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2016-12-05

自尊心という名の落とし穴

クリスティーン・ネフの『セルフ・コンパッション』を読んでいたら

私はすぐに心理学の分野が精神衛生の究極の目標として自尊感情を伴った愛を扱っていないことに気がついた。
自尊感情をテーマに書かれた論文は多く、ナルシシズム(自己愛)、自己陶酔、独善的な怒り、偏見、差別など、高い自尊感情の感覚の獲得と保持をしようとするときに陥る罠について指摘され始めていた。

と書かれていてすごく驚きました。

摂食障害と関連があるといわれている「自尊心」「自己肯定感」について
この本から少し紹介しますね。
(『自尊心から自己受容へ』『過食症の「自己批判」と回復に必要な「自己受容」』も参照してくださいね)

この本に「自尊心ゲームからの脱却」という章があり、
フロリダ州立大学のロイ・バウマイスター教授の論文が紹介されています。

高い自尊心は学業成績や職場での業績、リーダーシップ能力を高めることなく、子どもの喫煙や飲酒ドラッグの使用、成功勝率を下げることはない。
どちらかと言えば、自尊心が高いことは健全な行動の原因ではなく結果である。

つまり「自尊心」が低いから摂食障害になるのではなく、
摂食障害行動によって「自尊心」が低くなる、ということなのです。
(『過食や過食嘔吐の混乱と迷妄から回復する』参照)

そもそも「自尊心(=自己肯定感)」の本質は、自分自身の価値に対する評価であり、
自分が善良で価値のある人間だという判断に根ざしている、とされていて、
「鏡に映る自己」からうまれるとされています。

自己を写し出す「鏡」の1つは「他者の目からの評価」で、
親しい友人や家族からではなく、
自分のことをよく知らない他人からの判断に強い影響を受ける
ことが明らかになっています。
まさに対人関係療法であつかう「評価への過敏性」ですよね。

「自尊心(=自己肯定感)」を高める方法として

  • 上手くできることを高く評価し、下手なことを低く評価すること(優越感を抱くために価値のある技術を学ぶ重要性を低下させる発達を阻害する可能性がある)
  • 重要だと考える領域の能力を高めること(体重や体型に価値を見いだし努力することは空腹や苛立ち、落胆を経験する)

とされています。

「自尊心(=自己肯定感)」が高いということは
他者と比較して自分が優れていると考えることの結果であって、
自己の過大評価や見栄、他者の見下し(差別)からなる
ナルシシズム(自己愛)という「鏡」であって、現実を反映したものではない
ということなのです。
(『摂食障害の強迫性と自己愛』参照)

セルフ・コンパッション』にはこうあります。

少なくとも1つ、高い自尊心には重要な利点があることは確かである。
それは幸福である。
自分のことが好きな人は快活になり、自分のことが嫌いな人は抑うつ的になる。
このような気分の状態は、一般的に自らの人生に対する感情に影響を与える。
(中略)
幸福は良い人生を送る上で重要な特徴であるため、幸福を養うことは有意義なことである。
しかし、高い自尊心によって一次的に得られる幸福のために支払われた代償は大きくなる可能性がある。

つまり、「自尊心」や「自己肯定感」を高めようとするやり方によっては、
正反対の結果がもたらされる可能性が高いということです。

それはここで扱われている「自尊心」「自己肯定感」が、
周囲の状況に対する自己中心的な解釈であり、
同時に、意識せずにそれを抑圧しているために
目の前の問題に真摯に向き合うことを妨げ、
一時的な効果しか得られない(代償は大きい)のでしょう。

セルフ・コンパッション』に面白い話が載っていました。

自尊心の高い人は侮辱されたと感じた際に他者に対して激しく非難することが多い。
たとえば、ある研究では大学生に知能検査の結果が平均以下であったことが告げられた。
自尊心の高い人は他の実験参加者を侮辱して見下すことでその事実を補償する傾向があった。
一方、自尊心の低い人はより好かれようとして他の実験参加者を褒めようとする傾向があった。
職場で1年間の勤務評価が出されたとき、あなたはどちらと一緒に時間を過ごしたいと思うだろうか。

「自尊心」「自己肯定感」が低いと感じていらっしゃる方、
摂食障害」や「気分変調性障害(持続性抑うつ障害)」の方、
あるいは愛着の問題を抱えていらっしゃる方はちょっと考えてみてくださいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食や過食嘔吐の混乱と迷妄から回復する」というタイトルで、
一般向けの、あるいは専門家向けの本にもほとんど書かれていない
摂食障害過食症やむちゃ食い症)」という病気の進展の仕方と
混乱や迷妄の段階に至っても回復は可能であることを解説しています。

その最初のステップとして、『8つの秘訣』にある
「回復への動機、忍耐、そして希望」が必要なことと
「自分の中の摂食障害の部分を癒すのは健康な部分」であることを
ちょっと詳しく書いてみました。

大切なことは摂食障害の部分を病気として敵対することではなく
自分の心の一部と認めること、健康な部分を見いだしていくこと
そして摂食障害の部分と健康な部分を調和(和解)していくことです。
これが自己受容の中心の柱の1つのセルフ・コンパッションにつながります。

三田こころの健康クリニックでは対人関係療法を専門に行いますが
自分自身との関係の調和も対人関係と考えているので
過食や過食嘔吐を治療したいと考えていらっしゃる方は
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2016-11-28

摂食障害の治療で感情に焦点を当てるわけ

摂食障害の患者さんは拒食症から過食症と変化するけど、同じ一人の患者さんなのに病期や病態によってエビデンスのある治療法が変わるのはなぜなのでしょうか?

と、ある先生からするどい質問を受けたことがあるんですよ。

摂食障害の精神療法のエビデンス』で紹介したように
BMI:14以下は栄養療法などの身体的治療
BMI:16までは食物摂取と栄養改善
「神経性やせ症/拒食症」は、小児期から思春期までは家族療法
思春期以降は支持的精神療法もしくは認知行動療法
「神経性過食症」や「むちゃ食い症」では
認知行動療法、対人関係療法、家族療法などで
エビデンスが認められていますよね。

摂食障害と一括りにされる疾患群の中でも
拒食で発症する場合と、過食で発症する場合は
典型的な経過が異なることはほとんど知られていないですよね。

拒食症系では、制限型の拒食症で発症し、過食型に移行し、
嘔吐などの排出行動を示し、低体重で推移するのが典型的です。
その他、制限型拒食症で発症するものの比較的短期間で回復する予後の良いタイプや、
制限型の拒食症のまま慢性経過をとる場合や、
体重が戻り、過食症(排出行動あり)に移行し長い経過をとるタイプなどがあります。

過食症系では、過食で発症し排出行動を伴い慢性化するタイプがもっとも典型的といわれます。
過食で発症するものの、排出行動を生じず、一過性でよくなるタイプ、
過食症(排出型)で発症し、しだいに嘔吐がなくなってむちゃ食い症に移行するタイプ、
過食で発症し、排出行動をくり返し低体重となり
過食排出型の拒食症に移行するタイプなどが知られています。

これまでは自己誘発嘔吐を繰り返すタイプは少ないと言われていましたが
最近ではこのタイプがもっとも多いようです。

過食前から自己誘発嘔吐があり、過食を伴うようになり
低体重と認知機能の障害が顕著になってくる
排出性障害」がこのような経過をとります。
過食症(自己誘発嘔吐を伴うタイプ)や過食排出型の拒食症との鑑別は
「排出性障害」の要素をもつ人は、嘔吐のため大量の水分を摂取します。

