プロジェクトINAZUMA BLOG

2006-06-03

[][][]『直したはず、なんだけどなあ』(大工原正樹×中矢名男人)

 昨日、8期の中矢名男人くんから(『out of our tree』の監督)「1stCut ver.2005のサイトの更新が事情により大幅に遅れているので、掲載予定だったインタビューを載せてほしい」とのメールが来ました。

 というわけで、3週間ほどこのブログは休む予定だったのですが、急遽、中矢くんから送られてきた原稿を掲載することにします。

 原稿は、中矢くんがインタビュアーとなって、講師の大工原正樹に8期フィクション科1stCutの4作品について尋ねたことをまとめたものです。


 生徒の作品に対するアドバイスの仕方は、講師によってちがっていて、生徒から聞いた話によると、万田邦敏さんの場合は、問題点を一つ一つ丁寧に指摘したうえで、どう直していくべきかを明快明晰に論じていくのだとか。

 私(井川)の場合は、怠け者なので、感想を書いたメモを配布して、「言いたいことはメモに書いてあるから。じゃあ、さっさと呑み会にしよう」というふうになってしまう。

 大工原さんの場合は生徒の言い分をとにかく聞く。そうして、どんなにつまらない質問でも、その一つ一つにきちんと答え、生徒と一緒に考えていくという方法らしい。

 おそらく、批評の言葉ではなく、人柄で指導するといった感じなのでしょう。

 思い返してみると、大工原さんのクラスから1stCutに選ばれる作品には、どういうわけか水に対する親和性とでもいうべきものがあって、かならず海や川が出てくる(過去の作品では小嶋洋平の『海を探す』。http://www.1st-cut.com/2003/)。そうして、登場人物はその水に体をひたしたいという欲望にかられるのだけれど、あの海や川には、どこか大工原正樹のおおらかで誠実な人柄が反映しているのかもしれません。


 それにしても、インタビューを読んで思ったのは、「批評めいたことをひとまえで言うのは苦手だし、偉そうに見えるからイヤだ」という大工原さんから、よくこれだけ聞きだしたものだということです。これは中矢名男人の手腕というしかありません。(井川)


『直したはず、なんだけどなあ』(大工原正樹×中矢名男人)

1 『out of our tree』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p2

2 1stCutの選考について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p3

3 『水の睡り』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p4

4 『底無』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p5

5 『バオバブのけじめ』について http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060603/p6


(なお、ネタバレ部分も含むこのインタビューの完全版は、6月10日頃に、1stCut ver.2005(http://www.1st-cut.com/index.html)に掲載される予定です)

[][][]『直したはず、なんだけどなあ』1(『out of our tree』(中矢名男人)について)

f:id:inazuma2006:20060603114941g:image

<『out of our tree』あらすじ>

孤独な男の子、彼を殺そうとする母親、催眠術に囚われた少女、ヒロインを探す二人の映画青年、そして彼らを監視する謎の男…互いに互いを探し、互いに互いを見失いながら、彼らは光の中をさまよっていく。


大工原:選考についてとか、初等科時代のこととかは、なかなか覚えていないことが多いんだよね。作品についてのことが中心になるけどいいかな?

―――はい、よろしくお願い致します。

大工原:まず、『out of our tree』だけど・・・中矢くんは、主人公のあおいのイメージはこんな感じだったの? こういう、ふわっとした喋り方とか。

―――シナリオの段階では確固たるイメージがなかったというのが正直なところですね。キャスティングを決定する段階では納得して選びましたが。

大工原:そうか。謎の男役についてはどう? 選考の時に見せてもらったビデオ課題では、あの役は小嶋くん(『底無』監督)が演じていたよね。

―――そうです。小嶋くんも候補の一人でしたが、さすがに監督兼任でやってくれとはなかなか(笑)。でも、中舘さんはイメージどおりのキャスティングでした。

大工原:僕はあの役を、中矢くんの講師である井川(耕一郎)さんで勝手にイメージしていたんだな。多分、中矢くんたちから見た井川さん像ってあんなんだろうなと。井川さん本人にそのことを言ったら、「大工原さんは、僕をそういう風に見ていたのか」ってショックを受けていたけどね。(笑)。で、あおいについても、勝手なイメージというわけではないけど、驚いたわけなんだよ。ちょっとつかみにくい。

―――大工原さんはどんな女の子をイメージしていたんでしょうか?

