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2018-09-25

トラウマ反応に向き合うために感情と取り組む

このところ引用している『トラウマを乗り越えるためのガイド』に左脳右脳の面白い説明が載ってました。

ちょっと長いですけど引用しますので、みなさんも自分がどちらのタイプか考えてみてくださいね。

脳の左半球の皮質は、主に連続的に理論的に考えます。一方、右半球は、より全体的に空間的に考えます。
作家は左半球に大いに依存していますし、大工は右半球に大いに依存しています。
しかし、私たちはいつも、右と左の両方の脳をともに利用しています。
たとえば歌を聞くとき、言葉を使う歌詞と、音の調子の上がり下がりなどのメロディーの両方を、左半球と右半球の両方を使って認識しています。

右と左の脳半球の違いを理解するために、次に挙げる問題を頭の中で解いてみてください。

ある男性が、ガレージセールで中古のテーブルを購入しました。
その値段は新品のときの3分の2でした。
男性はそのテーブルに50ドル支払いました。
そのテーブルの新品のときの値段はいくらでしょうか?

もしあなたが分数を変換してかけ算をしたらならば(3/2×50=150/2=75)、あなたは左半球の処理の特色である線形論理的原則を活用していることになるでしょう。
一方、もしあなたが頭の中で3分の1が3つ分あることを示す1つの円柱の隣に、50とラベルづけされた円柱が並んでいる問題だと思い浮かべ、そして1/3=25となるので3/3=75だと頭の中で視覚的イメージを「見た」ならば、右半球の特色である空間的な論理を活用していることになります。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


このような左脳右脳の働きの違いと優位さは、さまざまな感情反応と関係がありそうです。
摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』では、女性的側面(≒右脳)と男性的側面(≒左脳)の違いを以下のように説明されています。

私たちの持つ女性的側面は賢く、直感的に心理をとらえ、オープンで、内面と外面両方からの情報を思慮深く受け止めてくれます。心理や未来像や真髄を受け止める器のような役割を果たすのです。
逆に男性的側面は、とても意図的で集中的で直接的です。私たちの思考や感情を理論的に説明して整理する、知的で理性的な側面とも言えます。したがって私たちの真理を明確にわかりやすく、世界へと発信する媒体のような役割を果たします。


ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語星和書店


素敵な物語』では、「感情や直観に耳を傾けることをやめてしまったとき、私たちの心は恐ろしい暗闇へと放り込まれます。そしてこの暗闇では、感情、空腹感、そして欲望が、すっかり不可解で破壊的な力へと変わり果て、私たちの身体と心に復讐してそれをめちゃくちゃに打ち壊してしまうのです。」と説明されています。

私たちが考えているよりもはるかに感情というものは身体的な反応なのです。
激しい感情を覚える場合、私たちは身体でその感情的な変化に気づいています。
繰り返し起きる極度のストレスのために、神経系が過敏になっていき、その結果、ストレスに対する身体的反応の仕方が変わってしまい、それが永続化します。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


トラウマ反応やフラッシュバック(10:90反応)だけでなく、普段から感情や身体感覚を感じないようにしていると、ささいな引き金(最後の麦わら)によって、大きな反応が引き起こされてしまいます。

自分を落ち着かせるために回避という方法に長年頼り続けると、自分の感情や気持ちと距離ができてしまうのです。
自分の感情の激しさや破壊的な力を恐れるために、自分の感情を押し殺そうとし、そしてだいたいのところそれがうまくできるようになります。
(中略)
しかし、最善の目標は、自分から感情を排除することではなく(たとえそれは可能だったとしても)、感情を受け止め耐える能力感情をコントロールする能力を高めることです。

感情は適応に役立つものなので、私たちの脳は、もともと感情を生み出すようになっているのです。
感情は、私たちにとってEメールのメッセージのようなもので、重要な情報や意味を伝えてくれるのです。
ですから、私たちはこのような感情を受け止められるのが望ましいのです。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


このように、感情や身体感覚を感じることを避けていると、感情は感じにくくなるだけでなく、感情を受け止めて穏やかな感情への気づきを取り戻すことができるようになるまでには、かなりの時間がかかるようになります。

とくに過去の不快な体験やトラウマ的な出来事に伴う感情体験は、10:90反応のように激しい感情が駆り立てられますから、それを乗り切るには練習が必要なのです。

過食症やむちゃ食い症の治療では「衝動の波に乗る」という方法で、衝動そのものを「感じる」練習から始め、何が起きたのかと24時間以内の出来事をふり返りますよね。

10:90反応が起きたときも同じ方法で向き合うのです。

あなたはメンタライズすることを学習しました。
すなわち、自分の反応を10:90反応と認識し、付け加わった90%がどこから来ているのかを理解することです。
このメンタライズによって、あなたは自分自身を落ち着かせ、10:90反応という激しい感情状態から抜け出すことができるようになります。
自分が10:90反応を体験しているのだという認識を持つことによって、自分は現在危機的状況にいるわけではないと悟れるようになります。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


このように「自分が10:90反応を体験しているのだ」メンタライズすること(認識を持つこと)を、心理学者のマリア・ホールデンは、強い情動が生じたときにすぐに行為に移るのをやめて、その情動について考える(メンタライズする)ことを意味する「一時停止ボタンの必要性」と説明しています。
(『対人関係療法による摂食障害の治療と『素敵な物語』&『8つの秘訣』』参照)



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では、『摂食障害から回復するための自分自身への信頼感の築き方』というタイトルで、「自分の気持ちをよく振り返り言葉にしてみる」ときに注意が必要なポイントについて説明しました。

乱れた食行動で悩む女性たち(摂食障害の患者さんたち)は、思考優位で自己客観視(セルフモニタリング)が苦手ですから、出来事や状況、対人関係によって引き起こされた感情や情動に名前をつける(解釈する)ことによって「脳内劇場」が活性化されて現実から離れてしまい、ますます思考(脳内劇場)の中に没入しやすくなる(言葉での解釈に囚われやすくなる)のです。

そのため『8つの秘訣』で「名前をつけて手なづけよう」に取り組むときは、今回紹介したフォーカシングなど「身体で確かめる(腑に落ちる)」やり方に取り組んでいく必要があります。
その方法は「感情とは、自分の思考に身体が反応して引き起こされるものである」に詳しく解説してありますよね。

身体の中に起きる情動に「感情の名前」をつけようがつけまいが、身体感覚は方向を指し示してくれています。それに従うこと(腑に落ちること)が「自分自身への信頼感(自尊感情・自己肯定感)」につながるのです。

Akoさんが「摂食障害が教えてくれること」の中の「自分の力で治すのは難しい」や「心療内科への通院を決めた理由」のエントリーで、過食嘔吐(食べ吐き)から回復するために受診を決意するまでの心の揺れ動きを書いてくださっていますので、参考にしてみてくださいね。

摂食障害から回復する10の段階」のうち、〔4.変わりたいけど、どうしたらいいのかわからないし、怖い〕〔5.変わろうとしたけど、私にはできなかった〕の[熟考期]にある人は、『素敵な物語』をベースに『8つの秘訣』を読み込んで、感情や情動との向き合い方をしっかりと理解して[準備期]に進んでおいてくださいね。

そしてAkoさんが「回復のためのガイド本」で紹介してくださっている『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』『摂食障害から回復するための8つの秘訣』と合わせて、『過食症:食べても食べても食べたくて』を読んでおいて、思い切って三田こころの健康クリニック新宿の「専門外来」に相談してくださいね。(※「一般外来」では、摂食障害対人関係療法による治療は行っていませんのでご注意ください!!)