さて上記の先生の質問は、たとえば思春期早期に拒食症を発症し
BMI:14以下になった患者さんに対して、栄養療法と家族療法、
そして体重が戻ってきたら認知行動療法、
過食になれば対人関係療法と、一人の患者さんなのに
病期や病態・病像によって治療法の効果が異なるのはなぜか?
という質問だったのです。

その患者さんにとって最も最適な治療法を選ぶという
対人関係療法で最重視する鑑別治療学しか頭になかった私には
とても新鮮な質問でした。

考えてみると、感情耐性や感情体験の回避など
感情調節困難への対処として食行動を用いるというのが
摂食障害の根底にあることは周知の事実ですよね。

感情の麻痺、感情の回避、感情の鎮静化の対処法として摂食障害を考えると
拒食に伴う空腹は感情を麻痺させ、過食は感情をなだめ、
嘔吐は安心をもたらす
という対処法として用いられていますよね。

拒食期には、感情に対し抑制的であり、
過剰に制限された感情しか示すことができませんから
家族一丸となったサポートで感情表出を促したり、
あるいは思考プロセスに目を向ける認知行動療法で
感情の知覚の仕方が変化するのかもしれません。

また過食の原動力となる不安やイライラなどの感情は
耐えがたく自分ではコントロールできないので、
感じないようにするための過食や嘔吐などに対して、
感情を回避したり逃避したりの方略を用いることなく
言葉やコミュニケーションを介して表現する対人関係療法
感情と向き合う姿勢が変わるのです。

つまり、同じ患者さんの病期や病態によって治療が異なるのは
感情に対する対処行動(抑圧や回避行動)に差があるからであり。
さまざまな治療法が目指すのは、摂食障害の根底にある、
恐怖や寂しさ、恥といった中核的な感情に接近し、
その感情を変容させることなのです。

食べ物で自分を麻痺させるのではなく、自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる、つまり自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善できれば、ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになるでしょう。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法創元社

ということなのですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
『「過食のエネルギーは「イライラ」と「不安(心配)」」というタイトルで、
過食症やむちゃ食い症の最近の傾向として
過食の原動力であった怒りや罪悪感が乏しくなり、
拒食期を経ずに過食やむちゃ食いを発症する人がほとんどで
そのため、過食のエネルギーは心配性の発現である
「イライラ」と「不安(心配)」に変わってきていることを説明しました。

今日の過食系の摂食障害の特徴として
誰しも感じるイライラや心配を抱えられないことで
苦痛な感情がなくても摂食障害行動が習慣化しやすいことが挙げられます。

そのため、対人関係療法で焦点を当てるような
重要な他者との関係と症状が関連していないことがほとんどで、
むしろ、社会や集団の中での生きづらさ(不適応感)が
症状を引き起こしていることがほとんどなのです。

三田こころの健康クリニックでは、このような摂食障害に対して
対人関係療法と『8つの秘訣』を組み合わせて
他人や出来事に対する「とらえ方」の変容し
感情との向き合い方など行動パターンの修正することで、
自分の中の健康な部分に触れること(修正感情体験)で
摂食障害治療を行っているのですよ。

摂食障害を治したいと考えていらっしゃる方は、
三田こころの健康クリニックに相談してくださいね。

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2016-11-21

ネガティブな解釈と感情との向き合い方

アタッチメントの治療の話も一段落しました。
また新しい知見があれば、解説を書きますのでお楽しみに♪

アタッチメントの治療だけでなく、慢性抑うつ障害や
過食症治療にも関連する、「心的等価モード」、
つまり心で思ったことがそのまま外的現実であるという体験の仕方から
複数の見方がありうるという前提で判断や解釈ができるようになることが
治療の第一歩になることについて、2つのヴィネットを創作してみました。
(心的等価モードについては『青年期・成人期のアタッチメントの治療』参照)

私たちの気分を悪くするのは、他人や出来事そのものではない。
それに対する自分のとらえ方である。
水島広子『怖れを手放す星和書店

について「観察ー判断/解釈ー反応」の連鎖を理解して欲しい、というのがその理由です。

ありそうなシチュエーションその1です。

親に対して、あるものを買ってきて欲しいとお願いしていました。
もう買ってくれたかな?と思い電話をかけてみると、親は他の用事を先に済ませていたところでした。

「なんでまだ買ってくれてないのよ〜!もぅっ!!」と腹を立てると、
親も「だってね、こういう理由があって」と必死になって言い訳をしてきました。
それがますます気に入らず、
「私のお願いなんて、どうでもいいと思ってるでしょっ!」
「そんなことないよ。これから買いに行こうと思ってたんだから待っててね。」
そういわれても腹の虫が治まらず
「もういいっ!いらないっ!!」
と電話で叫んでしまいました。

また別のありそうなシチュエーションその2です。

友人に知り合いのエステの店長を紹介してあげました。
ところが、その日の夜にエステの店長から電話がかかってきて、
「あの方がいらっしゃったけど、どういうところかもわからずにいらっしゃったみたいで、何をして欲しいとおっしゃってたの?」
と言われました。

友人のためによかれと思ってエステを紹介したのに、
紹介した先の店長から文句を言われたと感じてしまい
自分は対人関係が下手なんだ、人のためにできることなんて一つもないんだと
暗澹たる気持ちになって、朝も起きることができなくなってしまいました。

この2つに似たような体験をされた方も多いのではないでしょうか?

ありそうなシチュエーションその1では、
「なんでまだ買ってくれてないのよ〜」という言葉の裏に
「(あんたは)私の依頼を優先して買い物をすべきだ」の
「ねばならない」と「あなた=親」の決めつけがありますよね。

本当は自分の依頼を優先して欲しかったのかもしれません。
願いがが満たされなかった淋しさや切なさがいつの間にか
相手(親)の言動が自分の気分を悪くした、害したと
相手(親)に責任を転嫁した怒りの表現になっていますよね。

さらに怒りにまかせて「もういいっ!いらないっ!!」と叫ぶことで
本当は欲しかったものが手に入らないだけでなく、
願いが後回しにされた淋しさや切なささえも
相手(親)に伝わらない、わかってもらえないことになってしまいますよね。

ありそうなシチュエーションその2では、
「何をして欲しいとおっしゃってたの?」という質問を
「問い詰められた」「文句を言われた」と判断・解釈したことで
自己非難から自己嫌悪に陥ってしまっていますよね。

紹介した友人にも紹介先のエステのオーナーにも
「自分はよく思われるべき」との考えが背景にあり、
それが満たされないと解釈したことによる切なさが
自分に対する怒りや非難として表れているようです。

この2つのシチュエーションでは
他者視点での現実の認識の仕方が欠如していて、
判断や解釈があたかも現実であるかのように反応していることが
共通する問題になっていますよね。

その1で、もしあなたが他に大切な用事があるときに
他者から、ついでにこれもお願いね、と依頼されたらどうしますか?
緊急度と重要度を検討して、自分の大切な用事から先に済ませますよね。

その2で、もしあなたが紹介されたエステのオーナーだったらどうしますか?
紹介者の顔を立てるためにも、お客さんのニーズを引き出そうとしますよね。
でもその友人がエステの必要性を理解してなかったら、
オーナーであるあなたは紹介者に直接聞いてみようと考えますよね。

