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半可思惟 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-06-16-Sat

[]第3回thinkCの私的メモ

著作権保護期間延長問題を考えるフォーラム公開トークイベント vol.3「コミケ、2ちゃんねる、はてなセリフと作家と著作権」を聞きに行ってきました。

「コミケ、2ちゃんねる、はてなセリフと作家と著作権

2007年6月15日(金) 午後6:30 - 8:30

慶應義塾大学三田キャンパス東館6F Global Studio


伊藤剛氏(マンガ評論家)

神田敏晶氏(ビデオジャーナリスト

久保雅一氏(小学館キャラクター事業センター長)

白田秀彰氏(法政大学社会学部准教授/発起人)

コーディネーター:鈴木謙介氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員/発起人)

http://thinkcopyright.org/resume.html

atsushienoさんが既に書いていらっしゃいますが、私のメモも忘備録として公開します。このメモはフォーラム中に個人的に書き留めたものですので出演者の皆さんや質問者の方など発言者の意図を正確に反映していない可能性があります。もしかしたら発言者と発言内容を取り違えているかもしれません…。また、ゼミの終了後参加したので冒頭は聞いていません。以上の点につきご了承ください。きちんとした詳細を知りたい方はthinkcopyright.orgの動画配信をお待ちになるのが良いかと思います。以下敬称略。


議事メモ

??:YouTubeはパブリシティ向上の一手段として既に利用されている。著作権侵害等の問題は、技術的な、テクニカルな方法で解決可能だろう。

鈴木:三つの論点について白田さんはどう思うか?

白田:三つの論点で用いられている用語の定義がよくわからない。「ファン活動」と「二次創作」の境界線はどこにあるかという問いについて言えば、連続しているので境界線なんてない。つづいて二次創作とクリエイターの成長・育成との関係については当然にある。

鈴木:表現と表出の違い。現代はいろいろなサービスによって後者に傾いている。前者はマネージできそうだが、後者についてはどうだろうか?

白田:神田さんが著作権の問題はお金だけの問題じゃないかと指摘していたが、その通りだ。著作者の人格とか芸術家が天才だとかは全部後付けの理由。天才は最初から天才なのではなくて、たまたまその人の表現が時代に受け入れられた結果。したがってある作品が名作になるか否かは、確率の問題。それゆえ、表現者の裾野が広がるほど作家が生まれる確率があがるので、表現者の増大は望ましい。先ほど「法律による解決でもテクノロジーによる解決でもかまわない」という意見があった。それに端的に見られるように、著作物を権利者が完全にコントロールできれば良いのであって、結局はお金の問題。それゆえ、表現者の活動が、商業的利益とバッティングする点が著作権法制度の本質的問題となる。かつては内心を媒体に固定するかどうかが、著作権がかかわってくるひとつめの判断基準だった。今はそれが曖昧。また複製が家庭内で行われるかどうかも判断基準だった。つづいて商取引の対象になるかどうかも判断基準だった。複製技術の向上によって、脱法的な感じで家庭内でも商取引の対象となるような複製をしうるようになった。このため、本来の著作権保護の外側領域での複製を抑制するため、法改正は権利領域拡大の一途をたどる。そこで二階建て制度ですよ。商業作品については、どうぞ守ってください、守れば守るほど、それ以外の領域では二次創作がしやすくなるというもの。私の関心は、クリエイションの増大を可能とする制度にある。できる限りファン活動からオリジナル・クリエイションへ誘導できないか?

鈴木:論点が2つ見えてきた。ファン活動からオリジナル・クリエイションへ誘導できないか、ということ。そして商業的利益とバッティングするのを避けるにはどうすれば良いかということ。

久保:お金がほしいというのではなくて、ただ作りたいから作るという人もいる。お金を払えば良いとかお金の問題だけというのは納得できない。

伊藤:パロディーという語が良くない。パロディーには批判が含意される。しかしそれは同人誌的なカルチャーにはほとんど含まれない。クリエイターの意識は多様だ。同人活動に対する寛容さは、その作家の出自によるところが大きい。新人賞などで育て上げられてきた人と、同人からあがってきたひとでは違ってくる。CLAMPなどは2002年に同人活動を認める表明をして、出版社もその意思を尊重している。いわゆるグレーゾーンで良いのでは?

鈴木:グレーゾーンは十分確保されているということ?現状肯定?

伊藤:うーん。ほぼそう。グレーゾーンつまり現状を踏まえていかなくてはならないということ。グレーゾーンに積極的意義を見出すことが大切。

鈴木:とはいえYouTubeは黒船だった。神田さんはどう思うか?