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摂食障害・過食症 の対人関係療法慢性のうつ病や双極性障害の リワーク(職場復帰支援) なら 心療内科専門の三田こころの健康クリニック新宿
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2018-09-18

フラッシュバックを乗り越えるために知っておく必要のあること

外傷的出来事の治療では、フラッシュバック(侵入的に想起される外傷的記憶)への対処が必要になります。
外傷的記憶は通常の記憶とどう違うのでしょうか?

外傷的でない記憶は、あなたの記憶の貯蔵庫にしまわれており、あなたがその記憶を思い出そうとするとそこから引き出され、その記憶について考えるのを止めると、元の貯蔵庫に戻ります。

しかし、外傷的記憶はまったく違います。
外傷的記憶は私たちがそれを思い出したくないときでも、私たちのこころや私たちの現在の体験に侵入してきます。そして、さらに記憶の貯蔵庫に戻ってほしいときでさえ、戻ろうとはしないのです。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


思いだそうとしなくても音や匂いや触覚や光景や味覚にかかわる感覚的な体験や、漠然とした感情的感覚(無力感や対処不能な感じ、身動きのできない感じ、あるいは傷つきを感じること)によって引き起こされてしまい、その時の状況に圧倒されてしまうのがフラッシュバック(外傷的記憶)ということですよね。

フラッシュバックの引き金のことを「最後の麦わら」と呼ぶこともあるそうです。

そして、あるちょっとしたストレスや喪失が起きた後、あなたは精神的破綻に陥ります。
多くの場合、あなたとあなたの身近な人たちはそこで困惑してしまいます。

それは、あなたはこれまで多くのことを達成し、トラウマにも耐え抜いてきたにもかかわらず、それに比べればささいなことに思われる自動車事故や失業や引っ越しなどといった問題で、どうしてくじけてしまうのだろうかという困惑です。あなたは打たれ強く、落ち着いていて、重大な喪失やトラウマを耐えしのいで無傷でいられるようであるのに、と。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


いわゆるストレス状況下での過剰適応から過敏反応を起こし抑うつ状態におちいるときも同じように「最後の麦わら」が引き金になりますよね。

私自身もつい数ヶ月前に体験しました。今ふり返ると、こんなささいなことで?と思えるような一言で、こころが折れてしまったように感じたのです。

ですが、もしあなたがその最後のストレス、すなわち「最後の麦わら」をよく見つめたなら、次の3つのことがわかるかもしれません。

  1. そのストレスは、あなたが体験したトラウマに象徴的に結びついている。(例えば、手術をうけることが、象徴的に以前の暴力に結びついているかもしれません)
  2. そのストレスは、恐怖感、孤立無援感、なすすべのない無力感など、ある共通する感情によって、過去のトラウマとつながっている。
  3. そのストレスは、身動きがとれない感覚を作り出している。(それはそのストレスが、そのような感覚を喚起する過去のあるトラウマに強く関連しているため)

ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


私の体験はトラウマ体験ではなかったものの、「最後の麦わら」によって孤立無援感と無力感を強く感じたのでした。

それはずっとかかえてきたストレス因に対する感情反応(ストレス反応)をそのままにしていたためで、「最後の麦わら」が最後の城壁に触れたとたんに壁が崩れ落ちたみたいな感覚でした。

「最後の麦わら」によって引き起こされる上記1〜3のフラッシュバック反応を、メニンガー・クリニックのグループは「10:90反応」と呼んでいます。

現在の現実性の中に、過去のトラウマと類似している要素が10%あるだけで、過去から残りの90%が現在に引き出されてしまうのです。
まるで過去のトラウマがまた起きたかのように、闘争・闘争・凍りつきの状態に陥ってしまうのです。
そのトラウマは実際には存在していないものなので、現時点では、通常無害なほんの10%の要素が全面的なストレス反応で受け止められるということになります。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


引き金である「最後の麦わら」は、現在の現実が過去のトラウマ記憶と10%しか似ていない要素に過ぎないのに、過去のトラウマがよみがえったような反応が起きてきて、その外傷的記憶の中に没入してしまうのです。

10:90反応の起こしやすさを緩和していく際に、まず学ぶべき最初のステップは、自分の感情がまだ弱い段階であるときに自分の感情に気づくことです。

(中略)

感情が激しくなり、容易に元には戻れないところまで達する前であるなら、自己調整や他者による緩和であるこれらの方策が功を奏するのです。

そしてもし100%の激しさの感情を駆り立てるきっかけとなっている、現在の中の10%の要素を見つけることができたならば、現在の激しい感情の大部分を招いている過去のあることをとらえられるのです。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


つまり「10:90反応」というトラウマ記憶が再現されているものの、それは頭の中での出来事にすぎず、現実で起きているトラウマ体験ではないということなのです。

今、実際に現在起きているのは、無害なほんの10%ですから、私たちがまずしっかりと理解しておくことは、「反応(現象)は起きているが、実体はない」ということですよね。

三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では、『摂食障害から回復と自分に対する情動調律』というタイトルで、「情動知能(エモーショナル・インテリジェンス)」と呼ばれる「共鳴(感じてみること)」「内省(リフレクト)」「照らし返し(ミラーリング)」を自分の中で起きる反応に向けられるようになること(自分自身との対人関係)が、食行動障害や摂食障害から回復する道筋であることを説明しました。

このプロセスは、非言語的なプロセスで右脳の全体的・空間的な処理を利用するものです。
自分の中に起きた反応を「感じて」みて「身体で確かめる」プロセス(これが内省です)を行えるクライエントの方が変化できたということも説明しています。
このプロセスを三田こころの健康クリニックの専門外来で「触れつつ、巻き込まれない(一緒にいる)」と説明していますよね。

そして、「共鳴(感じてみること)」「内省(リフレクト)」は、「他人との関係を改善する(自己概念あるいは関係の中における役割についての気づき)」のプロセスに大きく影響してくるのです。
なぜなら人間のコミュニケーションも、言語的メッセージ(左脳)は約30%、非言語的メッセージ(右脳)は70%と言われているからです。

従来の対人関係療法による過食症・むちゃ食い症の治療では「共鳴(感じてみること)」「内省(リフレクト)」の重要性が認識されず、コミュニケーション・パターンの改善ばかりに焦点が当たっており、思ったような結果を挙げられずにいました。

乱れた食行動(食行動障害および摂食障害)からの回復は、ウィルフリイが説明しているように「食べ物で自分を麻痺させるのではなく、自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる、つまり自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善できれば、ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになる」ということなのです。

摂食障害をよくご存じないメンタルクリニックでは、抗うつ薬抗不安薬睡眠薬が処方されます。しかしそれでは過食症やむちゃ食い症は治らないだけでなく、悪化することもあるのです。

摂食障害を治したくて長いこと通院しているけど、薬を出されるだけで治った感じがしないと感じていらっしゃる方、過食(むちゃ食い)や過食嘔吐(食べ吐き)から回復したいと三田こころの健康クリニックの「専門外来」での治療希望される方は、『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』『摂食障害から回復するための8つの秘訣』とともに、ぜひこの『過食症:食べても食べても食べたくて』を読んでおいてくださいね。

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2018-09-10

トラウマからの回復に必要なレジリエンスの土台

トラウマは、極度のストレスそのものを指すだけでなく、極端な恐怖感や圧倒された感じ、そして極度の孤立感を体験することによって受ける長期的な悪影響といえますよね。
いつだったかちょっとだけ書いたことがありますが、トラウマ体験は主観的なものです。

対照的に極端な例を挙げると、実際には存在していない脅威をあなたが感じ取ったとします。
(たとえば強盗が銃を持っていると言い、あなたに金を出せと言ったが、実際にはその強盗は中を持っておらず、あなたを傷つけるつもりは決してなかったことが後でわかるというような場合です)

