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如実知自心〜対人関係療法@三田こころの健康クリニック〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2015-08-31

愛着障害とアダルトチルドレン

岡田先生の『愛着障害』には

成人でも三分の一くらいの人が不安定型の愛着スタイルをもち、対人関係において困難を感じやすかったり、不安やうつなどの精神的な問題を抱えやすくなる。
こうしたケースは、狭い意味での愛着障害に該当するわけではもちろんないが、愛着の問題であることにはまちがいはなく、それがさまざまな困難を引き起こしているのである。
こうした不安定型愛着に伴って支障をきたしている状態を、狭い意味での愛着障害、つまり虐待や親の放棄による「反応性愛着障害」と区別して、本書では単に「愛着障害」と記すことにしたい。

岡田尊司『愛着障害光文社新書P.48

と書かれています。さらに

不安定型愛着も含めた広義の愛着障害、つまり愛着スペクトラム障害には回避型と不安型のような正反対とも言える傾向をもったタイプがふくまれるが、その根底には、大きな共通点がある。
岡田尊司『愛着障害光文社新書P.114

とも書かれています。

つまり一般に膾炙(かいしゃ:知れ渡ること)している「愛着障害」とは、
「怖れ・回避型/未解決型」を除いた「拒絶・回避型/愛着軽視型」、
「不安・アンビバレント型/とらわれ型」などの
「不安定型の愛着スタイル((広義の)愛着障害)」なのです。

DSM-5で「心的外傷およびストレス因関連障害群」に分類される
「(狭い意味での)愛着障害」、つまり虐待やネグレクトの結果である
「反応性愛着障害」や「脱抑制型対人交流障害」とは区別される、
ということですよね。

最近では、「(広義の)愛着障害(不安定型愛着スタイル)」と
アダルトチルドレン」も混同される傾向にあるようです。

アルコール依存などの問題を抱えた人が、自己の生きづらさの原因を生育家庭に求めるという図式は、共感と同時に、「人のせいにするな」「感謝すべき親に責任をなすりつけるな」と強い反発も呼び起こしました。
確かに厳しい生育環境の中からでも、社会で活躍する人はたくさん出ていますが、疫学的には、小児期の逆境体験のマイナスの影響は行動パターンや身体レベルで確実に蓄積されていくことは明らかです。
アダルトチルドレンという言葉は、言い訳でも、責任逃れでもなく、ありのままの現象を伝えていたともいえます。
(中略)
子どもの心のままの自分を抱えた大人の身体という意味でも、アダルトチルドレンという呼び方は言い得て妙なのです。

宮地尚子トラウマ岩波新書

一般の人がおっしゃる「アダルトチルドレン」や「(広義の)愛着障害」は
成長発達で乗り越えるべき課題が未達成なことによる生きづらさ
と考えた方がよさそうですよね。

愛着障害の人は、相手の気持ちに対する共感性が未発達な傾向を示す。
相手の立場に立って、相手のことを思いやるということが苦手になりやすいのである。

岡田尊司『愛着障害光文社新書P.129

この「共感性」はクロニンジャーのパーソナリティ理論では
「報酬依存」と呼ばれます。
「報酬依存」の高さは、共感的・情緒的・感傷的と関係し
「報酬依存」の低さは、孤立・冷静・感傷的ではないとされます。
つまり「報酬依存」は、「社会性」や「対人志向性」と同じような意味で、
水島先生は「人情家」と意訳されていますよね。

さらに「報酬依存」は、自分以外の他人の行動をみることで自分の行動をコントロールし、
過剰な「新奇性追求」や「損害回避」が働かないようにする、
つまり、周りの人の行動に影響を受けて、より環境に適応しやすくする特徴
とも言われています。(「報酬依存」はミラー・ニューロンの働きのようです。)

ということから、「(広義の)愛着障害」や「アダルトチルドレン」ではないかと
ご自分で思っていらっしゃる方は、
ミラー・ニューロンがうまく機能せず、環境に適応できなくなった状態ですから、
「自分の生きづらさや不安はここから生まれていたのか」と
意味(ナラティブ)を見いだすことができて、
他者との関わりを通じて、自分自身を知ることで
「協調性」が伸び、環境に適応しやすくなるのですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食症の対人関係療法であつかう「対人関係の欠如」」というタイトルで、
「評価への過敏性」という問題領域の「対人学習」に取り組み、

○ コミュニケーションスタイルの修正スキルを身につける
○ 不安定型愛着スタイルを獲得修正型の安定型愛着スタイルに変化させていく

ことで、人と人とのつながり(安定型の愛着スタイル)を回復し、
食べることの本質を取り戻していくことが
対人関係療法での治療の要(かなめ)になりますし
過食症」や「むちゃ食い障害」からの回復に不可欠なプロセスである
ということを書いています。

三田こころの健康クリニックで指導しているように
過食症やむちゃ食い障害から回復するためには、

  1. 生物学的過食(飢餓過食・夜間大食)を減らす
  2. 自尊心(自己肯定感&自己効力感)を高める(ストレス過食を減らす)
  3. 感情受容と調節スキルを高める(心の枠を拡げる)

というほとんど知られていない3つのポイントがあるのです。

生活リズムや食事摂取の仕方などの身体への取り組みに加え、
2.が対人関係療法で取り組んでいくコミュニケーションスキルで、
「ストレス過食を減らす」ということに該当し、
さらにマインドフルネス瞑想を通して 3.に取り組むことで、
ストレスの大きさに応じた過食量に減ってくるのです。
この「身体・コミュニケーション(言葉)・感情(マインド)」の
3つの次元との向き合い方は、いつかまとめて書いてみますね。

「過食をガマンする」「過食を抑えつける」のは逆効果ですから、
摂食障害で通院しているけどなかなか治らないとお感じの方は、
三田こころの健康クリニックで対人関係療法を受けてみてくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2015-08-24

抑うつ状態と気分変調性障害

最近では、以前なら「うつ病」と診断できなかった人も
抗うつ薬抗不安薬を処方され、なかなか治らない
ということが日常茶飯事になっていますよね。

たとえば世間を賑わせた「新型うつ病」などはその典型で、
操作的診断基準(症状がいくつ当てはまるかによる診断)の安易な使用が
うつ病」の概念を拡散させてしまい、
正常な葛藤や悲嘆、生きづらささえ、「うつ病」と診断されているのです。
それに拍車をかけたのが、安易な抗うつ薬の投与といわれています。

さらに世界的にエビデンスが認められている
認知行動療法や対人関係療法はまやかしにすぎない、
薬を飲んでいれば治る、と豪語される先生もいらっしゃるのです。
(皆さんの主治医がこのタイプでないことを祈ります)

