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2016-01-12

愛着トラウマの脳科学

食べものと人とのかかわりの類似点は
料理をすること」と「共食すること」で
そこに相手との関係性が反映されるといわれます。

その中でも共食とは、食べ物を独占せず他個体に分け与える配慮があり、食べることによる喜びや楽しさを共有し、そのことによって個体間の結びつきを高めるものとされている。
長谷川智子「子どもの健やかなそだちと食べること」そだちの科学 25 (10): 53-56, 2015

対人関係療法が「過食症」や「むちゃ食い障害」に有効なのは
自己効力感と自己肯定感が高まってくる過程で
「境界線」や「敷地」という考え方を通して
自分と考え方が違う他者を認められるようになり
他者との関係が再構築されることによります。

この「個体間の結びつき」が養育関係や夫婦/パートナー関係など
重要な他者である場合に、アタッチメント・システムが作動します。
(『アタッチメントの意味』参照)

摂食障碍という病を関係病理の視点からみていくと、「甘え」体験の質が世代を超えて伝達していることがわかる。
しかし、それは摂食障碍という病が世代を超えて伝わることを意味しない。
幼児期に「甘えたくても甘えられない」という関係病理が、「育てられる者」としての子ども時代に摂食障碍という病をもたらし、「育てる者」としての親になった際には、自らの子育ての中で自分の子どもに「甘え」のアンビヴァレンスをもたらすことにつながっているということである。

小林隆児「「育てられる者」と「育てる者」としての摂食障碍という病」そだちの科学 25 (10): 72-76, 2015

「甘え」を「愛着」と読み替えると
アタッチメント神話の行方』で書いた
世代間伝達」の意味がよくわかりますよね。

このような養育関係における「「甘え」の欠如」と
一般に愛着障害として知られる「不安定型愛着スタイル」が関係します。

一方、幼少期の身体的・性的虐待やネグレクトと密接に関連する
「恐れ/未解決型」「安全基地のゆがみ」
「愛着障害(反応性愛着障害・脱抑制性社交障害)」など
治療の対象となる「アタッチメント関連トラウマ」では、
ソーシャル・エンゲージメント・システムに関わる
腹側迷走神経の活性化不全があり、
「シャットダウン(解離)」が起きることがわかっています。

アタッチメント・システムを「養育者を安全基地として利用する乳児の行動システム」
つまり、トラウマの脅威を対人的に緩和するシステムととらえると

  • 恐怖などの情動中枢である「扁桃核
  • 内的な感覚への気づきや感覚的情報と感情との統合、動機づけに関わる「帯状回
  • 攻撃的および運動的衝動の調節に関わる「前頭前野(眼窩面)」
  • 気づきや意味づけに関わる「島」

を含む回路が関与していることが知られています。

これらの部位は摂食障害でも機能不全がみられる領域でもあり
また前帯状回と島は、『マインドフルネスの脳科学』で触れた
「顕現性ネットワーク」に関わる中枢でもあるのです。

つまり、トラウマを背景にするアタッチメントの問題や
「とらわれ型/不安・アンビバレント型」の愛着スタイルの修復、
あるいはトラウマやむちゃ食い障害を含む過食症治療では
三田こころの健康クリニックで行っているように
マインドフルネス(顕現性ネットワーク)を使って
皮質とのつながり(中央実行ネットワーク)を強めていくことが必要
ということですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害と脳機能というタイトルで、
摂食障害からの回復に必要な

  • 心の中の過食衝動と向き合い、嗜癖症状とトラウマ症状を軽減すること(自分との折り合い)
  • 対人関係療法によるアタッチメントの修復

という、2つの要素について書いています。

摂食障害の文献を読んでいると、専門家側から書かれたものと、当事者側から書かれたもののあいだに、大きな乖離があるように思われる。
そしてその乖離自体が、治療効果の低さと密接に関わっていると思われる。

宮地尚子「食べることの調律もしくは食べることの失調−−複雑性トラウマと摂食障害そだちの科学 25 (10): 77-82, 2015

8つの秘訣』は、かつて当事者であり現在は治療者である
キャロリン・コスティンさんとグエン・グラブが書かれているので
専門家側と当事者側の乖離がありません。

8つの秘訣』を参照にして対人関係療法を併用することで
高い治療効果が得られますので、
過食症やむちゃ食い障害で通院して薬しか処方されていない方は
三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。

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摂食障害・過食症対人関係療法 慢性のうつ病(気分変調性障害) の 精神療法 なら 三田こころの健康クリニック
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2015-07-21

愛着障害と複雑性PTSD

何がトラウマで、何がトラウマではないのでしょうか。
また、どこまでが「正常」で、どこからが「病気」なのでしょうか。
トラウマ体験の種類や強度、因果関係の強さ、反応の種類や強さが、ある程度の判断基準になりますが、これらを分ける境界性が明確にあるわけではありません。

宮地尚子トラウマ岩波新書

と宮地教授は書かれており、水島先生も

診断は気分変調性障害であっても、いろいろとトラウマティックな経験をしている人はいますので、一見区別がつきにくいケースも多いのですが、その外傷の強度はどの程度か、外傷がよみがえるような症状(悪夢やフラッシュバック)があるか、覚醒亢進状態があるか…というあたりで診断を区別していきます。
水島広子『対人関係療法でなおす 気分変調性障害創元社

とおっしゃっています。

「気分変調性障害」と関連があるトラウマは
水島先生が書かれているような強度のストレス体験(トラウマ)後の
再体験症状(フラッシュバック)が消退した慢性のうつ状態であり、
多くは二重うつ病の形で発症し、治りきれずに慢性化するという経過をたどります。

「複雑性PTSD」と愛着(アタッチメント)の関連については

そして、養育者が虐待をしたり、子どもにとって理解不能な行動で不安を喚起し続ける場合、子どもも矛盾した不可解な行動をみせるようになります(「無秩序・無方向型アタッチメント」と言います)。
無秩序・無方向型のアタッチメントが、子どもの精神発達を最も妨げます。
(中略)
無秩序・無方向型アタッチメントの場合、近づくか遠ざかるかという、生きるための一番基本的なオリエンテーションが壊されている状態なので、「アタッチメント」や「愛着」という言葉を使わない方がいいのではないかと、私自身は思っています。
(中略)
けれども、無秩序・無方向型の場合、むしろ愛情がありすぎて、子どもに厳しいしつけをしてしまったり、子どもの愛情を深読みして自分がバカにされているように感じたり、といったことが少なくありません。
愛情が足りないのではなく、親の側の感情や認知の安定が欠けていたり、自己肯定感がなかったり、「自然」な子育ての方法がわからなかったりするのです。
自分の感情を自己調節する能力は、安定したアタッチメント関係の中でできていくのですが、親自身が子どものときにそういう環境になかったことも少なくありません。