大工原:もっと明瞭で、でも鈍感な女の子、というイメージだね。僕は中矢くんの班と松浦くんの班のシナリオ検討会に参加したわけだけど、中矢くんのシナリオはお話を推進していく太い幹みたいなものが前半を終わるまでつかみにくかったんだな。登場人物やテーマが多くてね。実際に作品を観てみると、力を色々なところに入れ過ぎちゃったのが分かる。もっと主人公が引っ張っていくようにホン直しをしなきゃきついなと考えたわけだよ。で、決定稿で、まあ大丈夫かなと。それで出来上がったのを観たら、あれっ?と(笑)。

―――主役のイメージが違う。

大工原:違うというのもあるけど、それ以上に演出が出来ていないんだな。例えば、地下室のシーン。あそこはクライマックスのはずなんだけど、クライマックスになっていない。朋子の話を聞いていたあおいが、「やめてっ!」と叫ぶんだけど、その痛みが伝わってこない。絵に力が入って、役者に入ってない。

―――そうですね。あのシーンは朋子がスクリーンの向こうに行ってしまうという仕掛けがありますから、それをどういう風に撮るかばかりに頭がいってましたね。

大工原:それにしても、朋子に対するあおいのリアクションをきちんと描いていないといけない。あおいに寄り添う形で、この話がどういう話なのかを見せていかないと。なのに、肝心のあおいの動きというのが記憶に残っていない。記憶に残っていないのは何故かというと、撮っていないからだよ。ポイントでの動きを押さえていない。

―――まったくそのとおりです。

大工原:まあ、あおいを追いかける2人組はよかったと思うよ。いい組合せだね。

―――岡田役の西口くんは最初のビデオ課題からずっと演じてくれていましたし、シナリオも半ばアテ書きしたところもあったので申し分ないです。工藤役の宇根くんもよかったです。互いに異なるキャラクターでしたから。

[][][]『直したはず、なんだけどなあ』2(1stCutの選考について)

大工原:しかし、4本並べてみると、中矢くんの作品の異質さは際立つね。ともすりゃ、他の3作品は区別がつかなくなっちゃうから(笑)。

―――選考のときには、そういった作品のバランスというのも重視されるのでしょうか?

大工原:最後の1本にどれを選ぼうかというときには考えるね。ただ、バランスという考え方だと、シナリオ本位ではなくなってしまう。それでは書いてきた生徒に対して悪いよね。だから、まず「嘘」がないシナリオを選ぶ。

―――「嘘がない」とは?

大工原:本気度、切実さ、とでも言ったらいいのかな。さすがに、それは選考する人たちの間でもばらつきはないんだよ。「嘘」があるかどうかというのは分かる。後は、シナリオの世界観に強く興味を惹かれるものを一押しにしていくわけだね。

―――当然、各講師で世界観も異なりますから、自然にシナリオ選考でもバランスが出来てくる。

大工原:それがいちばん真実に近いんじゃないかな。選ばれた作品は、どれも必要なものは揃っている。キーになるイメージとか、人物の配置とかね。つまり、シナリオを直せば映画にできるだろうという判断がついた作品なんだよ。

―――それが「嘘」のないということなんでしょうね。

[][][]『直したはず、なんだけどなあ』3(『水の睡り』(栩兼拓磨)について)

f:id:inazuma2006:20060603115101g:image

<『水の睡り』あらすじ>

それまで暮らした家からアパートに引っ越した義男は、音信不通だった姉、陽子と再会し、共に暮らし始める。穏やかな生活が始まるかに見えたが、義男は悪夢に襲われるようになり、二人は過去の記憶が眠る、川の上流へと向かう。


大工原:で、『水の睡り』だが・・・これも必要なものは散りばめられていたんだよ。でもなあ・・・栩兼くんは自分の選んだテーマが分かってないんじゃないかな?(笑)