しかし、もしあなたがそのときに生命と身体の保全がおびやかされ、危うい状態にいると感じたならば、それもまたトラウマとなっても当然なのです。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


このようなストレス状況やトラウマ体験の影響から回復するこころの力を「レジリエンス」と呼びます。
レジリエンスは、ストレスや逆境に対して効果的に対処する心理的能力と言われています。

ホロヴィッツは、「自己-関係観察」ができるようになることを心理療法の諸学派に共通する目標と考えました。

三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」のブログ『聴心記』をお読みの方はお馴染みだと思いますが、「自己-関係観察」は、

  1. こころの状態についての気づき
  2. 感情・考え・情動のコントロールについての気づき
  3. 自己概念あるいはスキーマ(関係の中における役割モデル)についての気づき

の3つを含んでいます。
三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている対人関係療法もこの原則に沿っています)

つまり「自分自身についてどのように考え、他者とどのようにかかわり、ストレスや逆境にどのように対処するのか」というライフスタイルの変化を引き起こすことが心理療法の共通目標なのです。

このうち、「自分自身についてどのように考え、他者とどのようにかかわるか」の部分が「ストレスや逆境にどのように対処するのか」というレジリエンスの土台になるということです。
これは「メンタライズする能力」とも呼ばれます。

メンタライズということは、自分自身や他者のこころの状態、たとえば感情や欲求や願望や考えや態度などに、気づくということです。

私たちがメンタライズしているとき、私たちは自分自身の行動や他者の行動の意図を理解できます。

感情的になったこころの状態から距離をとって、自分の現在の体験についてより合理的で、明確な考えを持つことができます。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


「メンタライズする能力」によって、「ストレスや逆境にどのように対処するのか」に合理的で明確な考えができるのです。

しかし日常生活の中では、ストレス状況(ストレス因と自分の中で起きるストレス反応は避けられません。
それだけでなく、パートナーとの別離、離婚や死別などの喪失体験(日ごとに年をとり若さを失っていくことも含まれます)も生活の中では避けられないストレス状況ですよね。
あるいは犯罪に巻き込まれたり、被害に遭ったりなどの外傷的出来事に遭遇することだってあり得るわけです。

このようなストレス状況に対して、私たちは気持ちを奮い立たせるか(闘争)そのような状況を避けるか(逃走)、茫然自失してなす術もなく立ち尽くすのか(凍りつき)のうち、なじみのある唯一の方策を使い続けることで、ますます空虚になっていくのです。

英語でcrisisという言葉に相当する漢字の熟語は「危機」ですが、この危機という言葉は、「危うさ」を示す「危」という語と、「好機」や「機会」を示す「機」という語の2つから成っています。
通常、トラウマというものは恐ろしいものですが、そうであると同時に、メンタライズするのに必要な素材が存在している場合には、それが成長の好機となる可能性もあります。


ルイス、ケリー、アレン『トラウマを乗り越えるためのガイド創元社


三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている「過食症(食べ吐き)」「過食性障害(むちゃ食い)」の対人関係療法による治療では、過食(むちゃ食い)衝動が起きたときは、回復のチャンスが巡ってきたととらえるように、と教えていますよね。

対人関係療法で「自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる、つまり自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善すること」、つまり「自分自身や他者のこころの状態、たとえば感情や欲求や願望や考えや態度などに、気づくということ」によって、「ストレスや逆境にどのように対処するのか」の「感情・考え・情動のコントロールについての気づき」が生まれ、「ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになる」のです。

つい話が摂食障害の方にそれてしまいましたが、職場でのハラスメントなど対人トラウマ、夫婦/パートナー関係でのトラウマ、あるいは幼少期に形成された対人関係パターンの治療も同じように、「自己-関係観察」つまりメンタライジング能力を高めていくことが必要不可欠なのです。



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では、『気持ちに気づくことが摂食障害からの回復の第一歩』というタイトルで、摂食障害からの回復の重要なポイントになる感情(気持ち)を身体感覚として感じてみることを説明しました。

乱れた食行動で悩む女性たち(摂食障害の患者さんたち)の多くは、気持ちを感じることが苦手なアレキシサイミア、身体感覚を感じにくいアレキシソミアの特徴があり、過食や嘔吐という方法を使って衝動的に気分解消を図ろうとしますよね。

そのため気持ちを感じる、身体感覚を感じてみることは、どちらも最初はすごく難しく感じられます。
思考優位の乱れた食行動で悩む女性たち(摂食障害の患者さんたち)は、思考(考え)とまぎらわしい感情を感じてみようとするよりも、思考から最も遠い自律神経の変化、あるいは表情や身振りなど身体的変化をともなう情動(エモーション)を感じてみることに取り組む方が感情を体感しやすいのです。

感情や情動をただ感じて、その感覚を内省すること(触れつつ、巻き込まれない(一緒にいる))が、情動耐性を高める受容のプロセスになります。
つまり、乱れた食行動(摂食障害)から回復するためには、「気持ちに気づくこと」「気持ちを受け容れること」から取り組み始める必要があるということですよね。

この時期は夏の間に身体のシグナルを無視したムリなダイエットに取り組んだ人にとっては、リバウンド大食が起きやすくなります。
こういう時こそ、身体感覚がどんなニーズを訴えているのか、しっかりと身体の声を聞いてあげる必要があるのです。

食行動障害に対して、恐ろしいことに食欲抑制剤を投与されるトンデモ医師もいらっしゃるようです。
ダイエットとそのリバウンドを乱れた食行動につなげないためにも、三田こころの健康クリニックの「専門外来」に相談してくださいね。

摂食障害ホープジャパンの安田(山村)さんが訳された3冊目の本である『過食症:食べても食べても食べたくて』が出版されました。
著者であるリンジー・ホールさん自身の体験と多くの人の体験談とともに、過食症(食べ吐き)から回復するためのエッセンスが凝縮されていて『摂食障害から回復するための8つの秘訣』のダイジェスト版みたいな本です。

過食(むちゃ食い)や過食嘔吐(食べ吐き)から回復したいと三田こころの健康クリニックの「専門外来」を受診される方は、『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』『摂食障害から回復するための8つの秘訣』とともに、ぜひこの『過食症:食べても食べても食べたくて』を読んでおいてくださいね。

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2018-09-03

愛着トラウマと複雑性PTSD

反応性アタッチメント障害(愛着障害)」の診断には、「社会的ネグレクトおよび剥奪(ほとんどケアをされない孤児院で育てられたり、重度の虐待を体験したなど、養育の欠如や特定の養育者と一度もアタッチメントを発達させられなかった)」という出来事基準を満たすことが必須条件です。

また、「社会的ネグレクトおよび剥奪」があるからといって「反応性アタッチメント障害(愛着障害)」と診断されるわけではありません。
重度のネグレクトを受けた子どもの集団の中でも「反応性アタッチメント障害(愛着障害)」は10%程度にしか診断されないのです。

皆さんの中で、生きづらさや対人関係の問題などで医療機関を受診していたり、あるいは心理療法やカウンセリングを受けていらっしゃる中で、愛着障害と言われた方もいらっしゃるかもしれません。

よく考えると、「ある危機的状況に接し、あるいはまた、そうした危機を予知し、恐れや不安の情動が強く喚起された時に、特定の他個体への近接を通して、習慣的な安全の感覚を回復・維持しようとする」アタッチメント行動受診する、治療を受ける、相談する)があること自体が、すでに「反応性アタッチメント障害(愛着障害):特定のアタッチメント対象の欠如」ではないのです。
さらに「社会的ネグレクトおよび剥奪」がなく「反応性アタッチメント障害(愛着障害)」と似た症状があるなら、鑑別疾患の筆頭にあげられている「自閉症スペクトラム(いわゆる発達障害)」の可能性が非常に高いということかもしれませんね。