宮地尚子トラウマ岩波新書

子どもの無秩序・無方向型の愛着パターンは
成人では「おそれ型(未解決型 or おそれ/回避型)」として知られます。

つまり「複雑性PTSD」は、子どもの頃に
身体的・心理的・性的・教育的な虐待や、ネグレクト、
配偶者間暴力の目撃など、持続性の強度のストレス体験があった成人の

・気分調節薬が無効の双極II型に似た気分変動:子どものかんしゃくの爆発、成人女性の月経前不快気分障害(PMDD)
・記憶の断裂:1日以内の食事内容を想起できない、記憶の断片化の常在
・時間感覚の混乱:日内リズムの慢性的混乱、眠気の消失
・フラッシュバック(再体験症状・侵入的想起)の常在化
・生理的症状と心理的症状の相互混乱・慢性疼痛
・希死念慮:他者への恒常的不信、自傷、非現実な救済願望

などの特徴を、浜松医科大学の杉山先生が挙げておられます。

さらに問題を複雑にしているのは
最近多く診るようになった「自閉症スペクトラム発達障害)」との関連です。

また、狭義の「発達障害」を持つ子どもは、特定の刺激にとても敏感なためにトラウマ反応を起こしやすい傾向があります。
一方、視線を合わせにくいなど、養育者にとって育てにくい特徴をもつために、子育て困難をもたらし、虐待につながってしまうことも皆無ではありません。
発達障害」のような症状から、虐待を見抜き、予防につなげることは大切です。ただ、「発達障害」をもつ子どもの親(特に母親)が、常に虐待の疑いをかけられるというのは、とても酷です。

宮地尚子トラウマ岩波新書

このような発達障害や、「愛着軽視型(拒絶/回避型)」
「とらわれ型(不安/アンビバレント型)」など、
再体験症状(フラッシュバック)や覚醒亢進症状がなくても
養育者の厳格な態度や、一貫しない対応が少しでもあったら
「複雑性PTSD」だと過剰診断している医療機関もあるのです。
(場合によっては本人は愛着障害と思っていることも多いのです)

外傷的なストレスを体験をした人が全員、
「複雑性PTSD」を発症するわけではないうえに、
過去に虐待があったわけでもなく、
「おそれ型(未解決型 or おそれ/回避型)」ではない、
適応障害学校や仕事での不適応)の人を
「トラウマ」や「複雑性PTSD」と診断することで、
親の育て方への糾弾と、親子関係の軋轢を生みますから
この医療機関の安易な「複雑性PTSD」診断は
大きな間違いということがわかりますよね。

さらに不安定型愛着スタイル(岡田先生のおっしゃる愛着障害)などの
対人関係の悩みや葛藤など、治療が必要な疾患ではない状態を
「複雑性PTSD」と過剰診断(誤診)されているわけですから
「複雑性PTSD」と診断されている方や
ご自分で「愛着障害かもしれない」と感じられている方は
ちょっと注意してみてくださいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
摂食障害と感情の自己コントロールというタイトルで、
対人関係療法による治療で取り組んでいく
「自分の気持ちをよく振り返る」という感情に向き合うプロセスは、
過食症からの回復には必要不可欠なことを書いています。
そして、過食症からの回復には感情をありのままに認め、
ネガティブな感情を手放していくプロセスが必要なこと
について説明をしています。

対人関係療法による治療希望される過食症の方だけでなく
気分変調性障害で通院中の方もぜひ参考にしてみてくださいね。

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2014-12-22

自尊心と育てられ方との関係

「自尊心」の低さを作り出すものとして、虐待をはじめとする「育てられ方」の問題が挙げられます。
最も頼りにすべき実の親から虐待を受けた、「産まなければよかった」と言われた、などというのは、「自尊心」を決定的に下げる原因となります。
自分なんて生まれてくるべきではなかったなどと思ったら、自分の存在を肯定する気持ちになれるわけがありません。
また、ふつうであれば子どもをかわいがるはずの親から否定されることで、「自分は人間としてできそこないなのだ」「自分はどこかおかしいにちがいない」という感覚を植え付けられることにもなります。
(中略)
また、過保護にされた場合にも「自尊心」は低くなります。

水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

このように、育てられ方は
自尊心(自己肯定感+自己効力感)」と密接に関わりますよね。

とくに乳児期〜幼児期に虐待やネグレクトを受けると
トラウマと気分障害の関係』に書いたように
発達トラウマ障害(DTD)」を基盤にして

幼児期〜児童期:調節障害、愛着障害、情緒障害、児童期の双極性障害
思春期・青年期早期:ADHD、反抗挑戦性障害、社会的行動の障害、物質乱用、過食症気分障害(慢性うつ病・双極性障害)
青年期〜成人期早期:パーソナリティ障害、解離性障害、身体表現性障害、自傷・自殺念慮

など、成長過程に応じてさまざまな病像を示すことが知られています。

乳児期から幼児期に愛着障害や情緒障害だった人が
児童期には忘れ物やケアレスミスが多かったり、
じっとしていられなかったりなどの「ADHD様の症状」を示し、
思春期から青年期にさしかかると「過食症」や「慢性うつ病」を発症し
さまざまな衝動行為(リストカットや万引き)や
アルコールの問題など感情コントロールの障害を引き起こす
ということですよね。

愛着障害』の著者の岡田先生は
発達トラウマ障害(DTD)」から派生する
さまざまな病像をひっくるめて「愛着障害」と呼んでおられるみたいですね。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

このブログで反応性愛着障害の検索が多いのですが、
対人関係療法では「発達トラウマ障害(DTD)」から派生する
虐待やネグレクトによるさまざまな病像を
「複雑性PTSD
とみなすこともあります。
その根幹にあるのは「自尊心の低さ」ということもわかっています。

