身内ネタの小説注意

モーガン「つどケモ!」 レジェ「デイブレイク!」

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〜とある海〜

モーガン「よーし!引っかけたぜぇ!引き揚げろ野郎共ォっ!」


海賊のような格好の巨漢の鮫人が船員に指示を出す。
彼の名前はスクァルス=モーガン

彼の日課は漁の傍らに、日々海の底に眠っているお宝をサルベージすることである。

これはそんな彼の日常のある一時の物語。


モーガン「さてさて、今回のお宝はどんなロマンが詰まっているかなっ♪」

船員も呆れるほど、ウキウキと引き揚げたガラクタを物色する。
錆びた盾、腐った木材、レプリカの宝石、そんな物ばかりが見つかる。

船員A「お頭〜、もうこれはゴミばっかりですって〜」

船員B「もう帰りましょうぜ〜、またお袋さんにどやされますよ〜」

モーガン「ば、馬鹿野郎っ!まだ全部確かめない内に諦めてんじゃねぇ!
『大海賊の誓い!第3条!』」

船員C「『どんな苦境に立たされても、決して諦めるな!』だよね〜♪
でも、何時でも帰れるように皆と準備しておくからね〜」


船員はぞろぞろと船の中へ戻っていく、彼がこうなったらテコでも動かないことはよく理解しているからだ。

モーガンは気を取り直してお宝の物色を続ける。

モーガン「全く、あいつらにゃロマンって物をもっと理解してなきゃいけねぇってのによ、…ん?これは何だ?」

ラクタの中に埋もれていた、手のひらサイズの木箱、開けてみると古びた丸い銅板があった。


モーガン「なんだこりゃ、あーあ。
何かワクワクさせるような冒険でも始まんねぇかなぁ」

すると銅の板が眩い光を放ちだした。
光は彼の身体を包みだす。

モーガン「あ、あんじゃこりゃぁっ!
吸い込まれる、うおおおぉぉっ!!」

光が収まった甲板には、ガラクタだけが残されていたーーーーー

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…ゃん……きて………したの……?…


どうやら気を失っていたらしい。
俺は揺さぶられている感覚で目を覚ました。

モーガン「…ん、……ああ?なんだここは…?」

???「あ、やっとおきた〜♪」


見覚えのない光景、どうやら街の道端らしい。
正面には狼の子供がいた。

モーガン「ん?坊主、お前が助けてくれたのか?」

レジェ「ぼうずじゃないもん、レジェっていうの〜!
おじちゃんはずっとここで寝てたよ?」

モーガン「おじちゃんじゃねえ、俺様の名前はな…」バッ


モーガン「陸に、海に、空に、あらゆる場所のロマンを求める!天下無双の大海賊!」

モーガン『スクァルス=モーガン様だ!』バァーン!!

