっぽいし.........」
そう、唯が薬品で眠らされたのは林の中での事。ここまでは意識がはっきりしてるので記憶もちゃんと残っている。
唯「だったらりっちゃんが言ったように誰かが助けてくれて私やあの人を道路のとこまで運んでくれたのかなあ........ でもだったらギー太を弾いて助けを呼ぶなんて事しなくても........... .........................!!」
言いかけたところで急に切り取られていた記憶がピンと甦った。
唯「..................そうだ............!! 眠らされた後..........誰かが来て助けてくれたんだっ!!」
うっすらとした曖昧な記憶なのではっきりとは思い出せないが、確かに唯はその誰かがキモオタに立ち向かって蹴り飛ばしたあのシーンを見た、という事を思い出した。顔は思い出せないが、黒く短い髪で黄色いジャケットを着ていた、という事は思い出せる。
唯「でも.......誰だったんだろ、あの男の人.......私を助けてくれた後、すぐにギー太を弾いて助けを呼んでくれてどっかに行っちゃったのかなあ.........名前も言わずに去っちゃうなんて.....かっこいい.....人だな.....あ」
唯は思い出してるうちに睡魔に襲われ、うつらうつらと完全に熟睡してしまった。
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唯は倒れていた。そしてその側に男が近寄ってくる。その男は初めて会ったようで以前からずっと一緒にいたような不思議な感覚のする男だった。
その男は唯を抱え道路まで出て来た。唯を床にそっと置く男。そして男は林に戻り唯の側に倒れていたキモオタも運んできてそこらへんに放り投げた。あたりを見渡しても誰も来る気配はない。しかし遠くから人がいる気配はした。
男は唯のポケットからピックを取り出し、そのピックを右腕にある糸に擦り付けてかき鳴らした。その音はアンプを通したようなギターの音色であった。
何度も何度も鳴らすうちに通行人もその音に気づいたようでこちらに近づいてくる。
男は安堵の笑みをもらし、ピックを唯のポケットに返した。そして倒れている唯に対して男は何か言った。
その内容とはーーーーーーー
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唯「ぼんばぁっ!?」
ベッドから飛び起きた唯。唯の目の前にはいつもなら見慣れた散らかった部屋が広がるはずだが今日は違った。見慣れない白い部屋。窓には忙しなく鳴くスズメ。出勤途中であろう何台もの車。その景色はいつも自分の部屋から見えるものとは違う。時計を見ると7時。そして唯は寝ぼけた思考回路をフルに回転させ昨日の事を思い出し自分が何故病院のベッドで寝ているかを思い出した。
それと同時に。
唯「...........................そっか.................あの人って...................」
あの夢の内容も。
放課後、部室。
律「昨日、唯を襲ったヤツ。取り調べで変な事言ってたらしいぜ。唯を眠らせた後、変な男が来て蹴り飛ばされたー、て。でもあそこって人通り少ないじゃん。あんなとこに人がいるってのもおかしいし、あそこには唯とあいつくらいしか人がいた痕跡がなかったんだって。それにそいつが助けてくれたにしてもそいつが警察に連絡なりすればいいものをそれをしなかったんだしさ。まぁ、頭のおかしいキモオタの言う事なんかあてになんないしな」
紬「でもその犯人、何故気絶していたのかしら.....? やっぱり誰かが助けてくれたんじゃ.......」
律「あのキモオタが勝手に転んだんじゃない?」
梓「あ、でも林の方で争った形跡がある、とも言ってましたよ? なら何で先輩は道路で倒れてたんでしょうね............?」
澪「.................なんか..............ミステリーだな...............」
不安げに言う澪を見て律は何か閃いた顔をした。
律「そういや、澪......あそこにはな。昔レイプされて殺されたって女がいたんだ。以来、あそこには女の霊が出るって噂で誰も近寄らなくなった。今でもあそこで女性を襲おうなんて男が現れたら、女の怨霊がな............!!」
「ギャーーーーーーーーーーッ!!!」
叫ぶ澪。怖い話が苦手な澪は耳を塞いでぶつぶつ言いながら縮こまった。
梓「律先輩....澪先輩からかうのやめてくださいよぉ」
紬「そんな逸話あったかしら? あそこに」
