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2011-10-08

けし粒はいつなくなる

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 「未来永劫」「億劫」「五劫のすり切れ」など、「劫」という漢字を含む言葉がありますね。囲碁のルールにも「コウ」というものがあり、これはいわゆる「千日手」になりうる局面を表すそうです。何だろうと思って調べているうちに、とても面白いことが分かりましたので、ご紹介します。

「劫」とは

 まず「劫(こう)」とは、ヒンドゥー教や仏教に見られる用語で、とても長い時間を表す言葉なのだそうです。ヒンドゥー教と仏教では意味が異なるようですが、ここでは仏教の話をしたいと思います。

 大谷大学「生活の中の仏教用語」には、次のようなことが書かれていました。

仏典では、四十里四方の大石を、いわゆる天人の羽衣で百年に一度払い、その大きな石が摩滅して無くなってもなお「一劫」の時間は終わらないと譬えている。また、方四十里の城に小さな芥子粒を満たして百年に一度、一粒ずつ取り去り、その芥子がすべて無くなってもなお尽きないほどの長い時間が一劫であるという。


 どうも「百年に一度」の部分は「三年に一度」など諸説あるようですし、「里」というのがどのくらいの長さなのかも不明な部分があるのですが、今回の記事では「方四十里の城に小さな芥子粒を満たして百年に一度、一粒ずつ取り去ると、全部なくなるまでに何年かかるのか」ということを計算してみたいと思います。なお、芥子粒が全部なくなる時間より、「劫」の方がもっと長いということに注意しましょう。


芥子粒の大きさ

 「芥子粒」は、「けしつぶ」と読みます。あんパンの上についていることがある、あの小さな粒です。スーパーでは「ポピーシード」という商品名で売られていることもあります。

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 取るに足らない小さなものを表すときに「けし粒のような」ということがありますが、けし粒ってどのくらいの大きさなのでしょう。0.5mmのシャープペンシルの芯と一緒に撮影してみました。

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 大きさはもちろんばらついていますが、だいたい直径が0.5mmぐらいのようですね。


「方四十里の城」とは何か

 「方四十里」って、どういう意味なんでしょうね。恐らく「1辺が40里の立方体」という意味じゃないかと思うのですが。では「1里」はどのくらいの長さなのでしょう。

 日本では1里は約4kmですが、たぶん古い仏教の話なので、中国の単位を使わないといけないのでは。wikipedia:里によると、中国の「里」は年代によっていくらかの変遷をしているようですが、だいたい「1里=500m」としてよさそうです。

 ですから、「方四十里の城」とは、「1辺20kmの立方体」だと解釈することにします。もっとも、高さが20kmもある「城」というのはちょっと考えにくい(世界一の山、エベレストでも高さは9km以下で、8.848kmしかありません)のですが、まあこれで計算してみましょう。


けし粒は何個入るのでしょう

 「1辺20kmの城(立方体)」の中に、直径0.5mmのけし粒は何個入るのでしょう。けし粒の形はけっこういびつなので、ここでは「けし粒=1辺0.5mmの立方体」だということにしましょう。これなら計算がしやすいです。

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 20km = 20,000m = 20,000,000mm ですから(このあたりの計算については「小さな量のあらわしかた」をどうぞ)、城の1辺に並ぶけし粒の個数は

 20,000,000mm÷0.5mm = 40,000,000個

のように求められます。1辺あたり4000万個ですね。ですから、城の中に入るけし粒の個数は、次のようにして計算できます。

 40,000,000×40,000,000×40,000,000 = 64,000,000,000,000,000,000,000個


 これは・・・4000万を3回もかけたので、すごい数になっています。数の数え方で、4桁ごとに万、億、兆、京、、、と呼び方が決まっていますが、この個数は「京」よりもう一つ大きい「垓(がい)」を使って、「640垓個」となります。ちょっと多すぎてイメージができませんね。


けし粒はいつなくなる?

 さて、いよいよ最初の疑問にトライしましょう。このけし粒を100年に1粒ずつ取り除くと、全部なくなるのに何年かかるのでしょう。もちろんこれは次のようにして計算できますね。

 64,000,000,000,000,000,000,000×100 = 6,400,000,000,000,000,000,000,000年


 先ほどの「万、億、兆、京、、、」を使いますと、京の次の垓のそのまた次の「禾予(じょ)*1」という単位になります。6禾予4000垓年!もうよく分かりません。


宇宙の年齢と比べてみましょう

 「劫」は、このけし粒がなくなる時間よりももっと長いので、

 劫 > 6,400,000,000,000,000,000,000,000年

ですね。一方、宇宙の年齢は、最近の宇宙論や観測機器の発達でかなり精密に求められているらしく、およそ137億年だそうです(NASAWMAP衛星のHPなど)。ですから、

 宇宙の年齢 = 13,700,000,000年

です。並べて書いてみると

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です。全然スケールが違いますね・・・!


次回予告

 次回は、「四十里四方の大石を、天人の羽衣で百年に一度払い、石が摩滅してなくなるのにかかる年数」の計算にチャレンジします。いったい何年かかるんでしょう。



謝辞

 2つ前の「髪の毛には原子がぎっしり のお話」にいただいたコメントをもとに、いろいろと調べてみました。面白いコメントをありがとうございました!


【参考】


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*1:本当は、のぎへんと「予」で1文字です。wikipedia:じょをご参照ください。

真田真田 2011/10/15 00:40 この場合、「方四十里」とは、一辺が四十里の立方体ではなく、四十里平方だと思います。「方」は平方を指し、立方は方が「立つ」ことでは。
仏教が三蔵法師によって伝えられた唐代の城の城壁の高さを調べると、およそ10メートルほどのようです。それで行くと、20kmの2000分の1ですから、3200,000,000,000,000,000,000…やっぱりすごいです。

inyokoinyoko 2011/10/15 03:49 真田さん、いつもありがとうございます。

やはりそうでしたか!(笑)いや、そうじゃないかなと思っていたのですが、高さ20kmというのはダイナミックでいいかなと思って、このまま計算してしまいました(笑)

もしかしたら「四十里四方の大石」も、文字通り「一辺40里の正方形(高さはそんなにない)石」だったりしますかね・・・?それって、石というよりも地面のような気も・・・。まあ、ぜひ次の回もお読みください。続編みたいな感じになっています。

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