自分自身の判断や解釈を現実だと思い込んで真に受けるのではなく、
自分と他者の精神状態に注意を向けながら
それらを意味づけする試みを粘り強く行うことで、
しだいに自分や他者を含む表象を客観視できるようになり、
少しずつ、自己への囚われから抜け出せそうですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
『「摂食障害症状の意味」というタイトルで、
拒食や過食、あるいは過食嘔吐などの摂食障害症状が
心にとってどんな役割を果たしているのかを説明しています。

摂食障害症状を心の痛みを反映した代理症状として理解できれば
過食や自己誘発嘔吐をガマンすることや薬で対処することは
根本的な治療につながらないことがわかりますよね。

摂食障害の根本的な治療は、
食物制限による空腹は気持ちを麻痺させ、
過食やむちゃ食いは、ネガティブな気持ちをなだめ、
嘔吐することで安堵をもたらす
ため、
食物を使って感じないようにしようとしている心の動きは何なのか
「自分の気持ちをよく振り返る」ことです。

三田こころの健康クリニックで摂食障害治療として行っている
対人関係療法や『8つの秘訣』で取り組んでいくことは
自分で自分の心の中と向き合う「自分との折り合い」と
ストレスだと捉えていた「周囲の人との折り合い」であり、
そのために、「観察・解釈/判断・反応」のプロセスを理解することです。

摂食障害を治したいと考えていらっしゃる方は、
三田こころの健康クリニックに相談してくださいね。

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2016-11-14

青年期・成人期のアタッチメントの治療

成人のアタッチメントは自分自身を守る」
「信頼でき、愛情ある生殖のパートナーを選択する」
「パートナーと子どもたちを守る」
「自分の子どもたちの発達を促進する」という
「二者関係」と「集団(家族や社会)関係」の拡張というテーマの中で
世代性 vs. 停滞性」という課題に向き合うことになります。

配偶者とは対称的で互恵的なアタッチメント関係を築き、
子どもに対しては、アタッチメント対象として
非対称的で非互恵的な関係になります。

両親との関係は、対称的で互恵的であるものの役割の逆転が起きます。
ですから青年期以降のアタッチメントの修復で
子供かえり(悪性退行)が起きることはありえないのです。

幼年期に両親との間に安定した愛着関係を築けなかったとしても
あるいは不安定な愛着スタイルであったとしても
思春期、青年期、成人期までの一連の発達段階で
「集団との関わり」を通して「自分との関係(…としての自分)」に向き合い
自己受容と価値や目的の創造、それにもとづいた行動を育んできたはずです。

養育者から自立していく中で、新たなアタッチメント対象である
パートナーとの二者関係を築き、次世代の世話が一段落すると
今度は自分自身の内面を深めるプロセスに移行していきます。
回避型愛着スタイルの人は、この変化の時期に
メランコリー型のうつ病を発症することも多いのです。

さて、成人のアタッチメントが適応的であるということは
Bタイプ(安定型)になるということではないのですよ。
過去の体験がどうだったかということではなく、
その体験に対する現在のかかわり方をどのように語るかというナラティブであり、
それに向き合う心の態度とそのプロセスが統合されることなのです。

アタッチメントの修正統合には
「作業記憶(内的作業モデル)の再構成」と「自分と他者に対する内省」、
「自分・他者・社会に対する内省の統合」の3つのプロセス
が必要です。

「作業記憶(内的作業モデル)の再構成」は
「表象的理解」によって、その体験の意味づけが変化していく
つまり、別のとらえ方ができるようになることを進めていきます。

乳幼児期のアタッチメントの発達』でちょっとだけ触れたように
同一の愛着対象に関して、複数の愛着パターンが存在している場合があります。
たとえば、回避型の人が安定型に移行する際に、
覆い隠されていた「承認欲求」や不満・怒りなどの葛藤が表面化し、
一時的にアンビヴァレント型のような状態が出現することがあります。

このプロセスでは、心の中で起きている記憶想起(内的現実)と
目の前の他者(多くの場合、親やパートナー)との関係の外的現実を
同居させることができるようになる心の態度を培っていくことになります。
対人関係療法的にいうと「期待の整理」を行っていくということですね。

ところが、児童期の不活発、思春期の役割拒否、青年期の排他性などで
発達段階の課題を達成できていないなど、対人学習が乏しかったりすると、
自分の体験を精神的なプロセスとして意味づけることができず
筋の通ったナラティブとして首尾一貫した形で語ることが困難になります。

過去のことなのに、現在のことであるかのような情動を伴う記憶想起により
親への怒りや非難に終始し、「…だからできない」と自己非難をくり返し
タイムスリップの中に囚われることを、「心的等価モード」と呼びます。

たとえば映画をみているときに、スクリーンの上を踊る光の粒子と
そこで演じられている演技だという外的な現実を理解しながら
ストーリーがあたかもホンモノであるかのように内的現実では体験しますよね。

自分の精神状態を心的表象として理解すること(内省)ができないと、
内的現実(心で思ったこと)と外的現実の区別ができず、
他のとらえ方があると思えないのです。
複数のとらえ方の模索ができるようになってからでないと
アタッチメントの獲得修正を進められないのです。

「心的等価モード」にある人の場合は
体験に対して共同で注意を向け意味づけを促してもなかなか進みません。
それどころか、「心的等価モード」にある人の場合は
治療者が言葉で意味づけをすることを否定されたように感じるので、
「承認欲求」の病理が明らかになってくる場合もあるのです。

ですから、まず、

私たちの気分を悪くするのは他人や出来事そのものではない。
それに対する自分のとらえ方である。
とらえ方を決めるのは自分の心の姿勢である。

水島広子『怖れを手放す星和書店

という外的現実と内的現実の違いを理解できるようになり、
「観察(外的現実)・解釈(考え)・反応(気持ち)・期待」を自覚する
自己内対話的な内省のすすめ方を身につけることによって、
「主語(主体としての体験)」に注目できるようになることが
獲得安定型の愛着スタイルを培っていく過程になるのですよ。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
過食症の「自己批判」と回復に必要な「自己受容」」というタイトルで、
20回未満の対人関係療法治療
過食や過食嘔吐が消失した患者さんたちに共通する特徴である

(1) クロニンジャーの七因子のうち「自己志向」が高まっている。
(2) 自分の目的が明確になり、周りの人とのつながりが感じられている。
(3) 自分の考えや気持ち、感覚への気づきが高まり、自分に優しくできている。

について、「自己志向」と「協調性」を解説しました。

これは三田こころの健康クリニックでは初診時に
診断とともに治療の方向性を考えるときに説明している内容ですよね。

私にとっては充分に驚くべきことなのですが、
三田こころの健康クリニックを受診されたほとんどの方が
これまで診断や治療方針の説明を受けたことがないとおっしゃいます。

過去三十年間に精神科の薬は、私たちの文化にとって不可欠になったが、その結果は心もとない。
抗うつ薬の場合について考えてほしい。
もし私たちが思い込まされているほど抗うつ薬が有効なら、うつ病は私たちの社会では今ごろ些細な問題でしかなくなっていたはずだ。
ところが、抗うつ薬の使用は増え続けているというのに、うつ病の入院患者はへってはいない。
抑うつ状態を改善するために治療を受ける人の数は過去二十年間に三倍になり、今やアメリカ人の十人に一人が抗うつ薬を服用している。

ベッセル・ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する紀伊國屋書店

単極性うつ病治療ガイドラインでは、
軽度の抑うつ症状では抗うつ薬を使用する必要が乏しい
と述べられています。
逆に抗うつ薬を服用することで遷延化することも指摘されています。

