人間の指す将棋の不思議

今日は他人の将棋のお節介な解説。YAHOOで相手を探している内に他人同士の対局を見ることに。おしなべて先手がうまく差し回し以下の局面に至る。

この局面で私の第1感は▲8八香。後手の持駒は銀1枚しかなく先手玉は詰めろにはなっていない。しかし金銀飛角を渡すと詰んでしまうので飛角は切りづらい感じである。確かに後手玉は詰めにいけば詰みそうである(実際に先手が▲8三歩と打った95手目から後手玉は詰めろになっており、先手への王手が途切れた103手目から常に後手玉には詰みがあった)が、絶対優勢になってからこの将棋を決して落としたくない先手が危ない橋を渡っていないのはよく理解できる、ここはあくまでも丁寧に受けておくのだろうと思って見ていた。すると先手は▲7一角成と切ってきた。おっ、詰めにいったかと思う間もなく、▽同金▲同飛成が指される。ええっ?と見ている内に後手は▽8七角と王手し▲8八玉の応手を見て投了してしまった。そうなんです。本当は▽8七銀▲8九玉▽6七角で後手の勝ちのはずだったんです。
別に私は両対局者を馬鹿にしようと思っているわけではない。人間同士の対局ではこのような読みのエアポケットの不思議な同調はよく見られること。一流のプロ同士だって決して例外ではなく両者簡単な詰みを見逃していたりする。恥ずかしながら私の場合簡単な一手詰めを見逃したことが何度かある。ただ30秒の秒読みの私の場合と違って本局は時間無制限であり、先手は十分に確認を入れていたように見えたのだが本当に不思議と言わざるをえない。
先手にしてみれば、この将棋勝ったからいいというわけにはいくまい。いわゆる必勝の将棋であり必ず勝つ指し方を目指していたはずなのであるから。先手が上記▲7一角成以下の堅実な寄せの構想で確実な勝ちを狙うのなら4手前の次の局面であったろう。

この局面ならば先手玉にはほとんど王手がかからず、私位のレベルの人にとってはもっとも紛れのない勝ち方だっただろう。しかしこの局面、8六金と7七桂が上部を押さえており、見れば見るほど詰みそうではある。たとえば、▲8二銀▽同金上▲同歩成▽同玉▲8三歩▽同玉▲8一竜▽8二銀(桂)▲7二竜▽同玉▲6二飛▽8三玉▲7二銀▽9四玉(▽7四玉なら▲6三飛成まで)▲9六香▽9五桂(銀打)▲同香▽同銀▲8五金までと何の気なしに詰んでしまう。また▲8三歩の所、▲7一銀▽8三玉▲8二金▽同金▲同銀成▽同玉▲7一竜▽8三玉▲8二飛▽7四玉▲7五金打▽同銀▲同金という、とにかく物量にものを言わせただけの攻めもある。この筋はこの局面から▲8五同桂▽9四桂と進んだ時点でも成立している。冒頭の局面は更に▲9六金▽8六歩と進んで7五、6五の地点の押さえが弱くなってしまっているが、それでも▲8二銀▽同金上▲同歩成▽同玉(同金は▲8三桂▽同金▲8一竜▽同玉▲6一飛まで)▲8三歩▽同玉▲8一竜▽8二銀(▽8二金なら▲同竜▽同玉▲8一飛▽同玉▲8三香▽8二合▲7一金▽9一玉▲8一金打まで、また▽7四玉なら▲8四竜▽6五玉▲7五竜▽5四玉▲5三金)▲7二竜▽7四玉(▽同玉なら▲6二飛▽8三玉▲7二銀▽7四玉▲6三飛成)▲6三竜▽同玉▲6四飛▽7二玉▲6二角成▽8三玉▲7二銀まで。ということで詰んでいるとは思うのだが...というのが私のレベル、読み抜けがあってあああっという経験が頭の片隅をよぎってしまうんですね。
[追記]24で高段の将棋を観戦していたら、易しい三手詰を見逃す場面に遭遇。運良くすり抜けた方が勝ちになったと思ったら、最後に15手詰とはいえ一本道の比較的容易な詰をミスってしまい逆転負け。高段でも早指しだとこういうことがあるということ。私が一手詰を見逃したりしても何の不思議もないということか。