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如実知自心〜対人関係療法@三田こころの健康クリニック〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-07-25

愛着のボタンはリセットできる

以前に、制限型と脱抑制型に分けられていた愛着障害は、それぞれ

  • 反応性アタッチメント障害
  • 脱抑制型対人関係障害

として「心的外傷およびストレス因関連症候群」に分類されました。

両者に共通した「重度の社会的ネグレクト状況(虐待)」の存在から
「発達性トラウマ障害」「愛着トラウマ」と呼ばれることもあり、
施設児の研究から特徴や反応性、予後の違いがわかってきつつあります。

「反応性アタッチメント障害」は
生得的に選択的な愛着を形成できないという問題があるものの
適切な養育環境による修正が可能であるといわれています。

「脱抑制型対人関係障害」は、獲得安定型の愛着を形成した後も
対人関係の距離感に関連する症状の持続がみられる
という特徴が知られてきました。

トラウマ関連障害ではなく「不安定型愛着スタイル」の人が
「自分は愛着障害ではないか?」と治療を求められることも多いので
「愛着スタイルが獲得安定型に変化しなかったのはなぜか?」という問いを
このブログで何度も書いたことがありますよね。

最近の脳科学の研究でわかったことは
思春期には神経細胞同士の結合(シナプス)の合成が盛んになり
不要な神経同士の連結がそぎ落とされるため
一時的に前頭前野の機能が不安定になり
ストレッサーに対する処理効率が低下するため
機能不全(不適応)を起こしやすいということが知られています。

思春期から青年期、そして成人期にかけて
自分は何者であり、他者から何を期待できるのかに関わる
「精神的な自画像(内的作業モデル)」は
「自分自身との折り合い」に大きな影響を与えます。

しかし「内的作業モデル」は普遍的なものでなく
「自分自身との折り合い方」を変えることによって
愛着のボタンをリセットする」ことができます。

幼少期に虐待があったかどうか、厳しいしつけを受けたかどうか、
あるいは両親との愛着関係がどうだったかという事実がどうであれ、
過去の体験と折り合いをつけ、
筋の通った「現在のナラティブ」を生み出すことは可能で、
これが「獲得安定型の愛着」ということですよね。

過去の体験と折り合いをつけるために、
自分が体験している現実は自分の心が作り上げた「表象」であることを理解する、
つまり「自己イメージ」「他者イメージ」など自分特有のとらえ方(表象)を知る
ことが第一歩になります。

私たちの気分を悪くするのは他人や出来事そのものではない。
それに対する自分のとらえ方である。

怖れを手放す星和書店

摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』に

彼女たちは、身の上話を私のいわゆる精査にさらすことで、人生を蝕んでいた不可思議な執着がどうして始まったのか、その手がかりや答えが見つかることを望んでいました。
ある女性は両親からの虐待に苦しんでいたことを話してくれましたし、別の人は、父親はすることなすことすべてを激励して称賛してくれたと話してくれました。
アルコール依存症で生きるか死ぬかの問題に気をとられてばかりで、愛情を与えてくれなかった母親を持つ女性もいれば、出来合いする過保護な母親を持つ女性もいました。
親を死や離婚で失った人もいましたし、結びつきの強い家族の中で育った人もいました。
育った環境は違えども、どの悲しい身の上話にもそれなりの困難がつきものでした。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語星和書店

迷宮(ラビリンス)を通って乱れた食行動から回復する
「自分自身への古い見方を捨てて、内なる自信を取り戻」す
「自分の中心への旅」を始める女性たちと同じように
不安定型愛着スタイルの人も、自分と折り合いをつけることが
獲得安定型の愛着を構築する「旅」になるのですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
愛着の傷つきからの回復のカギ「ニューロセプション」」というタイトルで、
愛着関係を獲得安定型に変化させていくときに必要な
「自己志向(自己の次元の成長)」と「協調性(社会次元の成長)」の土台は
「ミラーニューロン」の働きだけでなく
ほとんど知られていない「ニューロセプション」が関係していることを説明しています。

「ミラーニューロン」と「ニューロセプション」
そして「自己志向」と「協調性」が「入れ子構造」になっているため
どちらかにしか焦点が当たらないこれまでの心理療法では
愛着の修復が上手くいかなかったのだと思います。

慢性の抑うつ状態や、過食症/むちゃ食い障害を治したい、
あるいはその背景にある不安定型愛着を改善したい方は
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2016-07-19

摂食障害の精神療法のエビデンス

一般に摂食障害といえば、食べられずにやせていたら拒食症
たくさん食べていたら過食症とみなされることが多いのです。

この見方は、サッカーや野球の試合を見ていて
自分が応援しているチームが得点を挙げたり勝ったりして大喜びすれば躁状態
負けて落ち込んでいたらうつ状態、のように、短絡的な見方なのですが、
シャレにならないことに多くの医療機関でそのような診断がなされているようです。

「食行動障害または摂食障害」群の中で狭義の「摂食障害」は

なのですが、上記の狭義の摂食障害以外にも
「食行動障害または摂食障害」には

異食症:食べ物ではないものを食べる
反芻性障害:吐き戻しを繰り返す
回避・制限性食物摂取障害
  ・ 食物回避性情緒障害:不安、強迫などが身体化した情動反応
  選択的摂食:食べ物の種類や範囲へのこだわり(著しい偏食)
  ・ 機能性嚥下障害:食べ物の質感、外観へのこだわりと飲み込み、窒息、嘔吐に対する恐怖
  ・ 制限摂食:食が細い
  ・ 食物拒否:ハンガーストライキ
他の特定される食行動障害または摂食障害
  ・ 狭義の摂食障害の不全型(頻度が低い、または、期間が短い)
  ・ 排出性障害
  ・ 夜間食行動異常症候群

などの病態があるのです。

食べなくてやせていたとしても「拒食症」と短絡的に診断するのではなく
「回避・制限性食物摂取障害」のうちの1つの病態なのかの鑑別や、
統合失調症など他の疾患に伴う食行動異常なのかの判断が必要です。

また、過食嘔吐があるからといって「過食症」ではなく、
「過食性障害+排出性障害」のことだってありますし、
「回避・制限性食物摂取障害」にともなう飢餓過食のこともありますから、
発症の仕方や精神病理、症状の推移を詳細にみてみないと
正確に診断することはむずかしいだけでなく、
正確な診断をしないかぎり適切な治療方針が立てられないのです。

とはいえ今回は、ほとんど知られていないようですので
確立されているスタンダードな治療法を挙げておきます。

「神経性やせ症/拒食症」や「回避・制限性食物摂取障害」など
体重減少がある場合は、身体的治療が第一選択になります。

「神経性やせ症/拒食症」の小児から思春期までは
身体的治療に加えて、家族療法の効果が認められています。

思春期以降の「神経性やせ症/拒食症」では、
制限型/過食嘔吐型に限らずBMIが16未満では身体的治療と心理教育が行われ、
精神療法はBMIが16以上(できれば17以上)で、活動制限の必要がなくなり
社会や集団との適応が課題になるときに導入されるのが主流のようです。

「神経性やせ症/拒食症」に対しては認知行動療法のエビデンスが認められている一方、
非特異的な支持的精神療法が、認知行動療法と対人関係療法治療効果を上回った
というデータもあり、治療者が積極的に介入する期間限定の短期精神療法よりも
ゆっくりと変化していく支持的精神療法が向いているのかもしれません。

思春期以降(青年期から成人期)に発症する「神経性過食症」や
「過食性障害(むちゃ食い障害)」では、認知行動療法、
対人関係療法、家族療法などでエビデンスが認められており、
第一選択の精神療法は認知行動療法とされています。