―――インタヴュー用の資料として、大工原さんに初等科時代のシナリオ講評を送ってもらったのですが、読み直してみると栩兼さんへのコメントは完成した作品にも妥当するんですよね。「栩兼くんが義男の近親相姦願望の鏡像として鶴田兄妹を登場させているのは明らかなのだから、書くべき事はもうはっきりしているでしょう」とか。

大工原:そうなんだよな(笑)。「義男が鶴田兄妹の近親相姦を前から知っていたのか、最近知ったのか、いずれにしても決定的な場面を目撃させなければいけないのではないだろうか」。そうだよ、決定的な場面が目撃されていないんだよ(笑)。

―――鶴田兄が刺されたという「事件」も、同僚からの伝聞の形で知るわけですしね。

大工原:しかも、あれは刺したのが妹の彼氏だろ。全然決定的じゃないよな。

―――あと、陽子の「それなりの覚悟をして帰ってきたんですけど」という台詞も、姉弟のただならぬ関係の暗示には聞こえませんね。狙いなのかもしれませんけど。

大工原:唐突に聞こえるよな。まあ、チラシの写真にも使われている、ボートの上で姉弟が寄り添って寝ている映像がインサートされたりして、匂わせてはいるんだけど・・・弱い。姉弟の距離が見えないんだな。だから、唐突なんだ。あと、義男・陽子と鶴田兄妹が揃うシーンで、風呂上がりの陽子を見た鶴田兄が本人の前で「陽子さん見つかったんだ」と言うだろ、あれもおかしいよな。笑ってしまうというか(笑)。

―――鏡像関係が浮かんでこない。

大工原:栩兼くんのシナリオ検討会には井川さんが参加していたけど、だいぶ難航していたな。結局、初稿に戻れってことになったみたいだけど・・・講師が初稿に戻れというのは、要するに題材をチェックしろってことなんだよ。

―――選考の基準となる、シナリオに散りばめられたこと、ですね。

大工原:そう、そこからシナリオを直していけということだよ。栩兼くんはどうも、細部を膨らますことに一所懸命でね。細部というよりもスタイルだな。だから、風景や室内の映像はスチール写真のように綺麗ではある。ただ、風景ということなら、姉弟がゴムボートに乗るシーンなんかでも、芝居と絡めて空間を上手く見せることが出来ていないよね。

―――役者さんについてはいかがですか。

大工原:陽子役の藤崎さんは以前僕の映画にも出てくれたから、芝居に熱心に取り組む人であることは知っているんだけれど、どうも感情が見えてこない。義男役の役者さんもあまり印象に残らない。

―――佐藤さんは過去の1st CUT作品に出演されていますよね。

大工原:そうだっけ?

―――村山圭吾監督『モリムラ』の弟役です。

大工原:ああ、あれはすごく印象に残ってる。てことは・・・栩兼が悪いんだな(笑)。むしろ、栩兼くん本人が演じた方がよかったかもな。

―――弟役ですか?どんな姉弟ですか(笑)。

大工原:いや、いいキャラしてんだよ、あいつ本人が。いいじゃない、明らかに姉より老けている弟で(笑)。そこいくと、『底無』の主役の男の人は良かったね。シナリオをちゃんと理解して演技されていると思う。

[][][]『直したはず、なんだけどなあ』4(『底無』(小嶋健作)について)

f:id:inazuma2006:20060603115425g:image

<『底無』あらすじ>

塾講師の田辺は、平山という生徒がイジメを受けているのではないかと疑う。平山が隠し持っていたナイフを偶然手に入れた田辺は、事の真相を確かめるため平山の家に行く。だが平山は平然と田辺にナイフを譲ると言う。


―――小嶋くんは大工原さんのクラスの生徒ではなかったですし、シナリオ検討会も万田さんが担当されていたので接点とはあまりなかったわけですが、作品はいかがでしたか?