通院中だけどなかなか良くならないと感じていらっしゃる方は
診断と治療方針について、三田こころの健康クリニックで
セカンドオピニオンを受けてみることをお勧めします。

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2016-11-07

青年期(成人期前期)のアタッチメント

DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』で
心的外傷およびストレス因関連障害群の中の
「反応性アタッチメント障害」の頁には、以下のような記載があります。

反応性アタッチメント障害の有病率は不明だが、この障害に臨床場面で出会うことは比較的まれである。
この障害は、里親のもとにおかれるか施設で育てられる前に重度のネグレクトに曝露された小さい子どもでみられる。
しかし、重度のネグレクトを受けた子どもの母集団の中でさえこの障害は一般的でなく、そのような子どもの10%未満にしか生じない。
(中略)
深刻な社会的ネグレクトは反応性アタッチメント障害の診断要件の1つであり、その障害の唯一既知の危険要因である。
しかし、重度のネグレクトを受けた子どもの大多数はこの障害を呈さない。

ところがあるサイトでは

大人でも子供でも3人に1人が何らかの愛着障害を抱えているかもしれないという事実はこの問題の大きさを静かに訴えています。

と書いてあるのです!。

重度のネグレクトを受けた子どもの10%未満にしか生じないはずの
反応性アタッチメント障害が、3人に1人というのは
別の状態をアタッチメント障害と見誤っている可能性があるようです。
(DSM−5では自閉症スペクトラム症が鑑別診断としてあげられています)

さらにDSM−5では

反応性アタッチメント障害は年長の子どもにも生じるのか、もしそうであれば年少の子どもにおける症状とどのように違うのかについては明らかでない。
そのため5歳を超える子どもにおいては診断に注意を要する。

と5歳以上の子どもを「反応性アタッチメント障害」と診断することに
注意を喚起しています。
愛着障害という診断名(あるいは呼び方)は
学童期以降の思春期・青年期、成人期の診断としては不適切
なのです。

一般向けの書籍ネット上のサイトに書いてある
愛着(アタッチメント)の解説は、
アタッチメントが成長とともに発達変化することはまったく触れてなくて、
乳幼児期のアタッチメントパターンのまま
思春期・青年期、そして成人になっていくような
まるで発達が止まったままのイメージで書かれています。

そのため、いまだに幼少期の親との関係に問題があったと
現在の精神病理を乳幼児期の状態に関連づけて説明されていることがあります。

現在の状態を過去が原因と説明することは侵襲的に作用することがあり、
過去の回想が記憶の錯誤(偽りの記憶)を誘導する危険性があるため、
過去の親子関係の再現を促したり、退行を誘発する治療(?)は危険が伴います。

そもそもアタッチメントの修復では発達の最接近領域から始めるので、
たとえば幼稚園の頃の出来事の記憶が今の対人関係に影響を与えていることがわかれば、
その出来事を表象的に理解することによって、体験の意味づけが変わり、
別のとらえ方ができるようになる
「作業記憶(内的作業モデル)の再構成」が起きることが目標になります。

心の中の出来事(投影や転移)として過去の親子関係を想起しますが、
現実の対人関係に再演されたり、退行したりすることはないのです。
(それが起きるのは治療関係に問題があることが多いといわれています)

さて青年期(成人期前期)の不安定型アタッチメントスタイルは
夫婦あるいは恋愛パートナーとの関係で問題になってきます。
この時期は、「二者関係」の拡張の時期であり、
恋愛パートナーとの関係が対称的で互恵的になっていくことがテーマになります。
この時期の発達課題は「親密性 vs. 孤独」と表現されますよね。

アタッチメントスタイルは特定の文脈での脅威に対し
それを減弱する適応的なパターンとして身につけたものです。
たとえば、Aタイプ(回避型)は、逆境に順応し
否定的な情動や意図の表出を抑制することで、
表面上、アタッチメント対象が望むことに合わせようとします。

逆にCタイプ(アンビバレント型)は随伴性を変化させることで
アタッチメント対象の振る舞いに応じて自分の行動を変化させます。
これらのアタッチメントは応答が不十分な母親から保護され
慰められる確立を高める、非常に適応的なパターンだったのです。

そのため青年期から成人期初期のパートナーとの関係は
自分のアタッチメントスタイルと補完的な相手を選ぶことが多く、
男性は自分の母親に似た女性を選び、
女性は自分の父親に似た男性に惹かれるという俗説は
アタッチメントからみると、あながち間違いでもなさそうですよね。

問題は特定の文脈の脅威がないにも関わらず、
慣れ親しんだパターンが無意識的に繰り返されてしまうこと

現在の対人関係(夫婦あるいはパートナー関係)に困難をもたらしていることを
どう変化させていけばいいか、ということなのですよね。

次回はいよいよ思春期以降、青年期から成人期の
アタッチメントの治療について解説しますね。

とにかくやってみよう──不安や迷いが自信と行動に変わる思考法

とにかくやってみよう──不安や迷いが自信と行動に変わる思考法

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
大切な相手に病気のことを伝える」というタイトルで、
「「伝える」行動を邪魔している考えは何か?を知る」こと、
「思考を現実と思ってしまう心の働き(脳内劇場)」を見つける
「自己対話」のプロセスが大切なことを書いています。

摂食障害治療では、「健康な部分」と「摂食障害の部分」の闘いに気づく
自分自身を観察する視点を育むことが何よりもまして大切なのです。

これは自分が自分自身の「安全基地(セキュア・ベース)」になるということで、
アタッチメントの修復を行うときも、自分に対する優しさ(自慈心)の土台になりますし、
他者とのコミュニケーションに取り組むときにも大切な視点になります。

三田こころの健康クリニックでは、自分自身との関係を調和し、
他者との関係を改善していく対人関係療法によって、
過食症」や「むちゃ食い症」、「慢性の抑うつ状態」や「アタッチメントの治療
「休職を繰り返している方の復職支援」も行っています。

通院しているけど薬を出されるだけで良くならないと感じている方は
三田こころの健康クリニックに相談してくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2016-10-31

思春期・青年期のアタッチメント

思春期は、人生初期のアタッチメントが弱まり、新しい人に取って代わる時期である。
こうしたアタッチメントの移行が妨害されると、うつ病につながりかねない。
両親とのアタッチメントを残したままで、新たに友人たちとの対人関係を始め、拡げようとするなかで、両親と子どもとの間に多くの葛藤が生じる。

マフソン『思春期うつ病の対人関係療法創元社

思春期・青年期にはアタッチメント関係の変化だけでなく、
複数の複雑な生物学的・心理的・社会的変化が起きます。
その一つが、脳の中でシナプス(神経接合)の形成が再び盛んになり、
不要な神経連絡が削ぎ落とされる刈り込みがおきることです。

そのため前頭前野により実施される機能が不安定になり、
ストレスを受けると機能不全になる場合があります。
このことは昔から「思春期危機」と呼ばれていました。

これまでの精神分析的・心理学的な理論では、思春期になると「思春期危機」と言われる葛藤が生じるため、必ずうつになる時期があるとされてきた。
(中略)
こうした思春期の特徴をG・スタンレー・ホールは「疾風怒濤」と名づけけた。
(中略)
思春期には、一時期、寂しくなったり、友人から遠ざかったり、家族や教師との間に葛藤を生じたりするものであるが、ほとんどの場合、それが長く続いたり、日常生活に差し障りがでたりすることはないのである。