対人関係療法は認知行動療法と同じくらいの効果があり、
治療効果では認知行動療法よりも長く維持されるものの、
効果の発現が認知行動療法より遅れること、
強迫性障害があると対人関係療法の適応にならないことから
認知行動療法の無効例に対して第二選択として考慮することになっています。

フェアバーンの研究では、治療終結時の治療反応率は
認知行動療法が約45%、対人関係療法は約30%ですが
1年後、認知行動療法は約40%、対人関係療法は約45%でした。
またローゼンバーグ式自己評価尺度(自尊心の尺度)は
対人関係療法よりも認知行動療法の方が大きく改善していました。

アグラスらの多施設研究では
認知行動療法も対人関係療法も、脱落率は約25%前後と変わらず
終結時の快復率は、認知行動療法が29%、対人関係療法は6%
改善率では、認知行動療法が48%、対人関係療法は28%
12ヶ月までのフォローアップでの改善率は
認知行動療法が40%、対人関係療法が27%で
統計学的には2つの治療間の効果に差がなかった(?)と報告しています。

ですが1回に60分前後かかる認知行動療法や
対人関係療法のような専門的な精神療法による治療
1時間に最低でも5〜6人の患者を診ないと採算が取れない現行の保険制度では
とうてい実現困難ですから、専門の治療機関で行う必要があります。

認知行動療法は学童期や思春期でも適応可能のようです。
対人関係療法は小学生や中学生に親同席面接の形で行ったこともありますが
過食症やむちゃ食い障害に対する個人療法としての対人関係療法は、
アイデンティティが確立した思春期以降でないと難しい、という印象があります。

以上の結果をふまえて、三田こころの健康クリニックでは
対人関係療法の効果を高める取り組みとして
摂食障害から回復するための8つの秘訣』を併用しているのです。

また「神経性過食症(自己誘発嘔吐を伴う)」でも
さまざまな身体合併症歯科合併症を起こしますので
嘔吐を伴う疾患でも基本的に身体管理が必要ですよね。
歯科治療を希望される方には歯科クリニックを紹介しています)

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
強迫と衝動の治療」というタイトルで、
制限型の拒食症から、過食嘔吐への移行には
報酬系の異常である衝動性が関与していて
クロニンジャーの「報酬依存(人情家)」の低さで表され
このタイプは治療導入までに時間がかかることを解説しました。

しかし、いったん治療が軌道に乗れば(感情耐性が高まれば)、
このタイプの人には対人関係療法がすごくマッチするので
短期療法としての対人関係療法ではなく、
長期に対人関係スキルを高めていく治療という位置づけになります。

さらに治療効果を最大限に発揮するために「変化の段階」も大切ですから、
過食症治療を希望される方は『摂食障害から回復するための8つの秘訣』おを読みになり
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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2016-07-11

対人関係療法による過食症治療の質問に答える

ある患者さんから、「友人との関係がきっかけで過食症になったのに
対人関係療法で重要な他者である家族との問題を扱うのはなぜですか?」
と質問されたことがあります。

過食症対人関係療法での治療ではすごく大切なポイントですよね。

摂食障害を「維持」する因子を重視するというのは、たとえば、友人から「デブ」と言われたことがきっかけで摂食障害になった人の場合でも、その出来事を重要視して「対人関係問題」としてとらえるのではなく、日頃の身近な他者との関係に注目して互いのコミュニケーションのクセなどを直していくということです。
現在の家族との関係が良好であれば、「デブ」と言われたことは、単なる「不運な出来事」として位置づけられていたことでしょう。
たいして親しくもない人からの一言で病気になったという人の場合、重要な他者との関係が満たされていないことがほとんどです。

拒食症・過食症を対人関係療法で治す紀伊國屋書店

8つの秘訣』の「秘訣7:摂食障害ではなく人々に助けを求めよう」に

実際に、トラウマになるほどの出来事や問題があっても、そのことを話すことができ、対処できる人は、そうでない人と比べて、いつまでもその体験に苦しみ続けることはないといわれているのです。

とありますよね。

心的外傷・PTSD』にも「衝撃の受け止め方」の1つとして
「人に話す」が挙げられていますから、
「衝撃の緩和プロセスとしてのソーシャルサポートが機能しているかどうか」が重要で、
病気になった人は、重要な他者との関係が満たされていない」とか
「家族との関係が良好であれば、不運な出来事として位置づけられる」など
原因論的な表現の仕方は適切ではないと思うのです。

対人関係療法では親・配偶者や恋人などの「重要な他者」、
友人との交友関係など、過去と現在の対人関係パターンに注目します。
そして過食のエピソードを促進させる出来事を見ていくのですが
ほとんどの場合は、出来事とは無関係に習慣的に起きているように見えます。

最初は重要な他者に病気のことを伝えてもらうことから始まり
患者さんが少しずつ気持ちを話すようになってくると
重要な他者は「どう接していいかわからない」とか
良かれと思ってあれこれアドバイスを始める事も多いですよね。
ですから、乏しかったコミュニケーションパターンが変化するときには
一悶着ある(関係が一次的に悪化したようにみえる)ことがほとんどなのです。

この状態は、それまでの過食の維持因子が変化し始めた証拠なので、
「互いのコミュニケーションのクセなどを修正していく」という
効果のあるコミュニケーションパターンを試していくことが
「自分のまわりの対人関係に関することに変化を起こす」という
対人関係療法で最も重視する治療ポイントになるからなのです。

摂食障害になる人は、コミュニケーションが下手で、自分の気持ちを相手に伝えて問題を解決していくということが非常に難しいというケースが大部分で、そのためにストレスが生じたり自己評価が低下したりすることによって摂食障害が「維持」されているのです。
コミュニケーションの方法を改善して、より快適な対人関係環境を作っていくことによってストレスを軽減し、自己評価を高めて摂食障害治療する、というのが対人関係療法の考え方です。

水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す紀伊國屋書店

とあるように、コミュニケーションを改善するためには
自分自身をふり返ること、つまり以下の3つで定義される
「自己受容」を高めることが決定的に重要です。
(「自分の気持ちに正直になるって・・。」参照)

  1. 自分に優しくなる(セルフ・コンパッション)
  2. 誰しも感じる感情を苦悩に変えない
  3. 思考・感情・感覚に気づいている(マインドフルネス)

その上で

  • 人生に目的や価値を見いだすこと
  • 目的や価値に沿った行動が取れること

を高めると同時に、「他者受容」「共感・協力」という
「協調性」を高めていくことで過食症治療していくのです。

じつは「自己志向性」の3つと「協調性」の2つの因子は
ダニエル・ゴールマンの「心の知能指数(EQ)」と同じなのですよ。

また別の時に「私は過食症なのに「冒険好き」が低いんですか?」
という質問を受けたことがあります。

最近の過食症やむちゃ食い障害の患者さんには
「冒険好き(新奇性追求)」が低い人が大多数ということを
過食症やむちゃ食い障害の対人関係療法のすすめ方』や
過食症とむちゃ食い障害(過食性障害)の最新事情』で書きました。

感情表出はクロニンジャーの「人情家(報酬依存)」と関連があり、
「人情家(報酬依存)」が高いと、他者を行動調節のリソースにできる、
つまり「不幸な出来事(衝撃や困り事、危険)」に際して
「他者からの援助を引き出すことができる」に関連していることがわかっていますし、
「アクセル(冒険好き:新奇性追求)」と「ブレーキ(心配性:損害回避)」を
人との関わりによって調節することができるといわれています。

また環境や対人学習の結果である「協調性」は
当初は遺伝的な影響は少ないと考えられていましたが
他者受容や共感、協力などは遺伝的要因が影響することも示唆されています。

