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2011-10-15

天女が岩をなでたなら

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 前回の「けし粒はいつなくなる」に引き続き、「劫」とはどんな長さなのかを計算してみました。前回は「1辺20kmの城の中に詰め込んだけし粒を、100年に1粒ずつ取っていくと何年かかるか」という計算をして、「6,400,000,000,000,000,000,000,000年」という驚くべき値を得ました。

 今回も大谷大学「生活の中の仏教用語」を引用させていただき、「四十里四方の大石を、いわゆる天人の羽衣で百年に一度払い、その大きな石が摩滅して」なくなってしまうまでの時間を計算したいと思います。


石を作っている原子

 石といってもいろいろな種類がありますが、地上で一番ありふれているのは「火成岩」です。中学の理科の時間に「流紋岩安山岩玄武岩花崗岩・閃緑岩・はんれい岩」の6種類を勉強することになっていると思います。マグマが冷えて固まってできた岩石です。

 これらはケイ素を主成分として、その他いろいろな元素が混じってできています。原子の大きさは、以前「髪の毛には原子がぎっしり」では「直径0.1nm」としましたが、髪の毛を作っている主な原子(炭素や水素)に比べるとケイ素の方が2倍程度大きいようなので(例えばこちらを参照)、今回は「石を作っている原子の大きさは、直径0.2nm」とします。


「四十里四方の大石」とは?

 「四十里四方」と聞くと、何となく「40里×40里」の正方形を思い浮かべてしまいますが、それでは「石」というよりもペラペラの紙みたいになってしまいますので、恐らく「40里×40里×40里」の立方体の石なのだろうと思います。

 「里」の長さについては、前回同様、「1里=500m」と仮定します。

 したがって、今回の「四十里四方の大石」とは、前回の城と同様に「1辺20kmの立方体」だと考えることにします。エベレストより高い石、ということになってしまいますが・・・。ちなみに太陽系最大の山は火星にある「オリンポス山」ですが、これは高さが25kmぐらいあります。これと比べれば低いですね。


大石の中に原子がぎっしり

 「1辺20kmの大石(立方体)」の中に、原子がどのくらい詰まっているのかを考えましょう。原子はまるい感じの形ですが、やはり計算を簡単にするため、「原子=1辺0.2nmの立方体」だとします。

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 20km = 20,000m = 20,000,000mm = 20,000,000,000μm = 20,000,000,000,000nm

ですから、石の1辺に並ぶけし粒の個数は

 20,000,000,000,000nm÷0.2nm = 100,000,000,000,000個

となります。1辺あたり100兆個(!)となります。すでに想像を絶します。

 さて、計算の続きの準備のために、ちょっと「層」をイメージしてみましょう。つまり、100兆個×100兆個の原子でできた正方形のシートが100兆枚あって、層状に重なっているとイメージするのです。

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天女が岩をなでると

 さて、この岩を「天人の羽衣」でなでて削っていくわけですが、果たして「ひとなで」で岩はどのくらい削れるものでしょうか?羽衣の材質、大きさ、なで方、いずれも全く分かりませんので、もう適当に仮定してしまいましょう。そこで、

 「1回なでると、1平方メートルの範囲の原子が1層はがれる」

と仮定してみます(このために「層」のイメージをしたのです)。


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 20km×20kmの範囲の原子1層分の面積は、

20km×20km = 20,000m×20,000m = 400,000,000平方メートル

となります(4億平方メートル!)。ですから、1平方メートルずつ原子がはがれるとすると、この1層の原子が全てはがれるまでに羽衣でなでる回数は、400,000,000回となります。4億回です。


 この層が100兆枚あるわけですから、全ての原子がはがれてしまうまでに羽衣でなでる回数は、

 4億×100兆 = 400,000,000×100,000,000,000,000

       = 40,000,000,000,000,000,000,000回

と計算できます。「京」の次の位である「垓(がい)」を用いて、「400垓」回となります。

 気が遠くなりそうですが、あと一息です。羽衣でなでるのは100年に1回ですから、全ての原子がはがれるまでにかかる時間は、

 40,000,000,000,000,000,000,000×100 = 4,000,000,000,000,000,000,000,000年

となります。「垓」の次の「禾予(じょ)」を用いて「4禾予年」です。「劫」はこれよりも長いので、

 劫 > 4,000,000,000,000,000,000,000,000年

となります。


ところで、けし粒のたとえと比べると

 さて、一応計算が終わったところで、前回の「けし粒のたとえ」の結果と比べてみましょう。「方四十里の城に小さな芥子粒を満たして百年に一度、一粒ずつ取り去り、その芥子がすべて無く」なるまでの時間は、6禾予4000垓年でしたね。なんと、今回の「天人の羽衣」と1.5倍ぐらいしか違いません。

 きわめておおざっぱな計算をして、かたやけし粒、かたや原子と全然違うものを扱ったのですが、出てきた答えがだいたい同じくらいに落ち着くというのは、非常に不思議な気がします。


【参考】


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真田真田 2011/10/15 23:04 これって、芥子粒1個の体積と1平方メートルの原子1列分の体積を比較するということですよね。博士の計算だとその差は約1.5倍ということですが、私が計算すると芥子粒1個の体積が0.125立方ミリで、岩の原子1平方メートル分の体積は0.02立方ミリで、その差は6.25倍になりました。あれ?私、間違ってます?

inyokoinyoko 2011/10/16 00:19 真田さん、毎度コメントありがとうございます。
ううむ、真田さんの計算ですと、けし粒の方が大きいですね。とすると、けし粒の方が早くなくなってしまいますね。では計算してみます。以下で10^3などは、「10の3乗」の意味で使っています。

けし粒は (0.5mm)^3 = 0.125mm^3 ですね。

原子1m^2はですね、(1000mm)^2 x (0.2nm) なのですが、ここで1nmと1mmは6桁違いますので、次のようになります。
(1000mm)^2 x (0.2nm) = (10^3 mm)^2 x (0.2 x 10^-6mm) = 10^6 x 0.2 x 10^-6 = 0.2mm^3

ですから、原子1平方メートルは0.2立方ミリになりませんかね?これだと、原子1平方メートルの方が体積が1.6倍になりますから、時間は逆にけし粒の方が1.6倍かかります。僕が記事にしたのと同じ結果です。

真田真田 2011/10/16 22:11 あー、一桁間違っていましたね。(^^;)コレを見てから累乗で計算すればよかったんだと思い出しました。ゼロの数を数え、数え、消していって…。不細工な計算をやってしまいました!
それにしても。1平方メートルの原子1列分と芥子粒1個の体積比べは面白かった♪これって、学校でやらせると面白がる子が結構いそうですよね。

inyokoinyoko 2011/10/17 02:09 そうでしたか。いや、このように検算してくださっている方がいるというのは心強いです。

「けし粒と原子1平方メートルの体積を比べる」という発想、言われてみるとその通りなのですが、僕自身もそういう視点はありませんでしたので、とても勉強になりました(^_^)

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