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半可思惟 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-12-18-Tue

ダウンロード違法化を問題視しなければならない5つの理由

報道によると、私的録音録画小委員会第15回会合でダウンロード違法化が既定路線になったということだ。「違法複製物又は違法配信からの録音録画の取り扱い」(ダウンロード違法化)の問題は、「第30条の適用対象外とする方向で対応すべき」という方向らしい。


以下に述べるのは、MIAUの公式見解などではない。私見である。


最初から既定路線だったというのは仕方がないというか、現在の官公庁の人事システムや政策の形成過程を考えれば自明のことである。

しかしながら、やはり今回の対応には問題点がいくつかある。

まず、私には具体的にどのような方策で違法ダウンロードを検知するのか、そのシステム設計が全く見えてこない。仮に有用なシステムが存在し、違法ファイルのみを検索できるようなシステムを現時点で手配できるのであれば、もしかしたら私はダウンロードの違法化に反対はしないかもしれない。しかし、具体的な運用方法について言及されず、概念図くらいしかない状況下で*1、実務的に何とかします、というのは、6000通ものDL違法化反対の意見書が提出されている以上、笑止でしかない。制度設計について具体的な話に入っていないのに、「ユーザーの不利益にならないような制度設計をする」では説得力にあまりにも欠けている。

先日公表された本件中間まとめに対するパブリックコメントは、7500通中、6000通がダウンロード違法化反対の意見を提示していたという。うち、4200通がテンプレートを利用したものだったとはいえ、逆にいえば、非テンプレの違法化反対が1800通で、残りのパブリックコメント(1500通)より多い。

にもかかわらず、結局、あるいは結果的に、それらは無視されることになったわけだ。

今回提示された違法複製物又は違法配信からの録音録画の取り扱い(ダウンロード違法化)問題が第30条の適用対象外とする方向で対応して良いとする理由は、

  • 仮に法改正された場合における法改正内容等の周知徹底
  • 権利者が許諾したコンテンツを扱うサイト等に関する情報の提供、警告・執行方法の手順に関する周知、相談窓口の設置など
  • 適法マークの推進

これら三点である。これらは中間まとめ案に書いてあった内容ほぼそのままな気がするのは、私の気のせいだろうか。

さらに、実務面で言えば「仮に、権利者が違法サイトからダウンロードしたユーザーに対して民事訴訟をするとしても、立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上、利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ることになる。ユーザーが著しく不安定な立場に置かれる、ということはない」と資料に記載されていたようである。

ダウンロード違法化が施行されたら、何人かの権利者(国内外を問わない)に声をかけ、警告なしで即民事訴訟を起こし、和解金なり何なりを合法的にかっさらう、というRIAA的な企業が設立されるだろう。

いや、別に新しく設立することは必要ではないのだが、要するに業界慣習や実務上の慣行を無視する企業ないし団体が出てきても全くおかしくないし、法文にそうした記載がなければ、彼らの行為は合法である。

そして「情を知って」を「利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ること」と読み込むのは、他法との兼ね合いからして不整合であり、無理なのではないかと私は考えている。

ところでMIAUは、別にすべてのコンテンツをタダで見せろとは言っていないし、著作者の許諾を得ずにコンテンツを流通させることを擁護しているわけでもない。ここは誤解しないで頂きたい。

「いわゆる『違法着うた』や、ファイル交換ソフトを使った違法複製物のダウンロードなどによる『フリーライド』(ただ乗り)で、正規品への流通に影響が出ているのは事実」なのだろうが、それらは公衆送信化権(アップロード)で叩けるのであるから、わざわざ副作用の大きな劇薬=ダウンロード違法化を導入するのはいささか筋が悪いのではないかと主張しているのである。セカンドベストならまだしも、ワーストにちかい手段を出されたのではたまらない。

このことは、真紀奈さんがMIAUの眼光紙背で詳述しているので、そちらを参照していただきたい。


最後に、ちょっと大きな話をしよう。立法者は、もしかしたら、あらゆる著作物の私的複製を行う権利を誰かに与えるというようなことは望んではいなかったのかもしれない。それに、とても残念なことかもしれないけれど、ユーザーは私的複製を行う権利を有しているわけではない。それは著作権の例外にすぎないから「権利」ではない。

しかし、フランス控訴*2の言葉に従えば「法律上の権利制限は、法文により明らかにされた要件に従う場合にのみ、制限されうる」。そして利用者は全く同様に「法的に保護された利益」を享受している。なぜなら法は、著作者の支配権を制限し、権利が制限されるものとして掲げられた行為を公衆が行うことを明示的に許容しているから。

控訴院が考えたのは、以下のようなことだった。利用者は権利制限規定の便益享受を要求することができない。しかし、権利者は、私的複製を行う利用者の正当な利益を無視しない義務を負う。