そう考えると、

自分自身との関係を改善し(食べ物で自分を麻痺させるのではなく、自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる)、他人との関係を改善できれば、ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになるでしょう。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法創元社

自分自身との関係と他人との関係の両方をみていくのが
対人関係療法の真骨頂ということになりますよね。

「報酬依存」が低い人は対人関係療法の反応が不良と報告されていますから
対人関係療法による治療の一番いい適応になるのは
「人情家(報酬依存)」と「協調性」が高い人で、
愛着(アタッチメント)とも関連するオキシトシンが関与しているのかもしれませんね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害と育てられ方は関係するのか」というタイトルで、
小児期には、「生育環境要因(育てられ方)」の関与が大きいものの
思春期以降に発症する摂食障害では、「環境要因(生育・個別要因)」より
「遺伝的要因」の関与が大きい(50〜80%)ことがわかっており、
これはクロニンジャーの七因子モデル(気質と性格の相互作用)で
考えやすいことを説明しています。

摂食障害は「よい子がなりやすい」とか
「人生早期の対象関係における感情交流が欠如したためではないか」という言説は
「新奇性追求(冒険好き)」「報酬依存(人情家)」の低さと
「固執」や「損害回避(心配性)」の高さで特徴づけられ
このパターンを知ること(自分を知ること)が
治療においても必要になることを書いています。

過食症やむちゃ食い障害の対人関係療法による治療を希望される方は
三田こころの健康クリニックに相談してくださいね。

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2016-07-04

過食症やむちゃ食い障害の対人関係療法の効果を増強する

食障害の治療や回復へのモチベーション〜『8つの秘訣』補遺1』や
行動変容の動機づけと過食症の対人関係療法』で
対人関係療法の効果は「行動変容を動機づける5段階」と関係がある
というデータを紹介しました。

「動機づけ(モチベーション)」は本人の意志という意味ではなく、
行動変容を促進する条件設定や自己強化のことです。

自己強化から自己調節行動を起こすためには、
自分を客観視するセルフモニタリングが必要不可欠なのですが、
過食症の自己欺瞞に向き合う』で書いたように
過食症では往々にして傍観者的なモニタリングになってしまい
変化を起こすことが難しくなってしまうのです。

現在、摂食障害治療法として、方法論が明確に確立され
治療効果を科学的に判定しやすい認知行動療法が主流となっています。

認知行動療法では、摂食障害の症状に焦点をあて
対処し変化させるべき問題として治療が組み立てられており、
過食症では、患者さんが問題点としての症状を認識できているため
導入はスムーズに行われる事が多いようです。

しかし、過食や過食嘔吐のもつ魅力(嗜癖性)によって
「自己欺瞞」が賦活化されることでの葛藤が
脱落や無効例につながっていると考えられます。

一方、対人関係療法では、
過食嘔吐の消失を直接の目的としてかかげることなく、
症状を維持している対人関係の問題に働きかけ
過食や過食嘔吐の悪循環からの離脱を目指します。

「食べ方はそのままでよいから、まずは対人関係の悩みから話し合っていきましょう」といえば、私の経験からは脱落する人はほとんどいません。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す紀伊國屋書店

ということですが、治療導入時には脱落は少なくても
「動機づけ(モチベーション)」が低い場合は

○ 自分の気持ちをよく振り返り、言葉にしてみる
○ 自分のまわりの状況(とくに対人関係にかんするもの)に変化を起こすよう試みる

に取り組んでいくことが難しいので、脱落例も出てきますし
変化を起こす準備ができていないと治療効果もでにくいのです。
(多施設研究では認知行動療法と対人関係療法の脱落率には差がないことが示されています)

しかも対人関係療法では、治療関係の質を重視しますが
対象となる問題(とくに不安が関与するケース)によっては
治療関係が逆に問題を長引かせることにもつながることを
行動変容の動機づけと過食症の対人関係療法』で書きましたよね。

認知行動療法では限界や弱点が語られ
それらを乗り越える第3世代の認知行動療法などが提示され
進化しているように感じられるのですが、
対人関係療法ではある疾患に対してエビデンスがあったかどうかだけで
向き/不向きや治療法の弱点を語られることがまずありません。

さらに対人関係療法は20回未満(通常は12〜16回)で治療が終結するので
患者さんは症状が残ったまま終結を迎えることがほとんどです。

そのため、

  • 症状に焦点を当てないにしても、症状が消失するにはどうしたら良いか?

ということを長い間ずっと考え続けてきました。

たとえば、対人関係療法では、他の現実の出来事につないだり、
あるパーツの部分だけを強調したり省略したりすることで、
現実を再構築することを「位置づけ」と呼びます。

治療者から患者さんへの付与という形で
精神のみに焦点を当てた「位置づけ」が繰り返されることで
本来の等身大の自分との乖離を生み出すのであれば
治療者-患者の二者関係への没入になってしまいます。

「位置づけ」をリフレーミングとして作用させるためには

  • 価値に基づく行動に沿う必要があるのではないか?

と考えていて「自分自身との関係を改善する」方法を模索していました。
(これは愛着の問題の修復にも関連しているのです)

自分の反応や気持ちをはっきりつかみ、コントロールし、表現することを学べば、自分を落ち着かせたり慰めたりするために食べ物に走らないですむようになります。
つまり、自分自身との関係を改善し(食べ物で自分を麻痺させるのではなく、自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる)、他人との関係を改善できれば、ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになるでしょう。
自分の気持ちがうまく扱え、他人との関係もうまくいくようになればなるほど、過食は減っていくでしょう。

ウィルフリィ『グループ対人関係療法創元社

患者さんの生き方や心の状態だけでなく、身体感覚にも働きかける
摂食障害から回復するための8つの秘訣』は、
対人関係療法の取り組みをバランス良く網羅しているだけでなく
私が長年修習してきたマインドフルネスも応用できるので
三田こころの健康クリニックでの治療にすごくマッチしていると思っています。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
対人関係療法をマインドフルネスの視点でみてみる』というタイトルで、
対人関係療法認知(思考)に焦点は当てないものの
治療が効果を発するときには認知も変化しているのは
マインドフルネスと重なる部分があることを説明しています。

「頭に浮かんだことは想像に過ぎない」という「破局的思考の緩和」が
ネガティブな認知から距離をおくスキルであり
三田こころの健康クリニックで「脳内劇場から離れる」と呼んでいますよね。

また「ネガティブ思考から距離をおくスキル」は
「能動的に対人関係に注意を向ける」こと
つまりネガティブな感情や過食衝動を対象として見ることで
それらに気づきながら巻き込まれない状態を作っていきますよね。

同じように治療者の注意の向け方(背景にある意図)の違いにより
対人関係療法の効果も変わってくるのです。
(『過食を抑えつけない意味』参照)

過食症やむちゃ食い障害を本気で治したい方は
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』と『8つの秘訣』を読んで
モチベーション(行動変容を促進する条件設定と自己強化)を高めて
三田こころの健康クリニックでの治療を申し込んでくださいね。

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2016-06-27

過食症の自己欺瞞に向き合う

『「過食症とむちゃ食い障害(過食性障害)の最新事情』で
過食症やむちゃ食い障害の人は「自分を客観視できない」ことに触れました。

じつは「自分を客観視できない」ことはシリアスな問題で
回避的・強迫的な「気質」と依存的な「性格」の人が現実に向き合おうとしても、
依存的な「性格」は「気質」の特徴をコントロール(意味づけ)できず、
加えて、気質と性格から形成されるパーソナリティも
価値に基づいた柔軟な行動を選択できない、という
二重のストッパーがかかっているからのです。