律「いーや、でたらめ。あ、でも........さわちゃんが言うにはあそこでギターやってた女の子が交通事故で死んじゃって......ギターも大破しちゃってて女の子は壊れたギターを抱きしめながら、ごめんね、ごめんね...て泣いて呟きながら死んでいった....て話があるって..............」
澪「いやあああああーーーーっ!!!」
また叫び、さらに縮こまる澪。
梓「だからあんまりからかわないでくださいってば...........」
律「いや、でもこれはマジらしいよ。さわちゃんも結構真面目な顔して言ってたしうちの両親も知ってたし.....もう10年以上も前の事らしいよ」
紬「ともかく澪ちゃんがいるとこではこの話しない方がいいわね.............」
ぶるぶる震える澪。そしてそれを見てけらけら笑ってる律。いつも通りの軽音部の風景に見えるが今この場には唯がいない。退院の手続きや事情聴取などで遅れてくるらしく、放課後まで結局来なかったのだ。
唯「やっほーーーっ!! 唯軍曹、復活でありまーーす!!」
バン、と勢いよくドアが開けられいつになくハイテンションな唯が現れた。
律「唯! もう大丈夫なのか!?」
唯「うん。体に異常はない、て。でもお巡りさん達から色々聞かれちゃって参った参った」
唯が無事な事に律、ムギ、梓は心から安心した。そして殻に閉じこもってた澪も復活、唯の復帰に喜んだ。
紬「ねえ、唯ちゃん。あの時、本当に誰も助けに来なかったの......? 私、どうにも気になって............」
律「うん、私も気になる! 唯、どうなんだ? やっぱレイプされた女の霊が.........」
澪「ひっ!!」
梓「だからその話は................」
唯「私の相棒が助けてくれたんだよっ!!」
唯はこう答えた。
みんなはきょとんと唯を見つめていたが、唯は気にせず席についた。
唯「さて、と! もうこの話はおしまい! ムギちゃん、お菓子とお茶ください!!」
やけに上機嫌な唯に惚けるみんなだったが唯らしいとも感じ、クスリと笑みが漏れたのだった。
紬「そうね。今日はマロンケーキを持ってきたの、早く食べましょ」
律「お! 栗かあ! いいね、早く食べよ食べよー!」
澪「..............まったく昨日はいい練習できたのに.................」
梓「.......これが終ったらちゃんと練習しますよ? 皆さん!」
昨日の事件の事はもう問うまいといつものティータイムが始まる。それがまた30分続いた時、練習の時間が始まった。
澪「そう言えば唯、昨日ギー太の気持ちがどうとか言っていたけど.......ちゃんと弾けそうか?」
唯「もちろんだよっ!! だってギー太は私の『相棒』だもんっ!!」
時間は遡り、唯が退院して事情聴取を終えた時に戻る。自宅に着いた唯は真っ先に自分の部屋へと向かった。そして憂が持ち帰っていたギー太を抱きしめ、唯は言ったのだった。
唯「ありがとう、ギー太! こんな私で......これからも色々迷惑かけちゃうかもだけど....私達は相棒!だからね! これからもよろしくお願いしますっ!!」
授業には出れなかったが部活だけでもしたい唯はそのままギー太を担いで学校へと走る。大好きなみんなと大好きな時間が待っているから。大好きなギー太と共に最高の時間を過ごせるから。平沢唯はただ走った。
そしてあの夢でーーーーー
いや。昨日、あの男に言われた言葉を胸に焼きつけて。
「いつも大事にしてくれてありがとうな、唯」
昔、あの場所でギターが大好きだった女の子が亡くなって以来、あの場所に行くと心から大切にされ、愛されているギターが人の姿を借りてその想いを持ち主に伝えにくる、という逸話が噂されるようになるのは随分後のお話であるーーーーーー。
ああ、恥ずかし。小説公開すんのって絵よりも恥ずかし。
まぁこんな感じです。何か同人誌なりSSなりでもみんな楽器を粗末に扱い過ぎだろ.....というものが多かったのと、松本さんが「GREEN」LIVEで言った「こいつ(ギター)には本当に感謝している」とギターを自分と対等の存在のように扱ってくれてる発言にじんときたのがあって思いついたものです。
僕、ミュージシャンにとって楽器って大切な相棒なんだと思うんですよね。別にデスメタで楽器を壊したりするパフォーマンスに文句言うつもりはありませんが、それでも何か楽器をもっと大事に大事にしている人こそ真の意味でミュージシャンだなぁ、と。
93年の松本さんは若気の至りっていう事で。
個人的にこの小説で気に入ってる描写は、唯が一度キモオタにギー太で殴りつけようとしたけどそれだとギー太は喜ばない、と感じるシーン。あそこの唯の心理描写が好き。そんな唯が大好きだっ!!
実は現在、澪のベースことエリザベスの話も書いてる途中です。
こんなアホな小説読んでる人なんて指で数えるくらいもいないと思うけど、ここまで付き合ってくれた方本当にARIGATOございます。