ちなみに軽症〜中等症の「大うつ病性障害」では
抗うつ薬プラセボ偽薬)は、効果に差がないということもわかっていますし
健常人の葛藤や悩みに対しては、抗うつ薬は効果がなく、
表情の認知機能を低下させることも言われているのです。
抗うつ薬が効果がないと双極性障害かもしれないと
安易に診断する先生もいらっしゃるようなので、要注意ですね。

「気分変調性障害」も「大うつ病性障害」と同じで、単一の疾患ではなく、

うつ病と同じ執着気質やメランコリー親和性性格をもつ「気分変調性障害・中核群」
○愛着の問題を持ち対人葛藤を主とする「不安型気分変調症
○生きづらさ・不適応としての「無力型気分変調症

など、さまざまな亜型(サブタイプ)があるのですが
操作的診断基準ではすべておなじ扱いになってしまいます。

「うつ」とは、気分の落ち込みや、やる気のなさではなく、
生活のなかでの意味連続性の中断による
心のエネルギーの流れの停滞のことなのです。

たとえば「気分変調性障害・中核群」の人は

そもそもうつ病エネルギーが低下しているというのに、その限られたエネルギーをすべて使って「ふつう」に見せようと努力するのです。一般には、勤勉な働き者になります。
自分には価値がないと思っているので、それを重労働によってカバーしようとするのです。
自分のだめさを見破られないように、自分のだめさのために人に迷惑をかけないようにと頑張ってしまうのです。

水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

というように、過剰適応をしてしまいますよね。

「気分変調性障害・中核群」の人たちの主体は
気分の落ち込みや意欲の低下に対して抵抗するという形で
「自責感や罪悪感(他者に迷惑をかけている自分はダメだ)」
という症状を形成していますよね。
ですから「気分変調性障害」の人が落ち込みややる気のなさを訴えて
医療機関受診することはまずあり得ないですよね。

「気持ちの落ち込み」「やる気のなさ」「生きづらさ」を主訴に
精神科受診すると、おごそかに「うつ病」と診断され、
抗うつ薬抗不安薬の処方と、休むこと(休学や休職)を指示されます。

あるいは「うつ状態(反応性抑うつ適応障害)」と診断されることもありますし
慢性化すると「気分変調性障害」ではないか?と
医者も錯覚しますし、患者さん自身も思いこまれるようです。
(患者さんも操作的診断基準に当てはめて気分変調性障害ではないかと思われるようです。)

「反応性抑うつ」とは、明確な誘因をきっかけにうつ状態を呈したもので
たとえば、仕事でミスしたとか、嫌な部署に異動になって行きたくないとか
いうような場合です。

適応障害」も「反応性抑うつ」とほぼ同じような意味で、
環境の変化(ストレス)と脆弱性との兼ね合いで適応がうまくいかず、
おもに精神症状とともに身体症状が表れたものを指します。

「気分変調性障害」は、きっかけはなく人知れずひっそりと発症しますが、
うつ状態(反応性抑うつ適応障害)」では
発症の直前に何らかの社会的な変化が必ずあるのです。
「気分変調性障害かも?」と思う「無力型気分変調症」では、
慢性的な生きづらさや不適応感を感じながら過ごしていますが、
不適応を起こす前にやはり何らかのエピソードがあるのです。

「反応性抑うつ」にしろ「適応障害」にしろ、
あるいは「無力型気分変調症」にしろ、
必要なのは休養(休職や休学)ではなく環境調整ですし、
さらに適応力をあげるための努力が必要なのです。
最近では早期に精神科にかかると、改善するどころか
休職者が増え、休職期間が長引き、さらに、なかなか復職できない
という悲しい事態も起きています。

最近では「うつ」の運動療法も行われていますし、
認知行動療法に行動活性化という技法があるように
うつ症状が増えると、身体活動レベルが減り
身体活動レベルが高まると、うつ症状が減るという、
双方向性の関係があることがいくつも報告され
身体活動は抑うつ症状の発生予防または軽減に役立つ
ということが知られています。

「無力型気分変調症」に伴う慢性的な不適応
「反応性抑うつ」や「適応障害」には必要なのは、
脆弱性にもとづく反応の軽減のための行動活性化なのですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食症の対人関係療法での問題領域の考え方」というタイトルで、
過食を「人と人とのつながりの回復の手段」とみると
摂食障害を維持している因子が、対人関係文脈にあること、
過食症」や「むちゃ食い障害」の対人関係療法では
過食という症状に頼らずに、人とのつながりを感じられるようになる
という部分を、問題領域として焦点を当てることを書いています。

案外知られていないことなのですが、人が対人関係の問題を感じるのは

・対人コミュニケーションのスキルが適応的でないこと
・社会的ネットワークが充分でないこと

の2つの要因によることが分かっています。

対人関係療法の目的は、患者の愛着スタイルを考慮しますから、
患者がより効果的に愛着欲求を満たすことができるようになれば
対人関係問題は解消し、苦悩は軽減していきます。

なお、8月17日にアップした「食の本質と対人関係療法」が
見れなかったようで、リンクも貼りなおして
クリニックのトップページからもアクセスできるようにしておきました。

「気分変調性障害」だけでなく、「過食症」や
「むちゃ食い障害」で医療機関に通っていても
なかなか治らないと感じられる方には
対人関係療法が効果がある場合がありますので、
三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

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2015-08-17

気分変調性障害の人のコミュニケーションスタイル

以上に見てきたような対人関係パターンを持っている気分変調性障害の人は、コミュニケーションにも独特の特徴があります。
まず、大きな特徴として、「自己主張」と「怒りの適切な表現」の苦手さがあります。

水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

と、水島先生は書かれています。

では、どうすれば「自己主張」と「怒りの適切な表現」が
可能になるかというと、対人関係療法による治療の中で

○「相手がほんとうに言いたいこと」を知る
○「自分が相手に伝えていること」を知る
○ 安全でわかりやすい伝え方をする
○「怒り」の感情を有効活用する

などなどを「対人学習」の中で学んでいくのです。

しかし「気分変調性障害」の人は

コミュニケーションが抑制的であると同時に、ものごとがうまく進まないのは自分から発信している情報が足りないからだ、という自覚がほとんどないのも特徴です。
(中略)
ここに「実際の人間関係においては」と書いたことは、気分変調性障害の人たちが知らない人間模様です。
気分変調性障害の人たちの頭の中にある「人間とはこういうものだろう」というイメージとは異なる、現実の人間の姿です。
(中略)
実際の人間模様を学ぶためには、心を開いて人間関係に参加する必要があります。