つまり、過食症やむちゃ食い障害の人は
過食をやめたい、変わりたいと思っていても
低い自尊心(自己志向性)によるみじめな自分を感じていても
セルフモニタリングになっているわけではなく、
自分に対するダメ出しという批判や評価になってしまうので、
残念なことに、行動変容につながりにくいのです。

さらにみじめな自分を感じなくてすむように
過食や過食嘔吐を使って刹那的な気分解消を図っていますから
価値にもとづく行動を選択したり決定したりするのが難しいのです。

そうなるとますます、もう一人の自分は自分に批判的になり
過食や過食嘔吐する自分はますます気分解消行動にのめり込む
という悪循環が成立してしまいます。
(このような過食や過食嘔吐の進展過程についてはいつか解説しますね)

このような自分自身との葛藤を三田こころの健康クリニックでは
「自分自身との対人関係(折り合い)」と呼んでいます。
「自分自身との対人関係」のテーマである「葛藤」は
役割期待の不一致と同じで期待の整理をしていけばいいのですが、
ここに大きな問題が潜んでいます。

それは『ありのままの自分と向き合う』で
「自分の気持ちに正直になる」とか
「嘘や偽りを言わない、ジャッジメントをしない」で示唆した
「自己欺瞞」という心理です。

「自己欺瞞」は、気分不耐を背景にした抑制のない空想上の憧れ、
あるいは空想上の憧れに対する願望であり、
自分が自分に、何を考え何を感じているのか、を偽っていることを
自分で気づかないようにしている状態のことです。

「自己欺瞞」に陥っているときには
矛盾する信念と欲求を別々に分離させて受け容れます。
過食はやめたいけど、過食がなくなるのも困る、と
感じるのがそれですよね。

過食や過食嘔吐でコントロールを失い、
自己の不利益になる(自分にとってメリットはない)とわかっていながら
その行動を続けてしまうという不合理さが続いてしまうのです。

一方では信じていないものを信じているふりをして
一方では自分の考えや気持ちを隠していることによって
自分を感じること、自分自身であることから遠ざかり、
自分の摂食障害行動をまるで他人ごとのように傍観するだけで、
受身で無力な存在のまま立ち尽くしてしまいます。

摂食障害から回復するための8つの秘訣』にも

自分の思考、気持ち、行動を慎重に探ってみると、他の人たちの評価や拒絶から身を守るために完璧主義を隠れ蓑に使っていたのだとわかりました。
問題は、自分を護るためのこの方法が、心から願って切実に希望していたものを手に入れる妨げになっていた点です。
(中略)
また、辛くて不快な気持ちを「太っている気」に変換するプロセスは、あなたの中でいつの間にか自動化されているかもしれません。
「太っている気がする」と言うほうが、「寂しい」、「一生誰も愛せないのが怖い」などと言うよりも安全に感じられるからです。

摂食障害から回復するための8つの秘訣星和書店

このような「隠れ蓑=自己欺瞞」のもつ、相反する信念と欲求の不整合を、
「自分自身との役割期待の不一致」と呼んでいるのです。

「自己欺瞞」は自己認識のない閉鎖状態に無自覚であることから生まれます。
この状態を抜け出すには「ありのままの自分への気づき」を使って

  1. 価値にもとづく行動を選択し決定できる主体性を回復する
  2. 内在化された要求を行動に変換するプロセス

ことが必要ですよね。

じつは、20回未満の対人関係療法治療中に
過食や過食嘔吐から完全に回復できた人たちは
「なりたい自分」という目的と価値にもとづく行動ができているのです。

それはクロニンジャーの「自己志向性」の

○ 自己受容(他者と比較しない)
○ 人生に目的をもつ
○ 目的に沿った行動をすることができる

と重なる過食や過食嘔吐からの回復には必要不可欠な要素ですから
いつか詳しく解説したいと思っています。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
『「過食症とむちゃ食い障害(過食性障害)の最新事情』というタイトルで、
最近の過食症やむちゃ食い障害の人には
「冒険好き(新奇性追求)」の高い人がほとんどいらっしゃらず
それが対人関係療法による治療にどういう影響を与えるのかを
考察しています。

拒食症・過食症を対人関係療法で治す』には

広い意味で、対人関係に問題のない摂食障害の人はいないというのが私の臨床経験を通しての結論です。
ですから、対人関係療法は、摂食障害の人全般に効く治療法なのです。

と、大上段で書いてありますが、
対人関係療法は万人に効く魔法のような治療法ではなく、
当然のことながら、向き不向きがあるのです。

対人関係療法ワーキングメモリや言語性記憶が低い人(相手が話した内容を違うふうに解釈してしまう)
注意機能が低い人(気分解消行動に走りやすい)、あるいは自己批判が高い人(ダメ出し)
クロニンジャーの七因子モデルのうち「報酬依存」が低い人社会性の低さ)
対人関係療法の反応が不良で効果が出にくいことが報告されています。

また回避傾向や強迫傾向のある患者さんには不向きで、
アスペルガー症候群などの発達障害の人には不向きどころか悪化することもあることを
水島先生が厚生労働科学研究で報告されています。

さらに、コミュニケーションや対人関係の問題は
過食症やむちゃ食い障害の維持因子の一つではあるけれども
メインの維持因子ではないことが多いため、
対人関係療法治療をするときにも工夫が必要になりますので、
どのような治療法が向いているのか?の鑑別治療学とともに、
患者さんの現実を詳細にみていく必要があるのです。

三田こころの健康クリニックの対人関係療法では
上記のような工夫(アレンジ)をしていますので、
過食症やむちゃ食い障害を本気で治したいと考えていらっしゃる方は
三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2016-06-20

吐く(自己誘発嘔吐)という症状

神経性過食症(排出型の過食症)や過食嘔吐を伴う拒食症の中には、
治療を受けても過食や自己誘発嘔吐が変化しない人がいらっしゃいます。
本人は、過食や嘔吐が嗜癖(クセ)になったと感じてしまいますよね。

このタイプの人たちは、通常の食事あるいは大食後の嘔吐が先行し
食べると吐いてしまう状態から、嘔吐するため過食を伴うようになる
のが大きな特徴です。

自己評価が体重や体型の影響を大きく受ける「やせ願望」や
ボディイメージの障害は不明瞭なことも多いのです。
患者さんは後づけの理由でやせたいからとはおっしゃるのですが
食行動異常にそこまで没入する理由づけとしては乏しいのです。

そもそも『「過食性障害」と「むちゃ食い障害」の違い』で書いたような
「過食」の定義を満たす人も中にはいらっしゃいますが
多くは「大食(overeating)」や「ダラダラ食い」であり、
大食と自己誘発嘔吐が数時間にわたって何度も繰り返されます。

また水や炭酸飲料、ジュースなど、飲み物の摂取量が多いことも特徴で
これは吐きやすくするためと考えられます。
医療機関受診しても、過食について問診されないため見落とされていることがほとんどです)

社会適応についてはさまざまで
一日中、過食・大食と自己誘発嘔吐を繰り返す人もいれば
日中は仕事をしたり学校に通ったりしながら夜だけ症状が出る人もいます。
しかし過食・大食と自己誘発嘔吐の時間が長いため
睡眠時間が減り、日常生活はかなり圧迫されているようです。

このような自己誘発嘔吐を主症状とする病態は
「排出性障害」と呼ばれます。

もともと「排出性障害」は自己誘発嘔吐のみで過食はみられないもの、
と定義されているのですが、吐くためには食物摂取が必要になるため
通常の食事では飽きたらず、吐くことそれ自体が目的ですから
だんだんと過食や大食を伴うようになります。