神田:昔はビデオ共有がとても大変でコストもかかった。YouTubeはタダ。参入障壁を下げた。みんなソーシャル・ビデオ・レコーダーとして扱ってる。何故著作権侵害でもアップロードするのか?手間暇かけてるのは、共有したいという欲求があるからだ。

久保:それでDVDやビデオの売り上げが落ちている。日本アニメの海外版などは影響を受けている。

神田:でも表出はコミュニケーションウィットネス。瞬間芸みたいなもの。そういう意味ではTVは瞬間芸で表出なのではないか。TVの内容は翌日には忘れられてしまうがブログなどだと残るので恐ろしい。メディアを持つものと持たざるものがいたが、それが変わった。

白田:著作権法というのは、言論の自由に対する制約条件の一つだ。精神的自由権を制限しうるのだから、過度に広範であったり過度に漠然であれば憲法違反である、というのがアメリカの精神的自由権制約の場合の考え方だ。著作権の保護している対象が漠然かつ不明確だと駄目。曖昧でなく明白である必要がある。法を守るつもりのないユーザーは好き勝手できるのに、まじめなユーザほどグレーゾーンを広く懸念して、本来できるはずであった発言を抑制してしまうから。それにクリエイターは現状の保護水準を歓迎しているという点で一枚岩だろうか。権利行使は著作隣接権者や出版社などに牛耳られてはいないか?表現者が作家と直接コンタクトできて話がつけられるならグレーゾーンを残していてもかまわないかもしれない。そうじゃないなら権利を強く狭く守るべき。自由な領域との境界線をなるべくはっきりさせる。

久保:それができるのであればやっていただきたい。しかし既得権益を得ている層がいるので難しい。誰かが泣くような法改正でしかできない。

神田:しかし今までの状況がおかしくて、うまい汁を吸っていたのでは?

白田:ほそぼそとずーっと主張し続けてきた。いろいろ努力した。でも誰もついてきてくれない。ぐちぐち…。

質問者:受け入れられないのは偏っているからではないか?英米法のコピーライト的な思想もあるが、仏独のオーサーズライトの思想もある。

白田:偏ってるのは百も承知。現在の著作権制度の仕組みについて英体系が先んじているのは論文に書いたとおり。世間の大勢が、著作権は「天才を保護する権利だ」とか「創作者の心情を保護する権利だ」などと言ってるからといって、「著作権制度は、本質的に産業育成を目的とした独占にすぎない」という自らの主張を曲げるというのは学者としてできない。世間の大勢を慮って自説を曲げることを曲学阿世という。首をくくられても自説を叫ぶのが学者なのではあるまいか?

質問者:法改正は権利拡大の一途と言っていたが、そんなことないのでは?旧著作権法と比べて権利が制限されたり、存続期間が変更になったりしている。

白田:そういわれればその通り。著作権の規定についてそらんじているのではないので、教えていただけてありがたい。

質問者:タイトルにあるのに2ちゃんねるのことがほとんど出てこなかったが?

鈴木:それはコーディネータとして反省している。個人的な思い出を言わせてもらうが、フラッシュや音楽などの職人がいろいろなコンテンツを作った。「白い」コンテンツだけで祭を行ったりもした。しかし人間関係の問題で破綻。そこに集まっていた人のなかで、今プロになっている人はほとんどいないだろう。参加した者としてその点についていろいと自省しているし、思うところがある。今回はそれで任を引き受けた。

質問者:出版社が作家を囲っているのではないのか?

久保:そのようなことはない。出版社は隣接権も認められていないし、代理人になったとしても著作者の意向で替えられることもある。それに出版社や編集者は、さまざまな要望についてきちんと著作者に意見を聞いている。

伊藤:質問者は2つのレイヤーを混同していないか?作家のマネージメントの独占と法的なクリアカットについてが混在してる。前者について言えば2000年代に入ってコンタクトをとりやすくなった。1990年代より前はそうでもなかったが…。


コメント(追記)

雑感としては、白田先生が一人気を吐いていたように思います。ほかの方の話も興味深いものでしたが、なんというかポジショニングにのっとった発言というか、要するに想定内でした。しかし白田先生の大陸法と英米法のくだりは格好良かったです。公開されれば、ギレンザビ演説級にひろまるかもしれません。でもなんか今回のフォーラムは非公開との噂もあり、残念でなりません…。

また上記のメモ以外にもid:copyrightさんから久保氏に対して「誰かが泣くような法改正しかできないと仰ったが、今までの法改正ではずっとユーザが泣いてきた」という趣旨の発言があり、それに対して久保氏が「誰が泣くか、その主体についてはわからないので言っていない。あくまで誰か、なのです」という趣旨のやり取りがありました。


そして、本当に個人的な話ではあるのですが、copyrightさんに初めてリアルでお会いして名刺交換させていただきました。yomoyomoさんとSpiegelさんと合わせて、私が直接会ってみたかった三大アルファ・ブロガー*1全員に会うことができました。そういう意味でも本当に行って良かったなと思うイベントでした。

懇親会にも参加したのですが、copyrightさんの隣に座らせていただき「今までの人生で一番の反省は、学生時代に三田さんの本を読み漁っていたことですよ!」とかthinkCのメールマガジンに連載中の書籍紹介の苦労とかその他いろいろお話を伺いました*2。皆さんありがとうございました。お疲れ様です。次回も期待しています。


【追記】6/17

白田先生の演説、ほぼ完全版が公開されました。すごい…。

http://anond.hatelabo.jp/20070617215938

*1:ここは笑うところです

*2:あとチャーリーさんと津田さんのLifeトークを聞いたり、文化系女子合コンに誘われたり(早稲女合コンの特別枠として認められましたw)、速水さんから新刊いただいたりしました。タイアップの歌謡史 (新書y)、おすすめです

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