『<実践>ポピュラー文化を学ぶ人のために』

 水泳をして家に帰ったら、渡辺潤/伊藤明己編著『<実践>ポピュラー文化を学ぶ人のために』(世界思想社)が届いていた。若手研究者が多く参加したポピュラー文化のテキストである。『ポピュラー文化を学ぶ人のために』の姉妹編と思われる。ただし、前の本は訳書であったものが、今回は編著書となっている。訳書のほうが、いろいろな理論を解説したものになっていたのに対して、今回のものはポピュラー文化研究手引きと言ってよいものであろう。研究方法、フィールドワーク、読書案内、資料収集法などが書かれている。ソキウス野村一夫氏の『社会学の作法』のポピュラー文化バージョンということもできるっだろう。前回の訳書の内容は、うちのゼミ生にはちょっと難しいかなぁというふうに思ったが、今回のものは卒論やゼミの手引きとして「使える」ものであり、まさに待望の書物と言っても過言ではない。世界思想社のサイトに詳しい目次がある。ほぼ之で内容を概観することができると思う。

序 ― 学ぶことと実践すること【編者】
●第I部 ポピュラー文化研究の方法
第1章 ポピュラー文化を研究すること【伊藤明己】
第2章 ポピュラー文化の社会史を探る【渡辺 潤】
第3章 映像テクストから分析する【田島知之】
第4章 ライフヒストリーを聞く【杉浦郁子】
第5章 データを読む/つくる【飯島賢志】
第6章 集団討論をしてみる【伊藤明己】
●第II部 ポピュラー文化のフィールドワーク
第7章 お笑い【石田 仁】
第8章 ポピュラー音楽【木本玲一】
第9章 演劇【田村公人】
第10章 ストリート【田中研之輔】
第11章 マンガとゲーム【吉田 達】
第12章 消費行動【藤井聖子】
●第III部 ポピュラー文化の諸相
第13章 ポピュラー文化研究のキーワード
 エリート主義、大衆、ポピュリズム【宮入恭平】
 ナショナリズムグローバリズム、ポストコロニアリズム【宮入恭平】
 イデオロギーヘゲモニー、階級、マイノリティ【吉田 達】
 欲望と消費、文化資本、ポピュラー文化資本【藤井聖子】
 サブカル、トレンド、フェティシズム【藤井聖子】
 モダニズムポストモダニズム【吉田 達】
 病と癒し、宗教、あるいはエコロジー【佐藤生実】
 儀礼、身体、そしてスペクタクル【佐藤生実】
 アイデンティティ、顔、化粧【佐藤生実】
 他者と人間関係【吉田 達】
 メディア【渡辺 潤】
 芸術と娯楽【藤井聖子】
第14章 ポピュラー文化のテーマ案内
 テレビ【宮入恭平】
 インターネット、電話、携帯【吉田 達】
 文学【吉田 達】
 映画、レンタル、ミニシアター【佐藤生実】
 雑誌、活字【宮入恭平】
 音楽【宮入恭平】
 風俗、性風俗【藤井聖子】
 食、フード産業【佐藤生実】
 住まいと家族【藤井聖子】
 道、乗り物、ツーリズム【渡辺 潤】
 スポーツ【渡辺 潤】
 遊び、ゲーム、ギャンブル【伊藤明己】    
第15章 ポピュラー文化の文献・資料のしらべ方【加藤裕康】
(概要)
 身のまわりにあふれていることからはじめよう! お笑い、ポピュラー音楽、演劇、ストリート、マンガ、消費行動……。それらをどう見つめ、考えたらいいか。ポピュラー文化をじぶんでしらべ、考察するための、すこぶる〈実践〉的テキスト。

定価1995円(税込)
2005年発行
四六判 292頁
ISBN4-7907-1130-7

 徹底したハンドブック風の第Ⅲ部をはじめとして、余分なうんちくや筆先の小細工は抜きに、親切なガイドに徹している。キーワードなどについては、もっとコクのある記述を好む読者も多いかもしれないが、ブックガイドとしてキーワードなども説明してゆくと言う本づくりは、多くの読者には便利であり、そういう意味での誠意をつくしていると言えるのではないかと思う。また、第Ⅱ部は網羅的でないというような指摘も当然成り立つが、第Ⅰ部のなかみの実践ということからすると、網羅的にしていたずらに本を厚くするよりは、実践例を示すという意味ではこれでよいのではないかと思う。
 渡辺潤さんは、本をつくられるとご自分のHPにメイキングサイトと専用BBSなどをつくられて、読者はそれを読むことができる。リンクは貼らないが、ヤフーにもアップされている『珈琲をもう一杯』である。これは読んでとても楽しい。またこれからのテキストは、ブログやBBSを併設して、意見交換をしたり、誤植を訂正したり、あるいは教育実践例や教案をアップしたりといった交流が必要になるようにも思われる。*1はまぞうをつかって、はじめて『代紋TAKE2』と同姓同名と気づいた。

