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如実知自心〜三田こころの健康クリニック新宿〜 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-02-04

対人関係療法による摂食障害の治療5〜過食症の治療

近年、神経性大食症(過食症)への精神療法として対人関係療法が行われており、
対人関係療法による摂食障害の治療〜治療の実際」でも触れたとおり
治療効果も確認されています。

「やっと精神療法が受けられた」
「どこに行っても、毎回薬を出されて、様子を見ましょうと言われて…」

という感想を三田こころの健康クリニックでよくお聞きします。

それはそうで、一般の精神科メンタルクリニック
5分(ときには3分?!)診療で薬だけ処方されておしまいなのに対し、
三田こころの健康クリニックで行っている対人関係療法による治療では
1回50〜60分をかけて、焦点づけの仕方など治療戦略を考え、
レジリエンス自然治癒力)を快復していきますから
そう考えると一般診療の12回分以上に相当しますよね。

対人関係療法では1つの疾患に対し20回までの期間限定治療を行いますから、
一般の医療機関に毎週通ったとして5年以上分に相当する治療
半年あまりの期間に限定してやっていこう
ということなのです。
ですから、それなりの準備とタイミングが必要ですよね。
それが「病気と人格の混同をなくす」とか「病者の役割」なのですが、
興味がおありの方は、三田こころの健康クリニックのブログを読んで下さいね。

さて、そんな対人関係療法では認知行動療法と異なり

食症状に焦点を当てないこと
(過食はストレスマーカーと認識し、コントロールの対象としないこと)
対人関係療法の短期治療では過食がなくなることを目指さないこと

などを説明し、治療終結時に
「こういうふうにしていけば病気が治っていく」という見通しが立てられること
治療目標であるということを共有しますよね。

そもそも、対人関係療法では

摂食障害になるときには、ダイエットや過食嘔吐という習慣に「はまりこむ」要因(維持因子)が働く。
摂食障害に対するIPTでは、症状は対人関係のストレスマーカーとして位置づけられ、患者の非適応的な対人関係パターンを変えることに治療の焦点が当てられ、治療は「変化の機会」として患者に説明される。
(中略)
神経性大食症の場合は、自己不全感や行き詰まり感の中で発症することがほとんどだが、過食症状を我慢させようとする周囲との間で、ますます自己不全感や行き詰まり感が強まる。これらのパターンを治療的介入なしに改善していくことは難しい。

『入院施設のない精神科の外来における摂食障害治療』水島広子, 精神科治療学 27(11); 1447-1452, 2012

というように、
対人関係パターン(文脈)が過食症の発症と維持に関連しているのが明らかであれば
対人関係パターンを変えること、
つまり
「こういうふうにしていけば病気が治っていく」という見通し
というスキルを身につけていくことが治療目標になるからなのです。

治療は変化のプロセスを阻害しているものを解決する力を高めますから、
対人関係問題領域という焦点にエネルギーを集中した方が
変化を起こしやすくなりますし、
「変わること」の価値を感じる機会が圧倒的に増えます。

ですから、食症状に焦点を当てず
対人関係問題領域(インターパーソナル)に焦点を当てる対人関係療法
食行動や思考(イントラパーソナル)に焦点を当てる認知行動療法
併用しない方がいい
のです。

実際の過食症に対する対人関係療法では発症のきっかけではなく、
『習慣に「はまりこむ」要因(維持因子)』に注目し、

神経性大食症の維持因子としてよくみられるのは、対人関係療法で扱う4つの問題領域のうち、「対人関係上の役割をめぐる不和」と「対人関係の欠如」である。

「対人関係上の役割をめぐる不和」では、重要な他者との役割期待のずれが慢性化し、無力感や絶望感が蓄積されている。
そこから生み出される負の感情から、つかの間逃れるために自分を麻痺させる手段として過食は用いられる。

「対人関係の欠如」では、一見対人関係は問題ないが表面的であり、慢性的な自己評価の低さを抱えており、安定した対人関係を維持することが困難である。
また、自己主張ができないため、常に自分が我慢を抱え込み、過食で自分の苦しさを麻痺させる。

摂食障害における対人関係』山下達久, 精神科治療学 27(10); 1345-1349, 2012

これらを焦点領域として治療を進めていくのであって、

摂食障害に対するIPTは、役割変化(たとえば別離や離婚)や葛藤(たとえば配偶者やパートナーとの意見の不一致)のような対人関係要因が、主として乱れた摂食のサイクルを維持しているという仮説に基づいている。
『むちゃ食い障害』 野崎剛弘、他, 精神科治療学27(10); 1331-1338, 2012

という論考は、対人関係療法の理解とは違っていますよね。

対人関係療法では、「病因に対し何ら仮説を持たず文脈として理解」し
『維持因子は「不和」と「欠如」を用いる』
点が異なりますよね。
対人関係療法をご存じない医師の間には、
このような誤解が蔓延しているのは哀しいことですよね。

さらに、「やせ願望」「肥満恐怖」「ボディイメージの障害」が明瞭でない
『食行動異常(習慣および衝動の障害)』も摂食障害と間違って診断されている
ことが多く、
本来、行動療法的なアプローチでの治療が必要な患者さんが
感情に焦点を当てる対人関係療法を申し込まれるケースが増えています。

治療を考える上では、症状や症候からの横断的診断だけではなく、
生育歴・生活歴を踏まえた縦断的診断(文脈的理解)を加味した
立体的な診断が必要不可欠
であることはいうまでもないですよね。
この事は、『多衝動性過食症』で触れる予定です。

身体の時間―“今”を生きるための精神病理学 (筑摩選書)

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ということで。
三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害と過敏型自己愛』という記事をアップしています。

「本当の自分(主体的自己)」「役割としての自分(人格的自己)」、
そしてその基盤である「生命体としての自分(生命的自己)」
という
3つの自分の側面から、摂食障害の病理を読み解いていきます。

こちらも読んで下さいね。

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摂食障害 治療 慢性のうつ病(気分変調性障害) 対人関係療法 双極性障害対人関係-社会リズム療法 の 病院 なら 三田こころの健康クリニック
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対人関係療法とは編集

  • 対人関係療法とは 対人関係療法(Interpersonal Psychotherapy: IPT)は、期間限定の精神療法であり、もともとは非双極性・非精神病性のうつ病外来通院患者の治療法として、1960年代末からクラーマンやワイスマンによって開発され、1984年に出版されたマニュ.. 続きを読む
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