ラストメッセージin最終号事件:創作性(雑誌の休廃刊の挨拶文)

平成7年12月18日判決 平成6年(ワ)第9532号 書籍発行等差止請求事件
東京地裁(西田美昭裁判長)
知的裁集27巻4号787頁,判時1567号126頁,判タ916号206頁,百選[4版]3事件,中山50頁,高林22頁
判決全文

  • 事案の概要
    • 被告は,昭和61年から平成5年までの間に休刊又は廃刊となった各雑誌の最終号の表紙,休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部,編集長等から読者宛に書かれた文章等を機械的に複製して「ラストメッセージin最終号」との書籍(目次及びあとがき部分以外は全て上記複製による。)を製本,発行し,販売,頒布している。
    • 被告書籍に複製された記事の中に,原告らが発行又は出版した雑誌に掲載された記事が含まれていたため,原告らが著作権(複製権)の侵害を主張して被告書籍の発行・販売・頒布の差止め及び損害賠償を求めた。
  • 本件記事(挨拶文)の著作物性
    • 本件記事は,いずれも,休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において,休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから,このような性格からすれば,少なくとも,
      1. 当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知,
      2. 読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明,
      3. 休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり,また,
      4. 当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子,休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること,
      5. 同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから,
    • これら五つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは,創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない
    • 本件記事(のうち七点)は,いずれも短い文で構成され,その内容も休廃刊の告知に加え,読者に対する感謝,再発行予定の表明あるいは,同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨の要望にすぎず,その表現は,日頃よく用いられる表現,ありふれた言い回しにとどまっているものと認められ,これらの記事に創作性を認めることはできない
    • 他方,右七点を除くその他の本件記事については,執筆者の個性がそれなりに反映された表現として大なり小なり創作性を備えているものと解され,著作物であると認められる。