マフソン『思春期うつ病の対人関係療法創元社

「使うか、なくすか」のシナプス再形成によって
思春期以前には実感されなかった潜在的な神経系の欠損、
自閉症スペクトラム(発達障害)などの生来的な脆弱性が顕在化することで
日常生活に差し障るほどの状態が起きてくるということです。
(『アタッチメントと生まれつきの要因』参照)

たとえば、ひと昔前まで、摂食障害は育てられ方や
親の対応の仕方が問題で発症すると考えられてきました。
しかしクルンプ(Klump)らが行った摂食障害の双生児研究では
思春期を過ぎると生育環境要因の関与が減ってきて、
個別環境要因(学校や交友関係など外の世界との関係)や
遺伝的要因の関与が大きくなる(50〜80%)と報告されています。

思春期には「自分との関係」「二者関係」「集団との関係」の
固有性の確立という「アイデンティティ(自我同一性)」がテーマになるため
自分が持って生まれた遺伝的素因(自分との関係)や
交友関係(二者関係)や集団との関係などの個別環境要因が
大きく関与してくるのです。

その一方で、両親とのアタッチメントは
非互恵性(親の庇護と監督の必要性)は徐々に減少しつつ
対称性(対等の立場=自立)をめぐる争いが始まり、第二反抗期と呼ばれます。

同時に学童期から思春期には
対称的で非互恵的な親友とのコンパニオンシップの展開とともに
恋愛パートナーとの関係が徐々に
対称的で互恵的に変化していく時期でもありますよね。

あるサイト

愛着障害の克服には不足している愛情を取り戻すことが関係しています。
ある意味、子供の頃からやり直すことによって修復することができます。
実際、愛着障害を抱えた人が回復していく過程において、幼いころの状態や問題を順次再現しながら、児童期→思春期→青年期の段階と、成長してゆく様子が見られることがあります。
たとえば、愛着障害の人がよくなっていくプロセスで「母親と一緒に布団を並べて寝たい」とか「抱っこをしてほしい」といったことを言い出すことがあります。
また、幼い子供に戻ったかのような様子、ままごと遊びや、絵本、駄々をこねたり、わがままを言ったりして、親を困らせたりするかもしれません。
幼いころの心理状態が呼び起こされて、そのとき得ることができなかった愛情を現在与えてもらうことにより、修復しようとしているかのようです。
愛着障害の改善にはこういった不足を埋め合わせようとする状態が出現することが必要です。
そういった状態は普通にみれば気持ち悪く、すっかり後退したように見えるかもしれません。
何が起きているのかわからない人にはただの「悪化」にしか思えないかもしれないその状態は、分かる人からすれば回復のための重要な段階なのです。

と「退行(子ども返り)」を勧めるやり方が書いてあり
あまりのいい加減さに驚きました!!

アタッチメントの治療では、独力での問題解決を指標にした実際の発達レベルと
援助による問題解決を指標にした可能性としての発達レベルに挟まれた
「発達の最近接領域」から始めるのです。
子ども返りが起きることはあり得ず、もし起きたとしたら、
心的表象が現実的になりすぎていて(心的等価)現実から遊離しているということで、
治療がうまくいっていない証左なのです。

専門家ではない人が書いたサイトも多いようですから
成書などでしっかり勉強してから情報を発信してほしいと思います。

アタッチメントは上下関係、力関係ですから、
思春期以降のアタッチメントの修復で退行が起きるのは、
その関係を何らかの利益のために用いているからで
治療における退行は治療に有益ではないとフロイトも断言しています。
(『愛着(アタッチメント)の意味』参照)

アタッチメント理論では重要な他者との相互関係のパターンを探り、それらのパターンが他の人との関係でどのように繰り返され、どのように対人関係に困難をもたらし、特定のライフイベントに対してどのような反応として現れるかを重視するが、IPT(対人関係療法)はその流れを汲んでいる。
これはクライエントにこれまでとは違ったコミュニケーションや交流の方法を教え、対人関係の情緒的体験を変えるという同じ目標につながる。

マフソン『思春期うつ病の対人関係療法創元社

思春期以降のアタッチメントの修復プロセスでは、
今の発達の近接段階の問題から始めて、作業記憶の再構成(ナラティブ化)、
自分自身の内省と他者についての内省(他者をどうとらえているか)とともに
外的現実と内的に知覚されている問題を扱い、
覚醒度の違い(心地よさと警戒)を明確にしながら
新たな経験を積んでいくということになるのですよ。

人と接するのがつらい―人間関係の自我心理学 (文春新書 (074))

人と接するのがつらい―人間関係の自我心理学 (文春新書 (074))

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害にではなく人々に助けを求めよう」というタイトルで
8つの秘訣』で他者との関係が「秘訣7」と後のほうにある理由について
対人関係療法のすすめ方との関係を説明しました。

過食症やむちゃ食い症の治療で、患者さんによっては
ライフチャートを書いてもらうことがあるように
作業記憶の再構成、自分の気持ちをよくふり返る「内省」をすすめ
そこから、他者をどう捉えているかを自覚する必要があることは
アタッチメントの修復プロセスと重複する部分が多いですよね。

自分の中の健康な部分をつかって、他の人を頼り、自分自身をも頼って、
健康なバランスを維持していくことが
対人関係療法による過食症やむちゃ食い症の治療
8つの秘訣』による治療のすすめ方と共通するのです。
三田こころの健康クリニックで対人関係療法とあわせて
8つの秘訣』を勧めているのはこのような理由からなのですよ。

肌寒い季節を迎え、過食がひどくなる時期になりました。
過食症」「むちゃ食い症」の治療を希望される方は
8つの秘訣』に取り組み始めておいていただくと
治療導入がスムーズになりますから、
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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2016-10-24

学童期のアタッチメントと身体化

アタッチメントは「保護する−保護される」という
力の強さを背景にした、非対称的で非互恵的な上下関係ですが
学童期には、両親とのアタッチメントの影響が減少すると同時に
友人とのアタッチメント(コンパニオンシップ)が発達します。

コンパニオンシップは、対称的ですが互恵的ではなく、
仲間集団の中で、受け入れと拒絶、リーダーシップと人気など
さまざまな葛藤を経験し、親友との協調を築いていく段階になります。

集団との関係で、自閉症スペクトラム(発達障害)と
不安定型アタッチメントが区別されます。
自閉症スペクトラム(発達障害)の子どもは、
幼児期からひとり遊びを好み、集団行動が苦手ですよね。
虐待やネグレクトを受けたわけではないけれども
学校の低〜中学年で不適応を起こしたことがあるのなら、
自閉症スペクトラム(発達障害)の方が疑わしいですよね。

一方、不安定型アタッチメントの子どもは
幼児期から「自律性/自主性」の課題に「恥・疑惑/罪悪感」を抱え
自分との関係に揺らぎを感じています。

学童期には自分自身をふり返る内省機能が発達しますし
自分と他人の違いもわかるようになりますから、
「勤勉性」に関して自分と他者を比較し「劣等感」を感じやすく、
集団の中で居場所感を感じられないこともありますよね。

学童期には、まだ両親の庇護が必要な時期であることには変わりないので、
自己に対するサポートや安心や慰めを求め両親のもとに戻ります。
これがのちに「承認」にまつわる問題に関わってくることになります。

たとえば、
「いけないとわかっているのに、なぜそんなことをしたのっ?!」
というダブル・バインドの叱られ方に対し、
Aタイプ(回避型)の子どもの親は正しい答を要求するため
子どもは自分の感情を偽り否定的な注目や両親の怒りを回避するために
嘘をつくようになります。