多くの医療機関では、患者さんが過食嘔吐があると訴えれば
医師は思考を停止して摂食障害とみなしてしまいます。
そのため「過食・大食をともなう排出性障害」のほとんどのケースは
「神経性過食症(排出型の過食症)」あるいは
「過食嘔吐を伴う拒食症」と間違って診断されてしまいます。

「排出性障害」と「神経性過食症」の違いが明確にできないのは
上記のような理由によると考えられます。

さらに「過食・大食をともなう排出性障害」の人は、
カウンセリングなどで話を聞いてもらうことでスッキリするのですが
変化のための行動を起こすことになかなか結びつかないため
やせ願望やボディイメージ障害を中核病理として治療する認知行動療法や
対人関係での共感をベースに自己表現を高めていく対人関係療法でも、
反応性が乏しいことも特徴なのです。

最近の「食行動障害および摂食障害」では、
「過食・大食をともなう排出性障害」の人がほとんどなので
特徴をふまえて、対人関係療法をアレンジする必要があるのです。

「過食・大食をともなう排出性障害」の患者さんは
「排出型の過食症」や「過食嘔吐を伴う拒食症」の患者さんと同じく
ネガティブに感じられた情動や身体感覚に対して

  • 状況判断なく、すぐ行動に移してしまう(性急自動衝動性)
  • 少ない報酬でも早く得ようとする(衝動過敏性)

という特徴もみられるので、報酬系の障害があるのは確かなようです。

さらに多くのケースで強迫性障害強迫観念や強迫行為)、
あるいは身体醜形障害、ためこみ障害、皮膚むしり症、抜毛、叩頭など
強迫性障害類縁疾患の合併がみられました。
発達障害に伴う「強迫-衝動スペクトラム障害」の人も多いようです)

過食症候群(神経性過食症や過食性障害)で
約6割に強迫性障害の合併があったという報告は
もしかしたら「過食・大食を伴う排出性障害」を
過食症候群と見誤っているのではないか、と考えています。

また「排出型の過食症」や「過食嘔吐を伴う拒食症」の患者さんに比べ
自己客観視の困難さが際立っているのが特徴のように感じます。

よく診るのは、過去のいろんな出来事、たとえば
幼稚園や小学校の頃のエピソードや過食が起きたきっかけ
最近の過食や自己誘発嘔吐につながった出来事やその時の気持ちなど
「憶えていません」とおっしゃることがすごく多いのです。

つまり自分の感情や身体感覚など内的感覚に対して
「自我違和的な不快さ」と感じられるようで
そのため、自己誘発嘔吐に耽溺することで、
内的感覚を感じることを避けている、ようです。

患者さんが「過食嘔吐がクセになった」と感じられるのは
あながち間違っていないどころか、すごく適確な表現で、
「過食・大食を伴う排出性障害」は極端な自己客観視の困難さのため
自己誘発嘔吐への嗜癖(アディクション)と似た病態なのです。

対人間の信頼関係の障害といわれる嗜癖(アディクション)に対しては
なぜか対人関係療法はエビデンスがないのです。
対人関係療法では自己モニタリング(内省)を重視しないことが一因なのですが、
嗜癖(アディクション)の治療であるリラプス・プリベンションでは
マインドフルネスが基盤になっています。

三田こころの健康クリニックでは強迫-衝動スペクトラム障害がなければ
アディクションに対するリラプス・プリベンションを参照しながら
対人関係療法とともにマインドフルネスを指導することで
「変化をおこす」ことで病気からの回復を支援しているんですよ。
(うまくいくと16回未満で過食はほとんどなくなり、自己誘発嘔吐も激減します)

ちなみにチューイングは「強迫-衝動スペクトラム」の合併が非常に多く、
三田こころの健康クリニックでの治療成績では
2例しか回復例がないため、基本的には対人関係療法ではなく
認知行動療法の方が向いているのではないかと考えています。

自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント

自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食症やむちゃ食い障害の対人関係療法のすすめ方」というタイトルで、
最近の「過食症」や「むちゃ食い障害」の人は
「冒険好き(新奇性追求)」スコアが高い人はほとんどいらっしゃらず、
「協調性」スコアが高い人がほとんどであることを書いています。
(このことは『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』には書かれていません)

このため対人関係療法にプラスアルファのアレンジをする必要性が生じていて
三田こころの健康クリニックではどういうやり方をしているのかについて
思い切って公開してみました。

対人関係療法は患者さんに最も合った治療を考える鑑別治療学を重視しますから
患者さんを対人関係療法のすすめ方に合わせてもらうのではなく
対人関係療法の方を患者さんに合わせる必要がありますよね。

そのためには治療者が他の治療法も習得していることが必要ですから
このすすめ方は三田こころの健康クリニックならではなのかもしれません。

対人関係療法は準備期から実行期程度のモチベーションがないと
治療効果が期待できませんから(『摂食障害の治療や回復へのモチベーション〜『8つの秘訣』補遺1』参照)
ぜひ『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』と
摂食障害から回復するための8つの秘訣』を読んでから
過食症やむちゃ食い障害のこのような対人関係療法による治療
申し込まれることをお勧めします。

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2016-06-13

過食を抑えつけないことの意味

対人関係療法による過食症治療では
「過食を抑えつけない」ことが前提ですよね。

一般向けには、インフルエンザの熱と同じように
下げようと思ったからといって下がるものではないから
「過食も症状だから、抑えようと思っても抑えられるものではない」、
あるいは、「かろうじて保っているバランスが崩れる」から、
「本当の問題の解決に使うエネルギーが減る」から、
などと説明されますよね。

ところが、インフルエンザで高熱があることが苦しいので、
氷嚢で冷やしたり、解熱剤を飲んだりして
熱が下がらないにしても少しでも楽になりたいと思うのは自然な感情ですし、
そのような対処法は根本的な治療にはつながらないにしても
「手当て」と呼ばれます。

過食症も同じで、過食や過食嘔吐で苦しいわけですから
過食を抑えたくなるのはすごく当然の感情ですし、
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』にも
「健康な部分の助けを借りないと治療ができない」と書いてあるのですが、
過食を抑えたくなることも「症状」の一部とみなされてしまうのです。

過食や過食嘔吐から先になくそうとするのではなく
つらい気持ちを少しでも楽にするために
「過食を抑えたくなることが「手当て」にならないのはなぜか?」について
明確に書いてある本は一冊もありませんよね。

もし過食症対人関係療法を受けている人がいらっしゃれば
試しに治療者に尋ねてみるとわかると思いますが、
冒頭のような理由を説明されたり、
対人関係療法ではそういうことになっているから」、
「過食を抑えつけると直りが悪くなるから」、などと
明確ではない理由が返ってくるはずです。

さて、対人関係療法で「過食を抑えつけない」のは
いくつか理由があるのですが、ひとつには
対人関係療法と自分との折り合い〜『8つの秘訣』補遺2』や
過食を抑えつけないことと心の枠組みを拡げること』で書いたように
思考へのとらわれや感情を回避・抑圧・排除しようとするコントロール方略は
逆に「体験の頻度と強度を増してしまう」という本質的なパラドックスがあり、
「解決(方略)が問題(を維持してしまう)」からなのです。

物理的な法則に従うメカニズムの世界、たとえば身体では
熱がある→冷やす(対処法)→一時的に熱が下がる
というように、有効に作用することがある(することモード)のですが、
流動的で相互作用的な心の世界では有効ではないのです。

たとえば、わたしたちの身体の筋肉と関節は
力を入れる方向には作用しますが、脱力には作用しないため
力を抜くためには、一旦、力を入れてからその動きを止める
というように扱いますよね。

ところが心の世界では、考えないようにすると考えが増幅しますし
考えても増幅しますから、「考えない」という制止行動が効かないのです。
別の考えで考えを覆い隠すという方法をとっても、
その背景に考えないようにした考えが二重写しのようにありますから
心に対しては物理的な世界で通用した方略が無効なのです。