たとえば、レイプやいじめなど対人トラウマを受けた人は、
人に対する警戒心が強いにもかかわらず、
病気の事も含めて、つい自分のことを喋ってしまうことがあります。
医療機関で正しく診断されないことも多いので注意してくださいね)

また社交辞令が使えずに、つい本当のことを言ってしまい、
相手につけ込まれたり、自責感を抱いたり
さらに自尊心が低下してしまう悪循環におちいりやすいのです。

  • 自分の気持ちを話せない
  • 自分の気持ちがわからない
  • 自分には価値がない
  • 自分は浮いているのではないか
  • 自分は変なのではないか

などの『気分変調性障害』とそっくりの感じ方は
反復性うつ病」や「双極II型障害」、
複雑性PTSDを含むPTSD(トラウマ関連障害)
社交不安障害(対人トラウマを契機に発症するタイプ)
などでもみられる「自尊心の低さ」を反映した「症状」なのです。

つまり、このような「自尊心の低さ」は
小さい頃から対人関係のルールがわからずに育ってきたことで
どういう言動に対し、どういう反応が返ってくるかがわからないという症状なのです。

これらの「自尊心の低さ」にともなうさまざまな症状を
「心のクセ」とか「仮面の奥のインナーチャイルド」
などと言っているカウンセラーもいるみたいですが、
そうではなく、対人関係療法治療可能な病気の症状なのですよ。
(『カウンセリングと精神療法の違い』参照)

対人関係療法による治療を導入する時には
幼少期の虐待の強度と持続、ソーシャルサポートや当時のストレス因など
生育歴についての詳細なアセスメントを行った後、
それが「現在の対人関係にどのように反映されているか」という
対人関係パターンと愛着スタイルを把握し文脈的に現在の診断を診ていきますよね。

そして三田こころの健康クリニックで行っている
対人関係療法による治療で行っていくことは
「人間というのはこういうものだ」という対人学習であり、
エクスポージャー(曝露)や想像(イメージの中)ではなく、
重要な他者を中心として他者とのやりとりの中で実体験する
修正情動体験や修正アタッチメント体験
によって
自己肯定感とコントロール感を育てていくんですよ。

「愛着障害」ではないかと悩んでおられる方や
なかなか良くならない「うつ病」や「双極性障害」、
または「摂食障害過食症/むちゃ食い障害)」で通院されている方は、
三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』
最近の摂食障害』を参考にして
対人関係療法による治療か適応になるかどうかについて
三田こころの健康クリニックに相談してみて下さいね。

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2014-12-01

トラウマという視点

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』の
診断分類の信頼性を調べたトライアルで
1人の患者を個別に診断した場合の
2人の臨床家の診断一致率が検討されました。

おどろくべきことに、
うつ病」と「重篤気分調節症(DMDD)」では
評価者間の診断一致率はかなり低く、
また「混合性不安抑うつ障害」では
評価者間信頼性はない(診断が一致しない)
と判断されています。

つまり、DSMの診断のように横断的症状チェックリスト方式では
診断不一致率が高くなる(つまり誤診が増える)可能性がある

ということですよね。

これに関して、浜松医科大学の児童青年期精神医学の
特任教授である杉山登志郎先生は
発達障害と複雑性トラウマ(複雑性PTSD)は誤診の宝庫とおっしゃいます。

さて精神科臨床において、これまで十分に考慮されず、したがってきわめて誤診や医原性の増悪があちこちに転がっている病態が二つある。
一つは発達障害であり、もう一つは複雑性トラウマである。
(中略)
さて複雑性トラウマもまた、きわめて誤診や医原性の増悪が多い問題である。
一つはうつ病の誤診である。もう一つは統合失調症の誤診である。
(中略)
複雑性トラウマの症例に抗うつ薬が処方されると、気分変動が激しくなって、自殺や衝動行為の危険が増してしまう。
ついでに言うと、抗不安薬も意識状態を下げ、行動化傾向を促進するので禁忌である。
そして解離性幻覚に抗精神病薬はまったく無効である。

杉山登志郎・書評『上岡陽江、大嶋英子「その後の不自由」』in こころ科学 177: 105, 2014, 日本評論社

と述べておられます。

発達凸凹(Broad Autism Phenotype)」を含む「発達障害」は
成人の精神科臨床の場でもかなり増えた印象があります。

小児期には「発達障害」の診断基準は満たさなかったものの
思春期から青年期に次第に不適応が目立つようになり、
それまでのやり方が通用しなくなった状態で
生まれ持った発達障害の特性が顕著になったケースも
うつ病」や「双極性障害」、ときには「統合失調症」と
誤診されている場合もかなり多いようです。

杉山先生は、発達障害」がある人は
抗うつ薬により躁状態を起こすことがある
とおっしゃっています。
現在の診断基準では、抗うつ薬による躁転は双極性障害に含めるため
双極性障害の中には、かなり発達障害が含まれているということなのでしょう。

また、PTSDの4つのPTSD診断基準(侵入性想起、回避、否定的認知・気分、過覚醒)
すべて満たすわけではないけれども、2項目のみを満たす「閾値下PTSD」もまた
「慢性うつ病」や「双極性障害(双極II型)」と診断されてしまいます。
たとえば幼少期の虐待やネグレクトによる愛着障害の人が、
思春期になって抑うつ状態や気分の不安定さを示す場合ですよね。

さらにトラウマの出来事と症状の出現に時間差があったときは、
PTSDが疑われずに、単なる考えすぎだとか性格の問題と言われ、
抗うつ薬や抗不安薬などが投与され、改善がみられない患者さんたちが、
対人関係療法による治療希望されて
三田こころの健康クリニックを受診されるのです。

トラウマが背景にあり、それが考慮されていない場合は
薬物療法や認知行動療法での反応が悪く、
梅こんぶさんもブログで書いていらっしゃるように
認知行動療法やカウンセリング、薬物療法はどれも罪悪感を刺激されてしまう
そのため、逆に悪化することも多いのです。

つまり薬物療法にしろ精神療法にしろ
治療を行う場合は当然のことなのですが
背景因子の把握、疾患の成立プロセスなどを考慮し
各発達段階において特異的な精神病理的な表現型のうち
発達課題と精神病理はどのような関係なのか」とか
どの症状が疾患特異的なのか」という
ライフヒストリーを縦断するような視点が必要で
その人に合った治療法を選ぶ必要があるということですよね。