水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

「頭の中だけの人間理解と対人関係」という「自覚のなさ」から抜け出すため
人間関係に参加する」ということが「対人学習」なのですが、
やり方を知らない人が現実の対人関係に向き合おうとすると
独りぼっちで言葉のわからない外国に放り出されたようなもので
ますます萎縮してしまうのです。

「気分変調性障害」の「対人学習」は
「対人プチ・トラウマ」あるいは「過食症」や「むちゃ食い障害」に対する
対人関係療法とも共通しているもので、

(1)人の心の仕組みと動き方を知る
(2)トラブルにならない言い方を身につける
(3)味方(ソーシャルサポート)を増やす

と三田こころの健康クリニックでは説明していますよね。

しかし体力のない人がいきなり山登りをしても
登れないだけでなく、遭難したり事故に遭ったりしますから
基礎体力作り(治療の土台作り)が必要なのです。
そのために三田こころの健康クリニックでは

(A)自分の感情の感じ方・コミュニケーションの基礎
(B)感情の中で取扱いが一番難しい怒りの扱い方
(C)主体性の土台(自覚と責任をもつ)

ということを治療の初期に教えていますよね。
この(A)(B)(C)がそれぞれ
(1)(2)(3)に対応した土台になるのです。
その中でも、もっとも重要なのが
「人の心の仕組みと動き方を知る」であり、
これが「自覚のなさ」から抜け出す必須項目になります。

三田こころの健康クリニックでは、「自覚の力を高めるため」に
マインドフルネスのやり方を教えることもあるのですが
このことについては、いずれ稿を改めて書いてみますね。

さて気分変調性障害の対人関係療法による治療では
「コミュニケーション分析」が中心になります。
「気分変調性障害」のコミュニケーションには

・コミュニケーション(特に非言語的なもの)への「過度の敏感さ」が起こる
・コミュニケーションをネガティブに解釈しすぎてしまい、それが社会的な回避へとつながる

などの特徴がありますから、社会的な回避につながった

・言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの両方を振り返る
・他人のコミュニケーションをどのように誤解している可能性があるかを振り返る
・他人に対してはっきりとコミュニケーションしているかどうかを振り返る

を「コミュニケーション分析」のなかで検討し

・どのようにやりとりから引きこもり、非言語的に他人を「押し」やっているかを理解出来るようになる
・非言語的コミュニケーションを用いずに、やりとりを続けたりやめたりすることを積極的に選べるようなやり方を学ぶ

ということを治療者とのロールプレイで学び
実際の生活で応用してみるということで「対人学習」を進めていくのです。

これが『対人関係療法でなおす 気分変調性障害』に書いてある
「症状に気づく」という「治療による役割の変化」の先にある課題で、
気分変調性障害から完全に抜け出すために、
「気分変調性障害」の「維持因子」である
「対人関係過敏(対人関係の欠如)」を焦点とした
対人関係療法のすすめ方なのです。
「症状に力を与えない」と三田こころの健康クリニックでは説明していますよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
食の本質と対人関係療法」というタイトルで、
人とのつながりの中に生じた亀裂が苦しかったからこそ
そのつながりをより快適なものに修正するために
やせることに活路を見いだそうとし、
不安と心配事がうずまく日常を乗り切るための術として
日常の食を反転させる形での過食が起きるというメカニズムに対して、
対人関係療法では、不安と心配事のストレスを減らすこと、
そして食の力を借りずに人とのつながりを回復させることで
本来の食の本質を取り戻す治療であることを書いています。

過食症」や「むちゃ食い障害」の対人関係療法を希望される方は
是非、参考にしてみてくださいね。

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2015-08-10

気分変調性障害の対人関係療法であつかう「対人関係の欠如」

このブログは、患者さんだけでなく、
対人関係療法を勉強中の心理士さんもお読みになっている
ということですから、今回はちょっとコアな内容で。

気分変調性障害に対する対人関係療法では、そのような「治療による役割の変化」を中心に起きながら、「悲哀」「役割をめぐる不一致」「役割の変化」のいずれかにあてはまるものがあれば、それに焦点をあてて治療を進めていきます。
なお、四つ目の問題領域である「対人関係の欠如」は、治療のすすめ方が難しいので、今ではほとんど選ばれることのないものとなっています。
気分変調性障害の場合、一見すると、「対人関係の欠如」に見える人はたくさんいます。
長年気分変調性障害を患っていれば、誰でも「対人関係の欠如」に見える状態になるからです。
(中略)
このような「対人関係の欠如」は病気の「きっかけ」ではなくむしろ「結果」であり、きちんと区別する必要があります。

水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

と水島先生がお書きになっています。

実際そのとおりで、思春期から青年期初期までの
「気分変調性障害」の発症前にはそれなりに対人関係がありますから、
「気分変調性障害・中核群」の方にとっては
治療による役割の変化」がピッタリの問題領域になります。

発症して間もない「拒食症」や「過食症」では
「対人関係上の役割をめぐる不和」や「役割の変化」など
発症のきっかけとなった問題領域を扱うのに対し、
慢性化した「過食症」や「むちゃ食い障害」の対人関係療法では
「維持因子」を扱うということになっています。

すると慢性的に持続した「気分変調性障害」では
結果としての対人関係の乏しさ(対人関係の欠如)が
長期間、慢性的に続く「維持因子」になっているのではないか?
ということも考えられますよね。

さらに、もともとの性格特性や回避型愛着スタイル、あるいは
その他の要因によって対人機能が乏しいことが問題である
「気分変調性障害」の人、たとえば「無力型気分変調症」や
プチ・トラウマ体験を背景に持つ「不安型気分変調症
治療による役割の変化」はピンとこないことも多いのです。

そういう場合、三田こころの健康クリニックでは、
病気の結果としての対人関係の乏しさを維持因子と考え
「対人関係の欠如」を問題領域として治療を導入することもあります。

もともと対人関係療法の「対人関係の欠如」のあつかいは
・過去の重要な関係を、悪い面も良い面も含めて振り返ること
・それらの対人関係の中で繰り返された問題や似通っていた問題を検討すること
治療者に対する患者の否定的な気持ちと肯定的な気持ちを検討し、他の関係における類似のものを検討すること

治療課題となっています。

このやり方では不安定型愛着スタイルの自覚は可能ですが
コミュニケーションスタイルの修正スキルや
獲得修正型の安定型愛着スタイルへの変化はかなり難しいのです。
だからこそ「対人関係の欠如」は、治療のすすめ方が難しく、
いまではほとんど選ばれることのないものとなっているのです。