このような有効でない対処を続けてしまう根底には、
論理的な思考が有効なときとそうでないときの区別ができないこと、
つまり「自らの心の動き方を知らない」ことに原因があるのです。

現実にはうまくいっていないだけでなく
正反対の結果になっているのにもかかわらず、
自分自身とその行動を客観視できないために
現在のやり方が妥当であると感じられたりするので
効果的でないパターンが繰り返されてしまっているのです。

自分の気持ちを振り返るために自分の内側に目を向ける
マインドフルネス瞑想を行うときも
過食症の治療とマインドフルネス』で書いたように
不快な考えや気分を解消するための矯正手段として使われる可能性が
生まれてくるのです。

内面に目を向けると、見たくなかった自分自身と向き合うことになるため
心の中で起こることは自然なプロセスではなく
何としても解決しなければいけない問題のように見えてしまうのです。

実際、嫌な気分を消そうとしてマインドフルネスや呼吸法をやってみた患者さんが
逆に嫌な気分に圧倒されて困ってしまった、と話してくださることはよくあります。

さらに、過食症やむちゃ食い障害の人では
「評価への過敏性」が問題領域になることが多いため、
その人が最も価値をおく他人からの評価そのものが
その人が最も傷つきやすい領域でもあるため、
傷つく不安を回避することで人生が縮小し
回避したいと願う思考と感情はますます強大になり
症状として迫ってくるのです。

過食を抑えつけようとする回避が過食を増大させるからなのです。
対人関係療法で過食を抑えつけない理由のもう一つは、
これまでさんざん繰り返してうまくいかなかったからです。

このような心の動きを知ってる・わかっているのといないのでは
結果に及ぼす効果も変わってきます。

たとえば、「山を登る」という行動が同じだとしても
ハイキングで登れば楽しい気分転換やリフレッシュに、
登山として登れば登山や筋力のトレーニングに
山岳抖藪(とそう)として登れば修行になりますが、
ハイキングで登ったとしても修行にはならないように
行為の意図(心のあり方)によって得られる効果も変わってくるのです。

対人関係療法による治療を申し込まれるときには
上記のようなこともふまえて、
これまで行ってきた対処の仕方を変えてみる
自分を振り返る勇気という「実行期」のモチベーションが必要です。

さらに治療者を選ぶときも

  • 対人関係療法以外のいくつかの治療法にも精通している
  • 心の本質に精通し、思考・感情・身体感覚のすべてを扱うことができる
  • 症状の意味(ポジティブ/ネガティブ)を読み解くことができる

治療者を選ぶ必要がありますよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食を抑えつけないことと心の枠組みを拡げることというタイトルで、
過食やむちゃ食いの引き金は、
感情刺激や対人刺激、あるいは環境刺激、そのものではなく、
対処できないと判断した「主観的な脅威(無力感=自己効力感の減弱)」であること
そのような状況に対して「回避や抵抗」の方略をとることで
ますます回避すべき状況が増えてきてくることを説明しました。

回避したいと願った思考や感情が押し寄せてくることへの唯一の対処は
「思考や感情を積極的に受け容れること(心の枠組みを拡げること)」が必要なのです。

対人関係療法では「感情を指標に変化を起こす」と書いてあるので
やりたくないと思ったからやらない、と誤解されることがよくあるのですが、
感情に従って行動するのではなく、感情とともに行動することが重要で、
「ニーバーの祈り(平安の祈り)」と同じように

神様、私にお与えください。
自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを、
変えられるものは、変えてゆく勇気を、
そして、二つのものを見わける賢さを。

のスキルを身につけていくことなのですよね。

拒食症・過食症を対人関係療法で治す』と
摂食障害から回復するための8つの秘訣』を読まれた
過食症やむちゃ食い障害を治療したいと考えていらっしゃる方は
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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2016-06-06

過食症の治療とマインドフルネス

三田こころの健康クリニックでは対人関係療法で取り組む
「自分の気持ちをよく振り返る」の一環として
マインドフルネスや瞑想を指導することもありますよね。

巷で流行しているマインドフルネスでは、集中力が高まる、
気持ちがリラックスする、不安に強くなる、うつ病が治る、などなど
おいしそうな効能ばかりもてはやされて、
本来は副次的なメリットであるはずの
苦悩に対する解毒剤としての効能が強調されすぎている気がします。

マインドフルネスは座って瞑想することや呼吸に意識を向けることではなく、
ましてや、レーズンを味わったり、鈴(リン)の音を聞いたり、
足の裏を意識して歩いたりすることでもなく、
それらはあくまでも、心を内側に向ける手段であり目的ではないのです。

マインドフルネスのエッセンスはテクニックにあるのではなく
藤田一照師がおっしゃるように「見解を保つ」という精神が大切なのです。

苦悩の解毒剤としてのマインドフルネスは
Happiness幸福の探求』の著者であるマシュー・リカールも言うように
スナイパーのマインドフルネス」という利己主義につながりかねないのです。

そもそも、マインドフルネスや瞑想などの心の訓練(マインドトレーニング)は
自我(エゴ)が心(マインド)をコントロールしたり飼い慣らすことではなく、
三田こころの健康クリニックで対人関係療法の目的の1つとして伝えているように
自分自身の内側を見つめることを通じて

  • 心がどのように機能しているかをダイレクトに具体的に観察すること(観察力)
  • 心と心のなかで生まれる思考や感情と息のあった行動ができるようになること(客観性)
  • 自分自身が自分の心の主人公であることを自覚できるようになること(オープンさ)

など、自分と調和することが目的であり、
それが対人関係の改善をもたらすのです。

たとえば、過食したくなったときに、衝動的に反応しなければ
その衝動は時間とともに変化することを観ていきますよね。
(過食をガマンすることとは違います)

「○○したいけどできない」「△△と考えられない」など受身の体験や
あるいは、ずっと同じ考えにとらわれてしまう「反すう」の裏には
「抵抗や葛藤」という心の動きが隠れていることを観てもらいますよね。

また、気分変調性障害の「自分はダメだ」という考えや
過食の引き金になることが多い「ネガティブな気分や不安」も
心から生まれたもの、心の本質の一部であることを理解せずに
何とかして考えなくしよう、感じなくしようとする抵抗や葛藤が
さらなる苦悩を引き起こしてしまうことも体験してもらいますよね。

過食の原動力は「怒りと罪悪感」と言われますが
これは過食のスイッチが入ったときに過去を振り返ったときに感じる感情で、
過食はこのようなはっきりしたエピソードよりも、
ネガティブな解釈(脳内劇場)とそれに反応した二次感情(漠然とした不安)が
引き金になることがほとんどなのです。

多くの人は過食のきっかけになった出来事を同定できずに
「なぜだかわからないけど、過食スイッチが入った」
「過食はもうクセになっている」と感じられるのです。

三田こころの健康クリニックで指導するマインドフルネスで
「わたしは息を吐いている」「考えている」などの頭の中の解説や
心のおしゃべりへの巻き込まれを気づきと混同せず、
また、思考や感情に対して考えない・感じないようにと抵抗したりせずに、

  • 意識を集中しすぎず、ただ静かにとどまり、くつろいでいること
  • ただ見つめていれば、思考や感情は徐々にその力を失い、心の本質のなかに還っていくこと

がわかるようになってくると、思考や感情へのとらわれから自由になり、
心の雰囲気も、その中で生まれる思考や感情の質も変化していきます。

このように思考や感情、あるいは自分の心との葛藤しないことを通して
思考や感情は心の本質の一部であることを理解することが
マインドフルネスの第一歩になります。

さまざまに変化して現れる自分の心の本質についての理解と
マインドフルネスのトレーニングで育んだ心への働きかけ方の洞察を
日常生活のなかに溶け込ませていくことが
マインドフルネス(注意深さ・気づき)のエッセンスなのです。