一方、Cタイプ(アンビバレント型)の子どもの親は
子どもの情動表出に騙されやすく、子どもは欺くことを覚えます。
このタイプの子どもの両親は極端ではないものの
感受性と思いやりに乏しいため、子どもの反応が
両親を子どもに対してより敏感にさせることに役立っています。

ときどき、「家庭内が情緒的交流に乏しかった」とか
「他の兄弟に両親の注目が集まっていた」から
自分は感情的に孤立するようになったといわれることがありますが
子どもにとってアタッチメントは生き延びるための方略であり
不安定型のアタッチメントであっても当時は適応的だった
という視点を押さえておく必要があります。

加えて学童期には、学校に行きたくない。などのネガティブな思考や感情が
腹痛や嘔吐喘息など身体症状として表現されることがあります。

たとえば、喘息アトピー性皮膚炎は
生物学的な脆弱性(アレルギー素因)はあるものの
過剰な心配症の親との二者関係、あるいは
家族関係の文脈で意味を持つことが多いのですが
アイデンティティの確立がテーマになる思春期に
消失することがあるのもこのためです。

たとえば、Bタイプ(安定型)の子どもの喘息
予期していなかった不安を誘発する脅威に対する反応で
あたかもパニック発作のような意味を持ちます。

Aタイプでは禁じられた思考や否定的感情の身体表現
としての意味を持ちますし
Cタイプでは自分に対する他者の反応を調整する手段
としての意味を持ちます。

この考え方は、摂食障害対人関係療法による治療でも
問題領域として治療焦点になりますよね。

青年期から成人期に抑うつ状態の前駆症状として
腹痛や頭痛嘔吐や背中の痛み、全身の痒みなど
身体的な症状として表現される時には
その症状が自分との関係、二者関係、集団との関係の
どの関係性の反映なのかを考えてみる必要もありそうですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
慣れ親しんだ考え方や考え方のパターンに気づいていく」というタイトルで
「衝動の波に乗る」「自分自身をふり返る」プロセスを説明しています。

解釈に基づく「考え」を現実だと考えて巻き込まれたままでは
考えに対する反応である「気持ち」を避けようとしてしまい
「自分のまわりの状況に変化を起こす」ことが難しくなりますよね。

三田こころの健康クリニックで強調しているように
「観察」「解釈(考え)」「反応(気持ち)」をはっきりつかみ
自分や他者に対する「期待」を明確にしていくことが大切です。

そのために、バイロン・ケイティの「4つの質問」などを駆使して
慣れ親しんだ考え方や考え方のパターンに気づき、
『思考や感覚に「しがみつき」、一体化することなく
そのとき体験していることを観察する能力を強化する』
ことが摂食障害行動を変化させる原動力になるだけでなく
愛着の治療でも必要になるポイントですから覚えておいてくださいね。

先々週と先週、2人の患者さんのアタッチメント治療が終結しました。
お一人は回避型で、怒り(忿怒)のコントロールをメインに治療し、
もう一人はアンビヴァレント型のアタッチメントから
嫉妬の感情を向き合うことができるようになられました。

三田こころの健康クリニックではこのように
過食症」「むちゃ食い症」の対人関係療法だけでなく
「慢性のうつ状態」の治療
休職を繰り返している人の復職支援と再発防止を行っていますので
思い当たる方は三田こころの健康クリニックに相談してくださいね。

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2016-10-17

乳幼児期のアタッチメントの発達

私たちが乳児期のときには、
養育者からまなざされることで私たちの心が動態化し
私たちの反応によって養育者が反応します。
その反応に対して私たち乳児情動の調節を学んでいきます。

一時期は母親の子どもに対する情緒応答性が
アタッチメントの質を決めると言われていましたが
現在の知見はちょっとちがうようです。

敏感性は母親の能力であるかのように思われていますが、「お母さん、しっかりしろよ。敏感性を高めろよ」と母親に働きかけて、母親を敏感にさせる子どもの力のほうが重要ではないのかという気がしています。
これについてはいろいろな知見があるのですが、敏感性の尺度も、敏感性の概念も、実は関係性の概念であって、決して母親特性ではないということが言われています。
そのようなわけで、母親さえ頑張ればアタッチメントは安定するというような話ではないのですね。


近藤清美『基調講演I 愛着理論の臨床適用について』第18回駒井メモリアル家庭教育シンポジウム

ビックリしますよね。
多くの人が、「母親との関係に問題があった」とか「厳しくされた」から
アタッチメントが不安定型になったと考えていると思いますが、
母親の敏感性を引き出すのは、赤ちゃんである私たちの方だったのです。

乳児期から幼児期にかけて学童期前の不安定型アタッチメントは、
回避型(Aタイプ)は否定的情動を抑制することで、
アンビバレント型(Cタイプ)は否定的情動を激しく示すことで
応答が不十分な母親から保護され慰められる可能性を高めます。
ですから敏感性が不十分な母親と一緒にいる私たち乳児にとって
不安定型アタッチメントはきわめて適応的
なのです。

さて1歳を過ぎると歩いたり言葉も喋れるようになってきます。
相変わらず手はかかるものの第一反抗期を迎え
養育者との関係は不安定になり段階的に変化します。

生後12ヶ月、1歳9ヶ月と2歳6ヶ月での幼児のアタッチメントパターンは
安定型(Bタイプ)は56%→23%→30%
回避型(Aタイプ)は45%→30%→38%
アンビバレント型(Cタイプ)は4.5%→46%→30%
とその割合が変化します。
Cタイプが一時的に増えたように見えるのは
第一反抗期(イヤイヤ期)を反映していますよね。

回避型(Aタイプ)は、感情を伴わない言語の使用と
基本的には感情は表出せずに愛想の良さや内気、
あるいは従順なふりをするものの
不安に満ちた強迫的行為がみられることがあります。

アンビバレント型(Cタイプ)は感情についての言語使用が不得手で
親側の馴れも生じる影響で、はにかみと怒りを交替して表出し、
自分でできないことがアタッチメントの適応手段になります。

幼児期から学童期にかけてに虐待やネグレクトなどの
アタッチメントの傷つき(発達性トラウマ障害)がある場合は別ですが、
通常の発育過程での愛着スタイルは回避型もしくはアンビバレント型に分類されて
変化しないとイメージされるかもしれませんが、
アタッチメントは関係特異的なので、
上記のAタイプやCタイプが固定的な方略ではないことに注意してくださいね。

たとえばある片方の親に対しては安定型を示すけれども
もう片方の親との関係では不安定になるといった具合に
一人の人の中に複数の愛着パターンがある場合もありますし、
同一の愛着対象に対しても、複数の愛着パターンを持つ場合もあるのです。

さらに、無秩序型の愛着パターン(A3:強制的配慮/A4:強制的従順)であっても
それが常時表現されているのではなく、表現されていないときは
安定型、回避型、アンビヴァレント型など別の愛着パターンを示すなど、
別の愛着パターンを覆い隠している場合もあるのです。

幼少期のアタッチメントは危険回避方略であることを考えると当たり前でもありますし
このことは、青年期から成人期にかけて、アタッチメントの治療を行う際に
「安定性の島」としても作用するので、重要なポイントになることを覚えておいてくださいね。