レジェ「……………」


しまった、つい何時ものノリでやっちまった!
何故かいつも相手にするやつはノッてこねえんだよなぁ、カッコいいと思うのによぅ…。

レジェ「カッコいいっ!!」キラキラ

モーガン「おおっ!?お前坊主のくせに見る目あるじゃねぇか!」

レジェ「だからぼうずじゃないの〜。
ねぇねぇ、それでカイゾクってなにをするの!?」


ふふん、世の中にはやっぱり解ってる奴はいるもんだな!
俺は海賊の何たるかを語り、大海賊の誓いも坊主に教えた。

モーガン「大海賊の誓い!第16条!」

レジェ「えっーと…、『ゆめにむかってまっすぐつきすすめ』ぇ〜!」

モーガン「おぅおぅ、中々筋が良いじゃねえか。
今日からお前はクルー見習いだ!」

レジェ「くるーってなに?えらい?」

モーガン「クルーってのは仲間って感じだな」

レジェ「うーん…、ともだち?」キョトン

モーガン「あー、それで良いぜ」ワシャワシャ


イマイチわかってねえ感があるがまあいい。
坊主に聞いた所によると、ここは『つどケモ町』というらしい。
行く宛もねぇし話ながら連れられて来た場所は。

レジェ「ここー♪」


茶店だった。

モーガン「ん?何だここ…、飯でも食うのか?」

レジェ「んーんー、いっぱいのんでいってほしいの〜」

ほほぅ、一杯引っかけて行く感じとは中々気が利くじゃねぇか。

モーガン「飲んでいってほしいって坊主がなにかしてくれるってか?」

レジェ「だって僕は、ここのマスターだから!」エッヘン

…マジか、しかも仕事モードに入ったらキリッとしだしたぞこいつ。
道理で道端でエプロンしてるなと思ったぜ、
ということは出てくるのは…。

コトンッ

レジェ「僕の煎れたての紅茶だよー、冷めないうちに飲んでね」

…だよな。
まあこんな坊主の紹介する店だ、酒とかに期待する方がおかしいってもんよな。

それにしても紅茶なぁ、キザったらしくてあんまり好きじゃねぇんだよなぁ…。
あー、でもあいつは紅茶好きだったか。よく勧められてたけど断ってたっけな。

ニコニコしやがって、まあ一口だけでも飲んでやるとーーーーー。

モーガン「んめぇぇぇええっ!」

レジェ「ケーキも一緒に食べて欲しいな」

ビターな味のケーキが小気味の良い風味がする紅茶をさらに引き立てる。

レジェ「お頭は漢のなかの漢だから、漢のブレンドだね」


中々やるなぁ坊主、と頭を撫でると何か言いたげだったがすぐに気持ち良さそうに身をゆだねていた。

モーガン「この紅茶ならいいかもな、ほろ苦さの中にーーーー

カランカラン

レジェ「いらっしゃいませー」

どうやら客が来たようだ、やたら耳のでかい客が。

シャイル「お邪魔しますもん」

俺の隣のカウンター席に座ると、すぐに注文をして俺のとは別の紅茶を貰っていた。

シャイル「ふぅ…、いつもながら落ち着きますもん。
マスター、最近の噂話を知っていますもん?」

レジェ「もしかして、あの願いごとを叶えてくれるカガミの噂?」


願いを叶える!?もしかしたら、俺の探しているお宝の手がかりになるかもしれねぇ!

モーガン「それはどうやって手に入れるんだ!?教えてくれ!」

シャイル「そ、そんなこと言われても…そんなに迫らないで欲しいですもん」ビクビク


そりゃそうか、そんなものが見つかれば噂どころじゃねぇしな。
何か手がかりがあればなぁ…

レジェ「それってつどケモ神社にあるってきいたよー?」


なにィッ!早えーなぁおい手がかり!
でもナイスだ、運が向いてきてるに違いねぇっ!

モーガン「そ、それは何処なんだ!今すぐ宝探しに行くぞ!」

レジェ「おかしら!おたからさがし!?」キラキラ

シャイルとかいう狐に別れをつげ、
レジェを連れてつどケモ神社とやらに向かった俺達だった…。

が、その時。

クロッシュ「ちょっと待ちなぁ!」

ロウタ「話は聞かせてもらったで!鏡は渡さへんでぇ!」

茶店の玄関先で鉢合わせる男二人…ん?


モーガン「お前は、クロッシュじゃねぇか!久しぶりだなぁ!」

クロッシュ「げっ!モーガン、お前こんなところで何をやってるんだ!」


クロッシュは前にちょっと飲んだり話したりした仲だ、隣の紫は知らねえが。

レジェ「おかしらしりあい?」

モーガン「おう、そんなとこだ」

ロウタ「知り合いでも何でもあの鏡は渡さへん!クロッシュ行くで!」

クロッシュ「仕方ないな…、悪いがリタイアしてもらうぞ!」


これで噂の鏡の信憑性が増してきたってもんだ、争奪戦とは面白れぇっ!