マインドフルネスのトレーニングそのものより、後の心の状態が重要です。
そのため、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)などで行われる
40分の座行(想像力の王国の王様になる居眠り!)よりも
短いマインドフルネスと短い休みを繰り返すことで
休みの間に堅苦しさや不自然さが解消され、ゆとりが生まれると同時に
不断のマインドフルな状態(明晰さと開放性)を持続させやすくなります。

そうして培った明晰で開放的でマインドフルな状態への気づきを
対人関係でのコミュニケーションを含む
日常生活のすべての行為にゆきわたらせる必要があるのです。

たとえば、過食にむすびついた出来事(今日一日)を振り返ることで
その時に感じた心の動きの大きさがわかるようになってくることから
次第にリアルタイムで心の動きに気づき、抑圧したりせずに
ただ観ることで思考や感情が心に還っていく解放がおきるようになると
摂食障害症状を使って心の葛藤を麻痺・解消させる必要がなくなってきます。

自我(エゴ)の傲慢さや散漫さに妨げられることなく
心の本質から離れていないことへの気づきを手放さないこと(繋念)
「ただある」主体がすべての行為の中で注意深くあること
これが「見解」と呼ばれるものなのです。

そしてマインドフルネスによる自分と調和する体験が
対人関係のパターン(自分のとらえ方)を変化させて
あたらしい対人関係スキルを構築していく土台になってくるのですよ。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
対人関係療法と自分との折り合い〜『8つの秘訣』補遺2というタイトルで、

  • 抑うつや不安、怒りなどの陰性感情や低覚醒状態(孤独、退屈)などの「個人的要因」
  • 他者の幸せそうな姿を目にするなどの陽性感情状態に関連した比較など「対人的要因」

の両方が関与しているときに過食や過食嘔吐が起きやすいこと、
出来事をネガティブに解釈することとその体験を避けようとすることが
過食や過食嘔吐の維持要因になっていることを書いています。

そのためには、

  • 自分の気持ちを振り返る・自分と向き合うプロセス
  • 対人関係療法によって回避的な対人的パターンを変化させていく

の2つのプロセスが必要で、このことは
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』にも書いてあるのですが
対人関係療法は自分と向き合う方法論がないことも弱点の1つなので
三田こころの健康クリニックでは、それを補いながら治療しています。

過食症やむちゃ食い障害を治療したいと考えていらっしゃる方は
治療に取り組むモチベーションも必要ですから
拒食症・過食症を対人関係療法で治す』と
摂食障害から回復するための8つの秘訣』を読んでから
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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2016-05-30

行動変容の動機づけと過食症の対人関係療法

医療者向けのある本を読んでいたら
対人関係療法はモチベーションが低くても実施可能」と書いてあって
驚いたことがあります。

拒食症・過食症を対人関係療法で治す』には

実際に、「自尊心」の低い人は認知行動療法から脱落する率が高いというデータがあります。
(中略)
一方、「食べ方はそのままでよいから、まずは対人関係の悩みから話し合っていきましょう」と言えば、私の経験からは脱落する人はほとんどいません。

水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す紀伊國屋書店

と書いてあるので、一見、対人関係療法では
モチベーションが低くても回復可能のようにも読めなくもないのですが、
摂食障害の治療や回復へのモチベーション〜『8つの秘訣』補遺1
に書いたように、対人関係療法ではモチベーション(変化の段階)と
治療成績(治療の効果)が関連することがわかっているのです。

たとえば、クライエント/患者の思考や感情を判断せずに
無条件の受容と関心を向けていく支持的精神療法では
クライエント/患者が再保証を求めることによって
不安は軽減するどころか、むしろ悪化することがわかっています。
(クライエント/患者は来談し続けるが、不安は軽減しない)

対人関係療法でなおす うつ病』にも

心配して温かい声をかけてくれたり、いろいろと代わりにやってくれたりするのです。
でもうつ病病気ですから、そんな「日常生活の精神療法」で治ることは多くありません。

とあるように、共感する治療者も共感してもらったクライエント/患者も
気分はよくなるかもしれませんが、自分で取り組むという行動に踏み出せなくなるのです。
(『対人関係療法で関係性の問題に取り組む』で書いた「二者関係への埋没」)

つまりモチベーションの低い人は、対人関係療法での脱落は低いけれども、
変化を起こすことや20回未満での終結(回復)は難しいということなのです。
治療が長期にわたるときは、別の治療技法を導入する、治療者を交代する、などが
対人関係療法総合ガイド』で推奨されています。

そもそも精神療法の適応について、泰斗のお一人である成田先生は

  • 行動化がある程度コントロールされている。
  • 治療者に対する信頼が生じている。
  • 治療への動機づけがある。
  • 自らの内界を見つめようとする姿勢と能力がある。

を挙げておられます。

8つの秘訣』にも「行動変容を動機づける5段階」として
「前熟考期」・「熟考期」・「準備期」・「実行期」・「維持期」
が示してありますよね。

三田こころの健康クリニックでも『8つの秘訣』の
秘訣1のこの練習は全員にやってもらっていますよね。
ちなみに、もう一つの練習は、「秘訣2」の「摂食障害の部分の思考」と「摂食障害の部分と健康な部分を対話させよう」です。

三田こころの健康クリニックで患者さんに説明するときには
回復地点への旅行にたとえて『8つの秘訣』の「秘訣1」を

前熟考期:目的地が来てくれないから旅行に行けないと考えている次期。
    →親のせいで病気になった、親が変わってくれないと自分は変われないではなく、自分の問題として引き受ける。
熟考期:いつか、どこかに、旅行に行きたいと漠然と考えている時期。病院に行けば医者がなんとかしてくれるかもしれない。
    →「できないかもしれない」と回避している状態と変化を起こすことのメリットとデメリットを考えてみる(決定分析)。
準備期:目的地も明確で、ガイドブックを読んだりネットで調べたり、旅行資金を貯めたりしている時期。
    →変化の妨げになっているものを明確にする、回復したいモチベーションを強化する。
実行期:旅行業者に申し込んで出発の日時も決まり、荷物をまとめて、実際に旅行に出発する時期。
    →回復によって失われると感じているものを明確にする、進歩を振り返る。
維持期:旅行中、および旅行が終わって帰ってきたとき。
    →増悪や再発に対する予防策。(リラプス・プリベンション)

というように対人関係療法の課題として説明していますよね。

三田こころの健康クリニックで初診前に診療申し込み票を書いてもらっているのは
自分を振り返る段階にあるかどうか、つまり、
初診後に対人関係療法の適応になればすぐに治療導入が可能かどうか、
「行動変容を動機づける5段階」の「準備期から実行期」にあることを
確認するという意味もあるのです。

このように「行動変容を動機づける5段階」をみてみると
モチベーションがあるからこそ、自らの内界を見つめようとする姿勢が生まれますし、
回復への行程を同行してくれる治療者に対する信頼も生まれるわけです。

逆に、初診から治療開始まで長期間「待つ」ことは
モチベーションが下がり治療効果にも影響しますよね。
三田こころの健康クリニックはすべての時間を対人関係療法で行っているので
初診までは2週間ほどお待ちいただく事もありますが、
治療準備性が高い方は待つことなく、すぐ治療に導入しているのですよ。