アタッチメントの行動システムを働かせる目的は、安心感です。
危機的場面で、「危ないぞ。生存に関わるぞ。でも、愛着対象がいるから安心」と思える。
接触しなくても、安心感を得られたら、それでいいのですね。その人のことをイメージするだけで、安心感が得られる。
それでも構わないし、その人がちょっと近付いただけで、「うん、大丈夫」というように承認を得られれば安心。
決して、スキンシップが重要なわけではないのです。
要するに、安心感を得られるという内的表象が自分の中で育っていれば、実際に愛着対象が目の前にいなくても構わないという行動システムなのです。


近藤清美『基調講演I 愛着理論の臨床適用について』第18回駒井メモリアル家庭教育シンポジウム

上記の「安心感の内在化」のプロセスを
ムズカシい言い方では「アタッチメント表象」と言いますが
「自分自身との関係を展開していく最初の時期」ということになります。
愛着(アタッチメント)の意味』で書いた
私たちは安全基地を必要とするわけではない。
というのは、このことなのです。

のちのブログで悪性の退行を起こす不適切な治療のことに触れますが
アタッチメント対象の内在化のプロセスが重要で、
「決して、スキンシップが重要なわけではない」ですから
よく覚えておいてくださいね。

エリクソンはこの時期は「自律性」や「自主性」を培うことが課題で
達成がうまくいかないと恥や疑惑、あるいは罪悪感をもちやすいといいます。
AタイプやCタイプのアタッチメントパターンと似ていますよね。

さらに『愛着(アタッチメント)の治療』で引用した

  • 「子供時代に安定したアタッチメントを獲得できなかった相談者がセラピーに求める「安心」「共感」」

という理解は、安心感の内在化ができずに
変化するはずのアタッチメントが変化しなかった、
つまり、乳幼児期で発達が止まっているという考え方なのですよね。

次回はいよいよ集団や社会との関係性を発達させる学童期に進みます。

不幸の心理 幸福の哲学 - 人はなぜ苦悩するのか

不幸の心理 幸福の哲学 - 人はなぜ苦悩するのか

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
自分の気持ちをよくふり返り、言葉にしてみる」というタイトルで
「自分自身をふり返る」内省のプロセスの
「受容」「自己観察」「再帰性」の3つの機能を説明し
摂食障害の人が苦手な「期待を明確にする」練習が
摂食障害から回復し、再発を防ぐためにすごく大切であることを書きました。
「期待の整理」はアタッチメントの治療でも獲得安定型に移行する際の課題になります。

これはクロニンジャーの「自己志向性(自己次元の成長)」の中で
「自己受容」「価値目的の創造」「価値目的に沿った行動」と
三田こころの健康クリニックでは説明していますよね。

今日のブログも「自分自身との関係を展開していく最初の時期」で
自分の欲求や期待を明確に把握し言葉で伝えることが
自律性・自主性などの課題をクリアーすることですから、
過食症やむちゃ食い症、気分変調症にかぎらず、
対人関係療法に取り組んでいらっしゃる方は練習してみてくださいね。

三田こころの健康クリニックでは「過食症」「むちゃ食い症」、
「慢性うつ」「不安定型の愛着(アタッチメント)」の
対人関係療法による治療を行っていますので申し込んでくださいね。

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2016-10-11

愛着(アタッチメント)の意味

愛着は確かに情緒的絆なのですが、それだけではないということです。
あくまで、ストレスフルな事態で、危機的場面でどうなのかということなのです。
(中略)
危機的場面、あるいは危機がなくても、特定の対象を安全基地として利用して、安心感を得る。
「安全基地で保護を得て、自身が安心・安全であるということを保障されるメカニズム」であるということで、決して、単なる情緒的絆あるいは愛情というものと同じではない。
ここをまず押さえておきたいと思います。定義がはっきりしないと、とても困ります。
(中略)
そもそもアタッチメントは、「保護する−保護される」という関係です。
アタッチメント対象に安全感を求めるわけですから、上下関係で、アタッチメント対象は力があって、自分を守ってくれる存在でなかったらだめなわけですね。力がないものには、安全を求めても無理であろうと思います。
そのような関係なので、すべての情緒的絆を扱ってはいない。上下関係におけるものだけしか扱っていない。しかも、自分は守られる弱いものであって、守ってくれる強い対象があるというような関係性である。ここをまず押さえておかないと、アタッチメントの概念自体が混乱してしまいます。


近藤清美『基調講演I 愛着理論の臨床適用について』第18回駒井メモリアル家庭教育シンポジウム

愛着(アタッチメント)として語られているのは

  • 乳幼児と養育者間の情緒的絆、関係性
  • 安全基地として利用する乳幼児の行動システム
  • 内的作業モデル(表象的なアタッチメント)

の3つであり、アタッチメントの治療や修復を考えた場合
どこに焦点を当てるのかが違ってくるということですよね。
青年期から成人期のアタッチメントの治療に関しては、
両親との関係ではなく内的作業モデル治療焦点になる
ということです。

このブログで以前から

  • アタッチメントスタイルが成人まで変化しなかったのはなぜだろうか?

という疑問を何度か投げかけましたよね。

私たちの気分を悪くするのは他者や出来事ではなく
それらに対する私たちのとらえ方(表象)に対する反応なのです。
つまり、アタッチメントの治療や修復は
アタッチメント表象という自分自身の心との関係を修復し
調和していく
ことなのです。

同じことが「過食症」や「むちゃ食い症」、
あるいは「持続性抑うつ障害(気分変調症)」の人にも言えますよね。
先に「自分自身との調和(自己受容)」を培い、その上で、
価値観の違う「他者を受容する協調性(関係性)」に焦点を当てていくのが
対人関係療法での治療のすすめ方になります。

とくにアタッチメントの治療や修復で大切なことは
不安定型(回避型やアンビバレント型)のアタッチメントが悪いのではなく
自分を守るための方略だった、ということを押さえておく必要があります。

「過食」や「むちゃ食い」も同じで、一番最初は
ネガティブな情動から自分を守るための方略だったけど
その方略が必要ではないときに過剰に使われることが問題なように
アタッチメントスタイルも、必要ではないときに過剰に
それまでのパターンを非合理に繰り返してしまうこと
さらにそれらが自覚もなしに経験されることが問題なのです。

それからもう一つ、青年期から成人期のアタッチメントの修復でも
親との関係を改善することが必要だと一般に信じられているのですが、
私たちは安全基地を必要とするわけではない。
ということも押さえておく必要があります。

アタッチメントは「保護する−保護される」という
力の強さを背景にした上下関係ですから、
成人では両親との力関係は逆転し、パートナーとは対等の関係です。
ですから、安全基地は自分自身で自分の中に築いていく必要があるのです。

成人になるまで、私たち自身が発達し成熟してきた多様性と柔軟性こそが、
適応の土台となり、神経ネットワークの可塑性のため、いくつになっても変化が可能なのです。
ですから、非合理的なパターンのくり返しと経験の自覚の乏しさが問題になるのです。

これらをふまえた上で、安定型(Bタイプ)以外の
不安定型アタッチメントスタイルのうち
回避型(Aタイプ)を中心に見ていきますが
アンビバレント型(Cタイプ)も説明を加えていきますね。

ちなみに、私自身は回避型(Aタイプ)でした。
ここでさらにもう一つ重要なことは

  • Bタイプ(安定型)ではない方略が、生活をより安全にしたり、より快適にすることもあり得る。

ということも知っておくと希望が持てるかもしれませんね。

生きる技法

生きる技法

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
その人それぞれにとって、摂食障害には役割がある」というタイトルで
「過食」や「むちゃ食い」などの症状は
もともとは当時自分が抱えきれなかったネガティブな感情を
緩和して自分を立ち直らせるための方法でもあったけど
しだいに自分の内からの声を無視することを覚えてしまい
それによって摂食障害の症状が続いている
ということを説明しました。