アイオワ・カルバー医科大学のスチュアート教授は
「対人関係の欠如」を『対人関係過敏』と言い換え
治療者と患者の愛着スタイルとコミュニケーションスタイルの適合性をアセスメントし、
その中で、治療でのコミュニケーションにフィードバックを与え
スキル訓練の方法としてロールプレイを使い、
社会グループや地域参加の援助をしていくなど
新しい関係を構築し続けるためのスキルを伝達していくことで
「対人学習」を進めることを提唱されています。

このやり方は治療者が「情動調律」を行うことで
十分でなかった「対人学習」の土台になる共感性を高めることになり、
獲得修正型の安定型愛着スタイルへの変化も起こしやすく、
慢性化した「大うつ病性障害」の患者さんや
「気分変調性障害」の患者さんの治療実績から有効なことがわかっています。
実際、先日も、「対人関係過敏(対人関係の欠如)」を問題領域として治療
きれいによくなられた十年来のうつ病の患者さんがいらっしゃいました。

さらに、三田こころの健康クリニックでは、
長年の間に身についた根拠のない不安である「役割不安」や
幼少期のトラウマによる「対人パターン」などを合わせた、
『評価への過敏性』を問題領域として、
プチ・トラウマが関与する「過食症」や「むちゃ食い障害」、
「気分変調性障害」の対人関係療法による治療に用いて
良好な治療効果を挙げているのです。
(『摂食障害の「評価への過敏性」と「愛着スタイル」』『気分変調性障害と評価への過敏性〜愛着の問題』参照)

患者さんに合った形に対人関係療法を柔軟に適応するのが
「鑑別治療学」のエッセンスですから、
うつ病うつ状態として長年通院しているけれども、
なかなか治らないと感じていらっしゃる方は、
一度、診断と治療法のアセスメントについて
三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食症の対人関係療法に「自覚の力」を応用する」というタイトルで、
自覚を培っていく瞑想では、呼吸と身体の自覚にしっかりと気づきを根づかせ、
気持ち、思考、感情あるいは心にうまく気づきを向けられるようになる練習が必要で
それによって感情との同一化傾向が打破される、つまり、
感情と距離を取ることができるようになることを書いています。

対人関係療法とは、一見、関係のなさそうな話に見えますが
「自分の気持ちをよく振り返る」という対人関係療法の大原則を突き詰めると、
「自心と向き合う(自己観察)」に行き着きますから
対人関係療法による治療を希望されている方、
あるいは現在、対人関係療法に取り組んでおられる方は
ちょっと練習してみてくださいね。

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2015-08-03

気分変調性障害と攻撃性

「気分変調性障害」の診断基準に

  • 児童、青年期では気分はいらいらであってもよく、持続は少なくとも1年でなければならない。

と記載されています。

ちなみにインターネットの記事の中には、「気分変調性障害」と「気分変調症」は別の疾患で、「気分変調症」を「現代型うつ病」のように書いてあることもありますがこれは間違いです。
DSMでは「気分変調性障害」と呼びますがICDでは「気分変調症」と呼び、この2つの疾患は同じものです。
「気分変調性障害「気分変調症」は精神科医でさえ診断が難しいのですから、一般の方が病態を正確に理解するということは不可能に近いので、ネットの情報に惑わされないようにして下さいね。


「気分変調性障害」のような持続性の「抑うつ症候群」では
「自責」が一つの特徴であることが知られています。
しかし、人には自己愛的な心理構造があるので
自分で自分を責めるという心理反応は不自然で了解不能であるため
これが「抑うつ症候群」の精神病理といわれています。

さらに、「自責」という自己否定は堂々めぐりをする
過去の思考(後悔:ポスト・フェストゥム)の反芻(はんすう)であり、
抑うつ症候群」特有の心のエネルギーの停滞の特徴を引き起こします。

一方、「いらいら」が他者に向けて表現される「他責・他罰」は
生産的でないという意味では「自責」と同様なのですが
エネルギーの方向や量が「抑うつ症候群」とは正反対ですよね。

むしろ怒りを心のなかで抱えておくことができず
新奇追求性にもとづく衝動性など生来的な気質と、
環境や人との間で形成される性格が合わさった
状況依存的なパーソナリティの一つの現れとしての他責・他罰のようですから、
抑うつ症候群」とは考えにくいですし
そもそもこのような他責的・他罰的な感じ方は
「他人に甘く自分に厳しい」という
「気分変調性障害」のアンバランスな感じ方と正反対ですよね。

水島先生は他者への責任転嫁について

ひどい育て方をした親を許せずに、すべての言い訳をそこに求めて生きていくのも一つの選択ですが、そうやって自分でコントロールすることをあきらめてしまった人生はだれがコントロールするのか、ということを考えてみれば、現在の辛さの理由がよくわかると思います。
「あの人が謝ってくれさえすれば…」という考え方も、自分の幸せを相手にゆだねてしまっていることになります。それに値する相手なのかどうかをよく考えてみるとよいでしょう。

水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す紀伊國屋書店

と、他責・他罰はコントロールを放棄した状態と書かれています。

つまり他者を攻撃すること、他者に責任転嫁することは
自らのコントロールを放棄し、相手をコントロールすることもできず
ただじっと相手が変わってくれるのを待つ
無力な「まな板の上の鯉」と同じということなのです。

しかし怒りは相手を従属させることができる場合もあります。
怒りは不満を解消するために必要なエネルギーであり
状況を変え、新たな体験に触れるために必要なエネルギーでもあるのですが
究極的には怒りは、失望をもたらし、
自分自身を遠ざけてしまうことへの無自覚さでもあるのです。

人とのつながりの中で満足を得るために表現された怒りは
自分を切り離し(ある意味、過食と同じような麻痺作用があります)
周囲に発散することで、逆にその怒りは自分に跳ね返り
つながりを失い、孤立に閉じ込められてしまうのです。

感情がコントロールできない』でも触れた
「月経前気分不快障害(PMDD)」や「重篤気分調節障害(DMDD)」など
II型トラウマが関与する場合には怒り反応が遷延することが知られています。

このように、トラウマ症状が相手を怒らせて新たなトラウマ体験を引き起こすということは珍しくありません。
本来は二度と危険な目に遭わないように、という目的を持った症状であったはずが、かえって危険を招いてしまうのです。

水島広子『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD創元社

つまり「気分変調性障害」に似た状態で「いらいら」がある場合、
幼児期の虐待やネグレクトなどによる「トラウマ反応」ジーナーのいう「安全基地のゆがみ」)
「とらわれ(不安/アンビバレント)」型や
「未解決(おそれ/回避)」型など「不安定型愛着スタイル」、
または「評価への過敏性」のような「プチ・トラウマの影響」
を考える必要がある、ということですよね。