「社会的ネグレクトおよび剥奪」まではいかなくても、幼少期の虐待の被害者たちはBPD(註:境界性パーソナリティ障害)という「強力な否定的含意を持つ(軽蔑的な意味を帯びた)診断名を付与されやすい」として、ハーマンは「複雑性PTSD」という代替的診断を提唱しました。

(複雑性PTSDでは)従来のPTSDの中核症状(再体験、回避、過覚醒)に加えて、怒りや暴力の爆発、自傷行為など感情制御の障害、自分は汚れているなどの自己感覚の変化と他者への不信感、孤立などの症状、さらに心的外傷の加害者についての歪んだ感覚(復讐への没頭や、逆に加害者の合理化)などが挙げられています。

崔『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服——<心を見わたす心>と<自他境界の感覚>をはぐくむアプローチ星和書店


ハーマンは、戦争捕虜であったこと、家庭内暴力の犠牲者であったこと、幼少期の虐待の被害者であったことなど、「期間にわたって支配と統制に服従し続けた」ことによる問題群を「特定不能の極度ストレス障害(DESNOS)」としてDSM-IVの診断として取り上げるべきと主張していました。
しかし、反論も多くあったようです。

トラウマを体験しておりDESNOSの診断基準を満たす人たちの集団の約半数はPTSDの診断基準を満たしていないことがわかりました。
(ジュリアン・フォード)の結論によれば、「DESNOSは、PTSDの複雑な亜型であり、PTSDと併存するが、PTSD自体とは異なるものである」とのことです。


アレン『愛着関係とメンタライジングによるトラウマ治療』北大路書房


ジュリアン・フォードとクリスティーン・コートイスは、複雑な心理的トラウマを「深刻なストレスに直面したことの結果」であると定義しています。

その特徴とは、「1) 反復的または長期間にわたる、2) 養育者または養育責任を有することが明らかな他の大人から害を与えられるか見捨てられることを伴う、3) 幼児期や青年期のように、発達的にみて脆弱な人生段階で生じる」ということです。

アレン『愛着関係とメンタライジングによるトラウマ治療』北大路書房


「複雑な心理的トラウマ」による影響は、アレンが「愛着トラウマ」として「情動的苦痛を引き起こすと同時に、苦痛を調整する能力の形成を妨げる」のです。

トラウマは、耐えがたい情動的苦痛の中に心理的に孤立無援で何度も放置されることから発生するのだというのが、私の見解です。早期の愛着トラウマ——不適切な養育——は、この点において最も有害なのです。
(中略)
ところがトラウマ的愛着関係は、情動的苦痛を軽減できないばかりか、それを生み出してしまいます。
この2つの要素が合流するために、子どもは、愛着を求めていながら愛着を恐れるという極端な拘束状態におかれることになります。


アレン『愛着関係とメンタライジングによるトラウマ治療』北大路書房


「愛着を求めていながら愛着を恐れる」状態、ストレンジ・シチュエーション法(SSP)で特定不能、あるいは〔無秩序−無方向型〕と呼ばれるアタッチメントパターンであり、成人アタッチメント面接(AAI)では、短時間の解離により語り(ナラティヴ)の首尾一貫性が途絶した状態(未解決−無秩序型)として観察されます。

あるいは質問紙法で、「私は情緒的に親しい関係を求めているが、いざとなると他者を完全に信じることが難しく、他者に依存することも難しい。他者とあまりに親しくなると自分が傷つくのではないかと恐れる」という〔おそれ型〕として表現されます。

私はこの本を書くに当たり「外傷的育ち」という言葉を選びました。
子どもの頃に虐待(身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト)を受けた体験、それに加えて過度な支配や制限、自主性の剥奪や従属の強制、外傷になるような離別や死別など、心や脳にダメージを与えるような養育体験とその影響を「外傷的育ち」と呼びたいと思います。


崔『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服——<心を見わたす心>と<自他境界の感覚>をはぐくむアプローチ星和書店


しかし〔無秩序−無方向型〕あるいは〔おそれ型〕だからといって、「複雑な心理的トラウマ(愛着トラウマあるいは外傷的育ち)」があるとは限らない、ということです。
日本人大学生のうち〔おそれ型〕は約1/3(29%)に見られますが、この人たちがすべて「広い意味での愛着障害(アタッチメント障害)」というわけではないですよね。
逆は必ずしも真ならず>ですから、注意してくださいね。



三田こころの健康クリニック新宿「専門外来」の『聴心記』では、『何が過食衝動・嘔吐衝動の引き金になるのか』というタイトルで、過食衝動あるいは嘔吐衝動を引き起こしやすい「内的引き金(感情刺激)」について解説しました。

多くの本には、過食や過食・嘔吐を引き起こすのはストレスであり、あるいはネガティブな気持ちなどの心理的苦痛であると説明してありますが、今回はAkoさんがブログ『摂食障害が教えてくれること』の中で書いてくださっていた「嬉しい過食」と「疲れた過食」についてです。
(ちなみにAkoさんは回復の10の段階のうち9段階目です。→「バイバイ、摂食障害。」参照)

アルコールや薬物依存症の自助グループでしばしば使われているという「HALT(ハルト)に気をつけろ」という警句の中の、Hはungry(空腹)が当てられますが、近年はこのHをappy(多幸感)と言い換える場合があるそうです。
また「HALT(ハルト)」の中のired(疲労感)も過食や過食・嘔吐の「内的引き金」になることが多いのですが、摂食障害臨床ではこれまで言及されたことがありませんよね。

ここに「アレキシサイミア(感情を自覚することが苦手)」あるいは「アレキシソミア(身体感覚を自覚するのが苦手)」で、心の動きや身体感覚を「抱えておくことができない(感情不耐・気分不耐)」ため「食べる」「嘔吐する」という行動をつかって、麻痺させたり感じないようにしたりする「乱れた食行動(摂食障害)」の中心的な病理があるのです。

この乱れた食行動(むちゃ食いや食べ吐き)の心の動きについては、『過食症:食べても食べても食べたくて』を読んでみてくださいね。

摂食障害を治したくて長いこと通院しているけど、薬を出されるだけで治った感じがしないと感じていらっしゃる方は、三田こころの健康クリニックの「専門外来」に治療を申し込んでくださいね。

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摂食障害・過食症 の対人関係療法慢性のうつ病や双極性障害の リワーク(職場復帰支援) なら 心療内科専門の三田こころの健康クリニック新宿
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2016-01-12

愛着トラウマの脳科学

食べものと人とのかかわりの類似点は
「料理をすること」と「共食すること」で
そこに相手との関係性が反映されるといわれます。

その中でも共食とは、食べ物を独占せず他個体に分け与える配慮があり、食べることによる喜びや楽しさを共有し、そのことによって個体間の結びつきを高めるものとされている。
長谷川智子「子どもの健やかなそだちと食べること」そだちの科学 25 (10): 53-56, 2015

対人関係療法が「過食症」や「むちゃ食い障害」に有効なのは
自己効力感と自己肯定感が高まってくる過程で
「境界線」や「敷地」という考え方を通して
自分と考え方が違う他者を認められるようになり
他者との関係が再構築されることによります。

この「個体間の結びつき」が養育関係や夫婦/パートナー関係など
重要な他者である場合に、アタッチメント・システムが作動します。
(『アタッチメントの意味』参照)

摂食障碍という病を関係病理の視点からみていくと、「甘え」体験の質が世代を超えて伝達していることがわかる。
しかし、それは摂食障碍という病が世代を超えて伝わることを意味しない。
幼児期に「甘えたくても甘えられない」という関係病理が、「育てられる者」としての子ども時代に摂食障碍という病をもたらし、「育てる者」としての親になった際には、自らの子育ての中で自分の子どもに「甘え」のアンビヴァレンスをもたらすことにつながっているということである。