モーガン「レジェ、お前は下がってろ。
俺一人でちょうど良いハンデだぜっ!」

レジェ「ぼくだってたたかえるもん!おかしらにもしってもらうのっ!」

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クロッシュ「魔法とか聞いてねぇぞ…!」ガクッ

ロウタ「ぽよぉ…」グッタリ

モーガン「まさか坊主が魔術師だったなんてなぁ、大したもんだなぁ」

レジェ「ふふーん、魔術師じゃなくて大魔法使い様だもん!
お頭がガッチリ守ってくれるし!」

モーガン「そりゃそうよぉ!大海賊の誓い、第2条!」

レジェ「『くるーはたからのようにだいじにしろ』!」

モーガン「だからな!よしっ、早速向かおうぜ!」


茶店から離れて、公園にさしかかる所まで移動した。

モーガン「その神社って遠いのか?」

レジェ「とおくもないし、ちかくもないよー、はんぶんくらいー」


これで半分ならそんなに遠くねえな、早く行かなければ先を越されるかもしれねえ。

さいん「そこの二人組、止まってください!」

全く、今日はやたら絡まれる日だなおい。

モーガン「何かようかい兄ちゃん?」

さいん「あなた方は噂の鏡を得ようとしていますね、そうはさせませんよ!」

ギルバ「あれは悪用される前にこっちで確保させてもらう…、
ってレジェ!?何でここに!」

レジェ「あ、ギルバだー。やっほー」フリフリ

ギルバ「また変な大人に着いていってんのなお前…、
大人しく家に帰ってろ!」

どうやらレジェの身内か何からしい。
まあ、変な大人と言われても仕方ないか。


レジェ「おかしらはおかしらだからへんじゃないもん!」

ギルバ「くそっ、レジェに何か吹き込みやがったか…。
今すぐ潰してやる…っ!」ジャキッ

レジェ「ギルバのわからずや!
おかしらはぼくのことちゃんとみとめてくれたもん!
いつもギルバはひとりでどっかいっちゃうじゃないか!」グスッ

ギルバ「そ、それはだな…!」

素直じゃねぇ者の口喧嘩は見てらんねぇな、さて

モーガン「もっとおめぇらは腹を割って殴り合わなきゃいけねえな、
坊主はお前に認めて欲しいらしいぜ?」 ガシッ

ギルバ「うるせぇっ…、部外者が口出しするな!」ブンッ

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さいん「きゅうーー…」リタイア

ギルバ「マモレナカッタ…」バタッ

レジェ「ギルバ、ごめんね…」

モーガン「長く一緒にいりゃあ、こうやってぶつかり合うことだってある。
だがそれは、決して悪いことじゃねぇんだ」

レジェ「…かいぞくのちかい、だい9じょー?」

モーガン「『互いに夢や想いがぶつかり合った時は正々堂々殴り合え』だ、
衝突しちまった時はお互いがスカッとするぐらいまでやり合うくらいが良い。
認めて欲しかったんだろ?」

レジェ「うん…、でも…なかなおりできるかな…」

モーガン「正面からぶつかり合ったんだ、何も気にすることはねえ。
だが今じゃなくて次に正面からごめんなさいは言えるな?」

レジェ「…うんっ!」

二人はベンチで寝かせ、俺たちは再び神社へ向かう、

モーガン「あの山の上が神社か?」

レジェ「そうだよ、あとすこしだね」

ポイズン「ちょーと、待ったぁ!」

ランヴィル「ここは通さないよ!」


またかよ、こうもホイホイ来やがって!

モーガン「纏めて相手してやるよォっ!」

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ポイズン「うぅー、僕の下僕天国がぁー…」バタンキュー

ランヴィル「えぇー…、負けてよかった…」ガクッ

モーガン「大海賊の誓い!第28条!」

レジェ「『自分の夢の為に人様に迷惑をかけてはならない』!だね」


神社の階段を登り、目的の神社に辿り着いた。

モーガン「着いたか」

ヴォルガ「待っていたぞ、欲望に囚われし愚か者共が」

レジェ「ぼくたちはねがいをかなえるカガミをさがしにきただけなの」

クライ「それで?そんなもので願いを叶えて貴方達はどうされるのです?
少し地に足をつけて考えてみてはどうですか?」

モーガン「生憎生まれも育ちも海育ちでな、地に足つけるのは肌に合わねえのよ!」

ヴォルガ「実に愚かな…、何時の日か己が身を滅ぼすと知れ!」カッ!