そもそも対人関係療法を導入する際に行う
「フォーミュレーション(診立て)」では、
ライフヒストリーに沿った出来事と症状の位置づけを行います。

そして対人関係療法による治療では
フォーミュレーション(生き方そのもの)に沿いながら
必要な対人スキルを身につけていくことで
自分ではコントロールできない病気の症状も改善していく
という結果をもたらしてくれるのですよね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
『愛着トラウマと発達障害』というタイトルで
愛着トラウマ不適応という環境要因によって
発達障害らしさが顕著になるだけでなく、
各発達段階において特異的な表現型を呈するようになります。

また「複雑性トラウマ(あるいは「閾値下PTSD」)」では
拒食の要素のない「過食症/むちゃ食い障害」を呈することも多いのです。
そのため「非定型で難治性の気分変動」を示すような
「気分変調性障害/持続性抑うつ障害」や「過食症/むちゃ食い障害」に対しては、
トラウマという視点での診断見直しが必要
であることを書いています。

なかなか良くならない「うつ病」や「双極性障害」、
摂食障害過食症/むちゃ食い障害)」で通院されている方は、
トラウマの視点で診断を見直してみる必要があるかもしれませんから
三田こころの健康クリニックに相談してみて下さいね。

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2014-10-20

感情がコントロールできない

月経開始前(2週間前〜月経2日目にかけて)に

・気分の不安定さ(突然涙もろくなる・拒絶に敏感になる)
・苛立たしさ(怒りの爆発・対人関係での摩擦)
・抑うつ感、絶望感
・不安・緊張や気分の昂(たか)ぶり

などの感情症状にくわえ、

・通常の活動における意欲減退
・集中困難
・疲労感・倦怠感
・食欲の変化(特定の食物への渇望・過食/むちゃ食い傾向)
・過眠または不眠
・圧倒される、または制御不能という感じ
・他の身体症状:乳房の圧痛、関節痛、浮腫、体重増加

などの非定型うつ病に類似した症状を伴う「月経前不快気分障害(PMDD)」でも
感情のコントロールができない感じを伴います。

「月経前不快気分障害(PMDD)」は環境因子として
季節の変化のほかにも(『季節性感情障害〜「冬季うつ病」と「夏季うつ病」』参照)
女性の社会的役割や、ストレス(対人関係での傷つき)などが関連することが知られています。

苛立たしさは「思い通りにならない/予定が狂った」ときの感情ですし、
「易怒性」と呼ばれる癇癪(かんしゃく)(怒りの爆発)は、
相手から理不尽な決めつけを受けたことで
自尊心(いわゆるプライド)や関係性(愛着)が
「攻撃された/傷ついた」と感じたときにスイッチが入り
ますよね。

「感情がコントロールできない」(易怒性)をこのように見ると
「非定型うつ病」に似た「抑うつ状態」と「トラウマ」には密接な関係がある
ことがわかりますよね。

DSM-5で抑うつ症候群に分類された「重篤気分調節症(DMDD)」は
児童から青年期(6歳〜17歳)の感情調節不全で、
虐待による愛着形成の障害により、
みずから不安をなだめることができず、
周期的に癇癪(かんしゃく)ををくり返すもので、
当初は「双極性障害」と考えられていましたが
抑うつが中心症状であるため「抑うつ症候群」に含まれたという経緯があります。

実際「双極性障害」や「気分変調性障害」の併存のある/なしにかかわらず、
「トラウマ関連障害」では「非定型うつ病」の状態を呈しやすい
ことも臨床経験からわかっています。(『気分反応性をともなう気分障害』参照)

「双極性障害」にトラウマ(あるいはPTSD)が併存する場合、
誘因のない内因性の気分エピソードではなく、
対人関係に関連する出来事がきっかけとなり
状況反応的に、躁状態 or うつ状態を呈しやすい
ことが知られています。
(『愛着やプチ・トラウマが関与する気分変調性障害の治療』参照)

つまり「感情がコントロールできない」ときは、
その状況反応性を考えてみると、
対人ストレス(対人関係の軋轢・摩擦)が引き金になっており、
背景に「対人トラウマ(とくにII型トラウマ)」がある場合も多い
のです。

しかし、メンタルクリニックや心療内科を受診すると
感情と気分は違うにもかかわらず、感情の起伏を気分の波とみなされ
「抑うつ状態」や「うつ病」あるいは「双極性障害」と診断されて
何種類も薬を処方され、休職を勧められたりしますよね。

背景にある「トラウマ」に対しての位置づけと対処はなされないので、
抗うつ薬や抗不安薬によって逆に悪化したり、
気分調節薬でも気分の変動が止められないなどが起きて
薬の量や種類が増えるだけで、難治例・遷延例とされていることも多いのです。
(実際、「トラウマ関連障害」と診断を変更し対人関係療法を導入して、減薬・断薬が可能になることも多いのです)

トラウマが病理性を持つ大きな要因は
トラウマそのものの大きさ(悲惨さ)よりも
○ソーシャルサポートの乏しさ
○トラウマを受けた時点でのストレス

が関与することがわかっているからなのです。

しかし、多くのカウンセリングや心理療法では
クライエントの病態水準の問題(脆弱性)と考えられており、
場合によってはパーソナリティ障害や精神病圏とみなされて、
個人の問題とされることが多いのですが、
このようなやり方では、トラウマで最も影響を受ける
自尊心だけでなく周囲の人たちへの信頼感の回復も期待できませんよね。

また愛着トラウマ(愛着障害も含む)や複雑性PTSDの患者さんは
警戒心が強いにもかかわらず、つい病気のことを話してしまう
という矛盾した行動をしてしまうのは、周囲の人たちへのサポートを求める動きとも見えますよね。
このような行動は病気の症状とはいえ、つけ込まれ、
さらなるトラウマにつながることも多いのです。
トラウマ症状がトラウマ体験を招く

このようなトラウマによる「抑うつ状態(トラウマうつ病)」に対し
愛着の問題やプチ・トラウマが関与する気分変調性障害の治療』で触れたように
三田こころの健康クリニックの対人関係療法では、
愛着(アタッチメント)関係の修復と再構築を目標として
思春期版の対人関係療法(IPT-A)』を導入することもあるのです。

