渡辺護、『制服処女の痛み』の頃の美保純について語る。


(以下のインタビューは、2013年3月にmixiに載せたものです)


自作解説篇の構成を考えるため、ラッシュを見直し、大蔵貢に関するエピソードを探していたら、なぜだか『制服処女の痛み』(81)の美保純について語っているところが出てきた。ひさしぶりに見たら、渡辺護さんの語りが生き生きとしていて面白かったので採録します。


大曲って前から知ってるやつがいて、そいつが「うちに電話番もできないような女の子がいるんだけどさ、見てくんねえか」って言うわけよ。敬語が使えないらしいんだな。
「何とかしてくれよ、ナベちゃん。女優になれるかな?」ってことだったんですよ。それで今の六本木ヒルズがあるあたりの喫茶店で会ったわけですよ。
ガラスで外が見える喫茶店で待ってたら、女の子が歩いてくる。かっこいいんだよ。オーラがあるんだよ。そうしたら、(大曲が)「ああ、来た来た」。それが美保純だったわけだ。
羽のついた帽子をかぶってたかな。こんなふうにかぶって、ひとの顔見て、堂々としているんだよ。なーにー?って顔で。これが可愛いんだよ。
「何か飲む?」って訊いたら、(ぼそっと)「ジュース」。(しゃべり方が)面白いんだよ。それで、おれは(大曲に)「いけるよ」「ホントか、ナベちゃん。でも、全然常識ないから」。大曲は自分じゃ全然マネージャーになるつもりはなかったんだよ。
(美保純に)話を聞いたらさ、デスコクイーンコンテストで一番になったって言うんだよ。それでデスコクイーンだからデスコを使って踊ってるとこを撮ろう。そこから話を始めようと。
で、ガイラと相談して、デスコでシンデレラの靴がぬげたってことでホンをつくったんだけどね。その話はちんぷんかんぷんだったけど、いいや、いっちゃえ!てんで、踊りを中心に撮ることにした。
最初に池袋で撮ったんですよ。池袋のなんて学校だったかなあ、セーラー服の子がいっぱいいるところだよな。そこで歩きを撮ったんだよ。そのときにね、(美保純が)セリフを言って、途中でふりむいて、「監督、いいのか、これで?」って言うんだよ。「いいの?」じゃないんだよ、「いいのか、これで?」なんだよ。
「いいけどよ、カットって言うまでやってくれよな」「えっ?」って言うんだよ。「よーい、スタートで、芝居するだろ。カットって言うまでやってないとダメなんだよ。お前みたいに勝手に、これでいいのか?はねえだろ」って言ったよ。「ああ、そうか。分かった」。これが可愛いんだよな。
(別の)道を歩くシーンがあって、「お前、そこでデスコやってみな」。そうしたら、「監督、もしここで踊ったら、アホだよ」「アホだよ、そりゃあ。お前の役はアホなんだよ。アホだから、踊ってみな」「そりゃ、おかしいよ。そりゃないよ、監督」「言うこと聞け、バカ」てなこと言ってたら、「やるよ。やればいいんでしょ」。ぱあーっと踊ったよ。
お昼時ってのは、監督は午後の用意をするわけですよ。喫茶店とかでひとりになって、午後の撮影のコンテを割って、頭に入れるわけだよね。ところが、(美保純が)ついてきて、座ってんだよ。「何だ?」「お金がないんだ。何か食わしてくれ」って言うんだよね。
「何か頼んで食えよな」「うん」「お前、主役のやつがさ、金ないって、おれのあとくっついて歩いてちゃまずいだろ。どうせギャラ払うんだから、これもってけ」って、何万円か渡したよ。そうしたら、大曲がさ、「金、あの子に渡さないでくれ」「冗談じゃない。ふざけるな」って言ったんだよ。「飯が食えないんじゃ、仕事にならねえよ」って言って。
六本木のディスコのシーンが早く終わったんですよ。「純、飯食おうか」って言ったら、「それより、一杯飲もうよ」。そうしたら、飲みっぷりがいいんですよ。そのあと、大曲のとこ行って、「あたしの演技、いいみたい。監督、気に入ってたよ」ってでっかいこと言ってたらしいよ。
美保純言葉ってのがあるんだよな、真似できないけど。で、「自分のしゃべり方でセリフ言え」と。全部、それで撮ったんですよ。そうしたら、アフレコのとき、口合わないんだよな。合わなくても面白いから、OKしちゃったんだよ。
そうしたら、日活の外注の係の奥村ってのが、「アフレコやり直さなきゃ、ナベさん。全然口合ってないよ」「いや、面白い方をとろう。あんまり口合う合わないは問題にしない方がいい」。強引な話だよ。いや、おれの方が正解だと思うけどね。
できそこない映画ですけど、美保純は可愛かった。魅力的だった。これがねえ、売れちゃったんだよな、不思議に。で、日活の映画はね、舞台挨拶するんですよ。美保純が出たらね、俄然すごいんですよ、お客の反応が。大曲はそれを見て、これは儲かる!ってんで積極的にマネージャーに取り組んだんだよ。
美保純で二本目って考えはなかったですよ。いつまでピンクやっていても……ってのがあったからね。アフレコ終わってみんなで飲んでるとき、おれ、美保純に言ったよ。「お前、しっかりやれよな。東てる美みたくなるといいなあ、お前」