イアコボーニ「ミラーニューロンの発見」要約

ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)


この本では、ミラーニューロンは運動のみならず、さまざまな機能を模倣していることが示されます。
また、ミラーニューロンを制御・調整して自己意識を成り立たせるスーパーミラーニューロンについても語られます。
刺激的なところとして、ミラーニューロン(模倣)と現在の制度(自由意思)の不整合性がもたらしている現在の問題(暴力、薬物使用)についても語られます。

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ミラーニューロン系の本の要約

運動、コミュニケーション、情動、対人能力、好み、意図に関わり、無意識に相手を模倣するミラーニューロンが存在する。
ミラーニューロンは、認知作業なしで、他人が実行した目的指向の動作、意図を理解できる。

  • 運動:

ミラーニューロンは「つかむ」「持つ」「いじる」など特定のタイプの行為で分類される。

  • コミュニケーション:

口-顔コミュニケーションの段階では、発声は情動的な意味しか持たなかったが、初めは腕-手ミラーニューロンジェスチャーにより、のちには話し言葉ミラーニューロンが発達することによって、ヒトのコミュニケーション能力が出現し進化した。

  • 情動:

情動にもミラーニューロンがあり、他者の情動的な行動のおかげで、個々の人間が脅威や機会にうまく対応できるだけでなく、絆を作って強めることができる。

  • 対人能力:

情動と運動両方の側面がある。
感情面では、子どもの対人能力は、感情的な表情の模倣をしているあいだのミラーニューロン領域の活動と強い相関関係がある。
運動面では、後に自閉症を発症する子どもは、母親や父親を見ない傾向があり、自分の動きと、親が自分を模倣している動きを結びつけることができず、ミラーニューロンの形成・強化に支障をきたす。

ミラーニューロンの抑制・制御・調整・自己意識を担当している部位=スーパーミラーニューロン頭頂葉の一部と前頭葉の一部に存在する。

  • 実際の社会と重ね合わせての知見:

実際の社会においては、暴力や薬物使用も模倣されるため、自由意思を前提とした社会設計には重要な見直しが迫られている。