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如実知自心〜三田こころの健康クリニック新宿〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-10-01

愛着(アタッチメント)とさまざまな治療法

前回のエントリーでは愛着(アタッチメント)は安心感・安全感という「安全基地」であり、
真の安全基地であるための3つのポイントを書きましたよね。

さて、では愛着(アタッチメント)の修復に関して
岡田先生はどのような治療を考えられているのでしょうか?

では、心理療法や認知行動療法はどうかというと、薬物療法よりも根本的な問題を改善するチャンスはあるのだが、時間とコストの問題があるだけでなく、それとは別にもっと本質的な問題がある。
これらの方法によっても、愛着に問題を抱えているようなケースほど、改善が得られにくいのである。愛着が安定し、治療者に終始協力することができ、一貫して治療意欲を保てるような患者はよくなるが、いちばん治療の必要がある人ほど治療からドロップアウトしたり、あるいは治療者のほうが治療を断る事態になってしまう。

これは、患者のせいばかりではない。安定した信頼関係を求めて治療にやってきた患者たちは、根の深い問題を抱えているほど、精神分析認知行動療法に対して、何とも言えない失望を味わうのである。これらの治療法が提供するアプローチによっては、自分の問題が素通りされていると感じてしまうのである。それは、これらの治療法が愛着ではなく、分析や認知といった理性的な力に訴える治療法だからである。
『愛着崩壊』第七章「愛着システムを守れ」


かつて精神分析が注目を浴びた第二次世界大戦後には
「性の問題」が時代的な切実さがありました。
認知行動療法がもてはやされる現代では、
「自立」という共同幻想(集団観念)に忠実に振る舞おうとすれば
"うつ病"の可能性の中に投げ出され、
忌避しようとすれば"引きこもり"の可能性の中に投げ出されてしまうという
希薄な対幻想(対人関係)の中で、
個人幻想を肥大化させざるを得ない
「個の問題」に時代的な切実さがあるためと吉本隆明は考察しています。

しかし愛着障害の人は、もっと根もとの愛着の部分で躓いている。そこを避け、理性的な操作だけを施そうとしてもどうにもならない。安心感や情感的な共感や体感的な体験が、むしろ必要なのである。
ただ、回避型の人は、共感的な体験に対して、かえって反発を感じる場合があり、認知行動療法に適している面がある。今日、認知行動療法の人気が高いのも、回避型の感性を持つ人が増え、感情的体験を認知という醒めた視点で扱えるということが、受け入れやすいためだろう。
それとは正反対に愛着不安の強いケースや、心の傷に囚われているケースでは、認知行動療法だけでは歯が立たないのが現実である。
『愛着崩壊』第七章「愛着システムを守れ」

精神分析でいう「転移」や「抵抗」の期限を
ボゥルビィは養育者(通常は母親)と乳幼児の関係に求め
愛着という現象に注目し、愛着理論をうち立てました。

その後の研究で、
乳児期の愛着パターンは、愛着スタイルとして、対人関係の根本に関わる現象である
ということがわかっていますよね。

転移:子どもの頃に大切だった人に対して抱いた感情や思いが、他の人に対して移し替えられること。好感などのポジティブな感情が主体であるとき、陽性転移といい、嫌悪や反発などのネガティブな感情が向けられるときは、陰性転移という。
神経症の回復過程で、治療者-患者間で、転移のプロセスを通過する必要があると言われる。

抵抗:転移感情にしがみつくことで、問題に向き合うことを避けようとすること。


岡田先生は、精神分析は、ある程度愛着が安定した人には有効だが、
愛着の「回避」や「不安」が強い場合は、困難が生じるとおっしゃっていますね。

実は同じようなことが、カウンセリングとして多用されている
ロジャーズ派の心理療法でも当てはまる場合が多く、
愛着が安定した人であれば、友好的な治療関係が維持されますが、
「回避」が強い場合は、治療関係の構築が困難だったり、抵抗が強かったり、
「不安」が強い場合は、混乱を助長したり、
転移による関係の不安定化が起きたりします。

対人関係療法ではどうか?というと、
対人関係療法治療者は患者の愛着スタイルに合わせる
ということが条件になっていますので、
一応、どのタイプの患者さんでも可能ですよね。

とくに「とらわれ型(不安・アンビバレント型)」や
「恐れ・回避型(未解決型)」は
喪失や虐待などのアタッチメント関連性トラウマを経験しており、
共感と教育の治療を言われる対人関係療法は、すごくマッチする感じがあります。

○自分の気持ちをよく振り返り、言葉にしてみる
○自分の周りの状況(とくに対人関係に関すること)に変化を起こすよう試みる

という大前提がありますから、
転移に焦点を当てない短期精神療法である対人関係療法は、
終結に関する不安の増大はあるにしても、
ロジャーズ派の心理療法のように混乱を引き起こすことは
少ないと言われています。

では、回避型の愛着スタイルに対してはどうかというと、
正規の対人関係療法に移行する前に、治療同盟の構築が必要と言われています。

なんとか治療同盟が構築できたとしても
対人関係療法では認知には焦点を当てませんから、どうしても

  • 思い込み(…に違いない)
  • こだわり(…ねばならない)
  • 回避傾向

が強い場合は、対人関係療法が不向きになるんです。

対人関係療法のアセスメント〜愛着(アタッチメント)スタイル
でも触れたように、
回避的、スキゾイド的な対人行動パターンを呈する
アスペルガー症候群などの発達障害を背景に持つ不安回避型の愛着スタイルの人は、
対人関係スキルを高めるようなアプローチはむしろ不向きで
岡田先生がおっしゃるように
「感情的体験を認知という醒めた視点で扱える」認知行動療法が向いている
と感じています。

実際、水島先生も、出来事と気持ち、症状との関連を見ていく対人関係療法
出来事を想い出してもらうというプロセスは
アスペルガーなどの自閉症圏の人には辛すぎるプロセスかもしれない
とおっしゃってました。

次回は、愛着(アタッチメント)の修復に必要な
理療法や精神療法の要素について見ていきましょう。


ちなみに。
三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
成人のアタッチメント・スタイル』をアップしています。
ご自分がどのスタイルに当てはまるのか考えてみて下さいね。

岡田尊司先生の『愛着障害』には、
巻末に「愛着スタイル診断テスト」が掲載されていますから参照して下さいね。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

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