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半可思惟 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-02-14-Wed

[]P2Pは音楽の売上にそんなにダメージを与えていないよ、という研究

はてブではあまり話題になっていないみたいなのでご紹介。

合法的な音楽売上に対するP2Pの影響に関する調査というのをFelix Oberholzer-GeeさんとKoleman Strumpfさんという方が行ったそうです。結果はthe Journal of Political Economyに掲載されています。

A new study in the Journal of Political Economy by Felix Oberholzer-Gee and Koleman Strumpf has found that illegal music downloads have had no noticeable effects on the sale of music, contrary to the claims of the recording industry

http://arstechnica.com/news.ars/post/20070212-8813.html

つまり、違法なダウンロードって売上にものすごく影響を与えるというわけではなくて、音楽業界が主張するほどではないという調査結果が出たということだそうです。

The study reports that 803 million CDs were sold in 2002, which was a decrease of about 80 million from the previous year. The RIAA has blamed the majority of the decrease on piracy, and has maintained that argument in recent years as music sales have faltered. Yet according to the study, the impact from file sharing could not have been more than 6 million albums total in 2002, leaving 74 million unsold CDs without an excuse for sitting on shelves.

2002年に8億300万枚*1のCDが売れたわけですけれど、 それは前年比で8000万枚減った枚数なのです。音楽業界は、売上減退や低迷が違法ダウンロードとか海賊版のせいだとここのところずっと主張していました。でも、今回発表された研究によれば、ファイル交換による影響は2002年全体で600万枚以上のアルバム数ではないでしょうということ。出荷はしたけど売れてない(つまりP2Pによるダメージではない)7400万枚のCDについては、売れていない理由はよくわからないみたいですね。



【追記】 ブクマやコメントありがとうございます。

music will often have both high downloads and high sales figures

よくダウンロードされる曲はよく売れてるよ、とか

The study also highlighted the growth in DVD sales during that same period as a possible explanation for why customers weren't opening their wallets: they were busy buying DVDs.

DVDも売れてるんだから、みんなCDを買わないでDVDを買ってるんじゃないの、とかいろいろな指摘がされているみたいです。この調査が正確か、はまだよくわかりませんが、この調査においては検証可能性ではなく記述可能性に価値があるのでしょう。要するに叩き台として面白いということです。



これからきっと音楽業界がスポンサーとなって、今回の調査結果に反証しようとする研究が行われるのではないかと思います。でもそれは、ただ漠然と予想を述べているよりもずっと良い状況でしょう。

同じような調査を日本でもすべきだと思います。winnyなどP2Pによる影響などももちろんそうですが、新古書店が新刊書の売上に与えている影響とか、漫画喫茶の影響とか。都市伝説とか推計ではなくて実際どれくらいなのかというのが知りたいところですし、それを論拠に話を進めなければなりません。

*1:あってるよね?いつもmillionとかどきどきしながら換算します……。

wakatonowakatono 2007/02/14 23:37 本と音楽を同列に扱ってよいものかどうかはわからないですが、売り上げが落ちた(変化した)原因の1つには、音楽そのもののお披露目をする機会が変化した、というのもあるかと思います。
TV放送される音楽番組が減ったり(高視聴率を誇った「ザ・ベストテン」級の番組は、今はないという認識です)というのは、決して無関係ではないと思ってたりします。

inflorescenciainflorescencia 2007/02/15 15:45 wakatonoさん、コメントありがとうございます。最後の部分では「調査が必要」という文脈で本と音楽を同列に扱っています。売上変化の話はあくまで例ですね。
また一番の機会変化の契機は、日本においては携帯電話の登場だと思います。結局(所得が増えない限り)みんな同じお財布からお金を出してるということです。そのパイを様々な業種が取り合ってるということでしょう。どこかが減れば、どこかが増えます。日本の場合は携帯電話の通信料金のインパクトが大きかったと思います。引用元ではDVDとの関係性を示唆していますね。追記しておこうかな…。
まあそもそも若年層の人口が減ってることも原因の一つとしてあげられるでしょうけれど。

Azumino_KakuAzumino_Kaku 2007/02/20 10:00 毎度おじゃまします。
「P2Pを否定する側」と、「肯定する側の不毛な戦い」になっているのかなと感じました。
私は難しいので「よくわからん派」なのですが・・

技術論もさることながら、知的コンテンツの流通のあるべき姿がどうあるべきかという議論が欠落して

ニュースなどで有名作家などのコメントを見ると現行制度を頭から肯定した上で感情論になってしまっているので、困ったものだと思っています。
「著作権侵害はけしからん!タイホだ!」のように・・