法の画定している範囲は、技術で(そしてそれを裏書する法で)オーバーライドされてしまう。でも、それは本当は良いことではない。法解釈の次元では正しいのかもしれないが、でも、この結論はやっぱり不当だ。権利者はゲームのルールを一方的に押し付けようとしているから、そして自分の好きなように固有のバランスを強制しているからである。


だから、結果的にユーザーの意見が無視されることになってしまった結論は、とても残念だと思うし、不幸なことだと思う。

私は、別に権利者や文化庁を敵にまわしたいのではない。できればいろいろ話し合って落としどころを探っていきたいと考えているし、クリエイターの皆さんとその作品に大きく感謝している。できれば、好きな作り手がお金に困るようなら、微々たる額かもしれないが援助もしたい*3

だから、ここでユーザーがそっぽを向いてExitしてしまって、産業のパイが縮小してしまうことが、音楽や映像の文化にとって一番悲しいことだと思うし、そういうことをできるだけ回避したいと考えている。




【補】合法マークについて

合法マークへの意見を入れるのをすっかり忘れていた。

サイトごとに合法マークをつけるのは、ユーザー参加型だと合法マークがもらえないことになりそうだし、インディーズの人などにどう対応するかが問題になりそう。

適法マークの認定主体が、私的な団体によるものか、何らかの法的根拠を有する団体なのかによっても、話が変わってきますが、独占禁止法など経済法的に問題があるかもしれない。そのあたりの検討はいつなされるのだろうか?

あと、たとえば、適法配信サイトが違法配信した場合、当該サイトは違法ダウンロードについて著作権者に対して責任を負うかどうかなど、細かいけれど重要な点は、現状では詰められていないのではないしょうか?

コンテンツ付与型の合法マークにするなら、マークとコンテンツのひも付けがきちんとできないのではないかと私は懸念しているけど、おそらく紐付けは精緻にはできないでしょう。合法マークをコンテンツごとに付与するとしたら、電磁的方法で、しかもユーザーが外観上認識できて、かつ偽造に耐えうるマークって技術的に可能なのか…「偽造に耐えうる」の時点で難しいけれど、でも信頼を担保するのであれば、偽造にたえなきゃいけません。もちろん100%とはいえませんが、十中八九な蓋然性は必要だから、それができないというのは仕様書としてデスマーチな予感。

コスト的にサイトごとにマークを管理した方が楽で、マークの虚偽記載する人も出てくるのかもしれないが、まあマーク自体を商標などを使って保護すれば問題ないし実効性もあるかもしれないけれど、やっぱりいろいろと重要な問題がまだ詰められていないし、上述の問題は発生するので、それなのに既定路線にされても…という感じ。

*1:小委員会で配布されたらしいが、それもどの程度のものなのだろうか?

*2:パリ控訴院第4法廷2005年4月22日判決、Perquin c/ Sté Universal Pictures Video France : JCP G 2005 II 10126 両親が鑑賞できるようにとDVDをVHSに落とそうとしたが、技術的プロテクトによってメディアの変換が出来なかったため、訴えた事例

*3:性悪説とかいろいろ言われるが、ファンならそう思うよね?

匿名ですみません匿名ですみません 2007/12/19 02:32 >そして「情を知って」を「利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ること」と読み込むのは、他法との兼ね合いからして不整合であり、無理なのではないかと私は考えている。

単に、権利行使にあたり警告を要件とするだけではだめですか?実用新案法では、実用新案の登録が無審査であることを考慮して警告要件が明文化されていますが。(実用新案法29条の2)

inflorescenciainflorescencia 2007/12/20 00:30 匿名ですみませんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
さて、ご質問の件に関してですが、匿名ですみませんさんと私の間に事実認識のレベルで齟齬が生じており、そのせいで誤解が生じていると思います。
まず前提事実の共通として、文化庁の川瀬室長は「仮に、権利者が違法サイトからダウンロードしたユーザーに対して民事訴訟をするとしても、立証責任は権利者側にあり、権利者は実務上、利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ることになる。」と述べています。
すなわち、これは改正案の文面に事前の警告を要件とすることを盛り込むという話ではありません。実務上はそうなるはずだ、という予測ないし期待を述べているに過ぎません。ということは、中間まとめ案以上の検討がなされていない以上、条文上は「情を知って」という文言のみが記載される方向で進められていると見るべきでしょう。
となると、やはり「情を知って」という文言のみから「利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ること」と解釈するは、不整合をきたすと考えます。
上記の点から、本エントリでも「業界慣習や実務上の慣行を無視する企業ないし団体が出てきても全くおかしくないし、法文にそうした記載(注:利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ること)がなければ、彼らの行為は合法である」と述べ、若干の留保をしています。
さて、仮に本件ダウンロード違法化改正条項案につき警告要件が明文化するとするならば、小倉先生が「川瀬室長はオープンすぎます」
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2007/12/post_2c29.html
で指摘されている問題が発生することになります。
つまり「特定の利用者が違法サイトから音楽ファイルをダウンロードしているかどうかを知る術は著作権者側にはないはずです。これはダウンローダーの氏名・住所が分からないというレベルではなく、ダウンローダーのIPアドレス等すら分からない」のです。
私は、このような検討も無しに(あるいは公開せず)話を進めてしまうというのは、パブリックコメントで既に問題点として指摘があった以上、受け入れがたいことだと考えています。

