メモ@inudaisho

君見ずや出版 / 興味次第の調べ物置き場

サルベージ出版の変電社と「落合ソビエト」繋がりの青空文庫

 仙台から帰ってきたが暑くて寝れない。こういうどうでもいい記事でも書いて疲れて寝ようとおもう。



 持田泰『サルベージ出版に挑戦』講演録:群雛ポータル
 六月末頃こういう記事が流れてちょっと焦った。というのも、この変電社、国会図書館著作権切れ図書のサルベージに従事しているということで、いわば君見ずや出版の同業のようなものなのに全く知らなかったからだ。
 変電社 | 転がっているデジタルアーカイブスをいろいろdiggin'して電子「古書」としてサルベージしたら面白いんじゃないかと思っている人の準備会
 そして変電社が「結社」したのは2012年末と明らかに君見ずや出版よりも早いのでまたさらに焦ったのだが、よくよく考えてみると、国会図書館が公開してる著作権切れ図書の画像の利用について申請がいらなくなったのが2014年の5月で、それをうけて君見ずや出版がスタートした面もあるからなんかおかしい。とおもって見てみると変電社、最初はどうも「古書の電子書籍を嗜む人の結社」という程度の意味合いではじまったもので、いわばただの趣味の同人であったようだ。それなら見えなくても問題ないし自分が彼等を模倣したことにはならないからどうでもいい(そこか)。

 そしてこの変電社、最初から赤い方向への趣味を全開にしているのがおもしろいところだが、どうも趣味ではなくマジなようで、變電叢書の最初の対象は野川隆という人物だ。芥川賞候補にもなりながら満洲で死んだ左翼文学者ということでまぁ、「サルベージ」というのは妥当かもしれないがなんか妙な人選だ。そこでグーグル先生に 赤旗 野川隆」 で聞いてみるといろいろわかった。
プロレタリア文学前史 - 「蟹工船」日本丸から、21世紀の小林多喜二への手紙。
 このブログのようなものにこう書いてある。

1928(昭和3年)、ナップ作家同盟や国際文化研究所は上落合の月見岡八幡神社のそばにおかれた。また『戦旗』発行所は一時、中井駅から下落合駅に向かう妙正寺川沿いにおかれた。蔵原惟人、永田一修、立野信之なども上落合に移住、この頃、上落合地域は「落合ソビエトと呼ばれた。獄中の村山知義にあてた妻・籌子の手紙の中には息子の亜土が「ピオニール」活動に夢中であるとの記述がある。ソビエト連邦にならって、落合ソビエトにもピオニールが組織されていたのだ。『戦旗』11月号、12月号には前述した小林多喜二の「一九二八年三月十五日」が掲載された。翌4年3月、戦旗発行所に小樽の小林多喜二から「蟹工船」の原稿が届き、5月号から掲載が始まった。1930(昭和5)年11月27日ソビエトから帰国した中條百合子がナップに加盟した。1931(昭和6)年には中野重治壺井繁治・栄夫妻、井汲卓一、野川隆、今野大力、中條百合子などが上落合の住人となった。

 ははーん。なるほどねぇ。この「落合ソビエト」に集まった人間のうちの一人か。なるほどねぇ〜。落合ソビエトはおそらく今の日本共産党からは神聖な扱いをうけているんだろうということは以下の属性がそろっていることからも推測できる。

  • 初期の組織
  • 殉教者小林多喜二が係わった組織
  • 戦後の指導者の妻宮本百合子の属した組織 (引用文中の中條百合子)

 いつまでも「二十四の瞳」がちやほやされる理由がちょっとわかった気がするぞ。

 ところで落合ソビエトに集った人達の名前をみて思い出すのが青空文庫だ。青空文庫のテキスト化は通俗作家と左翼作家の二本立てになってて、テキスト化に従事してる人たちも截然と分かれているように見えるが、その左翼作家の面子が落合ソビエトだらけだ。戦後ちやほやされて本としてもたくさん出ている左翼作家をテキスト化しているのが青空文庫で、落合ソビエトに参加していたのに忘れられた野川隆をサルベージしようというのが変電社とみれば、まぁ相互補完関係にあるということなんだろう。

 あーそういうと、こういうふうにパブリックドメイン界隈を宣伝顕彰装置として利用している日本共産党へのあてつけで、日本共産党の教史では背教者にあたる佐野学の本でもサルベージしてやろうとおもっていろいろダウンロードしてあるんだがあんまりおもしろいのがなくて放置している。
国立国会図書館デジタルコレクション - 唯物史観批判
 これとか内容も大きさもちょうどいいけど落書きだらけだし一部破損してる本なんだよな。もったいない。