プロジェクトF 後編

イギリス人登山家、ジョージ・マロリーは、何故エレベストに登るのか、と尋ねられこう答えた。

「そこに山があるから」

命を賭して世界最高峰に挑戦した漢の言葉と信念は男たちを魅了し続ける。



そして、その言葉に心を動かされ、日本最高峰に挑戦した4人の男たちがいた。

☆野、M戸、T澤、M浦。

登山の経験のない者たちだった。

防寒着を忘れおやつを用意した者、一合目から登るものと勘違いしていた者、ジャマイカ製の帽子をかぶる者。



あまりに無謀な試みだった。

しかし山に入った瞬間、男たちは戦士になった。


彼らを待ち受けたのは数多の障害だった。

低温、霧、強風、むき出しの溶岩石。何度を足を止めた。もう駄目かもしれないと思った。

やがて彼らは気付いた。


一番の敵は凍てつく寒さでも、視界を奪う白い闇でもなく、自分自身だと。


もう後ろを振り返ることはしない。ゆっくりとだが、確実に彼らは歩みを進めた。


そして彼らはやり遂げた。


御来光を全身で浴びたとき、一筋の雫が顔をつたう。

朝日で輝くそれは、宝石のようだった。鼻水だったが。



山頂で食べたおでんは至福の味だった。


1500円というインフレ価格も忘れた。




後に、四人のうち一人に登山の感想を尋ねたらこう答えた。


「もう二度と登りたくない」