「トラウマ関連障害」に対する『思春期版の対人関係療法(IPT-A)』の応用は
三田こころの健康クリニック独自のアレンジと自負していたのですが、
カナダのCANMATガイドラインでは
PTSDうつ病の併存に対人関係療法治療の第1選択肢として挙げられており、
なかでも『思春期版の対人関係療法(IPT-A)』による治療
認知行動療法よりも良好な結果が得られたと報告されていました。

つまり対人トラウマを背景にした「慢性の抑うつ状態(トラウマ関連障害)」は
三田こころの健康クリニックで行っているような
『思春期版の対人関係療法(IPT-A)』による治療
世界的にもスタンダードな治療だということですよね。

トラウマや衝撃体験をお持ちの方は
診療申し込み票(問診票)の記入が辛く感じられることもあるので、
一人で悩まずに三田こころの健康クリニックに相談して下さいね。

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
トラウマと気分障害の関係」というタイトルで
感情調節不全や抑うつ状態をともなう複雑性PTSD
愛着障害を呈することもある「発達性トラウマ障害(DTD)」について書いています。

「トラウマ関連疾患」は「双極性障害」と誤診されやすいこと、
「愛着障害」などの対人トラウマによる影響は
発達の各段階において特異的な表現型を示す
ことから、
三田こころの健康クリニックで行っているような
発達精神病理学をふまえた包括的な診断が必要ですよね。
発達障害(自閉症スペクトラム症)やADHDも
「双極性障害」と誤診されることが非常に多いことが知られています)


なかなか良くならない「うつ病」や「摂食障害」、
あるいは「感情がコントロールできない」と感じられる方や
「愛着障害(愛着トラウマ)かもしれない」と悩んでいらっしゃる方、
「対人関係がいつもうまくいかない」と感じられる方は、
気づかれていないトラウマの影響の可能性がありますので、
思い切って三田こころの健康クリニックに相談してみて下さいね。

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2014-09-15

「解離」と「過食/むちゃ食い」

摂食障害、とくに「神経性やせ症/拒食症・過食・排出型」や
「神経性過食症」や「過食性障害/むちゃ食い障害」の人の中には
過食やむちゃ食いの最中にボンヤリして
食べているときのことを憶えていない方も多いのではないでしょうか。

そもそも、過食という症状そのものは、
「ストレスを麻痺させる」ため「プチ・解離」と言えますし、
アレキシサイミアや気分不耐とも関連があるのです。
(『アレキシサイミアと情動対処行動〜多衝動型過食症』参照)
(リストカットも同じような側面があると考えられています)

場合によっては、知らない間に買い物をしたり、
あるいは気がつくと買った記憶のない品物を持っていたり
万引きや「窃盗癖(クレプトマニア)」に間違われることもあります。
(『摂食障害と問題行動(万引き)』参照)

このような症状は「解離」と呼ばれますが
生育歴の中で、暴力や虐待、いじめなどの外傷体験があったり、
あるいは「安心出来る居場所(安全基地)」が乏しかったりしたなど、
水島先生がおっしゃる「トラウマ関連障害」を見過ごされている場合も多いのです。
ちなみに「解離」はトラウマ関連だけで起きるものではありませんし、
「解離性障害」は「統合失調症」や「パニック障害」「パーソナリティ障害」と誤診されることが多いようです。


このような「解離」は、いわゆる「心の痛み」を切り離し(離隔)
感じないようにする(区画化)という心理的な働きによって
選択的注意力や分割注意力の障害(認知的柔軟性の低下)をともないます。

それを体験する自我の意識を変容させ、それらを体験として切りはなすことによって状況をやり過ごそうとする。
意識の連続性や同一性は保たれず、情動、身体、食行動は不安定に変化する。
また、他者の視線に対する怯えや人込み恐怖などの対人過敏症状が見られることも多い。

柴山雅俊『解離性障害――「うしろに誰かいる」の精神病理』ちくま新書

と、不安定な食行動の変化を伴うことはあまり知られていません。

上記の柴山先生は、解離性障害の患者さんの中で
過食があるという患者は約半数にのぼり、
約三割は過食のために自発的に嘔吐が見られた
、と書かれています。

解離性障害」では摂食障害だけでなく、
状態不安やうつ症状との関連があることが知られているものの、
出来事と感情、そして症状との関連に焦点を当てていく対人関係療法は、
マニュアル的には、原則として適応にはなっていない
のです。(理由は不明)

そうは言っても、三田こころの健康クリニックでは
「解離性障害」そのものや「解離を伴う摂食障害」の
対人関係療法による治療を行って良好な治療効果をあげているんですよ。

とくに「解離を伴う過食症」の対人関係療法による治療の初期には、
それまで麻痺させていた感情が顕わになり
過食(および嘔吐)が増えることはよくみられます。
(三田こころの健康クリニックでは、治療導入時に予言していますよね)

対人関係療法による治療が可能なのはなぜかというと

解離の病態に対してとられる治療的接近は大別すると二つの方向に分けられる。
一つは興奮を鎮め、愛着欲求を満たすことによって安らぎをもたらす接近法である。
それによって安心出来るさらなる眠りへと導くことを目標とする。多くの場合、子供返りなど良質な退行的色彩を伴う。
二つは意識の覚醒度を上げることである。これは症状が比較的軽度であり、ある程度、治療者との信頼関係がみられる場合に有用である。
物事を明確に提示し、説明し、曖昧なことには深入りせず、はっきりと現実に対し目を逸らさないことを目指す。退行的構えや愛着欲求を断念し、現実適応を目指す接近である。

柴山雅俊『解離性障害――「うしろに誰かいる」の精神病理』ちくま新書

というように、安心感の提供と現実適応という二つの側面は
水島先生が『摂食障害の不安に向き合う』に書いておられる

不安をコントロールして現状を受け入れるー「位置づけ」という考え方
不安をコントロールして前進するー「土俵」に乗せるという考え方

応用して、対人関係療法での治療が可能になるのですが、
対人関係療法を学んでいる治療者の中で
解離性障害を扱ったことがある人はいないようです。

私が福岡で対人関係療法をやっていたとき、対人関係療法治療者向けの勉強会で
解離性障害のケースを発表したときの様子が以下のブログに書かれていますので
興味がおありの方は参照してくださいね。
【IPTの魅力と】2011.4.24日曜日 対人関係療法勉強会メモ【威力について振り返る】

