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如実知自心〜三田こころの健康クリニック新宿〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-01-11

「愛着障害」とは何か?

この『如実知自心』で岡田尊司先生の『愛着障害』を取り上げて以来、
愛着障害に関する検索数が多く、
また「愛着障害」という診断(?)での問い合わせや
対人関係療法による治療の申込みをいただいていますので
もう一度だけ、愛着障害と愛着スタイルについてまとめておきます。

このブログの愛着障害のカテゴリーをまとめて読んでみてくださいね。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)



岡田先生の本にも、ブログを見返してみても
愛着障害とはいったいどういう状態なのか?を書いてなかったので
以下に『精神疾患の分類と診断の手引(DSM-IV-TR)』による愛着障害の診断基準をあげておきますね。

小児期または小児期想起の反応性愛着障害

A. 5歳以前に始まり、ほとんどの状況において著しく障害され十分に発達していない対人関係で、以下の(1)または(2)によって示される。

(1) 対人的相互反応のほとんどで、発達的に適切な形で開始したり反応できないことが持続しており、それは過度に抑制された、非常に警戒した、または非常に両価的で矛盾した反応という形で明らかになる。

(例:子どもは世話人に対して、接近、回避、および気楽にさせることへの抵抗の混合で反応する。または固く緊張した警戒を示すかもしれない。)
(2) 拡散した愛着で、それは適切に選択的な愛着を示す能力の著しい欠如を伴う無分別な社交性という形で明らかになる。
(例:あまりよく知らない人に対しての過度のなれなれしさ、または愛着の対象人物選びにおける選択力の欠如)

B.基準Aの障害は発達の遅れ(精神遅滞のような)のみではうまく説明されず、広汎性発達障害の診断基準も満たさない

C. 以下の少なくとも1つによって示される病的な療育
(1) 安楽、刺激、および愛着に対する子どもの基本的な情緒的欲求の持続的無視
(2) 子どもの基本的な身体的欲求の無視
(3) 主要な世話人が繰り返し変わることによる、安定した愛着形成の阻害

(例:養父母が頻繁に変わること)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害の原因であるとみなされる

(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた病的な養育に続いて始まった)

◆病型を特定せよ
抑制型  基準A1が臨床像で優勢な場合
脱抑制型 基準A2が臨床像で優勢な場合


つまり、愛着障害とは、
ネグレクト(情緒的・身体的欲求の無視
あるいは養育者(愛着対象の変遷)を誘因とする、
発達障害自閉症スペクトラム障害)など児側の問題によらない、
対人関係における「奇妙な拒絶」もしくは「無分別」という
「行為障害」「行動障害」
ですよね。

成人でこのままの診断基準を満たす人はいらっしゃらないと思いますので、
ご自分で愛着障害ではないか、と疑っておられる方は、
上記の診断基準を満たすのか(『虐待と愛着(アタッチメント)2』参照)、
あるいは愛着スタイルという対人関係パターンなのか(『成人のアタッチメント・スタイル』参照)
はたまた、アスペルガーや広汎性発達障害などの自閉症スペクトラム障害
ADHD(注意欠陥多動性障害)による対人関係困難ではないのか、
などなどよく考えてみて下さいね。



岡田先生が『愛着障害』で紹介されているのは
ADHD類似の行動障害や境界性パーソナリティ障害
自尊心の低さ(過敏型自己愛パーソナリティや摂食障害不安障害)など、
思春期以降に問題になるさまざまな臨床疾患の背景に愛着の問題があるということですよね。
愛着障害とは ー はてなキーワード」で示した
「選択的な愛着をもたない障害(本来の愛着障害)」の意味ではなく
「安全基地のゆがみ」という対人関係の問題のことですから、
当然、疾患としての診断はつきませんよね。

たとえば、うつや不安障害アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症、境界型パーソナリティ障害過食症といった現代社会を特徴づける精神的なトラブルの多くにおいて、その要因やリスク・ファクターになっているばかりか、離婚や家庭の崩壊、虐待やネグレクト、結婚や子どもを持つことの回避、社会に出ることへの拒否、非行や犯罪といったさまざまな問題の背景の重要なファクターとしても、クローズアップされているのである。

さらに、昨今、「発達障害」ということが盛んに言われ、それが子どもだけでなく、大人にも少なくないことが知られるようになっているが、この発達の問題の背景には、実は、かなりの割合で愛着の問題が関係しているのである。実際、愛着障害が、発達障害として診断されているケースも多い。(『愛着障害』p.4)

愛着障害は、多くの子どもだけでなく、大人にもひそんで、その行動を知らずしらず左右し、ときには自らを損なう危険な方向に、人生をゆがめている。その人のもつ愛着スタイルは、対人関係だけでなく、生き方の根本の部分を含む、さまざまな面に影響している。(『愛着障害』p.304)

つまり岡田先生がおっしゃる『愛着障害』とは、
愛着スタイル(対人関係パターン)」のことでもあり、
愛着(の問題が背景にあるさまざまな)障害」でもあり、
上記の診断基準にあるような「(反応性)愛着障害」ではありませんので、
お間違えのないように。



さて。
対人関係療法で愛着スタイル(対人関係パターン)は

  • 治療者-患者関係の構築の際、治療関係構築は容易か困難か
  • 終結時の不安の大きさ
  • 重要な他者からの治療協力(サポート)の可能性の予測

の際にアセスメントするのです。

また、「うつ病」や「気分変調性障害」、「双極性障害」などの気分障害
「社交不安障害」や「トラウマ/PTSD」などの不安障害
摂食障害(とくに過食症)」など、対人関係療法の適応となる疾患の

  • 対人関係パターンが4つの問題領域のどれに相当するのか

という治療焦点領域を絞り、
文脈的な理解(フォーミュレーション(診立て))を考える上で考慮します。

対人関係療法の適応となる疾患をみてもおわかりのように
愛着障害そのものは対人関係療法の適応疾患にはなっていませんよね。

愛着崩壊 子どもを愛せない大人たち (角川選書)

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愛着障害とは編集

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