メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

カーリル calil.jp の醜悪さ

librahackの件に関連してよく例にあげられるのがカーリル calil.jp だが、これ使ってみるとものすごく醜悪なサイトである。これを礼賛する人たちが多いがそういう人たちの一部も醜悪な心をもっているんだろう。

まず何が醜悪かというのを明確にしておく。calil.jpは「日本最大の図書館検索サイト」と銘打っているが、実際にはアマゾン検索サイトであって、図書館検索機能はおまけだということだ。要するに図書館をダシにつかってカネ儲けを企んでいるところが醜悪だと言っているのである。ウェブサイトのデザインとしては、醜悪かどうかはさておき使いやすい。また、マイレシピはユーザを滞留させる仕組みとしてよくできているとおもう。

本屋と利を争う

calil.jpで本を検索すると、まずアマゾンのアフィリエイトリンクがでる。そしてそのついでに検索対象図書館の所蔵情報がでる。これでわかることは、アマゾンに情報がない本は図書館においてあっても出ないということだ。また、とくに検索するあてのない人向けに「今話題の本」というタブが用意してあり、アマゾンでよく売れている本がズラズラと並んでいる。そして図書館にあるなしがでるわけだが、これなんかをみると、図書館を本屋と勘違いしているんじゃないかとおもう。

図書館の問題の一つに、新刊のベストセラーにリクエストが集中し、たくさん購入してしまうことがある。よく売れる本が長く読まれる本かというとそういうわけではなく、たいていはそのときだけ人気があってあとはそんなに読まれないゴミみたいな本がおおい。かくして図書館の棚を圧迫するゴミが増え、それに押しだされて古い本がどんどん廃棄されていくわけだ。
カーリルからうかがえる姿勢も図書館に新刊の話題の本をリクエストするような連中とかわらない。たしかに税金を投じてつくられている公共財であるから、納税者としてそういう使いかたもしていいわけだが、そのために本を蔵書しておく機能がそこなわれるわけで、なにごとにも限度というものがある。
本屋は営利でやっているから、売れる最近の本だけ置いておいて、しばらくたったら本はどんどん店頭から消えていく。最近は出版社も経費削減のために、本をどんどん出して在庫をもたないようになっている。図書館のよいところは、そういう本でも置きっぱなしにしてあることだが、赤字を垂れながすのが基本の公共サービスだからできることだ。図書館は本屋のふりをするのではなく、本屋にできないことに重点をおくべきだとおもう。人気のある新刊書は6ヶ月くらい購入を控える、くらいのことをしたほうがいい。

検索機能の貧弱さ
これはカーリルの弱点だが、カーリルは検索対象図書館システムが三つまでしか選べない。アマゾンインターフェースに図書館検索をつけたしたからだろう。図書館のウェブサイトの検索機能といったら最悪で、反応が返ってくるまで相当時間がかかる。そこをむりやり同時に検索などすると重くなるんだろう。
あと、画面に表示されるのがアマゾンのアフィリエイトリンクなので、それ自体が邪魔だ。ある本だけあればよいのであって、無い本まで見せてくれなくてもいい。アマゾンは古書店との連携を狙って古い本も遡及入力しているが、そういう本は結局アマゾンに情報だけあることがおおい。そういう本があったという情報は貴重だが、結局無いんだからあってもしかたないのだ。

図書館の検索だと、カーリルなんかよりももっと便利なのがある。各都道府県別の横断検索だ。たとえばここにまとめてあるようなもの → 公共図書館Webサイトのサービス

順番に検索クエリを投げてそれを順番に表示させているだけの単純なもので、終わるまでに一分以上かかることもあるが、これが結局所蔵のあるなしがわかりやすい。

まぁつまりは、アマゾンのインターフェースにあわせるために、横断検索の機能を犠牲にしたわけだ。そもそもアマゾンの画像リンクのために、一覧性がわるいからな。

まとめ

要するにオレが言いたいのはこういうことだ
カーリルは図書館をダシにしてアマゾンで稼ぐアフィサイトで、肝心の横断検索機能は貧弱でつかえない


技術屋がもっているコンテンツは技術それ自体しかなく、コンテンツ屋は技術を持っていないというミスマッチがあり、どうやってスリあわせていくかは永遠の問題だが、そこに飯のタネがあるわけで、深く考えないほうがいいのかもしれない。

(追記 2011/01/23)
図書館の横断検索なんて遅くて使えないという指摘がありますが、カーリルも図書館横断検索もやってることはいっしょ。各図書館にクエリ投げてその結果を加工して表示してるだけ。遅いのはその結果が返ってくるのが遅いだけ。カーリルが図書館横断検索に比して速く感じられるのはそれこそまさに横断検索の機能を犠牲にしていることを示す。図書館横断検索で検索できる範囲の図書館とおなじ数の図書館をカーリルで検索するのにかかる時間を比較してみたらどうです?