小林隆児「「育てられる者」と「育てる者」としての摂食障碍という病」そだちの科学 25 (10): 72-76, 2015

「甘え」を「愛着」と読み替えると
アタッチメント神話の行方』で書いた
「世代間伝達」の意味がよくわかりますよね。

このような養育関係における「「甘え」の欠如」と
一般に愛着障害として知られる「不安定型愛着スタイル」が関係します。

一方、幼少期の身体的・性的虐待やネグレクトと密接に関連する
「恐れ/未解決型」「安全基地のゆがみ」
「愛着障害(反応性愛着障害・脱抑制性社交障害)」など
治療の対象となる「アタッチメント関連トラウマ」では、
ソーシャル・エンゲージメント・システムに関わる
腹側迷走神経の活性化不全があり、
「シャットダウン(解離)」が起きることがわかっています。

アタッチメント・システムを「養育者を安全基地として利用する乳児の行動システム」
つまり、トラウマの脅威を対人的に緩和するシステムととらえると

  • 恐怖などの情動中枢である「扁桃核」
  • 内的な感覚への気づきや感覚的情報と感情との統合、動機づけに関わる「帯状回」
  • 攻撃的および運動的衝動の調節に関わる「前頭前野(眼窩面)」
  • 気づきや意味づけに関わる「島」

を含む回路が関与していることが知られています。

これらの部位は摂食障害でも機能不全がみられる領域でもあり
また前帯状回と島は、『マインドフルネスの脳科学』で触れた
「顕現性ネットワーク」に関わる中枢でもあるのです。

つまり、トラウマを背景にするアタッチメントの問題や
「とらわれ型/不安・アンビバレント型」の愛着スタイルの修復、
あるいはトラウマやむちゃ食い障害を含む過食症治療では
三田こころの健康クリニックで行っているように
マインドフルネス(顕現性ネットワーク)を使って
皮質とのつながり(中央実行ネットワーク)を強めていくことが必要
ということですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害と脳機能というタイトルで、
摂食障害からの回復に必要な

  • 心の中の過食衝動と向き合い、嗜癖症状とトラウマ症状を軽減すること(自分との折り合い)
  • 対人関係療法によるアタッチメントの修復

という、2つの要素について書いています。

摂食障害の文献を読んでいると、専門家側から書かれたものと、当事者側から書かれたもののあいだに、大きな乖離があるように思われる。
そしてその乖離自体が、治療効果の低さと密接に関わっていると思われる。

宮地尚子「食べることの調律もしくは食べることの失調−−複雑性トラウマと摂食障害そだちの科学 25 (10): 77-82, 2015

8つの秘訣』は、かつて当事者であり現在は治療者である
キャロリン・コスティンさんとグエン・グラブが書かれているので
専門家側と当事者側の乖離がありません。

8つの秘訣』を参照にして対人関係療法を併用することで
高い治療効果が得られますので、
過食症やむちゃ食い障害で通院して薬しか処方されていない方は
三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

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2015-07-21

愛着障害と複雑性PTSD

何がトラウマで、何がトラウマではないのでしょうか。
また、どこまでが「正常」で、どこからが「病気」なのでしょうか。
トラウマ体験の種類や強度、因果関係の強さ、反応の種類や強さが、ある程度の判断基準になりますが、これらを分ける境界性が明確にあるわけではありません。

宮地尚子『トラウマ』岩波新書

と宮地教授は書かれており、水島先生も

診断は気分変調性障害であっても、いろいろとトラウマティックな経験をしている人はいますので、一見区別がつきにくいケースも多いのですが、その外傷の強度はどの程度か、外傷がよみがえるような症状(悪夢やフラッシュバック)があるか、覚醒亢進状態があるか…というあたりで診断を区別していきます。
水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

とおっしゃっています。

「気分変調性障害」と関連があるトラウマは
水島先生が書かれているような強度のストレス体験(トラウマ)後の
再体験症状(フラッシュバック)が消退した慢性のうつ状態であり、
多くは二重うつ病の形で発症し、治りきれずに慢性化するという経過をたどります。

「複雑性PTSD」と愛着(アタッチメント)の関連については

そして、養育者が虐待をしたり、子どもにとって理解不能な行動で不安を喚起し続ける場合、子どもも矛盾した不可解な行動をみせるようになります(「無秩序・無方向型アタッチメント」と言います)。
無秩序・無方向型のアタッチメントが、子どもの精神発達を最も妨げます。
(中略)
無秩序・無方向型アタッチメントの場合、近づくか遠ざかるかという、生きるための一番基本的なオリエンテーションが壊されている状態なので、「アタッチメント」や「愛着」という言葉を使わない方がいいのではないかと、私自身は思っています。
(中略)
けれども、無秩序・無方向型の場合、むしろ愛情がありすぎて、子どもに厳しいしつけをしてしまったり、子どもの愛情を深読みして自分がバカにされているように感じたり、といったことが少なくありません。
愛情が足りないのではなく、親の側の感情や認知の安定が欠けていたり、自己肯定感がなかったり、「自然」な子育ての方法がわからなかったりするのです。
自分の感情を自己調節する能力は、安定したアタッチメント関係の中でできていくのですが、親自身が子どものときにそういう環境になかったことも少なくありません。

宮地尚子『トラウマ』岩波新書

子どもの無秩序・無方向型の愛着パターンは
成人では「おそれ型(未解決型 or おそれ/回避型)」として知られます。

つまり「複雑性PTSD」は、子どもの頃に
身体的・心理的・性的・教育的な虐待や、ネグレクト、
配偶者間暴力の目撃など、持続性の強度のストレス体験があった成人の

・気分調節薬が無効の双極II型に似た気分変動:子どものかんしゃくの爆発、成人女性の月経前不快気分障害(PMDD)
・記憶の断裂:1日以内の食事内容を想起できない、記憶の断片化の常在
・時間感覚の混乱:日内リズムの慢性的混乱、眠気の消失
・フラッシュバック(再体験症状・侵入的想起)の常在化
・生理的症状と心理的症状の相互混乱・慢性疼痛
・希死念慮:他者への恒常的不信、自傷、非現実な救済願望

などの特徴を、浜松医科大学の杉山先生が挙げておられます。

さらに問題を複雑にしているのは
最近多く診るようになった「自閉症スペクトラム(発達障害)」との関連です。

また、狭義の「発達障害」を持つ子どもは、特定の刺激にとても敏感なためにトラウマ反応を起こしやすい傾向があります。
一方、視線を合わせにくいなど、養育者にとって育てにくい特徴をもつために、子育て困難をもたらし、虐待につながってしまうことも皆無ではありません。
「発達障害」のような症状から、虐待を見抜き、予防につなげることは大切です。ただ、「発達障害」をもつ子どもの親(特に母親)が、常に虐待の疑いをかけられるというのは、とても酷です。

宮地尚子『トラウマ』岩波新書

このような発達障害や、「愛着軽視型(拒絶/回避型)」
「とらわれ型(不安/アンビバレント型)」など、
再体験症状(フラッシュバック)や覚醒亢進症状がなくても
養育者の厳格な態度や、一貫しない対応が少しでもあったら
「複雑性PTSD」だと過剰診断している医療機関もあるのです。
(場合によっては本人は愛着障害と思っていることも多いのです)

外傷的なストレスを体験をした人が全員、
「複雑性PTSD」を発症するわけではないうえに、
過去に虐待があったわけでもなく、
「おそれ型(未解決型 or おそれ/回避型)」ではない、
適応障害(学校や仕事での不適応)の人を
「トラウマ」や「複雑性PTSD」と診断することで、
親の育て方への糾弾と、親子関係の軋轢を生みますから
この医療機関の安易な「複雑性PTSD」診断は
大きな間違いということがわかりますよね。