チベット仏教が教える怒りの手放し方

チベット仏教が教える怒りの手放し方

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
対人関係療法での感情とのつきあい方」というタイトルで、
出来事や状況に対する直接的な反応である「一次感情」と
出来事をどう認識したかなど思考に対する反応である「二次感情」の違い、
思考を介した二次感情は一次感情を覆い隠し、症状につながること、
感情は感じた以上は正当なもの、という自覚をもつことが
「精神的に楽になる」と「食行動が正常化」する間にある
ギャップであることについて触れています。

三田こころの健康クリニックでは
治療の土台作りのときに教えていることですが
「自分の気持ちをよく振り返る」という自己観察が土台ですから
対人関係療法による治療を受けたいと思っていらっしゃる方も
対人関係療法に取り組んでいらっしゃる方も、
対人関係療法が終結した方も、参照してみてくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2015-07-27

「自分は人間としてどこか欠けている」という感じ方

養育者が子どもの要求に対して拒否的な態度を示し続ければ、子どもはケアを求める行動を抑制するようになります(これを「回避型アタッチメント」と言います)。
養育者が一貫しない対応をする場合は、子どもはいつまでもぐずるなど、ケアを求める行動をし続けます(「両価型」または「不安定型アタッチメント」と言います)。

宮地尚子トラウマ岩波新書

このようなプチ・トラウマに対して、マーク・エプスタインは
マイケル・バリントの「基底欠損(きていけっそん)」と関連づけています。

「基底欠損」とは

患者は、自分の中には欠点があるように感じると言います。正されねばならぬ欠点です。
その欠点というのは、劣等感ではなく、葛藤ではなく、これといった状態ではありません…。この欠点の原因は以前に誰かが自分の期待を裏切ったか、あるいはしてくれるべきことをしてくれなかったことであるという感じがします。
(中略)
西洋人の精神構造は、ますます疎外感、渇望、空虚感、無価値観に陥りやすくなっています。
(中略)
そして、私たちは「自分が悪いからつながりが持てないのだ」と、親が充分な注意を向けてくれないのは自分に原因があると思いこんでしまうのです。

エプスタイン『ブッダのサイコセラピー春秋社

エプスタインはこのような「基底欠損」は
「特定のトラウマ的出来事ではなく、不在に関する多様な身体的残滓」
と述べています。
これはつまり、大脳辺縁系の情動がコントロールできず、
大脳皮質での思考の暴走が起こり、そして
前頭前野がそれを統合できていない状態のようですよね。

このような満たされない感覚(空虚感や自己不確実感)は
「気分変調性障害」でも多くみられる
「自分は人間としてどこか欠けている」という感じ方に近いですよね。

精神分析家のエプスタインの描くところによると
自己体験にまつわる通常の精神力動的基盤は、空腹体験であり、
身体は満足させ続けなければならない異物として体験されます。
それは、不安を抱えた母親が、
生まれたばかりの赤ちゃんを育児するようなものに喩えられます。
そのため、「気分変調性障害」の患者さんは
慢性的な空虚感を満たそうとして「過食症」などを併発する場合も多いのです。

このような「気分変調性障害」の対人関係療法では
何でも自分に関連づけてネガティブに捉える

  • 「自虐的な自己中心」が病気の症状だと気づいていくこと

そして、無力感や絶望感を感じたとしても

  • 症状に気づき、まきこまれないようにしていくこと

テーマになりますが、なかなか難しいのです。

それでも対人関係療法は、慢性うつ病に特化した認知行動療法である
認知行動分析システム精神療法(CBASP)」と比べ
16週後ではCBASPの方が寛解を得られやすいものの
1年後には差がない程度まで対人関係療法の効果が伸びています。

つまり対人関係療法治療終結後も効果が伸び続けますから、
終結時に「気分変調性障害」からの回復率を挙げるために
「症状に気づき、まきこまれないようにする」ことで
「気分変調性障害」の寛解率はさらに高まるのです。

三田こころの健康クリニックでは、治療の土台作りの際に

・問題を認識し、受け入れること(自覚と責任を持つ)
・根源を見つけ出すこと(何が起きたのか:ジャッジメントを挟まずにありのままに観察する)
・問題を前向きにみること(位置づけ)
・感じることによって、問題を解き放つこと(その時、どんな気持ちになって、本当はどうなって欲しかったか)
・不安とつきあう(そのためにはどうしたらいいか)

という「心のあり方」を指導していますよね。
否定的な思考や、苦しい感情が湧いてきたとしても、
自分の心の状態をあるがままに見つめ受け入れるだけで
苦痛が癒されるということを体験してもらうのです。
このやり方が、そのまま
「症状に気づき、まきこまれないようにする」
ことにつながるのです。

親が子どもに情動調律を行うと、安定型の愛着が形成されますが、
ここで行っているのは、自分自身で情動調律を行うことで
それによりレジリエンス(回復力)と柔軟性の基盤が作られるのです。
自分で愛着障害かもしれないと感じておられる方も
このような自分を見つめるプロセスに取り組んでみてくださいね。

最近流行りのマインドフルネス(ヴィパサナ)では
思考にラベリングして呼吸に戻るということを行いますが
「気分変調性障害」の人にとっては
ラベリングが自分へのダメ出しにつながりやすいのでお勧めできません。

むしろ思考や感情、こころには実体がないのですから
とらわれたり執着したり判断したりせず
ありのままにただ観察する、ということがポイントになります。
つまり自分の心の傍観者になる、ということなのですが
詳しいことは三田こころの健康クリニックで教わってくださいね。

こころの自然治癒力 (こころライブラリー)

こころの自然治癒力 (こころライブラリー)

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
対人関係療法で取り組む自分との向き合い方というタイトルで、
対人関係療法による治療が進み「精神的に楽になる」段階と
「だんだんと食行動が正常化」する段階の間にある
ちょっとしたギャップの乗り越え方を書いています。

対人関係療法では考え方を変えようとせず
二者関係(対人関係)の中で、感情を指標に現実を変えていくことに取り組みますよね。
それと同じように、自分自身との向き合い方も
感情(want)と思考(should / must)との折り合いを付けていくのです。
そしてその根底には「自分の気持ちをよく振り返る」という
自己客観視(自己モニタリング)があるのです。

今回の「現象(反応)はあるが実体はない」という心のあり方とともに
「気分変調性障害」や「過食症」で対人関係療法による治療を希望されるかたは
ぜひ参考にしてくださいね。