レジェ「ここまできたんだもん!あきらめちゃだめだよね!」

クライ「残念ですが、ここで諦めてもらいます…!」

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ヴォルガ「無念…!」ガクッ

クライ「くっ…!」バタッ

モーガン「大海賊の誓い、第9条!」

レジェ「『人の夢を馬鹿にするべからず』!」

これで最後だろう、神社の奥には木箱を見つける。
開けてみると見たことがある銅板が入っている。


モーガン「こ、これはあん時のっ!」

飛ばされた切っ掛けになった銅板、これが鏡だったとはな…。


レジェ「…どうするの?
おかしらのねがいがこれでかなうよ」

モーガン「んー。レジェ、お前の願いは何なんだ?」

レジェ「んー…、わかんない」

モーガン「それじゃあ駄目だな、ずっとクルー見習いのままだぜ。
漢はいつだって夢を持たなくちゃいけねぇ」

レジェ「でも、さっきのひとたちはげんじつをみろって…」

モーガン「いいかレジェ、夢ってのは何よりも偉大なんだ。
人は夢を抱いたからこそ、山を越え、海を渡り、果てには空を飛んでみせた。
夢をもっていなければ、誰がそんなことをわざわざやってのけるってんだ?」

レジェ「おかしら…」

モーガン「だからよ。例え今、周りに笑われることになっても世界を揺るがせるような立派な漢になれ!
そしていつかデカイ夢をお前が持ったその時は、」ガシッ

肩を掴み、目線をレジェに合わせる。


モーガン「俺とサシで、こいつをかけて勝負しようぜっ!」ニカッ

レジェ「おかしら〜っ!」ダキッ

その時鏡はふわっと宙を浮き出す。
そして、少しづつ輝きを帯び始めた。


モーガン「お、もしかしたら鏡もその時まで待ってくれるのかもな」

レジェ「!?おかしら、身体が…」

その光は俺の身体を少しづつ透かし始めた。


モーガン「そうか、もう。戻らなきゃいけないんだな」

レジェ「そんな…おかしら、おわかれなの…?」グスッ

モーガン「泣くなよ、良い漢が台無しだぜ」ワシャワシャ

レジェ「うん…、ヒック…だいじょぶだよ、グスッ」

モーガン「よし、最後に決めるぜ。
大海賊の誓い、第1条!」シュウウ…

レジェ「たと…たとえ、ヒックちが、ちがっ…うわぁぁぁぁああああん!!」

とても静かな神社に残されたのは、古ぼけた木箱と、一人の少年の涙声だったーーーーーーー


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船員C「結局、それでその男の子を残して来ちゃったんだ〜」コポコポ

モーガン「おう、だがあいつはきっとデカイ漢になるぜ!」カチャカチャ

船員C「そうですか〜。
あ、お酒飲むよね何にする〜?」

モーガン「…今日はその紅茶貰えねえか」

船員C「えっ、珍しいね。うん、今煎れるねっ」コポコポ…コトッ

モーガン「んー…んっ」ゴクッ ヒョイパクッ

船員C「ケーキも食べるなんて…、今日はビターな方だから良いかもしれないけど、どうしたの?」

モーガン「な、何でもねぇよ!」

船員C「もしかして、…泣いてる?」

モーガン「………」

船員C「大丈夫だよっ、ほら好きな大海賊の誓い、第1条!」








ギルバ「…それで、あの格好はどうしたんだ?」ヒソヒソ

さいん「先日、あの人の服装を真似て作ってもらったらしいですよ。
結構似合ってて良いじゃないですか」ヒソヒソ

レジェ「ぼくはだいまどうかいぞく!レジェさまだー!」ビシィ!

ある喫茶店で隠しメニューがあるらしい。


レジェ「だいかいぞくのちかい、だい1じょう!」

そのメニューはほろ苦い紅茶とケーキが出てくるそうな。そしてーー

「「『たとえ進む道や夢は違えども、一度手を取り合った俺達はずっと皆クルーだ!』」」

ほろ苦さの中に確かに感じる温かさが、諦めかけた長年の夢を叶えてくれる。
そんな噂があったらしいーーーーーー。