さらに不安定型愛着スタイル(岡田先生のおっしゃる愛着障害)などの
対人関係の悩みや葛藤など、治療が必要な疾患ではない状態を
「複雑性PTSD」と過剰診断(誤診)されているわけですから
「複雑性PTSD」と診断されている方や
ご自分で「愛着障害かもしれない」と感じられている方は
ちょっと注意してみてくださいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害と感情の自己コントロールというタイトルで、
対人関係療法による治療で取り組んでいく
「自分の気持ちをよく振り返る」という感情に向き合うプロセスは、
過食症からの回復には必要不可欠なことを書いています。
そして、過食症からの回復には感情をありのままに認め、
ネガティブな感情を手放していくプロセスが必要なこと
について説明をしています。

対人関係療法による治療希望される過食症の方だけでなく
気分変調性障害で通院中の方もぜひ参考にしてみてくださいね。

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2014-12-22

自尊心と育てられ方との関係

「自尊心」の低さを作り出すものとして、虐待をはじめとする「育てられ方」の問題が挙げられます。
最も頼りにすべき実の親から虐待を受けた、「産まなければよかった」と言われた、などというのは、「自尊心」を決定的に下げる原因となります。
自分なんて生まれてくるべきではなかったなどと思ったら、自分の存在を肯定する気持ちになれるわけがありません。
また、ふつうであれば子どもをかわいがるはずの親から否定されることで、「自分は人間としてできそこないなのだ」「自分はどこかおかしいにちがいない」という感覚を植え付けられることにもなります。
(中略)
また、過保護にされた場合にも「自尊心」は低くなります。

水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

このように、育てられ方は
自尊心(自己肯定感+自己効力感)」と密接に関わりますよね。

とくに乳児期〜幼児期に虐待やネグレクトを受けると
トラウマと気分障害の関係』に書いたように
発達トラウマ障害(DTD)」を基盤にして

幼児期〜児童期:調節障害、愛着障害、情緒障害、児童期の双極性障害
思春期・青年期早期:ADHD、反抗挑戦性障害、社会的行動の障害、物質乱用、過食症気分障害(慢性うつ病双極性障害)
青年期〜成人期早期:パーソナリティ障害、解離性障害、身体表現性障害、自傷・自殺念慮

など、成長過程に応じてさまざまな病像を示すことが知られています。

乳児期から幼児期に愛着障害や情緒障害だった人が
児童期には忘れ物やケアレスミスが多かったり、
じっとしていられなかったりなどの「ADHD様の症状」を示し、
思春期から青年期にさしかかると「過食症」や「慢性うつ病」を発症し
さまざまな衝動行為(リストカットや万引き)や
アルコールの問題など感情コントロールの障害を引き起こす
ということですよね。

愛着障害』の著者の岡田先生は
発達トラウマ障害(DTD)」から派生する
さまざまな病像をひっくるめて「愛着障害」と呼んでおられるみたいですね。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

このブログで反応性愛着障害の検索が多いのですが、
対人関係療法では「発達トラウマ障害(DTD)」から派生する
虐待やネグレクトによるさまざまな病像を
「複雑性PTSD
とみなすこともあります。
その根幹にあるのは「自尊心の低さ」ということもわかっています。

たとえば、レイプやいじめなど対人トラウマを受けた人は、
人に対する警戒心が強いにもかかわらず、
病気の事も含めて、つい自分のことを喋ってしまうことがあります。
(医療機関で正しく診断されないことも多いので注意してくださいね)

また社交辞令が使えずに、つい本当のことを言ってしまい、
相手につけ込まれたり、自責感を抱いたり
さらに自尊心が低下してしまう悪循環におちいりやすいのです。

  • 自分の気持ちを話せない
  • 自分の気持ちがわからない
  • 自分には価値がない
  • 自分は浮いているのではないか
  • 自分は変なのではないか

などの『気分変調性障害』とそっくりの感じ方は
反復性うつ病」や「双極II型障害」、
複雑性PTSDを含むPTSD(トラウマ関連障害)
社交不安障害(対人トラウマを契機に発症するタイプ)
などでもみられる「自尊心の低さ」を反映した「症状」なのです。

つまり、このような「自尊心の低さ」は
小さい頃から対人関係のルールがわからずに育ってきたことで
どういう言動に対し、どういう反応が返ってくるかがわからないという症状なのです。

これらの「自尊心の低さ」にともなうさまざまな症状を
「心のクセ」とか「仮面の奥のインナーチャイルド」
などと言っているカウンセラーもいるみたいですが、
そうではなく、対人関係療法治療可能な病気の症状なのですよ。
(『カウンセリングと精神療法の違い』参照)

対人関係療法による治療を導入する時には
幼少期の虐待の強度と持続、ソーシャルサポートや当時のストレス因など
生育歴についての詳細なアセスメントを行った後、
それが「現在の対人関係にどのように反映されているか」という
対人関係パターンと愛着スタイルを把握し文脈的に現在の診断を診ていきますよね。

そして三田こころの健康クリニックで行っている
対人関係療法による治療で行っていくことは
「人間というのはこういうものだ」という対人学習であり、
エクスポージャー(曝露)や想像(イメージの中)ではなく、
重要な他者を中心として他者とのやりとりの中で実体験する
修正情動体験や修正アタッチメント体験
によって
自己肯定感とコントロール感を育てていくんですよ。

「愛着障害」ではないかと悩んでおられる方や
なかなか良くならない「うつ病」や「双極性障害」、
または「摂食障害過食症/むちゃ食い障害)」で通院されている方は、
三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』
最近の摂食障害』を参考にして
対人関係療法による治療か適応になるかどうかについて
三田こころの健康クリニックに相談してみて下さいね。

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2014-12-01

トラウマという視点

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』の
診断分類の信頼性を調べたトライアルで
1人の患者を個別に診断した場合の
2人の臨床家の診断一致率が検討されました。

おどろくべきことに、
うつ病」と「重篤気分調節症(DMDD)」では
評価者間の診断一致率はかなり低く、
また「混合性不安抑うつ障害」では
評価者間信頼性はない(診断が一致しない)
と判断されています。

つまり、DSMの診断のように横断的症状チェックリスト方式では
診断不一致率が高くなる(つまり誤診が増える)可能性がある

ということですよね。

これに関して、浜松医科大学の児童青年期精神医学の
特任教授である杉山登志郎先生は
発達障害と複雑性トラウマ(複雑性PTSD)は誤診の宝庫とおっしゃいます。

さて精神科臨床において、これまで十分に考慮されず、したがってきわめて誤診や医原性の増悪があちこちに転がっている病態が二つある。
一つは発達障害であり、もう一つは複雑性トラウマである。
(中略)
さて複雑性トラウマもまた、きわめて誤診や医原性の増悪が多い問題である。
一つはうつ病の誤診である。もう一つは統合失調症の誤診である。
(中略)
複雑性トラウマの症例に抗うつ薬が処方されると、気分変動が激しくなって、自殺や衝動行為の危険が増してしまう。
ついでに言うと、抗不安薬も意識状態を下げ、行動化傾向を促進するので禁忌である。
そして解離性幻覚に抗精神病薬はまったく無効である。

杉山登志郎・書評『上岡陽江、大嶋英子「その後の不自由」』in こころの科学 177: 105, 2014, 日本評論社

と述べておられます。

発達凸凹(Broad Autism Phenotype)」を含む「発達障害」は
成人の精神科臨床の場でもかなり増えた印象があります。

小児期には「発達障害」の診断基準は満たさなかったものの
思春期から青年期に次第に不適応が目立つようになり、
それまでのやり方が通用しなくなった状態で
生まれ持った発達障害の特性が顕著になったケースも
うつ病」や「双極性障害」、ときには「統合失調症」と
誤診されている場合もかなり多いようです。