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2015-07-21

愛着障害と複雑性PTSD

何がトラウマで、何がトラウマではないのでしょうか。
また、どこまでが「正常」で、どこからが「病気」なのでしょうか。
トラウマ体験の種類や強度、因果関係の強さ、反応の種類や強さが、ある程度の判断基準になりますが、これらを分ける境界性が明確にあるわけではありません。

宮地尚子トラウマ岩波新書

と宮地教授は書かれており、水島先生も

診断は気分変調性障害であっても、いろいろとトラウマティックな経験をしている人はいますので、一見区別がつきにくいケースも多いのですが、その外傷の強度はどの程度か、外傷がよみがえるような症状(悪夢やフラッシュバック)があるか、覚醒亢進状態があるか…というあたりで診断を区別していきます。
水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

とおっしゃっています。

「気分変調性障害」と関連があるトラウマは
水島先生が書かれているような強度のストレス体験(トラウマ)後の
再体験症状(フラッシュバック)が消退した慢性のうつ状態であり、
多くは二重うつ病の形で発症し、治りきれずに慢性化するという経過をたどります。

「複雑性PTSD」と愛着(アタッチメント)の関連については

そして、養育者が虐待をしたり、子どもにとって理解不能な行動で不安を喚起し続ける場合、子どもも矛盾した不可解な行動をみせるようになります(「無秩序・無方向型アタッチメント」と言います)。
無秩序・無方向型のアタッチメントが、子どもの精神発達を最も妨げます。
(中略)
無秩序・無方向型アタッチメントの場合、近づくか遠ざかるかという、生きるための一番基本的なオリエンテーションが壊されている状態なので、「アタッチメント」や「愛着」という言葉を使わない方がいいのではないかと、私自身は思っています。
(中略)
けれども、無秩序・無方向型の場合、むしろ愛情がありすぎて、子どもに厳しいしつけをしてしまったり、子どもの愛情を深読みして自分がバカにされているように感じたり、といったことが少なくありません。
愛情が足りないのではなく、親の側の感情や認知の安定が欠けていたり、自己肯定感がなかったり、「自然」な子育ての方法がわからなかったりするのです。
自分の感情を自己調節する能力は、安定したアタッチメント関係の中でできていくのですが、親自身が子どものときにそういう環境になかったことも少なくありません。

宮地尚子トラウマ岩波新書

子どもの無秩序・無方向型の愛着パターンは
成人では「おそれ型(未解決型 or おそれ/回避型)」として知られます。

つまり「複雑性PTSD」は、子どもの頃に
身体的・心理的・性的・教育的な虐待や、ネグレクト、
配偶者間暴力の目撃など、持続性の強度のストレス体験があった成人の

・気分調節薬が無効の双極II型に似た気分変動:子どものかんしゃくの爆発、成人女性の月経前不快気分障害(PMDD)
・記憶の断裂:1日以内の食事内容を想起できない、記憶の断片化の常在
・時間感覚の混乱:日内リズムの慢性的混乱、眠気の消失
・フラッシュバック(再体験症状・侵入的想起)の常在化
・生理的症状と心理的症状の相互混乱・慢性疼痛
・希死念慮:他者への恒常的不信、自傷、非現実な救済願望

などの特徴を、浜松医科大学の杉山先生が挙げておられます。

さらに問題を複雑にしているのは
最近多く診るようになった「自閉症スペクトラム発達障害)」との関連です。

また、狭義の「発達障害」を持つ子どもは、特定の刺激にとても敏感なためにトラウマ反応を起こしやすい傾向があります。
一方、視線を合わせにくいなど、養育者にとって育てにくい特徴をもつために、子育て困難をもたらし、虐待につながってしまうことも皆無ではありません。
発達障害」のような症状から、虐待を見抜き、予防につなげることは大切です。ただ、「発達障害」をもつ子どもの親(特に母親)が、常に虐待の疑いをかけられるというのは、とても酷です。

宮地尚子トラウマ岩波新書

このような発達障害や、「愛着軽視型(拒絶/回避型)」
「とらわれ型(不安/アンビバレント型)」など、
再体験症状(フラッシュバック)や覚醒亢進症状がなくても
養育者の厳格な態度や、一貫しない対応が少しでもあったら
「複雑性PTSD」だと過剰診断している医療機関もあるのです。
(場合によっては本人は愛着障害と思っていることも多いのです)

外傷的なストレスを体験をした人が全員、
「複雑性PTSD」を発症するわけではないうえに、
過去に虐待があったわけでもなく、
「おそれ型(未解決型 or おそれ/回避型)」ではない、
適応障害学校や仕事での不適応)の人を
「トラウマ」や「複雑性PTSD」と診断することで、
親の育て方への糾弾と、親子関係の軋轢を生みますから
この医療機関の安易な「複雑性PTSD」診断は
大きな間違いということがわかりますよね。

さらに不安定型愛着スタイル(岡田先生のおっしゃる愛着障害)などの
対人関係の悩みや葛藤など、治療が必要な疾患ではない状態を
「複雑性PTSD」と過剰診断(誤診)されているわけですから
「複雑性PTSD」と診断されている方や
ご自分で「愛着障害かもしれない」と感じられている方は
ちょっと注意してみてくださいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害と感情の自己コントロールというタイトルで、
対人関係療法による治療で取り組んでいく
「自分の気持ちをよく振り返る」という感情に向き合うプロセスは、
過食症からの回復には必要不可欠なことを書いています。
そして、過食症からの回復には感情をありのままに認め、
ネガティブな感情を手放していくプロセスが必要なこと
について説明をしています。

対人関係療法による治療を希望される過食症の方だけでなく
気分変調性障害で通院中の方もぜひ参考にしてみてくださいね。

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2015-07-13

気分変調性障害の対人関係療法での問題領域

このブログを注意深くお読みになっている方ならわかると思いますが
養育者が子どもの要求に対して拒否的な態度を示し続け
子どもはケアを求める行動を抑制するようになった
「愛着軽視型(拒絶/回避型)」の愛着スタイルが
「気分変調性障害(持続性抑うつ障害)」の原因というわけではない
ということですよね。

対人関係療法では、病気の原因については何も言っていません。
病気は、遺伝、早期の人生体験、パーソナリティ、現在の社会的状況、個人的なストレスなどさまざまなことが関わり合った結果として起こってくるものであるという常識的な「多元モデル」をとっています。
しかし、病気が発症するポイントを見ると、そこには何らかの対人関係的な「きっかけ」があるものです。