大工原:シナリオはとても繊細に書けていた。ただ、この映画のテーマの一つに、若年者に対する潜在的な恐怖というものがあると思うんだけど、それは描き切れていないな。具体的にいうと、家庭訪問してナイフを平山という少年に示すシーンと、公園で高校生に囲まれるシーンだね。ともに恐怖を感じない。平山でいうなら、教室で見せる笑顔は不気味だったけどね。

―――そのシーンは両方とも重要ですね。前者はビデオ課題やテスト撮影でも撮っていたシーンですし、後者は擬似夜景が上手くいかずに撮り直したところですから、小嶋くんもここが狙いだとは理解していたと思います。

大工原:ナイフのシーンの撮影や照明は良かったよ。常に外からの光が揺れている画面。でも、怖くない。あと、公園のシーンは暗すぎるね。

―――撮り直しの前はもっと暗かったですよ。

大工原:うーん、でもまだ暗い。あれじゃ、高校生たちが潰れちゃって黒い影になっている。黒い影が不気味で怖いのは当たり前だけど、その恐怖や不気味さはホンの狙いから外れているんじゃないかな。そうじゃなくて、高校生たちの顔が怖い、とするべきじゃなかったのか。どこにでもいる兄ちゃんたちが、ニヤニヤこっち見て笑っているのが怖い、じゃないのかな?

―――なるほど。

大工原:あと、主人公が思い詰めていく過程、一種神経症的になっていく過程が物足りなかったな。ナイフだけじゃない、何かもう一つがあればよかったのかも・・・まあ、その2つのシーンがきちんと演出されていれば、違っていたかもしれないけどもね。

―――そうすれば、主人公が潜在的に抱いている、これから生まれてくる自分の子供への恐怖も浮かび上がったかもしれませんね。僕は、ラスト近くに奥さんが主人公に告げる「他人事じゃないないんだから」みたいな台詞が気になりましたね。あまり切実に聞こえないのは何故なんだろう、と。

大工原:奥さんは初稿と比べて比重が軽くなっていたな。

―――若年者への恐怖を自分の子供への恐怖へと媒介する役柄としては結構重要だと思うんですよ。初稿と決定稿を読み比べると、奥さんの出て来るシーンの位置がかなり変更されていて、工夫されているなとは感じます。わりとシナリオ上に満遍なく配置されていて、一種の句読点みたいな働きで。ただ、そのために稀薄になってしまったのかもしれませんが。

[][][]『直したはず、なんだけどなあ』5(『バオバブのけじめ』(松浦博直)について)

f:id:inazuma2006:20060603115450g:image

<『バオバブのけじめ』あらすじ>

大学生の和夫は東京で一人暮らし、そこに高校生の弟洋と父政義が田舎からやってきた。失踪した和夫たちの母親を探すためだ。三人は神奈川の海岸沿いに向かうが、叔父の目撃談だけで他にたいした手掛かりもなく、政義は息子たちの将来のことでくどくど喋ってばかり。そんな政義に対していちいち反抗的な態度をとる洋。とうの昔にいなくなった、思い出したくもない過去の存在になっている母親の捜索に、和男はとまどいを隠せない。


大工原:で、『バオバブのけじめ』か。これはコメディとしての側面ではかなり上手くいっていると思う。松浦くんのは、最初にシナリオ課題で出したものと、選考のときに出したシナリオ初稿とではほとんど変化していない。ただ、最初に提出したプロットからネタが全然違うものになっていたので、飲んでいるときに聞いてみたら、美学校に入る1年前に自分の父と叔父をモデルに書いたシナリオだって言うんだな。講師陣に切実さを出せと言われて、ならば試しにこれを直して出してみようと考えたらしい。

―――大工原さんによる初等科時代のシナリオ講評を読んでみますと、松浦くんのシナリオに関しては、さっき言った必要なものはすでに出揃っていたんだな、と感じますね。それに大工原さんが言及している弱点にも、きちんと対応していると思います。叔父と父の口論を和夫が黙って見ているだけでいいのか、とか。

大工原:シナリオ直しもわりとスムースにいったしね。ただ、出来上がった作品を観てみると、叔父のマンションのシーンが弱い。

―――あのシーンについてはビデオ課題でも撮影していましたから、松浦くんも大事なシーンだと感じていたのだと思います。ただ、そのビデオ課題の講評のときにもやはり演出の弱さを指摘されていました。