杉山先生は、「発達障害」がある人は
抗うつ薬により躁状態を起こすことがある
とおっしゃっています。
現在の診断基準では、抗うつ薬による躁転は双極性障害に含めるため
双極性障害の中には、かなり発達障害が含まれているということなのでしょう。

また、PTSDの4つのPTSD診断基準(侵入性想起、回避、否定的認知・気分、過覚醒)
すべて満たすわけではないけれども、2項目のみを満たす「閾値下PTSD」もまた
「慢性うつ病」や「双極性障害(双極II型)」と診断されてしまいます。
たとえば幼少期の虐待やネグレクトによる愛着障害の人が、
思春期になって抑うつ状態や気分の不安定さを示す場合ですよね。

さらにトラウマの出来事と症状の出現に時間差があったときは、
PTSDが疑われずに、単なる考えすぎだとか性格の問題と言われ、
抗うつ薬抗不安薬などが投与され、改善がみられない患者さんたちが、
対人関係療法による治療希望されて
三田こころの健康クリニックを受診されるのです。

トラウマが背景にあり、それが考慮されていない場合は
薬物療法や認知行動療法での反応が悪く、
梅こんぶさんもブログで書いていらっしゃるように
認知行動療法やカウンセリング、薬物療法はどれも罪悪感を刺激されてしまう
そのため、逆に悪化することも多いのです。

つまり薬物療法にしろ精神療法にしろ
治療を行う場合は当然のことなのですが
背景因子の把握、疾患の成立プロセスなどを考慮し
各発達段階において特異的な精神病理的な表現型のうち
発達課題と精神病理はどのような関係なのか」とか
どの症状が疾患特異的なのか」という
ライフヒストリーを縦断するような視点が必要で
その人に合った治療法を選ぶ必要があるということですよね。

そもそも対人関係療法を導入する際に行う
「フォーミュレーション(診立て)」では、
ライフヒストリーに沿った出来事と症状の位置づけを行います。

そして対人関係療法による治療では
フォーミュレーション(生き方そのもの)に沿いながら
必要な対人スキルを身につけていくことで
自分ではコントロールできない病気の症状も改善していく
という結果をもたらしてくれるのですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
『愛着トラウマと発達障害』というタイトルで
愛着トラウマや不適応という環境要因によって
発達障害らしさが顕著になるだけでなく、
各発達段階において特異的な表現型を呈するようになります。

また「複雑性トラウマ(あるいは「閾値下PTSD」)」では
拒食の要素のない「過食症/むちゃ食い障害」を呈することも多いのです。
そのため「非定型で難治性の気分変動」を示すような
「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」や「過食症/むちゃ食い障害」に対しては、
トラウマという視点での診断見直しが必要
であることを書いています。

なかなか良くならない「うつ病」や「双極性障害」、
摂食障害過食症/むちゃ食い障害)」で通院されている方は、
トラウマの視点で診断を見直してみる必要があるかもしれませんから
三田こころの健康クリニックに相談してみて下さいね。

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2014-10-20

感情がコントロールできない

月経開始前(2週間前〜月経2日目にかけて)に

・気分の不安定さ(突然涙もろくなる・拒絶に敏感になる)
・苛立たしさ(怒りの爆発・対人関係での摩擦)
抑うつ感、絶望感
・不安・緊張や気分の昂(たか)ぶり

などの感情症状にくわえ、

・通常の活動における意欲減退
・集中困難
・疲労感・倦怠感
・食欲の変化(特定の食物への渇望・過食/むちゃ食い傾向)
・過眠または不眠
・圧倒される、または制御不能という感じ
・他の身体症状:乳房の圧痛、関節痛、浮腫、体重増加

などの非定型うつ病に類似した症状を伴う「月経前不快気分障害(PMDD)」でも
感情のコントロールができない感じを伴います。

「月経前不快気分障害(PMDD)」は環境因子として
季節の変化のほかにも(『季節性感情障害〜「冬季うつ病」と「夏季うつ病」』参照)
女性の社会的役割や、ストレス(対人関係での傷つき)などが関連することが知られています。

苛立たしさは「思い通りにならない/予定が狂った」ときの感情ですし、
「易怒性」と呼ばれる癇癪(かんしゃく)(怒りの爆発)は、
相手から理不尽な決めつけを受けたことで
自尊心(いわゆるプライド)や関係性(愛着)が
「攻撃された/傷ついた」と感じたときにスイッチが入り
ますよね。

「感情がコントロールできない」(易怒性)をこのように見ると
「非定型うつ病」に似た「抑うつ状態」と「トラウマ」には密接な関係がある
ことがわかりますよね。

DSM-5で抑うつ症候群に分類された「重篤気分調節症(DMDD)」は
児童から青年期(6歳〜17歳)の感情調節不全で、
虐待による愛着形成の障害により、
みずから不安をなだめることができず、
周期的に癇癪(かんしゃく)ををくり返すもので、
当初は「双極性障害」と考えられていましたが
抑うつが中心症状であるため「抑うつ症候群」に含まれたという経緯があります。

実際「双極性障害」や「気分変調性障害」の併存のある/なしにかかわらず、
「トラウマ関連障害」では「非定型うつ病」の状態を呈しやすい
ことも臨床経験からわかっています。(『気分反応性をともなう気分障害』参照)

双極性障害」にトラウマ(あるいはPTSD)が併存する場合、
誘因のない内因性の気分エピソードではなく、
対人関係に関連する出来事がきっかけとなり
状況反応的に、躁状態 or うつ状態を呈しやすい
ことが知られています。
(『愛着やプチ・トラウマが関与する気分変調性障害の治療』参照)

つまり「感情がコントロールできない」ときは、
その状況反応性を考えてみると、
対人ストレス(対人関係の軋轢・摩擦)が引き金になっており、
背景に「対人トラウマ(とくにII型トラウマ)」がある場合も多い
のです。

しかし、メンタルクリニック心療内科受診すると
感情と気分は違うにもかかわらず、感情の起伏を気分の波とみなされ
抑うつ状態」や「うつ病」あるいは「双極性障害」と診断されて
何種類も薬を処方され、休職を勧められたりしますよね。

背景にある「トラウマ」に対しての位置づけと対処はなされないので、
抗うつ薬抗不安薬によって逆に悪化したり、
気分調節薬でも気分の変動が止められないなどが起きて
薬の量や種類が増えるだけで、難治例・遷延例とされていることも多いのです。
(実際、「トラウマ関連障害」と診断を変更し対人関係療法を導入して、減薬・断薬が可能になることも多いのです)

トラウマが病理性を持つ大きな要因は
トラウマそのものの大きさ(悲惨さ)よりも
○ソーシャルサポートの乏しさ
○トラウマを受けた時点でのストレス

が関与することがわかっているからなのです。

しかし、多くのカウンセリングや心理療法では
クライエントの病態水準の問題(脆弱性)と考えられており、
場合によってはパーソナリティ障害や精神病圏とみなされて、
個人の問題とされることが多いのですが、
このようなやり方では、トラウマで最も影響を受ける
自尊心だけでなく周囲の人たちへの信頼感の回復も期待できませんよね。

また愛着トラウマ(愛着障害も含む)や複雑性PTSDの患者さんは
警戒心が強いにもかかわらず、つい病気のことを話してしまう
という矛盾した行動をしてしまうのは、周囲の人たちへのサポートを求める動きとも見えますよね。
このような行動は病気の症状とはいえ、つけ込まれ、
さらなるトラウマにつながることも多いのです。
トラウマ症状がトラウマ体験を招く