水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

そうなると、思春期から成人期早期にひっそりと発症し
本人も周囲も気づかないような「気分変調性障害」のような病気では
発症のきっかけを探す、というやり方はうまくいかないことが多いのです。

それに対して、コロムビア大学のマーコウィッツ教授は
治療による役割の変化」という問題領域を設定しています。

これは治療をうけることによって、それまで当然のものとして受け入れてきた病気の役割から健康な人の役割に変わるという意味ですが、その本質は、それまで自分の一部だと思ってきた特徴が、実は気分変調性障害という治療可能な病気の症状であったということを認識していくというプロセスです。
自分は「だめな人間」であり、いろいろなことがうまくいかないのは自分の責任であり、今後も希望はないと思っていたところから、自分は単に病気にかかっているだけであり、その病気治療によってよくなるということを知るのは、まさに人生をひっくり返すような「役割の変化」になります。

水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

このような位置づけは、社会的役割や規範に同一化し
秩序を愛し、配慮的で几帳面という「執着気質」や
メランコリー親和型性格」をもつ「気分変調性障害・中核群」の方にとっては、
まさにピッタリの問題領域ですよね。

治療による役割の変化」は「医学モデル」を徹底させる
つまり「気分変調性障害を病気として位置づける」ことなのですが、
対人関係療法を学んでいる途中の治療者は、ここを混乱して
「変化」の文脈で治療を進めようとして、うまくいかないのです。
ですから、「気分変調性障害」の治療対人関係療法治療者の中でも
治療に自信のある経験を積んだ治療者でないと難しいといわれる所以です。

実際の「気分変調性障害」に対する対人関係療法による治療で行っていくことは
「今まで恵まれてこなかった対人学習」ということです。
実際には「役割をめぐる不一致」の扱いと同じで
コミュニケーションが抑制的であるために期待のズレが起きているので
相手に理解してもらうために働きかけ(交渉)を行いながら
自分の領域と相手の領域を区別していくことに取り組みますよね。

これこそが「愛着軽視型(拒絶/回避型)」の愛着スタイルと
関係してくるのです。

対人関係療法で患者さんの愛着スタイルに注目し

  • 治療者―患者関係の構築は容易か困難か
  • 重要な他者からの治療協力(サポート)はどの程度可能か
  • 対人関係療法を患者の愛着スタイルに適応させられるか
  • 対人関係療法による治療終結時の不安の大きさはどの程度か

などをアセスメントするのです。

治療関係への注意」「患者の感情への注意」
「患者のアタッチメントスタイルへの適応」については
治療者間でばらつきが大きいことが分かっています。
つまり、対人関係療法治療者たるもの
「愛着(アタッチメント)」について知らないのは論外なのです。

対人関係療法では、治療者自身の愛着スタイルと
患者さんの愛着スタイルの適合性をアセスメントすることにより
対応の仕方を変える必要があるということ、つまり
「気分変調性障害」の患者さんにとってどのような治療目標を設定すれば
修正アタッチメント体験を積みかさねていけるかを考える
ということなのですよね。(『対人関係療法で取り組んでいくアタッチメント課題』参照)

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食の意味と「傷つき体験(プチ・トラウマ)」からの回復というタイトルで、
摂食障害、とくに「過食症」や「むちゃ食い障害」では
ストレスをなだめ麻痺させるための過食が
食の意味を混乱させコントロールを失うという悪循環と、
対人関係の傷つき体験(プチ・トラウマ)からの回復
について書いています。

過食症」や「むちゃ食い障害」で通院中の方は
現在うけていらっしゃる治療
「評価」という傷つき体験(プチ・トラウマ)からの回復に
どの程度役立っているかどうかを考えてみてくださいね。

また「過食症」や「むちゃ食い障害」の方で
対人関係療法による治療を希望される方は
ぜひ参考にしてみてくださいね。

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2015-07-06

気分変調性障害とプチ・トラウマ

ほとんどの人が、多かれ少なかれ「人にどう思われるか」を気にしていますが、その程度には個人差があります。
気になり方が強い人と、そうでもない人のちがいは、明らかに存在します。何がその違いを作るのでしょうか。
「見た目」を強く気にする人についていえるのは、多くの場合、批判的な人、心配性の人、過干渉の人がその人の身近にいた、ということです。

水島広子『「見た目」が気になる!症候群主婦と生活社

と、水島先生は「見た目」が気になる「評価」に関する不安は、
周囲の人たちとの関係に起因する、とおっしゃっています。

どんな人にも「プチ・トラウマ」はあるのですが、人によってはそれに満ちた環境で育っているものです(場合によっては本当の「トラウマ」であることもあります)。
身のまわりには「プチ・トラウマ」を与える人しかいない、というような環境すらあります。
そんな環境で育ち、自分のありのままを安心してさらけ出せるような経験をしていないと、当然「他人とは、自分に評価を下して傷つける存在」という認識を深めていきます。
そして、他人から傷つけられることを防ぐため、「見た目」を気にするようになるのです。
また、直接「プチ・トラウマ」を受けるわけではなくても、
「そんなことをしたら人からどう思われるか、よく考えなさい」
という雰囲気の中で育ってきた人は、やはり「他人とは、自分に評価を下して傷つける存在」という認識を身につけていきます。
あるいは
「人から悪く思われないように○○しなさい」
などという干渉も、やはり、「見た目を整えないと悪く思われる」と伝えています。

水島広子『「見た目」が気になる!症候群主婦と生活社

どうも、子どもを取り巻く環境にいた
批判的・心配性・過干渉な人との「プチ・トラウマ」の影響が
「「見た目」が気になる症候群」の根底にあるようです。

養育者が子どもの要求に対して拒否的な態度を示し続ければ、子どもはケアを求める行動を抑制するようになります(これを「回避型アタッチメント」と言います)。
養育者が一貫しない対応をする場合は、子どもはいつまでもぐずるなど、ケアを求める行動をし続けます(「両価型」または「不安定型アタッチメント」と言います)。

宮地尚子トラウマ岩波新書

養育者との関係で培われる「愛着軽視型(拒絶/回避型)」や
「とらわれ型(不安/アンビバレント型)」などの対人関係スタイルが
岡田先生のおっしゃる愛着障害(不安定型愛着スタイル)ですよね。

私たちは、子どものとき、両親には自分にしっかりと関わってくれる能力がないことを察知します。
両親は私たちを物として扱うか、彼らの生き写しとして見なす傾向があることを知ります。
そして、私たちは「自分が悪いからつながりが持てないのだ」と、親が充分な注意を向けてくれないのは自分に原因があると思いこんでしまうのです。
このように、子どもはたいてい自己言及的なものです。うまくいかないことがあると、すべて自分を責めてしまうのです。