*1:誤植については、赤川学さんのサイトが自著の誤植を訂正するコーナーをもっている。

鯛焼き

 大学で休み時間に何の気なしにログをみていたら、一つ私のブログを「いなばせんせいのぶろぐ」としてアンテナ登録している人がいた。私は『ナウシカ解読』や自由論とは関係ありません。もしそうだと思って読んでいらっしゃるとすると、ご本人にもいなば氏にも気の毒な気がする。inainaba の語源談義については以前話したが、くり返しておくと、いなばくんとも関係ないし、「ina in a 婆」というババセン宣言でもない。むしろ小木大サーカスなのである。それからメールをチェックしたら、現代風俗研究会東京部会のほうで成蹊大学でやっている吉祥寺サブカルチャー研究の話をしてくれないかというメールが先輩の市川孝一さんから入っていた。なんか『東京スタディーズ』みたいな一連の報告会をするみたいなのだ。
 成蹊の授業のほうは、まだ始まったばっかりで、吉祥寺街づくりNPOのKiss*がやっている「キッスカフェ KISSCAFE」みたいなサイトも見出したばかりだし、一橋大学修士論文でそれを扱ったものもあるらしいという情報を得たばかりだし、授業は一年生中心でミニコミのタウン情報以下のような議論しかまだしていないのでどうしようかと迷っている。まあそれでも、二年生諸君の健闘により、前回はハモニカ横町についてなかなか面白い議論ができた。成立の経緯や、再開発ビルなどのことも触れていたが、やはり盛り上がったのはお店談義で、とりわけ鯛焼きのあまねでは、かなり活発な議論というか、雑談が交わされた。この店のバックにオーガニックカフェがあるとは知らなかった。なんとなくアンテナショップ的な店が多いと思うのは、気のせいだろうか。
 あまねはみたことはあるが、食べたことはない。さすがに最近は甘いものは極力控え、食べたいときには豆乳花65kcalと決めているし。あまねの鯛焼きはしっぽまであんこが入っているのとか、芋が入っているのとか、そこそこ特徴的なものが多いらしい。「鯛焼きは頭から食べるかしっぽから食べるか?」という質問が出て、「ヘタな合コンネタみたいだな」とかゆったら、けっこううちとけて、話が弾んだ。美味いもの=あんこから食べるかどうかという論点、しっぽまであんがはいっているかという論点などが出されたが、1人だけ「頭からだと可哀想」というのがいた。斬新だ。「ひよこもそうする?」ときいたら、「ウン!」とこたえる。二年生が「ハトサブレーもな〜」と拾って快調に議論?がすすむ。
 ここで話は都心の鯛焼き屋に転じられた。歌舞伎座鯛焼きには紅白の白玉が入っているらしい。理由は誰もわからなかった。もう一つ泳げ鯛焼き君の鯛焼きやがあり、めちゃめちゃ巧くて、予約しないと数時間待ちみたいなのもあるのだという。そこで「天然物」「養殖物」という区分が出された。天然は、一つずつ丁寧に焼いたもの、養殖は大きな方で10個とか20個とか一度に焼くものらしい。表面はかりっとし、中はもちもち感があり、そしてあんこはしっぽまでというのが、一応おいしさの指標として確認できた。しかーし。これのどこが吉祥寺にサブカルチャー研究なのか?一応地域差などを議論しなくてはと思った。福島の人が「ずんだがある」というので、びっくりした。「ずんだ鯛焼きか?」と聞いたら、ずんだもちだというからこけた。わははは。回転焼きや、もみじまんじゅうなどにも議論をすすめたが、いっこうにわけわかめな状態。三軒茶屋のチーズクリーム今川焼きの話は、ずっと前にしちゃっているし。私なりの「サブカル」へのこだわりを語りようもない状況だ。まあでも、学生たちが吉祥寺を選んだという部分をなにかわからないかと考えている。