匿名ですみません匿名ですみません 2007/12/20 15:21 お返事のコメント、ありがとうございます。確かに、事実認識が異なっているように思います。お返事のコメントを読み、本文を読み直しても、お返事のコメントで
>すなわち、これは改正案の文面に...条文上は「情を知って」という文言のみが記載される方向で進められていると見るべきでしょう。
と言い切られている根拠が分かりません。

また、
>特定の利用者が...ダウンローダーのIPアドレス等すら分からないのです。
とありますが、
(居所等が分からないために)警告文を送付することはできないのに、そのような相手を被告として民事訴訟を起こすことはできる、とお考えになる理由が分かりません。
さらに、少なくともP2P共有に関してはIP等の特定をすることは可能で、アメリカには実際に著作権侵害を行う者に対して警告を行うビジネスが存在します。
http://en.wikipedia.org/wiki/BayTSP

人は見たいもののみを見、信じたいもののみを信じる、ということのようですね。

inflorescenciainflorescencia 2007/12/20 23:30 匿名ですみませんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
まず「情を知って」という文言のみ記載された場合、「利用者に警警告を行う告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ること」と解釈するのは、不整合をきたすということは、同意してもらえたということでよろしいでしょうか。
次に「条文上は『情を知って』という文言のみが記載される方向で進められていると見るべき」というのは、中間まとめ案以上の検討がなされていない現状で、私的録音録画小委員会はあと1回を残すのみとなっていることを根拠としています。あと1回でこの文言について見直す議論が深くなされるとは考えにくいですから、最終的な報告書には「情を知って」という条件を付けるべきとの見解が示されると推察できます。
もちろん法制局や立法府などで条項文面案は修正される可能性があり、MIAUはそこに期待をかけて「私的録音録画小委員会の意見決定は、あくまで文化庁としての意見表明に過ぎません。 MIAUは、最後までインターネットユーザーの適正な自由と利益の確保のために全力を尽くします」と表明しています。
また、「情を知って」の部分は、具体的にどういう状況が発生するかが未知数である以上、最悪のケースを想定して思考実験をするのは無駄ではないと言えることも出来るでしょう。
IPの取得に関してですが、まず前提事実の共有として、技術的にIPの捕捉ができるかどうかということと法的な手続きとしてIPの取得ができるというのは違います。技術的実現可能性と法的手続きによる実現可能性は別のものとして考えます。技術的な観点からいえばIPの捕捉ができないことのほうが難しいですよね。でも法的には、例えばサーバーが海外にあるだけでかなり面倒なことになります。
さて、違法サイト(と呼ばれるもの)からのダウンロード違法化とP2Pの事例は切り分けて考えるべきだと私は思います。P2Pはダウンロードと同時にキャッシュで公衆送信化しているからです。
「アメリカには実際に著作権侵害を行う者に対して警告を行うビジネスが存在」するというのは、米RIAAの提供する「P2P Lawsuits」くらいしか私は存じ上げません。訴訟手続きに入るための警告書を送付した大学生に対し、損害賠償金を支払い、訴訟を回避するためのものです。BayTSPは、示してくださったソースを拝見する限り、実際にどうやって調査しているのかが不明なのですが…法的な実効性はどれくらいあって、日本で同じことをしてユーザー訴えることできるのでしょうか?
また、アメリカはダウンロードを違法化していないはずです。先のRIAAは「P2Pによる違法な音楽ファイル交換に携わった」として訴訟(ないしその手前での和解金提示)を行っています。つまり公衆送信化権を根拠にしているということです。日本でもWinnyの件で逮捕者が出ていますよね。
前述したとおり、P2Pにおいてはダウンロード≒公衆送信化にあたります。だとするならば、ダウンロード違法化とは関係なくエンフォースメントが出来るということになり、ダウンロード違法化後におけるIPの特定の議論を経ずして解決してしまえる話ということになります。
よって、P2Pによるファイル共有と「違法サイト」からのダウンロード違法化は切り分けて考えるべきだと思います。
ここで「違法サイト」からのダウンロードの場合に、権利者は、特定の利用者が違法サイトから音楽ファイルをダウンロードしているかどうかをいかなる法的権限をもって知るのでしょうか。

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