このようなトラウマによる「抑うつ状態(トラウマうつ病)」に対し
愛着の問題やプチ・トラウマが関与する気分変調性障害の治療』で触れたように
三田こころの健康クリニックの対人関係療法では、
愛着(アタッチメント)関係の修復と再構築を目標として
思春期版の対人関係療法(IPT-A)』を導入することもあるのです。

「トラウマ関連障害」に対する『思春期版の対人関係療法(IPT-A)』の応用は
三田こころの健康クリニック独自のアレンジと自負していたのですが、
カナダのCANMATガイドラインでは
PTSDうつ病の併存に対人関係療法治療の第1選択肢として挙げられており、
なかでも『思春期版の対人関係療法(IPT-A)』による治療
認知行動療法よりも良好な結果が得られたと報告されていました。

つまり対人トラウマを背景にした「慢性の抑うつ状態(トラウマ関連障害)」は
三田こころの健康クリニックで行っているような
『思春期版の対人関係療法(IPT-A)』による治療
世界的にもスタンダードな治療だということですよね。

トラウマや衝撃体験をお持ちの方は
診療申し込み票(問診票)の記入が辛く感じられることもあるので、
一人で悩まずに三田こころの健康クリニックに相談して下さいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
トラウマと気分障害の関係」というタイトルで
感情調節不全や抑うつ状態をともなう複雑性PTSD
愛着障害を呈することもある「発達性トラウマ障害(DTD)」について書いています。

「トラウマ関連疾患」は「双極性障害」と誤診されやすいこと、
「愛着障害」などの対人トラウマによる影響は
発達の各段階において特異的な表現型を示す
ことから、
三田こころの健康クリニックで行っているような
発達精神病理学をふまえた包括的な診断が必要ですよね。
(発達障害(自閉症スペクトラム症)やADHDも
双極性障害」と誤診されることが非常に多いことが知られています)


なかなか良くならない「うつ病」や「摂食障害」、
あるいは「感情がコントロールできない」と感じられる方や
「愛着障害(愛着トラウマ)かもしれない」と悩んでいらっしゃる方、
「対人関係がいつもうまくいかない」と感じられる方は、
気づかれていないトラウマの影響の可能性がありますので、
思い切って三田こころの健康クリニックに相談してみて下さいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2014-09-15

「解離」と「過食/むちゃ食い」

摂食障害、とくに「神経性やせ症/拒食症・過食・排出型」や
「神経性過食症」や「過食性障害/むちゃ食い障害」の人の中には
過食やむちゃ食いの最中にボンヤリして
食べているときのことを憶えていない方も多いのではないでしょうか。

そもそも、過食という症状そのものは、
「ストレスを麻痺させる」ため「プチ・解離」と言えますし、
アレキシサイミアや気分不耐とも関連があるのです。
(『アレキシサイミアと情動対処行動〜多衝動型過食症』参照)
(リストカットも同じような側面があると考えられています)

場合によっては、知らない間に買い物をしたり、
あるいは気がつくと買った記憶のない品物を持っていたり
万引きや「窃盗癖(クレプトマニア)」に間違われることもあります。
(『摂食障害と問題行動(万引き)』参照)

このような症状は「解離」と呼ばれますが
生育歴の中で、暴力や虐待、いじめなどの外傷体験があったり、
あるいは「安心出来る居場所(安全基地)」が乏しかったりしたなど、
水島先生がおっしゃる「トラウマ関連障害」を見過ごされている場合も多いのです。
ちなみに「解離」はトラウマ関連だけで起きるものではありませんし、
「解離性障害」は「統合失調症」や「パニック障害」「パーソナリティ障害」と誤診されることが多いようです。


このような「解離」は、いわゆる「心の痛み」を切り離し(離隔)
感じないようにする(区画化)という心理的な働きによって
選択的注意力や分割注意力の障害(認知的柔軟性の低下)をともないます。

それを体験する自我の意識を変容させ、それらを体験として切りはなすことによって状況をやり過ごそうとする。
意識の連続性や同一性は保たれず、情動、身体、食行動は不安定に変化する。
また、他者の視線に対する怯えや人込み恐怖などの対人過敏症状が見られることも多い。

柴山雅俊『解離性障害――「うしろに誰かいる」の精神病理』ちくま新書

と、不安定な食行動の変化を伴うことはあまり知られていません。

上記の柴山先生は、解離性障害の患者さんの中で
過食があるという患者は約半数にのぼり、
約三割は過食のために自発的に嘔吐が見られた
、と書かれています。

解離性障害」では摂食障害だけでなく、
状態不安やうつ症状との関連があることが知られているものの、
出来事と感情、そして症状との関連に焦点を当てていく対人関係療法は、
マニュアル的には、原則として適応にはなっていない
のです。理由は不明)

そうは言っても、三田こころの健康クリニックでは
「解離性障害」そのものや「解離を伴う摂食障害」の
対人関係療法による治療を行って良好な治療効果をあげているんですよ。

とくに「解離を伴う過食症」の対人関係療法による治療の初期には、
それまで麻痺させていた感情が顕わになり
過食(および嘔吐)が増えることはよくみられます。
(三田こころの健康クリニックでは、治療導入時に予言していますよね)

対人関係療法による治療が可能なのはなぜかというと

解離の病態に対してとられる治療的接近は大別すると二つの方向に分けられる。
一つは興奮を鎮め、愛着欲求を満たすことによって安らぎをもたらす接近法である。
それによって安心出来るさらなる眠りへと導くことを目標とする。多くの場合、子供返りなど良質な退行的色彩を伴う。
二つは意識の覚醒度を上げることである。これは症状が比較的軽度であり、ある程度、治療者との信頼関係がみられる場合に有用である。
物事を明確に提示し、説明し、曖昧なことには深入りせず、はっきりと現実に対し目を逸らさないことを目指す。退行的構えや愛着欲求を断念し、現実適応を目指す接近である。

柴山雅俊『解離性障害――「うしろに誰かいる」の精神病理』ちくま新書

というように、安心感の提供と現実適応という二つの側面は
水島先生が『摂食障害の不安に向き合う』に書いておられる

不安をコントロールして現状を受け入れるー「位置づけ」という考え方
不安をコントロールして前進するー「土俵」に乗せるという考え方

応用して、対人関係療法での治療が可能になるのですが、
対人関係療法を学んでいる治療者の中で
解離性障害を扱ったことがある人はいないようです。

私が福岡で対人関係療法をやっていたとき、対人関係療法治療者向けの勉強会で
解離性障害のケースを発表したときの様子が以下のブログに書かれていますので
興味がおありの方は参照してくださいね。
【IPTの魅力と】2011.4.24日曜日 対人関係療法勉強会メモ【威力について振り返る】

解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)

解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
夜間食行動異常症候群」というタイトルで、
夕食の後に過剰に食物を消費する「過食性障害/むちゃ食い障害」も
夜間食行動異常症候群」に入れられることもありますが、もう一つ、
「睡眠関連食行動異常」の「睡眠時遊行症型」について書いています。

「睡眠関連食行動異常」は食行動異常(過食)の頻度や
過食につながるきっかけとなる出来事などを見ていくことが難しく、
さらに幼少期のことをよく覚えていないなどで
対人関係療法で最も重要なフォーミュレーションや
治療方針を組み立てるのが困難なことも多いのですが、
概日リズムとの関連が明確で、強迫症の要素がなければ
対人関係療法による治療も可能であることを書いています。
(『睡眠関連摂食障害と夜間摂食症候群の治療』参照)

このようなケースでは、正確な診断が適切な治療に結びつきますので、
対人関係療法による治療希望される方は是非、参考にして下さいね。

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