肥大し、ゆがんでしまった著作権制度によって、流通が妨げられる。

学説上はともかく私は「社会弱者の保護」というのが法の精神だと勝手におもっておりますので、現行制度はこの趣旨・・弱者を守る・・から大きく逸脱していると私は思っています。



ほんらい、弱者(家を借りる者)保護が本来の趣旨とおもわれる借地借家法が時代の推移とともに既得権を守る制度になり、不動産の健全な流通を妨げる・・というのはよく知られるところです。

時代の移り変わりとともに著作権法はじめ、一連の権利関係を定めた法規が、「弱きをくじき、強きをたすける」

「個人の創作意欲をそぐ制度」

に成り下がっていると感じました。

inflorescenciainflorescencia 2007/02/22 16:52 Azumino_Kakuさん、コメントどうもありがとうございます。お返事遅くなってすみません。
今の法学は解釈学がメインとなっていて、そういう法学の主流な見解からすると、こういうP2Pなんてものは想定の範囲外でしょうし、認めることも難しくなってしまいます。
白田先生がこんなことを書いていらっしゃいます。
>http://hotwired.goo.ne.jp/bitliteracy/guest/030121/>
『コモンズ』は、その斬新性によって評判を呼ぶだろうが、日本における特定の学問分野の枠にはまらないため、すべての学問分野から敬遠されることになるだろう。日本における「専門家」は、基本的に大学の学部構成によって分類された枠に中心を置きつつ、そこに専念することによって位置付けを得る。あれこれ他の分野をつまみ食いすることは歓迎されない。他の学問領域に比較して特別にそうだとは思わないが、日本の法学界もまた他の領域とのクロスオーヴァーを好まない。辛うじてそれが許されるのは、基礎法として位置付けられる憲法、法制史、法社会学、そして、つい最近なんとなく現われてきた情報法あるいはサイバー法と呼ばれるような曖昧な領域くらいだろうか。先に説明した「法と経済学」の評価の低さもその現われの一つだ。
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そしてこの傾向は変わっていないと思います。立法論はあくまで解釈の結論につけられたおまけのような場合が多いです(「…しかるに甲説をとると結論は乙。齟齬の部分については立法論的解決が望まれる」とか)。法律は安定性をもたねばなりません。そして時代は変わっていくものです。今までは変化がそれなりにゆっくりだったために解釈や何十年かに一度の改正で対応できました。著作権法が作られたときと今とでは状況全然ちがうのは明白ですが、でも法的安定性も考えなくてはいけなくて、だからきっとこれは法律そのものの本質に関わる問題でもあるのだと思います。

Azumino_KakuAzumino_Kaku 2007/02/25 22:06 inflorescenciaさま、こんばんは。
そうか!そうだったのですね・・
なーるほど・・
法的安定性ですか。確かに法律がコロコロ変わってしまっては社会の安定が損なわれるのでしょう。

社会の枠組みが大きく変わりつつある時には、法律が良くも悪くも大きな「足かせ」になるということでしょうね。

わが国が、もし知的財産立国を云々論ずるのであれば、流通を促進するための仕組みを考慮すべきときにきていると私は思っております。

そうですか、まだサイバー法の時代ではないのか・・
脳科学の茂木先生といい、閉塞感におしつぶされそうな今の世の中を変革しうるのは、既存の学問の枠をこえた、学際のようなものであると、私はおぼろげながら考えております。


ときにレッシグ先生のVer2はちっとも読み進まず、前書きです。進捗したらまたご報告します。

では

inflorescenciainflorescencia 2007/02/27 14:45 Azumino_Kakuさん、こんにちは。
> 社会の枠組みが大きく変わりつつある時には、法律が良くも悪くも大きな「足かせ」になるということでしょうね。
仰るとおりだと思います。法律が新たなイノベーションの足かせになってしまっている現状がありますね。既存のものごとを前提として安定性を担保するのが法の役割ですから、当然と言えば当然なのでしょうが。

>わが国が、もし知的財産立国を云々論ずるのであれば、流通を促進するための仕組みを考慮すべきときにきている
知財と流通の話については白田先生の
http://www.welcom.ne.jp/hideaki/hideaki/a_media.htm
とか、あとid:cedさんがフィッシャーの話
http://d.hatena.ne.jp/ced/20060509/1147125178
が参考になると思います。
私も積読をなかなか解消できず…毎日コンスタントに1時間も読書できれば良いのですが。

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