解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)

解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版)

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
夜間食行動異常症候群」というタイトルで、
夕食の後に過剰に食物を消費する「過食性障害/むちゃ食い障害」も
夜間食行動異常症候群」に入れられることもありますが、もう一つ、
「睡眠関連食行動異常」の「睡眠時遊行症型」について書いています。

「睡眠関連食行動異常」は食行動異常(過食)の頻度や
過食につながるきっかけとなる出来事などを見ていくことが難しく、
さらに幼少期のことをよく覚えていないなどで
対人関係療法で最も重要なフォーミュレーションや
治療方針を組み立てるのが困難なことも多いのですが、
概日リズムとの関連が明確で、強迫症の要素がなければ
対人関係療法による治療も可能であることを書いています。
(『睡眠関連摂食障害と夜間摂食症候群の治療』参照)

このようなケースでは、正確な診断が適切な治療に結びつきますので、
対人関係療法による治療希望される方は是非、参考にして下さいね。

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2013-10-28

対人関係療法によるトラウマの臨床

PTSD治療法として、国際的なガイドラインで第一選択とされているのは、エクスポージャー(暴露)をベースにした認知行動療法です。エクスポージャーというのは、行動療法的な手法で、トラウマ記憶にわざとさらして「慣れ」を進めていくものです。トラウマ体験を思い出しても自分は安全であり、思い出すことによって生じた不安や苦痛は、向き合うことによって減じ、やがて耐えられるようになる、ということを学んでいきます。これは「自分への信頼感」の回復につながります。その過程で、トラウマ記憶についてのとらえ方(認知)も修正されてきますので、「世界への信頼感」も回復してきます。
水島広子『対人関係療法でなおす トラウマ/PTSD創元社(2011)

水島先生も書いていらっしゃるように
エクスポージャーがPTSD治療の中心になっているのは確かですが
エクスポージャーをベースにした治療が上手くいかない人の特徴としてあげられているのは、

(1)苦痛に耐えて怒りや不安などの感情に対処することが苦手
(2)ストレス下で解離しやすい
(3)治療関係を維持するのが難しい
――というものですが、いずれも、子ども時代に虐待を受けた人には典型的にみられる特徴です。

水島広子『対人関係療法でなおす トラウマ/PTSD創元社(2011)

ともおっしゃっています。

実際、認知行動療法による効果を得るために
苦悩耐性獲得、呼吸再訓練や斬新的筋弛緩法などの
情動制御の訓練」が必要
な患者が一定数いることがわかっていて
エクスポージャーのセッション間の苦痛と
臨床的転帰の改善と関係していたとする論文もあります。

一方、対人関係療法では、

トラウマ体験そのものに焦点をあてるエクスポージャーとは異なり、現在の対人関係に焦点をあてる対人関係療法は、エクスポージャーが怖くて出来ない人、現在の「生きづらさ」が一番の悩みである人などによって良い選択となります。また対人トラウマの場合には特に対人関係が重要なテーマとなります。特に複雑性PTSDのように反復する対人トラウマ体験があった場合、対人関係を根本から組み立てていかなければならないようなこともあり、トラウマ体験そのものよりも現在の対人関係機能に焦点をあてる治療の方が適している場合もあります。
水島広子『対人関係療法でなおす トラウマ/PTSD創元社(2011)

と書かれているように、エクスポージャーを含む
認知行動療法は「個人幻想(自分自身との折り合い)」に特化し、
対人関係療法は「対幻想(二者関係)」に焦点を当てる
という違いがあります。

f:id:ipt-therapist:20130902113158p:image:w640

愛着スタイルも考慮に入れた現在の対人関係に焦点をあてる対人関係療法でも
上記の情動制御の問題(衝動性)は、症状と位置づけるだけでは困難な場合も多く
「不安という靄(もや)を通して現実とやりとりする」ために
「現実から離れないようにする」
「脳内劇場(心的現実)から現実に戻る」という
「現実を受け入れ、向き合う」ことが必要になってきます。
(薬物療法の併用が必要な場合も多くあります)

その時に必要な状態が「能動的態度=主体の自覚(アウェアネス)」で
刹那の反転5〜意味づけとエクスポージャー』に書きました。

また、前述したように、対人関係療法で現在の対人関係機能が改善し症状が軽快した人たちは、やがて、促されなくても自らトラウマを思い出させるものに向き合う(エクスポージャーする)ようになることが観察されています。対人関係療法によって現在の対人機能が改善し、「自分への信頼感」を取り戻した人たちは、トラウマの記憶にも耐えられるという自信がついてくるのだと思います。
水島広子『対人関係療法でなおす トラウマ/PTSD創元社(2011)

水島先生が書かれているようなエクスポージャー以外にも
中には、過去にトラウマを体験したときと似たような状況が
絶妙のタイミングで起きてくる場合もあります。

私は「卒業試験」と呼んでいるのですが、
患者さんはむしろ、生き直すチャンスとか
あるいは「勝てた」とおっしゃることが多いものです。

そこに至るプロセスは
現在の対人関係である重要な他者とのやり取りが
「自らの起源や、最も安心できる場所や、自然な他者との情緒的交流」
という「ハイマート(Heimat)」として作用し
「身近な人への信頼感」の土台が出来たために
水島先生が書かれているように、患者さん自身も
能動的態度により「位置づけ」が可能になっているだけでなく
自分自身の感じ方が肯定できるなど
「自分への信頼感」は戻ってきたのだと感じます。

同じような状況が起きて
過去には危険を感じる脅威の出来事だったことが
トラウマの回復に伴い安心していい世界の回復になっていますし、
あたかも過去と今と未来を結びつける
あらたな人生の地図を手にした旅立ちのように思えるのです。

水島先生はトラウマの意味について
トラウマによって無力化された人が再び自分の力を感じられるようになること
(エンパワーメント:有力化)
ということをおっしゃいます。

じつは、トラウマ(衝撃体験)というのは
自分の殻を打ち破るプロセスだったと見ると、
エンパワーメントというプロセスは
自己の尊厳を回復し、病気に意味を付与し、
そして未来への希望を見出すための
世界からの贈り物(ギフト)なのかもしれませんね。
まさに『準備が出来たところに好機は訪れる』
ということですよね。

