トレーラーを見て、小劇場ラバーとして絶対見に行かねば、と期待していた作品。
とてもあたたかく、気取らず、インプロにかけた(やや中年の)若者の夢とreality bitesを切り取った作品。
スターが出ていないにも関わらず、本作の評判が非常に良いのは、同じ切なさを共有する人が多いからだろう。
(レナ・ダナム、ベン・スティラーのカメオ出演はあり。2人がこの物語に親和性が高いというのはよく分かる)
小劇場というのは不思議で、下北もオフオフもハリウッド、NoHoも、ものすごく雰囲気が同じなんである。
舞台の先にトイレがあって、出演前の役者と客がかち合うとかね。照明機材の匂いも同じだったりする。
昔、あるハコで仕事をした後、1年後に別の仕事で同じ場所に戻ったとき、時空がくっついてしまっているように感じたものだ。
今、今を、二度とないモーメントを生きる、というのは多くの宗教や先人が教えている、真理に近づくためのプラクティス。
先日UCLAで心理学講義を受けたのだが、流行の「マインドフルネス」の話題で、まさにそういう話になった。
「いまを生きる」ことが愛だ、という定義だった。
だから、貧乏だろうがいい年をこいてようが、まさにインプロという瞬間芸術を通して愛を追いかける本作のメンバーたちに心底共感した。
シアターがなくなるとか、メンバー(出世のため)離脱とか、現実にぶち当たるエピソードはありきたりなのだが、ペンシルバニアパートを挟んでいるのが、私にはとても沁みた。
それから何より、舞台の撮り方がとてもスキルフル。
あのウケなくてひやっとする瞬間とか、会場の温まらない感じ、「あ、何かJackがやらかすんだな」というのを分からせ、ドキドキさせるカメラワーク。
ラスト、メンバーが自分たちのためだけにインプロをやるのを見て、わーんと泣きたくなった。私にとって今年一番の作品になった。
いろいろと関連記事を読んでみたが、メンバー役の6人のうち、ジリアン・ジェイコブスだけは撮影までインプロの経験がなかったそうだ。
その経験の差は、見た目の要素も含めて劇中でも歴然としている。見る人によっては醒めるほどかもしれない。
ちなみに、一番力が抜けていてうまかったのは、Chris Getard。
観客が一番ウケてたセリフ。終盤。どんなコンテキストだったのか、お楽しみに。
"大丈夫だよ、you're in America."
トレーラーはこちら。