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如実知自心〜対人関係療法@三田こころの健康クリニック〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-11-26

いわゆる「慢性化したうつ病」について1〜「気分変調性障害」と「適応障害」

そもそも。
うつ病は、始まりと終わりがある程度明確であるのに比べ
気分変調性障害は、「気づいた時から、ずっとこんな感じだった」
性格と紛らわしい慢性のうつ状態が漫然と続いている
という違いがあるのですが、
慢性化したうつ病=気分変調性障害と
過誤診断されていることを多く見かけます。

過誤診断につながるのは、
抑うつ気分やうつ病うつ病相などの用語が「うつ」へと単純化・一般化し、
それに伴いうつ病の内容も曖昧になり、拡大し混乱していることに
一因があるようです。

精神医学的診断の際に参考とする基準を尋ねた調査結果
〔「プライマリケアにおける国際疾病分類第10版(ICD-10)運用に関する研究」〕によると、
約6割が伝統的・経験的診断を用いており、ICD-10DSM-IVはそれぞれ1割程度にすぎなかった
という驚くべき事態が報告されています。

伝統的・経験的診断も、DSMによる診断も、症状だけに注目されてしまい、
パーソナリティー診断や身体的背景、ストレスへの適応度など、
多軸評定するDSM-IVが要求する臨床的な視点が欠落しているだけでなく、
患者個々の生まれや育ち、いつどのような症状が始まったのか?、
つまずいて立ち直れないのはなぜか?、日常生活でどのような問題を抱えているのか?
などの事象を包括的に判断する診断がなされていないことが理由でしょう。

慢性うつ病性障害(気分変調性障害)の診断基準は以下の通りです。

A.抑うつ気分がほとんど1日中存在し、それのない日よりもある日の方が多く、その人自身の言明または他者の観察によって示され、少なくとも2年以上続いている。
 注:小児や青年では、気分はいらだたしいこともあり、また期間は少なくとも1年間は無ければならない。
B.抑うつの間、以下のうち2つ(またはそれ以上)が存在すること:
 (1)食欲減退、または過食
 (2)不眠、または過眠
 (3)気力の低下、または疲労感
 (4)自尊心の低下
 (5)集中力低下、または決断困難
 (6)絶望感
C.この障害の2年の期間中(小児や青年については1年間)、一度に2ヶ月を超える期間、基準AおよびBの症状がなかったことはない。
D.この障害の最初の2年間は(小児や青年については1年間)、大うつ病エピソードが存在したことはない。すなわち、障害は「大うつ病性障害、慢性」または「大うつ病性障害、部分寛解」ではうまく説明されない。
E.躁病エピソード、混合性エピソード、あるいは軽躁病エピソードがあったことはなく、また、気分循環性障害の基準を満たしたこともない。
F.障害は、統合失調症や妄想性障害のような慢性の精神病性障害の経過中にのみおこるものではない。
G.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない。
H.症状は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
[該当すれば特定せよ]
  早発性:発症が21歳以前である場合
  晩発性:発症が21歳以上である場合
[特定せよ]
  非定型の特徴を伴うもの


つまり、うつ病が治らずに続いているのではなく、双極性障害でもない、
始まりと終わりが不明瞭な慢性のうつ状態を気分変調性障害と呼ぶのです。

精神病理についての説明は、三田こころの健康クリニックの
性格と間違われやすい「慢性のうつ病(気分変調性障害)」について
をお読み下さいね。

対人関係療法でなおす 気分変調性障害

対人関係療法でなおす 気分変調性障害

では、他に慢性のうつ状態を呈する疾患はあるのでしょうか?

それは、ストレス関連障害の一部である「適応障害」です。

「ストレス関連障害」とは、
家族関係や人間関係、仕事上のトラブルなどのストレスによる「適応障害」から
生死に関わるような強大なストレスによる
急性ストレス障害」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」など
「トラウマ関連障害」まで含み、
外的なストレスに起因して、日常生活や職業・学業的な機能に
著しい障害をきたす症候群です。

その中で「適応障害」とは、
心理社会的ストレスに反応して、
不安や抑うつなどの情緒の問題や
社会的規範や規則をおかすなど素行の問題が生じる状態を指し、
通常は、ストレス因が取り除かれれば
症状が6ヶ月以上持続することはない
ということが定義になっています。
うつ病と同じように、始まりと終わりがある程度明瞭ですよね。

A. はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現。
B. これらの症状や行動は臨床的に著しく、それは以下のどちらかによって裏付けられている。
 (1) そのストレス因子に暴露されたときに予想されるものをはるかに超えた苦痛。 
 (2) 社会的または職業的(学業上の)機能の著しい障害。
C. ストレス関連性障害は他の特定のI軸障害の基準を満たしていないし、すでに存在しているI軸障害(うつ病統合失調症などの疾患)またはII軸(人格障害)の単なる悪化ではない。
D. 症状は、死別反応を示すものではない。
E. そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない。

[適応障害の特徴的な病型分類]
1)抑うつ気分を伴うもの
  抑うつ気分、涙もろい、または絶望感などの症状がある場合。
2)不安を伴うもの
  神経質、心配、または過敏などの症状、また子供の場合には、主要な愛着の対象からの分離に対する恐怖などの症状がある場合。
3)不安と抑うつ気分の混合を伴うもの
  不安と抑うつの混合である場合。
4)行為の障害を伴うもの
  他人の権利、または年齢相応の主要な社会的規範を犯すなどの行為の障害(怠学、破壊、無謀運転、喧嘩、法的責任の不履行)である場合。
5)情緒と行為の混合した障害を伴うもの
  情緒的症状、(抑うつ、不安など)と行為(4を参照)の両方である場合。
6)特定不能
  心理社会的ストレス因子に対する不適応的な反応(身体的愁訴、ひきこもり、または職業上または学業上の停滞)で、1〜5の特定の病型に分類できないもの。


適応障害」はストレス因子の終結後6ヶ月以上持続しないのですが、
慢性のストレス因子または
結果が長く続くようなストレス因子に反応して、
6ヶ月以上症状が持続する
「慢性の適応障害」を呈する一群
があり、
この状態が性格因の問題と考えられて
気分変調性障害と過剰診断されているようですね。
(ときには、双極性障害(双極II型障害)とも!)

気分変調性障害や双極性障害と診断されていらっしゃる方は、
担当医から伝えられた診断を鵜呑みにせず、
この診断基準と照らし合わせてみてくださいね。

この基準から昨今はやりの「新型うつ病」を見てみると
たしかに不安や抑うつ状態はあるものの出現様式が部分的で
さらに他罰的を役割規範の取り入れ不全と考えると
新型うつ病」は、まさに「適応障害」ですよね。



ちなみに。
新型うつ病の」呼称で「ディスチミア親和型」といういい方もありますが、
ディスチミアは「気分変調性障害」のことですから、
ここにも臨床医の誤解があるようです。

若者の「うつ」―「新型うつ病」とは何か (ちくまプリマー新書)

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ところで。
三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
愛着(アタッチメント)と対人的心的外傷(アタッチメント関連トラウマ)5』という記事をアップしています。
こちらも読んでくださいね。


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