精神科診療室の窓を開けて

精神科診療室の窓を開けて

三田こころの健康クリニック公式ブログ『聴心記』では
解離をともなうトラウマ関連障害」ということで
幼少期の「反応性愛着障害」や「脱抑制性社交障害」の元になる虐待やいじめが
成人期にどういう影響をおよぼすのか、そして、どのような治療が向いているのか、
について解説してます。
参照して下さいね。

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2013-04-08

複雑性PTSDのゆくえ

2015年に完成が予定されているWHOの診断基準(ICD-11)では
「心的外傷性ストレス障害(PTSD)」の中に
ジュディス・ハーマンが提唱した「複雑性PTSD」が盛り込まれる予定です。

現在のICD-10では「破局的体験後の持続的パーソナリティ変化
として分類されていたものですが、
トラウマ体験や持続的な脅威といったストレス要因と
症状の関係を明確にするために
ストレス関連障害に位置づけることが提案されています。

「複雑性PTSD」では、トラウマ関連体験として
逃げるのが困難な持続性ストレスの経験(例:虐待、拷問)の後に

・再体験・回避・過覚醒のPTSDの中核症状に加え
認知面の変化(持続的な空虚感、無力感、無価値感)
・パーソナリティの変化(対人関係困難:不信感、孤立、引きこもり、パラノイアなど)
・感情制御困難(怒りや暴力の爆発、危険行為、自傷行為)

などがみられた場合、「複雑性PTSD」と診断することになっています。

この複雑性PTSDは、境界性パーソナリティ障害との鑑別が問題になりますが
境界性パーソナリティ障害では、
「見捨てられ不安」や「不安定な自己像」といったアイデンティティの揺らぎ、
そして「自殺関連症状」が大きな問題となります。

一方、複雑性PTSDでは、

・トラウマ体験との関連で症状が現れること、
・3つのPTSDの中核症状(再体験、回避、過覚醒)がある

上記の2つの点でトラウマ性障害であり、
パーソナリティ障害のように「見捨てられ不安」が主症状となることはなく、
アイデンティティは不安定というよりも
無力感、無価値感、空虚感などの否定的認知が持続する点で
パーソナリティ障害とは異なる状態であると考えられています。

また複雑性PTSDでも自殺関連症状はみられますが、
境界性パーソナリティ障害よりも頻度は少なく、
治療の焦点となることは少ないとされています。



またDSM-5ドラフトでは
「就学前の外傷性ストレス障害」という項目が独立して採用される予定です。
ヴァン・デア・コーク(Van der Kolk)のDevelopmental trauma disorder(発達性トラウマ障害)
DESNOS(特定不能の極度のストレス障害)を踏襲した内容になっているようです。

f:id:ipt-therapist:20130216100255p:image:w480

アスペルガー症候群や広汎性発達障害など
自閉症スペクトラム障害」では、衝撃に弱いために
トラウマ的な出来事に暴露されたわけではないけれど
「侵入的記憶想起(フラッシュバック類似のタイムスリップ)」、
「麻痺(フリーズや抑うつ)」、「過覚醒症状(感覚過敏)」
などの
PTSDに似た症状を呈することが知られています。

これまで「トラウマ関連障害」とみなされてきたこれらの症候は
「ストレッサーへのこだわり」と「顕著な不適応」があれば
ASD(急性ストレス障害)あるいはPTSD様の症状を伴う適応障害」と
診断されることになりそうですね。

ちなみに。
トラウマという言葉は人口に膾炙しており、
日常的な傷つき体験もトラウマと表現される場合が多いようです。
しかし治療の対象になるのは、トラウマによりPTSD様の症状を呈している場合です。
日常型の傷つき体験からの回復」を参照にして下さいね。

適応障害」については、次回、
適応障害と発達障害(自閉症スペクトラム障害)』と題して
エントリーする予定ですので、お楽しみに♪



三田こころの健康クリニックの公式ブログ「聴心記」では
双極性障害と自閉症スペクトラム障害」をエントリーしてます。

症状のみでの診断で、広汎性発達障害やアスペルガー症候群など
自閉症スペクトラム障害や、ADHDH(注意欠陥多動性障害)が
双極性障害と過剰診断、ひいては誤診されていることが多々あることについて
注意を喚起しています。

双極性障害の過剰診断」でも触れたように
成人ADHDが双極性障害と誤診されると、
アトモキセチン(ストラテラ®)やメチルフェニデート(コンサータ®)による
適切なADHDの治療を受ける機会が失われる
ことになりますよね。

双極性障害の診断は、「病相エピソード性(経過)」と
元々どういう人だったのか?という「気質(temperament)」への注目

過剰診断や誤診は最小限度に出来るかもしれなということを書いています。

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2013-04-02

トラウマと摂食障害を乗り越えて

対人関係療法による治療を卒業された患者さんの誘いで
生まれて初めて(年甲斐もなく?)
ミュージカルの舞台を観てきました。

元・患者さん(ex-Patient)ですからex-Pさんと書くところですが
面倒なのでPさんと表記しますので読み替えてくださいね。

Pさんは思いもかけないトラウマという挫折に直面し、
生まれ持った発達特性すら軛(くびき)になった状態での
通学不能、そして摂食障害を併発したのでした。

対人関係療法によるトラウマと摂食障害治療を開始し、
半年足らずで再登校と大学への進学という
ハードルを乗り越えただけでなく
1年後には舞台への復帰の夢も叶えたPさんでした。

トラウマ反応の名残りである予期せぬ身体反応と
「上手(うま)くやらなくちゃ」というジャッジメントを
「思いっきりやれればいい」というアセスメントに転換する
Pさんの、内面を見つめる孤独なプロセスを支えたのは
ご家族の理解をはじめとする周りのサポートでした。

舞台の上のPさんは、配役というペルソナの裏の
まだ生々しいトラウマ関連の擦り傷も感じられたものの
クリニックの面接室と違って華やかなオーラを身に纏い
役柄にエンバワーされたPさんは、一回り大きく見えました。

公演の後、楽屋にお邪魔した際にお母さまがおっしゃっていた
病気から学ぶという言い方がありますけど、本当にそうですね」という言葉から、
サポーターも患者さんと一緒に
螺旋状にプロセスを歩まれたのでしょう。

f:id:ipt-therapist:20130401203640p:image:medium

さて、ミュージカルはというと
キャストの皆さん、全員が愉しんで演じられているようでしたし、
クライマックスでは、あちこちで鼻を啜る音が聞こえたりして
舞台と観客がストーリーを共有できている感がありました。