エプスタイン『ブッダのサイコセラピー春秋社

疎外感、渇望、空虚感、無価値観に陥り自分は愛されないと感じることを
エプスタインはマイケル・バリントの言葉を引いて
「基底欠損(きていけっそん)」と呼び、
それは特定のトラウマ的出来事であるよりは、
「不在に関する多様な身体的残滓」である、と述べています。
まさに気分変調性障害の人が感じるような
「自分は人間としてどこか欠けている」感覚とソックリですよね。

しかし「気分変調性障害(持続性抑うつ障害)」の場合は、

「自分はダメな人間だ」という思い込みは、うつ病の場合、病気そのものの症状であり、「プチ・トラウマ」の影響をほとんど受けていない人でも、ひとたびうつ病になると、そうした感覚を持ってしまいます。
水島広子『「見た目」が気になる!症候群主婦と生活社

ということですから、何でもかんでも
愛着障害と関係があるのではないようです。
「気分変調性障害」の人の場合、うつ病と同じように
執着気質や同調性をもつメランコリー親和型性格の人が多く、
愛着スタイルは「愛着軽視型(拒絶/回避型)」が多い
という理解の方がよさそうですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
「過食症」の不安に向き合う」というタイトルで、
摂食障害、とくに過食症の本質的な問題は、
「人と人とのつながりをより快適なものに修正」しようとした試みが
食行動異常という症状によって
「孤立という彼女たちがもっとも望まない方向」に
向いてしまっていることを解説しています。

そして対人関係療法による過食症治療では
心のブレーキを外す(不安であっても取り組んでみる)」という
コントロール感(自己効力感)を取り戻していくことが
自己肯定感を高める第一歩になることを書いています。

過食症やむちゃ食い障害の対人関係療法による治療を希望される方は
ぜひ参考にしてみてくださいね。

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2015-06-29

「愛着軽視型(拒絶/回避型)」と自己愛

気分変調性障害に対する対人関係療法の効果』で
「愛着軽視型(拒絶/回避型)」には「コントロール型」「価値下げ型」「理想型」
の3つのサブタイプがあり、このうち「コントロール型」は
執着気質やメランコリー親和性性格と関連し、
「気分変調性障害・中核群」のような特徴をもつことを書きました。

「価値下げ型」は「誇大型の自己愛」と関連しているようで
イソップ寓話の「すっぱいブドウ」のように
親密な関係を希求しながら、それを回避してしまうという
アンビバレントな心の動きとして治療者には感じられます。

この「価値下げ型」で精神科疾患の合併がない場合は
岡田先生が『回避性愛着障害』で書かれている

☆何かに挑戦する
☆モラトリアムの期間を活かす
☆自分が逃げていることに気づく
☆コミットメントする
☆症状に向かい合い、逃げるのをやめる
☆同好の集まりを活用する
☆チャンスに積極的に答え応じる

など「回避傾向」に向き合う必要があるでしょう。
f:id:ipt-therapist:20120208121422j:image:w480
一方、「愛着軽視型(拒絶/回避型)」のうち
自分の価値を下げるような評価を怖れる「理想型」は
「評価への過敏性」という「過敏型の自己愛」の病理がありそうです。

さらに「愛着軽視型(拒絶/回避型)」の「理想型」は
「顔色を読む」という適応で生きてきていますから
「自分自身と折り合えない(自己肯定感の低さ)」に加え
依存的な「過敏性」や未熟な「尊大さ」を合わせもち
「想像上の対人関係(脳内劇場)」による不安が強く過敏で傷つきやすく、
「気分変調性障害」の中ではいちばん多いタイプの
「さまざまな不安を伴う気分変調性障害」のようです。
過食症やむちゃ食い障害でも「理想型」が多くみられます。
(『摂食障害の回復と「評価への過敏性」の2つの次元』参照)

このタイプの「気分変調性障害」を対人関係療法治療する時は
私たち治療者は「安全基地」とか「安心感」という
治療関係の構築を最重視するのです。

対人関係療法治療者が患者さんの代弁者になり
無条件の肯定的関心から出来事と感情に焦点を当てることは、
愛着の観点から言うと、治療者が内在化された安全基地になり
患者さんの自分自身への信頼感を高めていくのです。
精神分析的にいうと鏡映自己対象から理想化自己対象にシフトするということですね)

治療関係で「打ち解けること」を通じて
現実の対人関係、つまり重要な他者との間で
「意見を表現することを尊重される体験」を通じて、
「良い/悪い」のジャッジメントを受けない
「等身大の自己」を許容できるようになっていくプロセスが進んできます。

重要な他者や交友関係に対して、理想化することなく、
欠点も持ち合わせた一人の人間と見ることができるようになり
「空虚感」や「孤立感」が次第に減ってきて、
「〜ねばならない(must)」vs.「〜したい(want)」の葛藤で悩んで動けなかった人が
「〜しよう」と行動へのシフトが促進されるのです。

自分一人でできることと他者が関与することを区別することで
回避的だった「組織・集団と折り合い」に対しても
主体性を持った一人の人間として関わることができるようになります。
(『愛着の問題(愛着スタイル)と自分自身との関係)』参照)

対人関係療法で「気分変調性障害」の治療が難しいと言われるのは
このような愛着に対する視点が前提となるとともに、
治療構造を維持しつつメンタライズする能力が治療者に必要で、
さらに「気分変調性障害」の治療でよく用いられる
治療による役割の変化」という問題領域ではなく
その人に合わせた問題領域の設定が必要になります。

「気分変調性障害の対人関係療法」を希望される方は
大きな臨床的視野と豊富な臨床経験を持つ
治療者を選ぶ必要があるということですよね。

うつの8割に薬は無意味 (朝日新書)

うつの8割に薬は無意味 (朝日新書)

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
「過食症」の「傷つき体験(プチ・トラウマ)」を対人関係療法でなおす」というタイトルで、
対人関係療法による治療では、治療関係という安全基地の中で
「修正安定型の愛着スタイル」への変化が回復の土台になり、
その中で自己効力感や自己肯定感からなる「自尊心」
つまり「自分自身への信頼感」が育つことを書いています。

過去(インナーチャイルド)に焦点を当てず
空想(イマジネーション)に退避するのでもなく
現在の対人関係に集中することで
「断絶された人とのつながりを回復」する
対人関係療法による「過食症」や「むちゃ食い障害」、
「気分変調性障害」の治療を希望される方は
三田こころの健康クリニックに相談してくださいね。

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