これから過食症やむちゃ食い障害の治療を受けたいと
考えられている人に『8つの秘訣』からのメッセージを転機しておきます。

摂食障害から回復しようとするときには、病そのものからくる感情に取り組むだけではなくて、挑戦につきものの一時的な感情にも耐えなければなりません。
何かに挑戦するときには、失敗する怖さや、結果がどうなるかが予測できない怖さが伴うものです。
こうした恐れからは不安感がたくさんかき立てられるでしょう。
しかし、このような不安に耐えられるようになると、みなさんの人生は、より生きやすいものとなるでしょう。
わたしたちの人生が豊かなものになるかどうかは、自分自身の感情を受け容れ、それらの感情に耐えられる技術をまなんでいけるかどうかにかかっていると思います。
この点については、4つ目の秘訣(「気持ちを感じて、自分の考えに抵抗してみよう」)で詳しく考えていきましょう。
(中略)
回復するためには、どうなるかがわからなくても、怖くても、罪の意識を感じても、またはなんとなくしっくりいかなくても、結局最後には何かの行動を変えていく必要があるでしょう。
行動を変えることについては、6つ目の秘訣(「自分の行動を変えるということ」)で具体的に説明していきます。
たとえ行動を変えることができていなくても前に進み続けているときもあるということを、ぜひ忘れないでください。
目標を達成するために、何度でも同じことに挑戦をしないといけないときがあります。
そういうときは、挑戦し続けるだけでも、回復のとても大切な過程に取り組んでいることになります。
あきらめないで続けているだけで、ちゃんと取り組んでいることになるのです。

コスティン&グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣星和書店

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
食障害の治療や回復へのモチベーション〜『8つの秘訣』補遺1」というタイトルで、
対人関係療法の効果と「行動変容を動機づける5段階」の関係について
論文を紹介し、治療(とくに精神療法)に取り組む際には
「準備期から実行期程度の治療準備性があること」が必要であること
を説明しています。

過食症やむちゃ食い障害からの回復のために
対人関係療法を受けたいと考えていらっしゃる方は
今回の記事と合わせて読んでいただいておくと
治療を始めるときにどのような心構えが必要かもわかりますよね。

6月2日は世界摂食障害の日です。




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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2016-05-23

「過食性障害」と「むちゃ食い障害」の違い

精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)では
不適切な代償行為を伴う、いわゆる過食嘔吐を伴う過食症
「神経性過食症」と呼ぶことになり、
過食嘔吐を伴わない過食症(非排出型の過食症)は、
「過食性障害」と診断されることになりました。

非排出型の過食症(DSM-5でいう過食性障害)は、
典型的には過食嘔吐を伴う拒食症や排出型の過食症から
自己誘発嘔吐が消失した「過食エピソード」だけが遺残した状態なのですが、
「過食性障害」の中には「むちゃ食い障害」も混在しています。

そもそも「過食(binge eating)エビソード」とは

  • 他とはっきり区別される時間帯に(例:任意の2時間の間の中で)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量より明らかに多い食物を食べる。
  • 食べることを抑制できないという感覚。(食べるのをやめることができない、食べるものの種類や量を抑制できない)

という2つの基準を満たし、同時に以下の5項目のうち

  1. 通常よりずっと早く食べる。
  2. 苦しいくらい満腹になるまで食べる。
  3. 身体的に空腹を感じていないときに大量の食べものを食べる。
  4. 自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるため1人で食べる。
  5. 後になって、自己嫌悪抑うつ気分、または強い罪悪感を感じる。

3つ以上を満たすものと定義されています。

自己誘発嘔吐のあるなしにかかわらず「過食症」では
上記の診断基準を満たすものを指すことになっているのですが、
診断基準に合致する「過食(binge eating)」以外にも

  • 大量の食べものを短時間に一気食いする(客観的binge-eating)
  • 通常量の食べものを一気食いし止められない(主観的binge-eating)
  • ダラダラ食い(grazing)
  • 大量の食物摂取だが制御できる(客観的食べすぎ:overeating)

なども一般的には過食と呼ばれているので、
「いわゆる過食」を主訴に受診する患者さんの中には
摂食障害と診断できない人もかなりいらっしゃるのです。

とくに「過食性障害」のうち「むちゃ食い障害」では
「過食(binge eating)」以外にも「ダラダラ食い(grazing)」や
「大食(overeating)」などが約半数でみられると報告されています。

「むちゃ食い障害」は拒食症過食症(排出型)に移行することはなく
「ダラダラ食い(grazing)」や「大食(overeating)」の経過中に、
いきなり過食(binge-eating)で発症することが多いことが知られています。

「むちゃ食い障害」に対する薬物療法の有効性については不明で
食事指導を行うと、反動で過食衝動が増悪しやすいのが特徴です。
ですから、過食を止めようと食事制限やダイエットをすると
確実に悪化しますので、早めに治療を受けてくださいね。

三田こころの健康クリニックで対人関係療法を行った経験からは
「過食性障害」のうち「非排出型の過食症」の対人関係療法による治療では
「評価への過敏性」が治療焦点になることが多いのですが、
「むちゃ食い障害」で同じように「評価への過敏性」に焦点を当てても
非排出型の過食症ほど治療反応性は高くない印象があります。

最近の脳科学の研究では、「過食性障害」では

  • 状況判断なくすぐ行動に移してしまう(性急自動衝動性)
  • 少ない報酬でも早く得ようとする(衝動過敏性)

という報酬系の異常が指摘されていることから
対人関係文脈よりも個人的要因の関与の方が大きいと考えられます。

「むちゃ食い障害」の対人関係療法による治療では
自己客観視する力をつけ、感情耐性を高める取り組みが必須ですからで、
対人関係療法のすすめ方にも工夫が必要になります。

とくに「ダラダラ食い(grazing)」を併発する「むちゃ食い障害」では
「嗜癖(アディクション)」として扱うことで治療できる場合がありますから
三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』
摂食障害から回復するための8つの秘訣」の解説は今回で最終回になります。

コミュニケーションを通じて自分のまわりの対人関係に関することに変化を起こし、
自分のまわりの人たちとのつながりを回復し自分自身とのつながりを高めていく
従来の対人関係療法でのやり方では
最近の「過食症」や「むちゃ食い障害」の人(「新奇性追求(冒険好き)」が低い)では
うまくいかないことが増えてきていて
いい方法はないのだろうか?と悩んでいた時期に『[8つの秘訣』にであったのです。

対人関係でのコミュニケーションは
自分自身の心のつぶやき(内言語)である思考や感情に影響を与えますし、
一方、思考や感情は、コミュニケーションに反映されます。

日本語は言葉と意味、心の状態との結びつきが強いため
出来事のとらえ方と心の姿勢(動き方)、
あるいは表象(内的現実)との向き合い方とともに
コミュニケーションの仕方(対人関係)の
両方に取り組む必要があるのですよね。

過食に苦しむ多くの方が、自分のなかで何が起こっているのかわからない、と感じています。
そのために、重要な対人関係の問題に目を向けることが難しくなるのです。
食べ物には、気持ちを鎮め、落ち着ける効果があります。
自分の気持ちにもっと気づけるようになれば、気持ちを落ち着かせるために食べ物に頼らずにすむようになるでしょう。
今まで、過食は、あなたが自分を大切にするためにとってきた方法だったのです。
残念ながら、この方法にはあまり効果はありませんでしたし、それどころか、逆効果でした。
あなたは自分をコントロールできないと感じ、やる気を失ってきたのですから。
食べたいという願望のきっかけになるのが何なのかを知ることができれば、こういった問題にもっと直接取り組むことができるようになるでしょう。

ウィルフリィ『グループ対人関係療法創元社

8つの秘訣』で自分と向き合いながら
対人関係療法に取り組んでいくことを通じて
多くの人が摂食障害から回復されることを願っています。

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