大工原:向いていないのかもな(笑)。やっぱり、父と兄弟の3人による珍道中を描くことに重点が置かれている。あの漫才的な面白さ。それはシナリオ段階から見えていたからね。それに比べると、マンションのシーンは難しかったんだろうな。まず、責めているはずの叔父が、父役の山崎さんの存在感に負けてしまっている。これは、役者さんの問題ではなく、演出が出来ていないということじゃないかな。それにカメラが喋っている叔父にばっかり向いているけど、このシーンは聞いている和夫の反応が重要なんだよ。

―――そうですね。それが後の夜道のシーンにつながっていく。

大工原:シナリオの流れを考えれば分かることなんだよな。このシーンは4人の男の座り芝居ばっかり撮っていても仕方ない。シナリオ上、座り芝居ばかりになるとしても、例えば叔父の若い奥さんを上手く動かすとかね。彼女だけは自由に動ける位置にいるわけだし。ただ、背伸びしている洋に叔父が声をかける辺りは面白かったな。

―――夜道のシーンはいかがでしたか?

大工原:ナイターは動きと込みで照明を考えていると思う。貧しい照明機材でよく頑張っていると思うよ。あと、松浦くんは一種オフビートというか、コメディのセンスがある。中矢くんもコメディ指向だけど、君の場合はキャラクターや世界の捉え方の面白さだね。松浦くんは「間」なんだな。

―――『バオバブのけじめ』は編集が進行している段階で何度か観たのですが、最初はさっぱり何を撮ろうとしているのか分からなかったんです。何かめちゃくちゃ面白い画面があるわけでもないですし。でも、完成してみると非常に面白い。父親が走っているところなど素晴らしい。それが間ということなんでしょうね。

大工原:あとは、3人が公園で弁当を食べるシーンがちょっと気になるね。あそこは小嶋くんの映画じゃないけど、父親の若年者に対する認識が現れているところだよね。中高生が公園にいるんだけど、彼らと3人の配置、それと距離の取り方があまりよくない。距離をあまり取れないから高低差を生かしたんだろうけど、むしろ水平な広い公園で、3人が弁当を食べている背後に常に中高生たちが写り込む、とした方が可笑しさが出たかもしれない。あんな近い距離で、父親が「大人に歯向かう奴らは死刑にすりゃいいんだ」みたいな台詞を言うってのはどうもね。遠くにいるときだけ強がりを言う父親だからこそ、マンションのシーンや夜道のシーンが生きてくるんじゃないか、という気はするね。

―――なるほど。

大工原:こんなもんでいいかい?

―――そうですね、あとはシメに何か・・・

大工原:シメといったって、あんまり褒めた記憶がないんだけどな(笑)。

―――4本を総括してといいますか。

大工原:そうだね、みんな直しをやっているんだけど、それが演出につながっていない気がする。シナリオではきちんと直しているからポイントを理解しているのかなと思うと、外していたりする。肝心なものを取り逃がしていると同時に、肝心なものを見ようとしていないんじゃないかな。

―――映画の勘所ではなく、別のところに目が行っている。それが演出不在ということなんでしょうか。

大工原:まあ、栩兼くんの場合は直しも難航して大変だったみたいけど、それならそれで主役の2人をじっと見て、芝居で閃く瞬間を待つという方法もあったかもしれない。シナリオ直しの段階ではつかみ切れなかったポイントを、演出の段階で探るというかな。

―――あと、井川さんがおっしゃっているのは、1日に何カットを撮れるのかが分かっていないのではないか、ということですね。大工原さんは場所移動や仕掛けなしのシンクロ最大40カット、アフレコで50、サイレントで110カットを目安に考えているとのことですが。

大工原『赤猫』がトータル240カットで、撮影期間が5日だから、50カット弱だね。

―――そういう自分のペースというのを、テスト撮影やリハーサルなどで探るべきだったかもしれません。

大工原:あらかじめ考えている以外のことをやるのはとても難しいことだからね。・・・こんなもんでいいかい?

―――はい、ありがとうございました。


(2006年5月19日・映画美学校ロビー)

(取材・構成:中矢名男人)