夢と現実が交錯するところで演じられる
新オオカミ王ロボ」の舞台は「非日常(ハレ)」であり
「日常(ケ)」にニック(nick;切れ目)を入れ、
新たなエネルギーをもらって帰ってきました。
ちなみに、2011年の公演では
すべての子どもの心をもつ人へ」という副題がついてました。

f:id:ipt-therapist:20130401203808j:image:w360

4月7日までですので、まだご覧になっていない方は
ぜひ、見に行って下さいね。
「新オオカミ王ロボ」の公式HPはこちら。

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2012-12-28

日常型の傷つき体験からの回復

対人関係的な出来事の中で引き起こされる「傷つき感情」は、
私たちが身近に体験する感情であり、
強い嫌悪感情を伴い長い間継続することがありますよね。
それゆえ心理的プロセスに大きな影響を与える可能性があるのですが
これについての研究は非常に少ないのが現状です

リアリー(Leary)らの研究によると、傷つき体験は、

-積極的/消極的な分離
-非難
-裏切り
-からかい
-大切にされない、使われる、軽視される

などに分類され、
言語的攻撃や間接的攻撃が中心となり、
加害者側に相手を傷つける意図がない場合もしばしば含まれる
ことが特徴的で、
傷つき体験の根底には「(他者との関係性の中で)自分は相手から低く評価されている
という認識から生じる感情が共通してあり、その結果、

  1. 対人関係の中で「最も傷ついた」体験は、「親しい他者からの言語的あるいは関係性攻撃」によるものであること
  2. その体験は、「自己観の低下」「他者観の低下」「対人関係の問題」「物事への取り組みの消極化」といった長期的な心理的不適応を引き起こしうる「心の傷」となる可能性があること

がわかっています。

また日常的な傷つき体験による影響は、
PTSDの症状は持っていなくても、

  • のちの対人関係に関する不適応
  • 自己観や他者観の低下
  • 物事への取り組みが消極的になる

という、直接的な対人関係に関する不適応以外の
ネガティブな影響を引き起こす可能性も指摘されています。
その元型が、反応性愛着障害かもしれませし、
思春期型が、気分変調性障害(慢性うつ病性障害)みたいですよね。

つまり日常型の傷つき体験では、
主に「状況依存的記憶(SAMs)」による症状よりも
「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」による症状や影響が問題となりやすく
「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」による影響は
長期反復トラウマがもたらす人格変容ほど病理性を持ちにくいため
周囲からも、自分でも気づきにくく顕在化しにくい
ということが特徴のようです。

  • 状況依存的記憶(SAMs):出来事の中で体験した感覚的記憶、生理的、運動的な情報からなり、トラウマと類似した刺激状況で無意識的、自動的にアクセスされ、過覚醒を伴う侵入的イメージあるいはフラシュバックなど再体験症状を引き起こす
  • 言語的アクセスが可能な記憶(VAMs):体験についての言語化や意味づけを含む自伝的記憶



たとえば、
「状況依存的記憶(SAMs)」による再体験や過覚醒症状が、
PTSDと診断されるほど頻繁で強い体験で
生活を困難にしてしまうようなものであれば病理レベルでしょうが、
私たちがしばしば体験するような
ちょっとしたショックな体験の後に生じる
侵入的想起であれば正常レベルといえますよね。

一方、「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」が引き起こす
信念システムの歪み(世界や自己に対するネガティブな見方) が、
人と通常のやりとりができないほど歪んだ人格を形成したり
感情の制御が非常に困難になったりしていれば病理レベルで、
「あの体験を思い出すとちょっと嫌な気持ちになる」
という程度なら正常レベルですよね。

ただし, これらの影響の在り方については、
「状況依存的記憶(SAMs)」の症状により徐々に
「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」にダメージが及ぶ場合もあれば、
逆に「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」における認知的歪曲が
「状況依存的記憶(SAMs)」による症状を
強めたり維持させることもあると考えられています。

つまり「傷つき体験」が
直接にPTSDや心理的不適応などを引き起こすのではなく

「傷つき体験」の表象のあり方がPTSDや心理的不適応に影響し、
「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」は
低い自己/他者観や対人関係の困難さに関連
し、
物事への消極性は、自己/他者観の低さや対人関係の困難さを媒介して
さらに「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」に
二次的に影響を与えるということですよね。

それに加えて、単回性あるいは反復性のトラウマと異なり、
日常型の傷つき体験では、言語化するほど再体験症状が緩和されるという関係がみられにくい
のが特徴といわれています。

ですから、
自閉症スペクトラム障害にともなうトラウマ関連障害」で書いたように
その人がその出来事をどう体験したかも聴かずに
イジメを受けた経験があるというだけで
安易なトラウマという意味づけは避けるべき

ということなのですし、
母親との関係に問題があったから、虐待を受けたから
愛着の問題(いわゆる愛着障害)や気分変調性障害につながった
という位置づけには、必ずしもならないということなのです。

ということで、日常型の傷つき体験からの回復には、
意味づけを探したり、原因を帰属したりするような
出来事と期待や信念との間の葛藤を解決するための
意図的な想起および処理という
「言語的アクセスが可能な記憶(VAMs)」の編集、
つまり、対人関係療法でいうところの
「位置づけ」「意味づけ」という「役割の変化」に相当しますし、
(場合によっては重要な他者との「役割期待の不一致」の解消)
そのプロセスによる「受動性から能動性への反転」が必要不可欠ということですよね。

PTG 心的外傷後成長―トラウマを超えて

PTG 心的外傷後成長―トラウマを超えて



今年もたくさんの人に読んでいただいて
すごく感謝しています。
とくに愛着の問題や、それに関連する日常的な傷つき体験のような
プチトラウマは、水島先生もおっしゃっているように
人との関係を理解する上で必要な視点になりそうですよね。

年明けからは、摂食障害対人関係療法について
あまり知られていない部分について書いていく予定です。
お楽しみに♪

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摂食障害 治療 対人関係療法 双極性障害対人関係-社会リズム療法 の 病院 なら 三田こころの健康クリニック
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