もともとは自分を守るための方略だったという部分は
今回の愛着(アタッチメント)のプロセスともオーバーラップしますよね。

ですから、五感を使った体験的な外界の情報(「記述」)なのか、
言葉にもとづいた「評価や判断、解釈」なのかを明確に区別することが必要で
そのために「自分をふり返る」という練習が必要になります。

  • 過食症やむちゃ食い症を治療したい
  • うつがなかなか治らずに何回も休職を繰り返している
  • 生きづらいので愛着障害(不安定型アタッチメント)かもしれない

などなどを思っていらっしゃる方は
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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2016-10-03

愛着(アタッチメント)の治療はどうすればいいのか

あるサイトにアタッチメントスタイルが治療の関係性に影響する
という意味のことを書いてありました。

アタッチメントスタイルが「回避」傾向にある相談者は、セラピストとの治療関係自体にも抵抗を示す傾向が強く、また、アタッチメントスタイルが「不安」傾向にある相談者には、治療関係による混乱や転移が生じやすい傾向があるからです。
「関係性」のテーマを、「関係性」をベースに進めていく心理療法で取り組む難しさと矛盾がある訳です。

たしかに『愛着障害』『回避性愛着障害』を読むと
治療関係をベースにした関係性のテーマが問題になる、と
理解してしまうのも無理もないところですよね。

不安定型のアタッチメントが病理に関わるのは
近藤先生によると「自分自身との折り合い」なのです。

アタッチメントは自己の問題に関わってくる。そのような安全感を得られる自分自身であるかどうか。
それが、後でお話ししますが、精神病理につながってくるという意味合いで重要な概念になってきます。
(中略)
それゆえに、自己の安全感に関わっている。
自分が生きていけるかどうかに関わっているので、「自分は安全ではない。生きるのに精一杯」という事態というのは、とりもなおさず精神病理につながる。
だから、アタッチメントはその意味合いでは重要であると言えます


近藤清美『基調講演I 愛着理論の臨床適用について』第18回駒井メモリアル家庭教育シンポジウム

不安定型の愛着(アタッチメント)スタイルが影響するのは、
対人関係療法的にいうと「自分自身への信頼感」つまり、
親密な関係性の中での「自分自身との折り合い(自己受容)」の問題が
自分と考えが異なる「他者受容(協調性)」も問題として顕れる

ということなのです。

このことが理解できていないため
「関係性」のテーマを「(治療)関係」をベースに進めていく心理療法
焦点がずれてしまっているだけでなく
回避性愛着障害』に書いてあるようなマインドフルネスが
ネガティブな内的体験からの回避方略になってしまい
逆に問題を大きくしてしまう危険性をはらんでいるのです。

アタッチメントに関して誤謬が生じる要因についても触れられていました。
とくに愛着(アタッチメント)と発達の関連についてほとんど知られておらず、
そのことが母性神話(俗説)を生み出す温床になっている、と述べられています。

アタッチメントにまつわる神話というのがあって、「母親の愛着がその後のすべての対人関係を決める」という漸成説であったり、「母親にまず愛着を形成して、それから他に広がっていく」ということが言われたり、あるいは、「母親の関わりが愛着パターンを決めてしまうため、母親の養育が一番大切である」というようなことが言われています。
そして、「愛着関係は世代間伝達をする」と言われています。
それらのことが、母性神話の温床になっているように思われます。
(中略)
アタッチメントと後の発達との関係のメカニズムは、まだ不明です。決して、一義的ではない。
ここを忘れてはいけないと思うのです。
アタッチメントが関連するのは、後の発達のごく一部です。
しかも、どうもアタッチメント理論は発達を忘れています。それで、どうしても原家族の話になってしまうのですね。
人は様々な人にアタッチメントを持ちながら発達して、大人間でもアタッチメントがある。
大人間のアタッチメントがうまくいけば、それまでのアタッチメント関係が修復されることが多分にあるのだろうけれども、そこが省かれてしまっているという気がします。

大人のアタッチメントを修復するためには
母性神話を越えて「発達段階とアタッチメントの関係」と同時に、
「重要な他者(パートナー)との関係」を修復していくために
上で書いたように「自分自身との関係」を調和する必要があります。
安定型のアタッチメントの獲得を目指した治療は、
自分自身との折り合いを中心に、他者との関係性を見て、それらを統合する
ということになります。

そう聞くと、なんだ、対人関係療法でやっていく

  1. 自分との関係を改善する(感情・考え・情動のコントロールについての気づき)
  2. 行動の仕方を改善する(心の状態の変化についての気づき)
  3. 他人との関係を改善する(自己概念あるいは関係のなかにおける役割についての気づき)

と同じじゃないか、と感じられるかもしれませんよね。

アタッチメントの治療で取り組んでいく方向性は
対人関係療法で進めていく方向と同じなのですが、
アタッチメントの治療の場合には一つだけ違う要素が入ります。

それが「尊大さ」と「自己愛忿怒」に焦点を当てることです。
これが「他者との協調性」に影響を与えるため、
「自分自身への信頼感(自己受容)」の根底に関わる部分、
「自己愛の傷つき」に手当てをする必要があるのです。

このことは一般向けの本にも書いてないし、知られていないのです。
私が学んだアタッチメントの力動-成熟モデルのコースの内容に沿って
次回から発達段階とアタッチメントの関連について
少しずつ解説していきますね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害からの回復の段階と再発防止」というタイトルで
摂食障害学会で『8つの秘訣』の訳者であるUCLAの安田さんが発表された
摂食障害から回復していく5つの心理的段階」について説明しました。

摂食障害の再発防止という考え方は
過食嘔吐が完全になくなることを目指さない対人関係療法と違うのではないか?
と感じられるかもしれませんが、
「その人それぞれにあった治療」をすすめていくことで
症状が完全になくなるプロセスで目指していくことが
とりもなおさず、再発防止につながっていくのです。

話は変わりますが、何度も休職をくり返しているのに
同じ治療しか受けていらっしゃらない方がすごく多いようです。

  • 不適切な休養や休息は、患者の自己回復力を阻害し、病状の遅延や慢性化につながる可能性がある。

と「日本うつ病学会治療ガイドラインII.2016」に記載があります。

ちょっとでも気分が落ち込むと、医者はうつ病と診断し
休職を勧めますが、じつは休職することにより
(あるいは抗うつ薬を処方されることにより)
回復への可能性が遠のく場合もあるということなのです。

うつ病性障害、持続性抑うつ障害(気分変調症)、
適応障害、あるいは診断基準を満たさない程度の軽症うつでも
再発を繰り返すことにより再発への脆弱性が高まることが知られています。

そのためその人の状態に応じた個別性をもった対応が必須で、
三田こころの健康クリニックでは、2回以上休職したことのある人を対象に
復職を目指した治療と同時に、再発を防止する治療を行っています。

過食症やむちゃ食い症だけでなく、
うつがなかなか治らない、何度も休職している方は
生まれつきの気質と学習獲得した性格を把握したうえで
その人に合った治療を行って行く必要がありますよね。

また不安定型アタッチメントの治療も行っていますので
三田こころの健康クリニックに申し込んでくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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